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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第426話「竜巻」

1/22追記しました

 阿修羅と戦う理由なんてないけれど、ここまで来たらもうどっちかが倒れるまで戦い続けるしかなくなってしまった。まぁ争いごとなんてそんなものだよなというか、因縁をつけられるのは慣れているので今更だ。

 邪竜が復活したのか、それとも新しい邪竜を呼び寄せたのかは分からないが、阿修羅と邪竜がまた揃ってしまった。恐らくこの二匹で合体とかするんだろうと思っている。その合体を邪魔できたらいいと思ったのだが、そうもいかなかった。

 邪竜が阿修羅の真上に現れると、竜巻が発生して、吹き出す風で近寄れなくなってしまった。いや待てよ。それで突進されたらこっちはどうしようもないんだが、ただ竜巻になるだけなのかこいつら? それはそれでとてつもなく厄介だぞ。ふんばりがきかないし。

 竜巻って中に入ったらというか直撃した螺全身斬り刻まれたり、吹き飛んだりするんだっけ? くらったことがないから分からないけれど、致命傷にはなってしまいそうだ。


 ここでひたすら薬草を食べ続ける。完全回復しそうなくらい食べ続ける。誰かに見られているかもしれないので。こっそりとだが。

「ブッチ。やっぱりその姿に?」

「まぁ。これでいかなきゃきついだろうから。これで行くよ。そっちはそのまま?」

 頷きつつも、監視されているみたいだからね。というメッセージを送っておいた。ブッチは何やら思う所があったみたいだがそれはそれとしてここからどうするかが問題だ。

「そうだね。このまま鎌で行くよ。ただ、そもそも近寄れないこの状況をどうしようか」

「ずっとあの竜巻のままになっているとは考えにくいから、このまま一定の距離をとりつつ待ってみようか。スキルでも魔法でも、あんな無敵状態が続くわけがないと思うし」


 確かにそうだ。こういう絶対防御状態というか、攻撃を一切受け付けない状態がずっと続くなんてどうあっても勝てないてことになる。ひょっとしたらあの竜巻のどこかに弱点みたいなものがあるのかもしれないけれど、近づけないという現状がおかしいのでそれはない気がしてきた。

 だけど、強力な遠距離攻撃の方法があればまた別なので、それが要求されているということであればほぼ接近戦しかできない私達だと、どうにもならなくなる。

 般若レディに戻れないこの状況が凄くもどかしい。本気を出せないで戦うというのがこれほど窮屈な感じがするなんてなあ。


「ヴォオオオ!」

 なんか竜巻から雄叫びのような唸り声が聞こえるんだけれど。風の音がそう聞こえるだけと思いきや、私とブッチがいる方向に向けて発せられているので、阿修羅が狙ってきているのは分かる。

「もうちょい距離を取ろう。あ、久々に肩車する?」

「それでいいなら助かる!」

 私よりもブッチの方が動くのが早いしな。多少目立つだろうけれどやむをえない。後は出来れば、この辺りで私達を監視している奴らを巻き込んでやりたいなあ。というわけで、ブッチなら周囲にいる連中の事が分かりそうなので、そいつらをこの戦いに巻き込めるようにお願いをした。

「…念のために言っておくけど、このまま逃げるってのはなしだからね。それは私も納得できないし」

「大丈夫。俺もだから。ここで逃げたら無駄に戦っただけで終わるし、邪竜も結局復活しちゃったようだから、俺も何もしていないってなるのが嫌だ」


 折角、苦労して邪竜を倒したにも関わらず、また呼び出されたら溜まったもんじゃないよなあ。

「なんて言ってる場合じゃないな。寿司ちゃん。俺の背中に乗って」

 そんなわけで、ブッチに肩車してもらうのだった。む。また風の勢いが強くなってきたと思ったら竜巻が大きくなってきている! なんだこりゃあ!

