第436話「阿修羅のお味は?」
明日追記します!
「おげげげげ!?」
口の中にどんどん入り込んでくる阿修羅の魂と思わしきもの。ううっ! なんだか気持ちが悪い! というか魂を食べるなんてやばい気がしてならないんだけれど、どうなるんだこれは。 私の口の中に物を入れると、生体調合にもなるって言うのに、魂を調合しているようなものになるんじゃないのかこれ!?
「うばばばばば!?」
魂の大食い大会でも開催されているとでも言うのか!? 両手と口で一生懸命魂を食らっているとかなんだかもうアホらしく感じてきたぞ! なんでこう私ってばいつもこんなことをしなきゃいけないわけ!? どう考えてもこういうの汚れ役というかなんというか! もっとこう、か弱い般若レディに優しくしてくれるとかないわけええ!?
「あはははははは、くっ、口から魂を食べてる! あはははは」
「ま、魔者。やはりあやつは恐ろしい奴!」
おいそこぉ!? 笑っているのが聞こえているぞ! こっちは冗談でやっているなじゃないぞ! ゲームは遊びじゃないんだ! いや遊びだけれど、こんな遊び嫌だああ!? うごごご!? なんだか種を一杯頬張るネズミみたいな感じになってきたよ! うががが!?
「か、かんべんじでおおお!」
笑いごとじゃない。こっちは真剣なんだぞ。というか何だよこの魂の量は!? 阿修羅の魂はこんなにでかかったって事なのか!? よく分からんけれど、この魂を吸収したら私はどうなってしまうって言うんだ!? 強くなれるなら嬉しいけれどなんだか不安なんだけど!
「うぼぼぼぼ!」
うう! 口の中に魂が入り込んでくるなんて現実じゃ絶対ありえない現象がVRだと出来てしまうってことなんだよなあ。この魂、味がするわけでもなんでもなくただ口の中に入り込んでくるから不気味過ぎる! 味のない飲み物をひたすら飲ませられているような感覚だ。
「お、すごい。なんか周りの黒いのもなくなってきているな」
「魔者、お前は、この力を全て取り込むつもりなのか!?」
取り込むも何も、阿修羅が魂だけでも生きているとか言われたらもうやるっきゃないから仕方なくやっているだけってのに! もう本当にいつもこれだよ! 仕方なくやっているってもう本当にね! 何で私がこんなことをしなくちゃいけないのか分からないよ!
さっさとこんなところからおさらばしたいってのに! で、まだなのかあああ!?
「ぐぼぼぼぼぼぼおお!」
それにしても、これだけの魂を吸収するだけの容量が私、というか般若レディのどこにあるというんだろうか。とても不思議だ。魔者だからそのくらいで来ても当然みたいなのがあるのかもしれないけれど、もうこれはどう考えもおかしいと思う!
「あぁぁぁー!」
なんだかあと少しで終わりそうな気がしてきた。このまま全部吸収してしまおう。段々慣れてきたし、このまま一気にいけるはずだ!
