第415話「邪魔ばかり入る」
414話追記しておきました。
415話も追記しました。
ブッチは、結局、柔道着の男を捕まえてぼこぼこにしていた。柔道着の男は、為す術なくブッチの張
り手をくらうのだった。
私もちらちら見ていたけれども、やっぱりブッチには敵の攻撃は当たらないの不思議過ぎる気がした。回避しすぎなんだよ! どれだけ回避したら気が済むんだこいつ。
「あの、ちょっとすんません。タンマっす! あの! もう許して下さい!」
それを絶対許さんと言わんばかりに、ひたすら張り手で柔道着の男の全身を攻撃しけた。なんだかちょっとだけ、柔道着の男に同情してしまった。
「うぐぐ。なんでその装備がかっこよかったからおってきただけなのに。酷い!」
酷いのはストーカーするお前らだろう。出会ったばかりの人の近くに延々とうろうろするんじゃない。あと自分の目的のために人に犠牲になってもらうみたいな事言うんじゃない! お前は何なんだ! 服が欲しいなら自分で作れ。そして買えと。
「そっちの人はどう!? 意外と俺の事フォローしてくれたりしている気がするんだけれど!」
はああ!? んなわけないだろ! アホ! 私はむしろ好感度がダダ下がりで早く消えて欲しいっての!
「…」
「おっ!? おい。」
ブッチは、柔道着の男の首を掴んで体を持ち上げた。何をするつもりなのか私にはさっぱり分からなかった。
「ま、さか!?」
柔道着の男は何かを悟ったようだが、私には分からなかった。何をするつもりなんだろうか。だが、その光景をじっくり見ていいるうちに、一つの結論に達した。
「…」
窒息させるつもりか。そういえば水の中に長時間いると死ぬゲームなんて昔はあったっけ。むしろ死なない超人が出てくるゲームも多かったけれど。<アノニマスターオンライン>では、どうなんだろうか。ソルジャーゼブラ、懐かしいな、あのしまうまを窒息させた日がつい昨日のことのように思い出せるんだけれど、あれはモンスターだったからいけたのかな。プレイヤーにも、というか人間プレイヤーにも有効なんだろうか。
「ぐぁぁぁ。やべぉおおお」
柔道着の男は、じたばたと暴れだすが、ブッチは意に介さず首を掴んだままだった。
「なんでぇぇぇ」
そりゃまぁ攻撃を仕掛けてきたわけだしなぁ。明らかにマナー違反だろう。そういうプレイヤーにはお仕置きを…ってこのゲーム以外では結構な頻度で遭遇してきたっけなあ。
倒して、倒されての関係で友達になった人もいたのを覚えている。プレイヤー同士で戦っているうちに、よく出会ったせいかいつの間にか仲良くなっていたなぁ。
「おぉおぼえてろぉお」
こいつとそういう風になるかどうかは別だけど。覚えてろとか言ってるみたいだし、もしかしたら、ここで窒息死するっていうのは気づいているのかもしれないな。でも、このゲームでその設定もありなんだろうか。
例えば、プレイヤーは病気にかかるなんてこともあるのかな。風邪を引いたとかインフルエンザになったとかそういう設定があったらそれはそれで面白い気はするけれど。
リアリティを重視するのであれば、そういうのもあっていいかな。あ、でもそうなると年齢とかもゲームをプレイした分だけ増加ってなっちゃうか。そのあたりは、どうなっているのか分からないけれど、知りたくなってきたな。
「う。ご」
しばらく待っていると。最後に一言だけ喋り、柔道着の男は事切れる消失した。
「この倒し方、面倒くさい」
「うん」
時間がかかるしなぁ。だけどそういうじっくりじわじわ相手を倒す戦い方だって、悪くはない。私なんていつもそんな感じで、楽に倒せたことなんてないしなあ。
もっとこう、気軽な感じで敵を倒せるようになりたいもんだよ。無双とでも言えばいいのかな。もっと楽に戦いができるようになれば、私も心配事がなくなるのになあ。
「敵がきた」
気配感知で引っかかった。敵が3匹。プレイヤーなのか、モンスターなのかは分からないが、警戒するしかない。敵は北側からこちらに近づいてきているので、私はブッチに指で方向を教えた。
今回は、何が来てもブッチがいるから余裕だと思うけれど、私だけ何もしないってわけにもいかない気がしたので、とりあえず鎌は取り出す。
ブッチは、突然走り出した。私が示した方向へと。私も一緒に走る。先制攻撃だ! 近づいてきた敵に攻撃を仕掛けるのだ! 問答無用だ。こっちに向かってきているから気づいていそうだけれど、とにかく先制攻撃。
敵の姿が見えた。あれは、角が生えた人間ってことはプレイヤーかもしれないのか。あ、おい待ってブッチと思ったら、角が生えている人間三人も武器を構えてブッチへと突撃していく。
あの武器は、刀か。ブッチは刀を構えた姿を見ると、一旦後ろに引くのだった。
「貴様、何者だ!」
「そのような仮面をつけて襲い掛かってくるとは」
「我らに手を出した事後悔させてくれる」
「あー、やめやめ。ごめん。やっぱり俺、これ向いてないので解除する!」
と言い放つとブッチは、元の力士の格好に戻ってしまった。あー。まったくもう。折角変装させたのに、これじゃあ意味がないじゃないか全く。
「な、に!?」
「武器を持ってるし、じゃあ俺もこれ、使っちゃうか。」
ブッチは、赤鬼の金棒を取り出した。私があげたやつだけれど、デザインがすごい気に入っているようだった。というかあんなでかいの持ち上げられるとかやっぱりすごい力があるんだなあブッチ。
「…こいつ」
「ええ、かなり強いと思われます。ここは本気を出さないと、私達もまずいです」
「あの金棒を軽々と持っているとは」
あ、私は無視されているっぽい。いいんだけどね! というかむしろそっちの方が好都合。雑魚と思われているんだったらそっちのほうがいい。
「おいしょ!」
ブッチが金棒を野球選手が持つバットのように振った。ええ、なんだよそれ。ちょっと私が期待していた戦い方じゃないぞ!
「ぐっ!」
3人は一斉に飛びのき、ブッチの攻撃を回避した。跳躍力が高そうだ。
「はっ!」
「!」
私に気が付いていない振りをしていた一匹が刀で斬りかかってきたので、鎌で防御した。ふざけるな! こんなか弱い般若レディに、そんなぶんぶん刀を振り回してきていいのか! 銃刀法違反だぞ!
そんでもってこっちが持っているのはただの鎌だぞ! いい加減にしろ!
「あなた、私の一撃を受けるとはなかなかやりますね」
「いえ、今の一撃で私程度を仕留めきれないなんて、だめです。」
煽る。挑発に乗るかどうか、分からないが煽った。あれ、この角の生えた人、多分女だな。ということは、ここは女同士の戦いか。
「ふざける人は嫌いです。ここで死んでもらいますよ!」
…こうして、頭に角が生えた女対般若レディの戦いの火蓋が切られたのだった。