第425話「般若レディは暴れたい」
すみません。423話から425話まで加筆修正作業中です。
一旦投稿だけしますので、この辺りの話はあとで読んでいただくことを推奨します。
申し訳ございません。
1/21 423話~425話一部訂正しましたので423話から読むことを推奨します。
なお425話を作成中力尽きたので、本日夜に訂正しようと思います。
※追記しました
魔者の力を操る私と、火と雷を操る阿修羅の戦い。どちらに分があるのかというと、阿修羅に決まっている。私のやっていることは、セルフハンディキャップというか、将来を見据えているため完全な本気で戦っていない状況だからだ。
私もこの状況不満だらけなんだよなー。でもどうしようもないしな! こうまで頑なに般若レディに戻りたがらないのも、これまでのゲームとかで、実はどこかで監視していましたとかそういうところで情報漏洩していたりするのをうんざりするくらい見てきたから。
私は、そう、私は絶対にここで監視している奴がいると思っているんだ。阿修羅がここにいたのも、もしかすると誰かが私にぶつけようとしてきたのかもしれないし。
マオウペンギン率いるモンスターの国陣営、邪馬台国陣営、ナテハ王国とプレイヤー陣営、そして最後に謎の組織とかがここで私の動きを監視しているに違いない! 自意識過剰なんかじゃ絶対にない! と、思いたい。
誰とも敵対せずに、もうちょっと落ち着いた感じでゲームがプレイ出来たらいいんだよなあ。なんかそういう、可愛い動物と触れ合うみたいな。あ、たけのこを最近もふもふしていないなってあーもうこういうことは後で考えよう! 今は阿修羅に集中!
「うおオッ! 道化よ! 死ぬがよい!」
阿修羅がやってきているのは単純な体当たりだ。炎と雷を纏って刀で斬りかかってくるだけの体当たり。一方私? だからね。鎌一本ですよ。この鎌。これだけで戦っているの。かっこよくないか私。凄くないか私。
あ、そういえばこの鎌の情報は既に漏洩しているかもしれないのか。まあそのくらいはしょうがないか。
「だーっ!」
敵が真っ直ぐに体当たりしてきたらどうしますか? というわけで、当然かわす。真横にジャンプしてかわした。私に向かって一直線だったので、当然ぎりぎりのタイミングでかわして無事回避終了。受けて立つなんて騎士道精神には溢れてないどころかそもそも私は騎士ではないので、相手が放ってきた一撃を受けるわけもない。
「道化。お主は臆病者なのだな」
すぐにこちらを振り向き、威圧的な態度をとってくる阿修羅。とっくにご存じだったんじゃないのか。なんなんだこいつ。ボケてるのか?
「逃げる。まともに戦うつもりもない。かと思えば我に強烈な一撃を浴びせてくる。お主、何がしたいのだ?」
いや、お前を倒そうとしているだけなんだが。まぁこの状況だと全力で倒そうとしているって思われないだろうな。
むしろこいつが私の事を察して、絶対に誰からも見られない場所に連れて行くとかなら分かるんだけどなあ。そうはいかないだろうし。
私は肩をすくめるジェスチャーだけやった。
「何か理由があるということか。だが、我もここで負けるわけにもいかん。貴様にはなんとしても死んでもらうぞ」
ひどい、あんまりだ! ってそれがいけないんだよこの阿修羅! 何がしたいのか? 私を生かして放置しれくっての! それだけで良かったのにこいつぅ! まぁ今更それが叶う事は絶対ないんだろうけどね。ブッチが邪竜を始末してしまったし。はぁ。
鎌を強く握る。何度も強く握ってきた。そろそろ決着がつけられないだろうか。何か打開策を考えなければこのまま戦いは終わらない。考えろ、考えろ私。
阿修羅の方が圧倒的に有利なこの状況で、できる事。それは何か。それは。そして一つ、思いついたことがある。いや、でもそんなこと可能なのかどうかということだ。いや、でも私ならなんとかなるだろう。何とかしなきゃダメだろう。ちなみにブッチには頼らない。そんな方法が1つある!