「ぶおおおあああ!」
ごくりと全て飲み込んだ。その瞬間に両手に吸収されていく魂もなくなった。あー辛かった。VRゲームってこういう動きもリアリティがあるのがデメリットだな。
「あー。きつかった」
肉体的にというか精神的にきつかった。無理矢理大食いをしているような感じだった。もう食べたくない物をどんどん口の中に押し付けられるのって辛いもんだね。
「お疲れー。それで、この山姥はどうする?」
「何者なのか聞いておかないといけない、かな」
阿修羅とは旧知の仲だったようだけど、何をしようとしているのかはさっぱり分からないので、目的を知りたい。というかどこから来たのかとかそっちも重要だ。
「おい魔…ぶ!?」
「私の事は寿司ギャルと呼ぶといい。おーけい?」
ブッチは山姥の首を掴んでいるので私は頭を掴み、鎌を首筋のあたりに近づけてやった。
あたりを見回すと、黒い靄は記載さっぱり無くなっており、一面は荒野が広がっていた。阿修羅が引き起こした竜巻のせいでどうやら森が吹っ飛んでしまったようだ。
「私をどうしようってんだい」
「どうしたもこうしたも、色々教えてもらわなきゃいけない事ばかりだからなあ」
なんかこの山姥、魔者にも詳しそうだし、とりあえず情報を聞き出すだけ聞き出してその後はとどめを刺してしまえばいいだろう。
「あんたは、最悪な奴だね。それで何が聞きたいんだい」
「ここじゃなんだし、そうだなぁ。ちょうどいい所まで移動してからにしようか」
「お、一旦戻るんだ?」
「まぁこんな場所にいたら敵が沢山来そうだし、進むにしたって疲れたしさ」
こういう時に狙ってくる敵って結構いるはずだから、さっさと帰りたい。またこの森には来なきゃいけないだろうけれど、邪竜は倒した事だし、スタンピードを警戒する必要は当分なくなるはずだ。だったら、一旦帰って体制を整えたほうがいい。
「それじゃ、いつものところに行くか」
「うん。転移石」
いつの間にか、神殿の近辺あたりが、私達の集まる場所になってしまった。そういえば、あのあたりって他のプレイヤーがいることが少ない気がしたけれど、なんでなんだろうなあ。ブッチのせいって言うのはあるかもしれないけれど、それにしたって街は近いし、そこまで警戒しなくてもいい場所の気がするんだけどなあ。まぁいっか。っとあっという間に着いたな。
「あれ? ねこますさん?」
すぐ近くにエリーちゃんとたけのこ達がいた。
「あ、みんな来てたんだ。ってここでは寿司って呼んで欲しいなーと思ったけれどまぁこの辺りならいいことにするか。今からここで山姥を拷問するんだ」
にやりと笑いながら山姥を見る私だった。
「なんやて!? 姉御もついにあくどい事をするようになったんか! これは驚きやで! ワイらの姉御がついに血も涙もなくなってしまったようやで!」
「だいこん。私は至って正常だから。この山姥は色んなことに詳しいみたいだからちょっと教えてもらうだけなんだよ。な?」
「ぐぐ、どこに連れて行くかと思いきや、まさか、怨念の神殿とは!」
「え?」
そんな名前なのここ? ただの神殿ってしか転移石には出てこないんだけれどって、あ? 今見たら怨念の神殿って出てきた? あっれー!?
「何ここ怖い。で、ここはどこなの山姥」
「大量の怨念が集まってきていると思わしき神殿だよ! こんなところに私を連れてきおって!」
なんだかご立腹なようだけれど、そんなことを私に言われても困るな。さて、どうしたものか。
「それはひとまず置いておこうか。ちょっとばかし、聞きたいことがあるしね」
「…話して欲しければ私の身の安全を保障しな」
「するわけないじゃん。話してくれなきゃ用済みなんだよ?」
「うぐぐ!?」
私は別にここで必ず知らなきゃいけない事でもないので、無理なら別の機会にする。こういう時にさっさと喋らない奴がいたらそんなことに時間を費やすのは時間だと思うし。
敵が色んな情報を持っているから生かしておくというのがあるけれど、話すつもりがない奴が多い上に話したとしても嘘の情報を流す奴もいるので、どのみちこうして脅さなければ駄目だ。
「まず一つ。お前の目的は何だ?」
「ま、魔者を警戒して可能であれば別の場所へ誘導する事だった」
ん? ということは、私って、まんまとここまで連れ出されてしまったってことにならないか。なるほど、これはしてくれたなあ。
「なんで魔者なんてものを警戒しているんだ?」
「この大陸全土を滅ぼしかけない者だ。当然警戒をするだろう! できれば消えて欲しいくらいだ! 存在するだけで恐ろしい!」
なんて山姥は言うんだけれど、私の周りにいるみんなは私の事が恐ろしいなんて全然思っていないようなのであっけらかんとしているな。本当に温厚な私が滅ぼすとかありえないだろう。
「あー、みんな、私はそういうことしないからよろしくね」
一応誤解されないように言っておく事にした。なんだか誤解が多い気がしてるしね。
いつも読んでいただきましてありがとうございます!