第397話「邪馬の森」
明日多分追記します!
12/24追記しました!
「ブッチさんが何て言ったか分かりますよね?」
「どうせ、ここは俺に任せてくれ! とかじゃないの?」
「そうなんですよ! やっぱりそういう展開って燃えますよね、って話をしたいのではなかったんですが、ブッチさんだけ突撃しちゃったんですよ。」
「そらそうなるやろ。」
というわけで、邪馬の森とか言う場所に私達はいた。ナテハ王国の北西のあたりにある森なのだが、転移石で登録されたのがその名前だった。エリーちゃん達が転移石で既に登録してあったので、その転移石を借りて移動した後に私が持っている転移石でも登録という手順で登録をした。
で、この森にそびえ立っている樹々なんだけれど、どれも30メートルぐらいの高さはあるように見えた。大きいなあ。でも大きさは問題じゃないんだよなあ。
ここにある全ての木が、幹に枝に葉に、その全てが真っ赤な色だったので、なんか呪われてそうな気がするんだよね。そこら辺に生えている草は普通に緑だの何だの色がまちまちなのに、何故か木だけが真っ赤なのが不気味に思えてならなかった。この木だけ生きているなんて言われてもおかしくなさそうだよなあ。
今まで森の中になんて散々入ってきたけれど、ここは長居したくないなあ。
「それで、ここでプレイヤーに会ってしまったと?」
「ええ。いきなり、おい女ついてこい、これからたっぷりかわいがってやるとか定番の気持ちが悪いことを言い出したので、衝動的というか突発的に魔法をぶっ放してしまったんです。ごめんなさい。」
それはしょうがない。気持ちが悪い。私でもうっかりやって、いや確実にぼこぼこにしているな。気持ち悪さがとんでもないし。
「ねこますサマ。タクサンノ、ニンゲンタチガ、オソイカカッテキタノデ、ワレワレモハンゲキシマシタ。」
「うん。それはおっけー。先に気持ちが悪いことをしてきた連中が悪い。よって一人残らずあの世行で良かったね。」
「それが、どんどん増援が増えてきたので、そこでブッチ殿が、ここは自分に任せろと…。」
くろごまも他の皆も少し悔しそうにしているなあ。ブッチ一人に任せたのを気にしているようだ。
毎度のことだし、ブッチならなんとかなるだろう。だけど、大量にいるプレイヤーを相手に、果たして一人のプレイヤーが相手にできるものなんだろうか。私が前にプレイしていたオンラインゲームなんかでも一人が沢山のプレイヤーに勝つなんてとても難しかったんだけどなあ。
まぁ<アノニマスターオンライン>はVRゲームだから正確には違うけれど。それに、これまでだって実際に沢山のプレイヤーを倒してきたのがブッチだもんなあ。一体どうやったら多数のプレイヤーに無傷で勝利できるんだろう。
「他のプレイヤーと遭遇した時の話とかしてなかったから言っておくね。今回みたいに意味不明な事を言ってきたり、攻撃をしてきたりした場合は、反撃、相手の命も取っていいよ。」
お調子者っぽく、へい君ぃ! 付き合わないかい! みたいな感じで言うのならまだしも、最初から気持ちが悪い言い方をされたら即攻撃してもいいと言うのが私の判断基準だ。
「あと、なんか腹が立ったり、こっちから攻撃しないとまずいなんて思ったりした時もいいよ。」
「それは、つまり自己判断で攻撃をしてもいい、ということなのでしょうか?」
「サンショウの言う通りだよ。みんな、私が目立ちたくないと言うようなことを言ってるから気にしているみたいだけれど、それよりも命の方が大事だからね。人間は狡猾だから油断したら即死するくらいの覚悟を持って戦わないと死ぬよ。」
現実でも人間に騙されるなんてことはしょっちゅうあることだしなあ。ゲーム内でだってそれは同じような事だし。
「それで、ブッチニキは助けに行くんか?」
「行かないよ。ここは俺に任せてって言ってるくらいなんだから、そこで来られたら恥ずかしいだろうし。」
「ブッヂドノナラ、シンパイハイラナイデショウ。」
「ソモソモ、ニンゲンニ、コウゲキヲアテルシュダンガアルカドウカ。」
あのサイコロの目があってもプレイヤーの使うスキルだったらどうなるのかなーって思うんだよねえ。あ、それで思い出したことがあった!
