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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
423/473

第423話「阿修羅の本気」

1/21 訂正しました。

「それじゃあいっちょやりますかね」

 初めに鎌だけを持つ。久々の全力戦闘だ。ここ最近はどうも全力で戦っていなかったので、自分の実力を忘れがちになっているが、阿修羅に負けるつもりは毛頭ない。

「…結局その鎌か。そんなもので我に」

 私は、余裕を見せる阿修羅の懐に一瞬で入り、鎌で斬りかかった。勿論、黒薔薇の型で、だ。この力にどう反応を見せるのか分からなかったが、動揺した表情が見えた。

 阿修羅は私の動きに、咄嗟に反応して刀で防御をするが、黒薔薇の型の一撃は、その防御を弾き飛ばした。思わずよろめいた阿修羅に対して、私は再度鎌を振るっていく。

 黒薔薇の型で赤黒く光っている時は、射程範囲も威力も大きく向上する。こうなれば、6本の腕から振るわれる刀だろうが、魔法だろうが、一気に消し飛ばせるくらいはできる。だから私はこの鎌が好きなんだ。


「それは、ま…魔者の力か! 面白いぞ! くはははは! まさかそのような力を隠し持っていたとは! ふははは! では我からも行くぞお! うおおおお!」

 阿修羅が高揚している。そんなこと知ったこっちゃない。ひとまず私はこの鎌だけで戦うと決めている。これでどこまでやれるのかが問題だ。

 魔者の力が具体的にどういうものなのかはよく分かっていないけれど、強い力って事が分かっているから今はそんな理解でいいだろう。

「いくぞ。爆炎撃!」

 阿修羅の刀が炎のような何かを纏っているのが分かった。わざわざ爆炎とか言うんだから危険だというのが分かるじゃないか。何を言ってるんだこいつ。必殺技なのか知らないけれど、そんな子供みたいな事をするのはブッチだけだぞ。ああ、スキル名を言わないとやっぱり駄目ってことなのかな?

「!」

 阿修羅は先ほどまでの動きの癖と全く動きだった。だからそれは慣れたってのと思いつつ、これまで通りかわした。そこで更なる追撃があると予想したが、攻撃はされなかった。なんだこいつ。本気で戦うつもりはないって事か、なんて思っていたらそれは違った。


 阿修羅の持っていた刀が纏っていた、激しく燃え盛る炎がいくつも私に襲い掛かってきていたからだ。そうか、これは刀を振るうだけでこちらに飛んでくるということか。接近戦をそのまま仕掛けてきて、外れても即座にこちらに飛んでくるとか、とても嫌な攻撃だ。

 それにしても、こんな攻撃があるなら、最初に火の魔法を使ってくる必要もなかったってことじゃないか。さきほどまでは、手加減されていたって言うのは分かるけれど、最初からこれで来られていたらまずかったかもしれないな。

 私が動きを覚えて回避するかもしれないと予想しなかったこいつのミスってことだな。この炎による追撃は、私は最初に使ってきた魔法動揺私に追尾してくる。だとすればやっぱりこれまで通り、阿修羅と一定の距離を保って戦うのがいってことだな。できるだけ離れ過ぎないように注意しないといけないな。

「む。そうだ。お主の名を聞いておこう」


「私の名前は、阿修羅は馬鹿ですって名前だよ。ほら、呼んでみな?」

 こんな訳の分からない敵に自分の名前を教える奴などいないと思う。だから私は盛大に茶化すことに決めた。大体、名前を名乗ったらどこの誰なのか特定されてしまうじゃないか。そんなのは御免だ。私は、このゲームでの自分の身の安全のため、得体のしれない誰かということにしておきたいし。

「ふむ。我はそのような冗談は嫌いでな。意地でも聞きださせてもらうぞ」

 あ、なんか怒っているっぽい。3つある顔全部が不愉快そうになっているし。怒りは動きを単調にするって言うのが分かっていないのかなこいつは。私にとっては凄い都合がいいことだけどね。

「阿修羅は馬鹿です! 阿修羅は馬鹿です! 阿修羅は馬鹿です!」

 子供かよという言うくらい、連呼する。私もこれは酷いと思いつつも、こういうことをしてみたくなったのでする。


 普通、こんな戦場で敵とぺちゃくちゃ喋るわけないし、もし敵と遭遇したら罵詈雑言くらい吐かれて当然だと私は思っている。なので、これくらい平気でやる。まぁこんなことやりそうなのは私くらいな気がするけれど。

「すげぇ!? 俺にできねえことを平然とやってのける!」

 ブッチが遠くで何か言ってるのが聞こえたが無視だ無視。それよりも私はここで怒り狂ってそうな阿修羅の猛攻に耐えなければならない。

 まぁ今は片手で薬草が食べられるのでそこまで不安はないんだけれど。

「我を愚弄するとは良い度胸だ!」


 私の眼前に、阿修羅の刀が迫ってくる。6本の刀全てが炎を纏っている。それが6方向から私を斬り刻もうとしていた。だけど。

「でええりゃああああ!」

 私は、鎌を両手で持ち、黒薔薇の型を全開にしてみた。すると予想していた通りの事が起こった。いつも以上に赤黒く輝いていたのだった。それだけではなかった。バチバチと黒い電気のようなものが発生する。

