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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
427/473

第427話「強い、台風に今立ち向かっていく」

1/24追記。428話分で投稿していた分と合わせて修正しました。

428話は丸ごと訂正します。

 竜巻というかもう台風のようなものなんだけれど勢力は一向に衰えない。そして私達の方に向かってきている。森にある大量の木をどんどん吸い込んでいってるんだけれど、誰もが何もできない状態になっている。

 他のプレイヤー達はどうしたのか分からない。逃げ出したということなんだろうか。この台風に挑んでみようとか言うプレイヤーの一人や二人いてもおかしくないと思うんだけれど、誰もいないのか。根性なしのプレイヤーばかりなのか。どこかに骨のありそうなプレイヤーがいないのか、なんて思っていたら、いた。

「うおおおおおお!」

 あの柔道着の男だった。まだここにいたのかと思ったんだけれど、台風相手に突っ込んでいってるその姿は少しだけかっこよく見えた。だけど。

「うわーー!」

 あっという間に吸い込まれて消えて行った。考えなしに突っ込んでいったのか! アホか!? なんて思ったけれど、ああいうプレイヤー面白いので嫌いじゃない。まぁあの時はうざかったけれど。無謀にも突っ込んでいったことは評価したい。


「やばいなー。俺らも巻き込まれたら、あんな感じになっちゃうんだね。怖すぎるな」

 他のプレイヤーがいないのも、ひょっとしてこの台風にこれまで挑んだことがあるということなのかもしれないな。それで結局誰も生き残れずに終わったので、攻略を諦めたのかもしれない。

「正体も分からないだろうしね」

 どうなんだろう。阿修羅と邪竜が正体なんてまだ分かっていないっていうのも不思議な気がする。大量のプレイヤーがいるはずだから、誰かは正体を見たことがありそうなものだけれど、そのあたりどうなっているのか分からないのでなんとも言えないけれど。


「このままだとまずいし、私達も、とりあえず距離を取ろうか」

「あれで吸い込まれたらひとたまりもないもんなー。おっけー!」

 ブッチに肩車してもらって移動するが、ブッチはいつもと何ら変わりなく移動出来ているのがやっぱりすごいと思う。パワー系は羨ましい、なんて言ったところで手に入らない力なので私は自分のできる事をしないとな。

 気配感知を再度使ってみるけれどやはり何もいないようだ。うーん。でもここは念には念を入れて、やはり私は元の姿に戻らないことに決めた。油断大敵だ。こういう時に大丈夫なんて思っていると案外情報が漏れることがあるし。

 味方にスパイがいて情報が洩れたとか、知らない間に自分の事が他人に伝わっていてその結果襲われてしまったなんてことは腐るほどある。

 私は絶対にそんなことになってたまるかという思いがあった。

 そういう、過去の人間がしてしまった失敗を絶対にするものかというのが私にはある。まぁ私も同じように失敗してしまう事もあるのだけれど、やはり人間なのだから完璧というわけにもいかないことが多い。

 ただ、この状況をどうやって収めるか、だけれど。

「この竜巻。使えるな」

「ん? 何に使えるの」

「北の方に行くと、ずっと同じ所で進めなくなるところがあるんだよね。魔者の試練ではなかったみたいでさ。」

 北の方にこの竜巻をおびき寄せて、延々と北に進んでいけば、色んな物を吹っ飛ばしていくから、道が開けるのではないかと考えた。そう都合よく行くかどうかは分からないけれど、やってみる価値はあるのではないかと。


「で、俺たちは今、南に進んでいるんだけれど」

「そうかー。じゃあ北に進まないと駄目だね」

 いや、無茶ぶりしているのは私だって分かっている。だけど、ここから西か東におびき寄せた後にそこから北上していけば、なんとかなるんじゃないのかなって思っている。ブッチならやれるんじゃないかなと。

「…で、行けるの?」

「お!? なんだい何だい。寿司ちゃんってば俺を挑発しちゃう!? へっへっへ。行けるの? だって。勿論行けるに決まってるじゃないか! 」

「だよね! ブッチがこんなこともできないなんてわけないもんね! あははは!」

 ブッチはこういうノリについてきてくれるところが好きだ。安い挑発に乗るのは私も好きなのでこういう言われたら俄然やる気が出てくる。


「おし、それじゃあ全速力で突っ走るよ! しっかり掴まって振り落とされないようにしてくれ!」

「あいよー!」

 そんな感じでブッチは走り出す。は、はえええ!? なんだこいつ! 今まで手加減していたのかってくらい凄まじい走りっぷりだ。こんなに強くなっていたのか。凄いなブッチ。速い。速い。本当に早速い。どうなっているんだ!

「はやいよ!」

「全力だし!」

 それは分かっている。だけどあまりに速過ぎて驚いてしまうじゃないか。なんなんだこいつ!