「こ、これだぁっ!!」
私は、阿修羅に背を向けると走り出した。もうこれしか方法がない。これだけしかやれそうなことがないと判断した。
「この期に及んで逃げる、だと!? ふざけるなぁ!!!」
当然そんな事を許さないと言わんばかりに阿修羅が突進してくる。よし、まずは狙い通り。というわけで私がきっとできる思ったことをやる。時間がないが、なんとしてもやるしかない。
「どっせぇぇ!」
阿修羅にすぐに追いつかれそうになっているこの状況で私は、目の前の赤い木を、鎌でぶった斬る。そして更に、どんどん移動して木を切り倒していく。
こうやって木をどんどん切り倒していき、防護柵ではないけれど、こいつの攻撃から逃げのびながらも倒れる木で攻撃する作戦だ!倒れ切った時に地面に衝撃が走るし、障害物にもなってくれるので、悪くないやり方だ! こいつの突進がどれだけの威力を誇っていても、邪魔なものが沢山ふえれば威力が軽減されていくだろう!
この赤い木は前回来た時も散々切り倒したから素早く切り倒すコツを覚えたんだ! その経験が生きている! 世の中結構無駄な事なんてないんだなと思い知っている! おりゃああ! このまま沢山切り倒していくぞー!
「く、くだらん! 何なのだ!! こんなもの! なぜ燃えつきない!?」
火耐性がある木みたいだから阿修羅が纏っている火でもあまり効果がないみたいだ! ふふふ。それも狙っていたんだよ! やったね! 雷の方はどうかと思っていたけれど、それもあまり意味をなしていないそうだ。なんだこの木、まるで私を守ってくれているかのようじゃないか。
「道化。これを知っていたな!?」
知っていたからやっているんじゃないか。いやぁなんか色んな偶然が重なっただけなんだけれど、こうも上手くはまると最初からこういう風になるために私は頑張ったんじゃないだろうか。無駄にきこりをしていたことがこんな形で役に立つなんて思わなかったよ。
やっぱり、経験や情報って凄いものになるんだよな。だから私はこの戦いが誰かに見られてその情報を取られるかもしれない事を恐れているわけだし。
敵の弱点を知っているのと知らないのとでは大違いだし、何でもそうだ。情報を制するということは、戦いをより有利に進められるようになるんだ。今回の件で身に染みて分かった。やはり般若レディや魔者の正体がばれないようにしていかなければ。相手に何も知られない、知らせないって言うのはかなり重要だ。
「こ、小賢しい真似を!!」
阿修羅が次々と倒れた木を斬り裂いていくが、それでも私の方が早く斬ることが出来た。依然として阿修羅は膨大なエネルギーを放出しているが、大量の木々を吹き飛ばすだけの力はないようだった。私としては、こんな木くらい簡単に吹き飛ばせるんじゃないのかと思っていたけれど、火、そして雷にも耐性がありそうなこの木は阿修羅にとっては、天敵のようだ。
「このような、このような事をこの我にするとは、道化。貴様絶対に許さぬぞ!」
その時、森全体の空気が変わったような気がした。阿修羅の奴、まだ何かしでかすつもりなのか? あ、しまった。こういう敵って追い詰めると更に強化していくのが定番だったじゃないか。やりすぎてしまった! そうなる前に攻撃を仕掛けておくべきだった! うわーまたいつもの私のミスじゃないか! 嫌な予感しかしない!
「邪竜よ! 再びその姿を現せ!」
何を言った! こ、こいつまさかまた邪竜を呼び寄せることができるってことか。それは狡くないか。私に戦えって言うのかお前らと!? ブッチが倒したはずなのに!? えー。そこはブッチがなんとかしてくれるべきじゃない!? こればかりはちょっとねえ。
「グォオオオオ!」
邪馬の森上空に真っ黒な歪みのようなものが出現した。そこから姿を現していくのは、邪竜だった。げぇー。それはないでしょう!? でもできる事は木を切り倒すことだけだからこの場はそのまま斬り続ける!
「邪竜よ! 我が力となれ! この道化を滅するぞ!」
何か聞こえてくる! ああもう絶対嫌な予感しかしないっての! 何をどうするつもりだ!
「ねっこちゃん! 流石にこんな面白そうな戦いは俺も参戦していいよね!?」
「いいよ! こりゃあもう二人がかりっきゃないでしょ!」
割と近くにはいたらしいブッチから声がかけられた。やったぞ! ブッチが協力してくれればここから逆転可能だ。行ける! 勝てる!
「もうこんな戦いさっさと終わらせたいんだよ私も! だから大暴れしてやるよ!」
「おおー!? いつになくやる気じゃん! よっしゃ! 頑張ろうぜ!」
そりゃあ好戦的にもなるよ。なるに決まっているよ。だってさ。
私がこいつと戦うメリットあるの? ないよね? 正直ないよね? でも戦わざるを得ないって感じじゃん。だから、大暴れするんだよおおお!