「そういえばこの件で思い出したんだけれど、私もみんなと戦闘訓練とかしたほうがいいのかなあ?」
唐突な話になってしまったけれど、リーダーなのに、私はみんなよりも弱い気がしていたので、もっとみんなと戦って強くなった方がいいんじゃないのかなぁと思って聞いてみた。
「え!?」
すると、なぜか全員が驚愕した。 え? 何々? なんでみんな緊張した顔で私の方を見てくるの。一体どうしたんだ? 私は何かおかしなこと言ったかな? 私程度と訓練するんだったらみんなそんなに辛い事にはならないだろうし。むしろ私の方がきついと思うんだけれど。
「ねこます様。今度、我と戦闘訓練をしてみますか?」
「おお! サンショウありがとう。重力魔法をかわす練習もしてみたかったから頑張るね。」
「ご冗談を。ねこます様なら簡単に回避してしまうでしょうに。ははは。」
ははは。じゃないっての。そんなブッチみたいな動き無理に決まってるじゃないか。全くもう。おっと、話を脱線させてしまったな。戻さないと。
「えーと。ねこますさん。ブッチさんは、ここからしばらく西の方に向かったと思うんですが、私達はどこに行きます?」
おっと。そういえばブッチの事は自分でなんとかしてもらうことになったので、ここからは私が仕切ってどうするか決めないといけなかったのか。
「じゃあこの森を北に進んでみようか。北にモンスターの国があるとか言うのが確定したからね。正確な位置は分からないけれど。」
「ねこますサマ。サスガデス。」
いや、先生から教えてもらっただけだからそんな褒めないでくれたけのこ。おおよしよし。あぁこのもふもふ感が久々で最高だなあ。
「それで…あーと。」
ひじき。今大丈夫?
(母上。ええ。なんとか。)
実は、この間の戦いで人化したひじきだったけれど、一旦私の精神に戻すことにしたのだった。何故かって? それはもうひじきから、人見知りだから無理ですと言われてしまったからだ。確かに今までみんなと話してこなかったけれどさぁ。
(母上もいきなり知らない人たちの中に投げ込まれたら分かりますよっ!)
会話が続かないよねー。というわけで、しばらくはちょっとずつ出すことに決めたのだった。まぁひじきもどっちかというと、いつでも私の傍にいてくれたほうがいいしね。
(ええ。そうです。私はまだ母離れ出来てないんです!)
…まぁちょっと拗ねているけれどこれはしょうがないか。
「ねこますさん。それじゃあ北に向かうって事でいいんですね。」
「おーけー。それじゃあ行こうか。」
「ワイに任せてくれやで!」
お、久々のだいこんの巨大化だ。…なんか前よりも大きくなっていないか?
「ふっふっふ。ワイも特訓して、強くなっているんやで。」
「ホホウ? デハ、ワタシモノセテモラオウカ。」
「あっ!? こら、わんころ。お前は歩けばいいやないか! ってコラァ!」
文句を言いながらも、たけのこを背中に乗せてあげるだいこんだった。というか大きくなったたけのこも乗せられるサイズになるなんてなあ。それはそれで目立ってしまうんだけれど。まぁいいか。
「ほな!全員乗ったらみたいやし、さぁ行くやで!」
「あっ。おい。ワタシがまだ乗ってな。」
「ワイの真の力を見せたるやでええええ! ワイのぐうすごい勇姿を見るんやでええ!」
「オイ!? だいこん!? ねこますサマガ、ノリコンデイナイゾ!?」
「行くやでえええ!」
そうしてだいこんは、私が乗り込む前に、そのまま一直線に突き進んでいったのだった。
(母上…。)
あー。しょうがない。多分みんなの前だから張り切りすぎちゃったんだね。特訓の成果を見せてやるってずっと言ってたし。はぁ。全くもう。私はゆっくり歩いて追いつくとしようかな。なんて思っていたけれど、気配感知に何匹かひっかかってきているな。これは、プレイヤーの可能性も高い。
こっちに近づいてきているな。嫌だなあ。人間化してもきっと面倒くさいことになるだろうし。ここはさっさと。
「土潜り!」
こうやって土の中に潜って隠れてしまえば問題なく移動できるから大丈夫だな。後はエリーちゃんにメッセージ送っておかないとな。こっちに戻ってきちゃったら、プレイヤーかモンスターのどちらかに遭遇する事になってしまうだろうし。
(母上は、人間達と戦わなくて良かったんですか?)
今の目的が、モンスターの国を探すことだから面倒くさい連中の相手はしたくないんだよね。といっても、ここにいる連中が、もしかしたらモンスターの国を知っているかもしれない可能性はあるんだけれど。
仮に知っていたとしても、教えてくれなさそうだしなあ。教えてくれないと倒すって脅したとしても、デスペナルティの方を選びそうな気がするし。それなら、無視したほうが良さそうだ。
それにしても、ひじきがいてくれるってだけで安心感があるなあ。本当の意味で私一人だけになったら心細かったよ。
(そうですか。では私も一人にはしないでくださいね…。)
う。うん。それは分かっいるって! これからは私といつも、四六時中一緒でべったりな感じでよろしく!
(ちゃんと声もかけてくださいね!)
おーけーおーけー。ママを信じなさい。ってあ。地上にいる連中おろおろしているなあ。私が急に消えたからだな。やっぱり私のいる位置が分かっていたって事なんだな。こうなってくると。気配遮断みたいなスキルも欲しくなってくるなあ。
敵にバレずに行動できるようになりたいものだ。
(母上なら、そういうのが得意そうな気がしますが…。)
こっそり動くのは好きだからねえ。とはいえスキルにはないしなあ。あ、スキルが無くても練習してスキルみたいにしてみるか。よし、それもこれからの課題だな。というわけで、そろそろ進もう。ひたすら北だ。このまま一直線!