「やべえ。なんだろうなあれ。まずはひたすら距離を取らないとまずい」

 周囲にある木々や小動物やら何か色んなものを吸い込んでいく竜巻だ。吸い込めば吸い込むほど、勢いを増しているような気がする。え、あれをどうやって攻略しろって言うんだ? 自然災害みたいなものにしか見えないし、時間経過で終わるのを待つしか出来ない気がしてきたんだけれど。

「ひたすら走るからしっかり掴まっててよ!」


 ブッチは、追ってくる竜巻から全速力で逃げ出した。正確には、戦略的撤退だけど。これは、そうするしかないだろう。こんなの、現実なら勢力の強い台風みたいなもんだし。

 天候まで変わってきている。雨雲が大量に集まり、土砂降りになってきた。これ、このまま雷も発生したりしないよな。阿修羅は雷も使ってきたし、それもありえそうで怖いんだが。

「なんかすげぇワクワクする! 子供の頃に、大雨すげぇ! とか言ってわざとずぶ濡れになった時の事思い出す!」

 …その頃の純粋さをまだブッチは持ったままなんじゃないだろうか。今もこうしてはしゃいでいるし。ピンチだってのに楽しそうだなあ。私もブッチ並みとは言わないまでも、こういう非日常的な事をこのゲームで経験出来て面白くなってきた。

 後はこの状況の打開策でも思い浮かべばいいんだけれど、どうにも思い浮かばないなあ。


「ああいうのって、他のゲームだと、くるくる回りすぎて目を回して、最後は隙だらけになるとか、あるいは吸い込んだものが自分の体にぶつかって、最終的には一定時間無防備になるみたいなのが定番だと思うんだけどさ」

「そういう定番に期待していたら多分駄目だと思う。そんな優しい難易度のゲームだったら、俺も最初の洞窟で苦労しなかったし」

「だよね」

 他の誰かが来訪するまでは脱出する方法がないダンジョンを実装するゲームなんだから、そんな甘い事はない気がしてくるね。あの竜巻になっている状態が24時間以上継続されるなんてこともありそうだ。本当にもう自然災害みたいなものだな!

「もしかして、本当に自然災害、なんじゃないかな?」

「え?」

「モンスターが自然災害を引き起こしているんじゃなくて、自然災害がモンスターになった、なんて考えたほうが、面白くない?」


 モンスターの正体が自然災害? それは阿修羅と邪竜の正体が竜巻で、先ほどまでの姿は、それが化身になっているなんて考えか。…。面白い。面白い考えだなそれは。物を擬人化なんてさせたという絵なんかを見たことがあるけれど、それと同じような物か。

 で、そんな面白みはあるけれど、自然災害相手にどうしろって言うんだ。

「自然災害の今が本体だって言うのなら、エネルギーを使い切れば、化身の姿に戻ると思う」

「確かさぁ、台風だと発生から温帯低気圧に変わるまでって結構時間がかかったよね」

 勢力を強めながら移動して、上陸後は徐々に弱まり、最終的に収まるなんて流れだったはずだけれど、何日間待てって話になるんだ?

「何十時間も耐えろって言うのはない気がするね。それだとゲーム性が低い気がするし」


 プレイヤーに何十時間もの戦闘を強いる様なことがこのゲームならやりかねないと思うけれどそこまでやり続けるなんて無理だろう。安全装置が働いて強制的にログアウトされてしまうし。だとすると長くても数時間程度で終わるって事かな。その数時間にしたってかなりきついけれど。

「持久戦になるって言うのは分かるけれど、単に逃げ続けただけじゃ終わらない気がするんだけど」

 私もブッチと同じ考えだ。結局この竜巻は阿修羅と邪竜なんだから、そいつらを相手にしなきゃいけないというのは変わりがない。

 そこからまた戦うとなると更に時間がかかるし、大変だ。

 それにしても、なんだかなぁ。人間の大陸にいると、どうにも全力で戦えないことが多くて嫌になってくる。


「…あぁそうだ。寿司ちゃん。全力を出せばあれを止められるってことでいいよね?」

「まぁ、ね」

 その通りなんだけど、その全力が出せないから困っているというわけで。

「俺も全力を出せばあれを止められるんだけれど。それはそれで問題が起きそうでね。ほら、俺って種族がさ」

 何のことを言っているのか最初は分からなかったけれど、そういえばブッチって、サイコロプスだけじゃなくてヴァンパイアロードでもあったんだ。すっかり忘れていた。その力があれば、あの竜巻をなんとかできるってことか。それをなんとかしないって言うのはなんだろう。

「力を使うのはやぶさかでないんだけれど、どうにも気乗りがしないって言うか。元々の自分の実力じゃない気がしてきてさぁ。やれることはやれるんだけど。うーん。」

 サイコロプスの力だけでなんとかしたいってことか。贅沢な悩みだな。なんて言えないか。私だって私の我儘で全力を出していないわけだし。


「じゃあどうするか考えるしかないね。お互い」

「そうだね! 頑張ろうぜ!」

 …何も思いつかないんだけどね!


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