第395話「先生の授業」
明日追記します。
12/22追記しました。
「そういえば先生。先生の他にも有名な錬金術士がいるみたいですけれど、先生以外ってろくでなしだったりします?」
<アノニマスターオンライン>にログインして、疑問に思っていたことを先生に聞いてみた。
「…。何か棘がある言い方だけれど、何か嫌な事でもあったの?」
「今更ですけれど、先生のところに来る前にトルオって錬金術士の所では10万スター出せとか言われました。」
その後すぐ半額の5万でいいとか言われたんだっけ。思い出しただけで腹が立ってきたなあ。
「ああ。あいつは自己顕示欲が強い金の亡者よ。ろくでなしの中のろくでなし。」
先生は呆れた感じだった。そうか、ろくでなしだったのか。弟子にならなくて良かったな。
「あ~。つまりねこますは最初、あいつの弟子になろうと思ったわけ?」
「いえ。本命は闇でしたよ。光は、回復効果というか、蘇生なんかできたら便利かなぁって思っていただけなので、軽く教えてもらえるならいいなーって思ってました。」
「そ、そう。闇が本命って言うのは嬉しいわね。でも回復効果が欲しいなんてどうして?」
「回復魔法が使えるメンバーがいないからですね。薬草を持っていても、それぞれが食べなきゃいけないので。」
そもそも<アノニマスターオンライン>に回復魔法があるかどうかも分からないんだけれどね。
「えっ? サンショウに使わせれば良かったんじゃない? だいこんが寝ぼけて壁に頭ぶつけた時に使っていたわよ。」
「は?」
私は、思わずだいこんを見た。え、何だこいつ。どうしてそんな重要な情報を隠していた!?
「ファッ!? え。どうしたんや姉御。」
「どうしたもこうしたも! サンショウが回復魔法を使ったってマジ!?」
「せやな。あいつもできた奴やったやでえ。」
サ、サンショウ!!? ボケたおじいちゃんかっ!? というかリッチとかなんかそういうアンデット的な奴がそんな回復魔法使えるとか普通ないでしょ!? ああもう! だめだ! このゲームにそういう一般的なゲームと同じような事を照らし合わせちゃいけなかったんだ!
「き、聞かなかった私が馬鹿だったって言うのもあるのでサンショウもだいこんが悪くないのも分かっているんだけれど、サンショウうううっ!」
「お、おおっ。姉御がなんか激しく燃え盛っているようやで。」
「あれがやり場のない怒りを抑えつけているって事よ。」
ちゃんと。ちゃんとみんなで話し合うことにしよう。そういえば前もそんな事やろうと思っていてしっかりやっていなかった気がする。だーっ。こういうのを間抜けって言うんだよなぁ。私も何やっているんだか。はぁ。
「ねこます。回復できる道具を作る方法も教えてあげるから元気出しなさい…。」
「せ、先生!! ありがとうございます!」
そ、そうだ。今みたいにサンショウとは別れて行動する事だって結構あるし、道具があれば、サンショウだけに頼るようなことがなくてもいいようにできるじゃないか。結局サンショウにだけ回復を任せていたら、それが弱点になってしまうかもしれないし。
「でも、それはそれとして、情報共有が大事なのにしていなかった私達のダメなところが発覚したのでそこは全員で反省していきたいと思います。」
サンショウが回復魔法を使えると言う情報を知っていればわざわざ薬草を使わずともよかった時だってあっただろう。それと、もしも回復魔法が複数人に同時に使えたらそれこそ大分役に立っていただろうし。
「ワイも反省するやで。これからは姉御にどんどん報告するやで。せや、わんころがワイにもっと戦えるようになれとか言ってくるんやで! 酷いんやで!」
「あら? それならだいこんも戦えるようになればいいのよ。だいこんは割と魔法の素質がありそうな気がするわ。」
「おっ。良かったじゃないだいこん。私は錬金術を頑張っているところでだいこんは、魔法の特訓が出来るなんて最高じゃない。」
「ファーッ!? なんやてぇ。こ、これもあのわんころのせいやで! 悔しいンゴ!」
だいこんが悔しそうにしているが。これは朗報だ。魔法を使えるようになってくれれば、私の忍術使用の為の要因なだけでなく、戦闘中の補助をしてもらえるようにもなるし。
転移石を入手した今は乗り物としての役割が減少しつつあったけれど、これからも私達のための力になってくれるようになるのは大歓迎だ!