「ヴォオオオオオ!」

「…な、なんかあの竜巻、怒っているみたいに近づいてきてない!?」

「きっと俺らが逃げていると思い込んでて、絶対に逃がさないぞムシケラがぁとか怒り狂っているんだよ! ああいう周りを雑魚だと思い込んでいる奴って実は単細胞系だろうし!」

 あるあるじゃないか。なんか普段余裕をかましていて冷静沈着な奴とか、追い詰められたりして逆上すると物凄く弱体化するというか、単純な行動に出ることが多いので、隙だらけになるんだよね。ああ、そういえば最初から最後まで余裕をもっている敵なんてそうそういないな。

 大体、なんでこの私がこんな虫けらに負けるのだみたいなこといってやれるんだよなー。油断大敵というか侮って負ける奴が多すぎるんだよなー。自分の力を過信している奴もすごい多いし。もっと臆病で疑心暗鬼で不安要素を徹底的に排除するようなボスがいてもいい気がするんだけれど。

「あれさぁ、すごい大きくなってきたけれど、こっちにぎりぎりまで近づいたときに息切れしそうな気がしちゃうんだけど。」

「あんな高威力の攻撃、なのかどうかは置いといて、竜巻の状態が長く続くとは俺も思えないな。邪竜と合体した力がそこまで凄いってことなのかもしれないけど、ああいうのはエネルギーを無駄に消費し過ぎている気がするよ」


 あの状態になったら力を使い切るまで元に戻れないとかなのかな。私の隕石拳と同じような感じな気がするな。だけど一回使ったら次に使うまで時間がかかるってスキルな気がするな、あの竜巻。

「要するに、ここは鬼ごっこしましょうってことだよね?」

「そうだね! 俺は捕まえられないから安心してくれよっとおおお!」

「また加速したあぁ!?」

 竜巻は結構な速さでこちらに向かってきているけれど、ブッチもかなり速いので引き離せている。これならなんとか西に進んだ後に北に行けそうだ。

 それにしても、なんだか毎回森が犠牲になっている気がする。いつもは森林火災だけれど、今回は竜巻に巻き込まれて粉砕されている。なんだか自然破壊ばかりしているような気がしてくるけれど、毎回こういうモンスターに襲われて戦って仕方なくやっている事だ。

「で、ブッチのスタミナは持つの?」

「いくらでも持つよ、と言いたいところだけれど、強制ログアウトが俺のスタミナの限界だね」


 タフ過ぎる。ゲーム上の限界が自分の限界だなんて凄いな。私はそこまで集中力が続かないから正直羨ましい。

「ん? おっ。仕掛けてきたか」

「え。あっ!?」

 巨大な竜巻がこちらに向かってきていたが、その竜巻より多少サイズが小さい竜巻が3つほど、迫ってきていた。えぇぇー!? あのでかいのが1つでもヤバいってのに3つも出してくるとか何なんだ。そこまでして私達を倒したいのか。そこまでする必要がなんであるんだ。

「早いなー。やばそうだなー。面白そうだなー。はははははは!」

 私を肩車しているこのサイコロプスは私が不安になっているってのに嬉しそうだった。直撃したらどうなるか分かったもんじゃないのにこの楽しみよう。


 例えピンチでも面白おかしくゲームができてて羨ましい限りだ!

「ここは俺に任せて先に! とは言えないなあ。寿司ちゃんだと、多分このまま追い付かれてしまいそうな気がする」

「その通りだよ」

 ここでブッチから置き去りにされたらどうしようもなくなる。肩車されて必死でしがみついているのも置き去りにされないためだし、ここで離ればなれになったら、非常にまずい。あっ、こういうことを思っている時点でまずいか。こういう風に思った時点で、大体嫌な事が起きるんだよね!

「…そういえばどうして私達を的確に狙ってきているんだろう?」

 今更だけれど、阿修羅も邪竜も別に魔者の事を感知できるわけではなかっただろう。それでも今、私達のいる位置を正確に把握しているというのは、何かスキルがあるからだと思うけれど、向こうも気配感知を持っているって事なのかな。

「俺たち、人気者だからじゃないかな!?」

 人気者は辛いねってあんな竜巻にストーカーされるなんて最悪じゃないか。私は嫌だぞ。あんなのにストーカーされるなんて。


「何か忘れている気がする。でも思い出せない」

 ここ最近でごちゃごちゃしてきたので、あれもこれもやろうとしていて思い出せないというか頭の中がまとまっていない状況だ。

「あの邪竜も阿修羅も何かこの森で探し物があったんじゃないかと思うんだ。」

「はい?」

 何かいきなりブッチの予想に入った。私もよくやるからいいんだけれど、あいつらの探し物って何だろう?

「邪馬の森に何か凄い物があるってことじゃないのかなーって。」

「モンスターの国じゃないのかな」

 それぐらいしか思い当たらないけれど、他にも何かあるかな。ああ、地下世界みたいなところか。それもあり得る。邪馬台国は、多分阿修羅も知っていると思うしなあ。


「ねっこちゃんが気付いていないなんて。俺、あいつらが狙っているの勘で分かったんだけど」

「マジか。すごいな。ブッチ名探偵じゃないか!」

 私はさっぱり思いつかないぞ。一体何なんだ!?

「言ってもいい? 言ってもいい!? ねっこちゃんこういうの予想するの好きだと思ったんだけど!?」

 うわ、なんか凄い言いたそう。私も何が言いたいのか分からないし、さっさと言って貰うとするか。

「いいよ。で、何なの?」

「ここに邪馬台国がある。そしてここは邪馬台国の森。阿修羅はなんか仏教だか何かに出てくる奴のはず。まぁ邪竜は知らないけれど。」

「ふんふん。」

「で、阿修羅はどこかに封印されているモンスターを復活させようとしているんじゃないかなって思ったんだけど。そのどこかといえばこの辺りもあり得るのかなって」


 モンスター? 一体何のモンスターだろう、そこで私ははっと気がついてしまった。いや、あり得る。つながった。つながってしまった。邪馬台国、そうか邪馬台国なら…あいつか。


「ドロヌマオロチ。ヤマタノオロチがモチーフだろうから、ありえるんじゃないかな」

ブッチの回答に、私は唾をごくりと飲み込んでしまった。


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