 最近思っていた事なのだが、スキルはどちらの手でも使うことができる。だとすれば、両手で使えば威力の向上が狙えるんじゃないのかと思ったんだけれど、成功してしまった。こんなに上手くいくとは思わなかったが、出来てしまったのだから、それでいいと納得する事にした。


 私は隙だらけになっていたが、鎌を大きく振った。サイズはそこまで大きくはないので、刀全部を受け止められはしないと思っていた。まぁいくつかは甘んじて食らおうと、覚悟して特攻した。これでようやく阿修羅にダメージを与えられると思ったからだ。

 ちょっとやそっとのダメージなら薬草で回復できる私だからこそやれる戦い方だ。

「ぬ。お。おおおお!」

 やはり、阿修羅は二本の刀で私の攻撃を受け止めてしまった。剣と鎌がぶつかり合う衝撃で、私はのけぞりそうになったが、なんとか持ちこたえた。だけど、その隙を狙って残りの4本の腕が私を切り刻もうとしてきた。

 刹那の瞬間、私は失敗したと思った。私は両手で鎌を振るう事で、阿修羅の刀を破壊できると予想したのだが、そう上手くはいかなかったようだ。破壊できなくても、これだけの赤黒く輝いているのだからかなりの威力を発揮して、阿修羅を弾き飛ばすくらいはしてくれるものだと思い込んでいた。

 だが、そうはいかなかったようだ。このままだと4本の腕から襲い掛かる刀がぶつかり、私は致命傷を負うかもしれない。そして、実際に、一本の刀が私の右肩を斬っていく。あぁくそ。やられてしまった。なんて思ったが、最後まで悪あがきするのが私だ。

 一瞬のミスが命取りだろうが、絶対に諦めない。最後まで戦う。それが私のゲームプレイスタイルだからだ。

「終わりだ」


 終わりなんていつも味わってきたっての。だけど、その度に乗り越えてきた。ゲームが下手だったから、何度もプレイしないと上手くならないんだよね私は。これだって、将来的に勝つためのいい経験になると思っている。

 ちなみに将来的に勝つというのは遠い未来とかの話ではない。今この瞬間にこいつに絶対に勝ってやると私は思っている。気持ちで負けるつもりがない。

「死、んでたまるかあああ!」


 普通のゲームならこういう時あっさりゲームオーバーになるんだろうけれど、VRゲームだし、諦めなければなんとかなるんじゃないかという気持ちが私にはあった。そして、そんな私の期待に応えたかのように、鎌がより一層赤黒く輝いていた。 目の前は真っ赤にしか見えないのに、黒くも見えると言う事は、この場所の力を大きく上回ったということなんだろうか。

 何かが起きたということだけは確かだ。この状況を打開しうる何かなのかは分からないが、こういうまずい状況で何かが起きるということは絶対に起死回生につながるような何かだと私は思った。


 そしてそれは実現する。私の持っていた鎌から、黒い球体のようなものが発生した。全てを吸い込んでしまいそうな漆黒の球体。突然現れたそれは阿修羅の体を包みこむと、私の肩を斬っていたはずの刀が、一瞬のうちに、弾け飛んでいった。何が起こったのか分からなかったが、何かが起こったことだけは確かだ。

 鎌が、あるいは魔者の力とやらが奇跡を呼んだのかと思ったけれど、実際にそうなのかはさっぱり分からない。だけど、この効果は絶対に私とそして鎌の力に違いないと、私は確信していた。

「おおおおおおおおおお!?」

 絶叫を上げる阿修羅だったが。

「うああああああ!?」

 私も思わず絶叫を上げた。だって突然、この黒い球体が人型のようになって、阿修羅の肩に噛みついたからだ。な、なんだこれ。おばけか何かか!? これは、鎌に宿っていた何か!?

真っ黒い人型の影というかおばけというかなんと言えばいいんだろうか。それは、阿修羅の肩を噛みつき、そのまま離れなかった。阿修羅はそれを引き離そうとするが、それには一切触れられなかった。一体どういうことなのか私にも分からなかったが、薬草を食べて落ち着くことにした。このタイミングで食べるのはどうにも間抜けな気がしたが、相当ダメージをくらっているはずなので、食べなきゃ死ぬと判断した。

 でもこれ、斬られた肩の傷も薬草食べれば直るのかな。こういうところの設定がどうなっているのか分からないけれど、一瞬で治るのであれば助かるね。

 ここまで攻撃をくらったことがないせいか、どうなるのかが分からないってのも問題だな。今後は適度に敵の攻撃を受けてみて、自分がどこまでやれるのか判断していかないといけないな。


「な、んだ、お主は」

 便宜上、黒い影とでも言おうか。そいつは阿修羅に噛みついているのだが、阿修羅は黒い影に何度も触れて引き離そうともがくが、触れることができないようだ。一方的に攻撃ができるのはずるいくないかと私は思ったが、そういう攻撃方法はある意味理想なので、そのままやってしまえと思った。

「うおおおお! このようなものに屈する我ではないは!」

 阿修羅が黒い影とそして私を睨みつけてきた。おぅおぅ、ようやく本気になってきたか。さっさと私の元から去れば見逃してやったものを。私に絡んできたからこういうことになるんだぞ! その報いを受けるがいい! というわけで、黒い影よ頑張ってくれ!


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