「だいこん。私も頑張るんだから、一緒に頑張ろうか。」
「しゃあないからやったるやで!」
「さて、それじゃあそろそろ、と言いたいところだけれど、ねこます。あなた他の3人の錬金術士の事は気になったりはしていない?」
「全然ないです。」
即答した。こういう時はもう少し他の錬金術について知っておいてもいいとは思うのだけれど、先に目的の道具を作ったりする方が優先だ。なので現状トルオやその他の三人の事などどうでもよくなってしまった。
「そ、そう。ならいいわ。」
「で、先生。称号を詐称するためのアイテムが作りたいんです。さらに言えば詐称しているということを更に詐称できるようなアイテムが作りたいんです。」
「称号を詐称? ああ、例えば私が闇の錬金術士じゃなくて魔法使いだとするような感じでいいのかしら?」
先生はすぐ分かってくれて嬉しいなあ。こんな感じでちゃっちゃと話が進むのはいいね。
「そうなんですよ。」
「あのねぇねこます。そういう事を私相手に言うってことは、あなたに何か特別な称号があるってことをばらすようなものなのよ。そうやって私を信用し過ぎるのはやめなさい。」
「えー嫌です。私の予想だと多分先生が5人の錬金術士の中で一番まともな人だと思っていますし。」
え? なんでそう思っているのかって? 先生はちょっと片付けが苦手だったりするずぼらさがあるけれど、それ以外は普通というか、研究とかが大好きなだけな人だと思うからだ。闇の錬金術が危険だとかそういうことも分かっておきながら制御するための方法を模索しているわけだし。
「あぁー。そういう恥ずかしいことを言わないで! あのね。私が他の誰かにあなたの秘密を喋ったりしたらどうするつもりなのよ?」
「それもないですね。先生が大事な弟子を売るわけがないんです!」
まぁ私以外にも弟子ができたら言うかもしれないけれどね。
「分かったわよ全く。一応私の家は、外部の誰かに会話が漏れるとか言うのはないからね? そこは安心しなさい。それで、詐称したい称号って何なのかしら? 教えてもらってもいい?」
「いいですけれど。先生は、驚きませんか?」
「うっ。あなたってば結構心臓に悪そうな事もするから、ちょっと待ってね。心の準備が。」
先生が深呼吸をしだした。私もNPC相手にとはいえ、真実を告げるというのに少し緊張してきたな。まぁ先生が真実を知る第一号になってもらうのなら悪くはない気がするしもういいか。勢いで言ってしまおう。
「はい。お願い。」
「私、魔者なんです。」
先生が、全身を震わせていた。先生が、私に苦笑いを向けていた。そして次に先生が頭を抱え込んだ。更に先生は深いため息を吐いた。最後に先生は、肩を落とした。
「薄々、ね。そうじゃないのかと思っていたのよ。あなたがね。あまりにおかしなことをするから、そうじゃないのかと、ね。まったく…もう。まさかあの伝説の錬金術士とも言われた魔者の称号を持っているなんてねえ。」
「あ、あはは。私もようやく他人に話せてすっきりした気がします。」
「詳しい話は…まぁおいおい話してもらうとして、それは確かに称号を隠さないといけないわね。」
「ええ、そうなんです。命を狙われてますからね私。」
「分かるわ…。よーく分かるわ。世の中にはろくでなしが多いから、あなたを殺せば自分にその称号が継承されるなんて思っているんでしょうね。でもね、それは無駄な事なのよ。称号は継承なんてされないのよ。」
え。マジですか。それは困ったことになったと言うか、最悪私が死ねば魔者というものから縛られなくなって一安心みたいに思っていたところがあったけれど、一回死んでもそれが終わらないってことは、デスペナルティ後に生き返ってもそれがずっと続くってことになるのか!? 何それ! 酷いんじゃないですかねえ!?
「あのー。私が死んでも生き返るとか言ったら先生どう思います?」
「あー。それもあるわけね。まったく。私の弟子がまさかの魔者だっただけでも悩ましいってのに。更には不死性まであるなんて。」
ああ、先生を悩ませたいわけではなかったんだけれどなぁ。
「ねこます。とりあえずこれを身に着けておきなさい。」
「これは…ピアスですか?」
「そうよ。称号を隠すためのものね。といっても何らかの能力を持っている者には隠しているってことがばれてしまうけれどね。」
「あ、ありがとうございます。」
メッセージ:覆面のピアスを手に入れました。
覆面って言うのがちょっと気になったけれど、エメラルドのような宝石がついているただのピアスだった。
「で、こんな感じに装備しました。」
「良く似合っているわ。」
「姉御、ぐう似合っているやで。」
褒められて悪い気はしなかった。これ、般若レディに戻ったらどんな感じになるのかだけ確認しておかないといけないなあ。
「ただね。それからあと2つはピアスをつけなきゃいけなくなるからそれでちょっと耳が目立つようになるのだけは我慢してね。」
魔者の称号を誤魔化すためにはそのくらい必要になるって事なんだろうなあ。これから大変になってくるなあ。
「他人の称号が何なのか分かる能力を持っている人は少ないと思うけれど、そういう奴はどんなことをしても相手の事を知ろうとしてくるはずだから、気をつけなさいね。」
「はい!」
そうだ。私は一回誰かにばれてしまったらその時点でおしまいなんだ。一回ばれてしまったら後はずっと命を狙われることになる。それは何としても阻止しなければいけない。あぁ、なんか緊張してきたなあ。まさかゲームでこんなハラハラするようなプレイができるようになるなんて思わなかったけれど。
よし、これからも私が楽しく<アノニマスターオンライン>をプレイできるようになるために、魔者であることがばれないように頑張ろう!