第391話「楽しいお勉強!」
明日追記します!!!いつも通りです!
12/18追記しました!
「先生! 吸収が出来るって事は、発散もできるって認識で良いんですか?」
やってみたことがないけれど、理論上は可能なんじゃないのかなーって気がしたので聞いてみた。
「当然できるに決まっているじゃない。というか、あなたの場合は身体強化みたいな感じで自然と使っていたんじゃないかしら。」
言われてみれば確かにそんな気がする。となると、それを外に出すような感じで使えばできるってことなんじゃないかなって先生何睨んでいるんですか!?
「ここで発散するのはやめなさいね!? 家が吹っ飛ぶみたいなことになりかねないんだから!」
おおーっと!? そうだった。危なかった。興味本位で力を発散しちゃおうかなーなんて思ってしまったけれど、ついうっかりでまずいことになるところだった。
「それじゃあもう1つです。力を無効にもできますか?」
「ええ。吸収と発散をほぼ同時にするのよ。ここであなたならピンときたかもしれないけれど、そんな同時にやるなんて難しいのよ。最初に半分を吸収してその半分の発散させてしまえば、無効化するわ。より正確に言うのなら、これは中和って言うのが正しいわ。」
中和か。なんかそれっぽい言葉だな。
「無効化って言うんであればむしろそれが吸収ね。でもさっきまでの説明の通り、吸収したらその力は自分の物となるから、無効はなってないのよね。」
このあたりは言葉って難しいねって話になってくるだけか。まぁいいか。できれば私は中和を使えるようになりたいな。ただひたすら魔素を吸収していくだけってどう考えてもまずいと思うし。
「…。」
「うんうん。考え込むのはいいわよー。そうやって何ができるのかって考える事こそが錬金術士として成長する近道なのよ。」
吸収した力を、他者に分け与えることもできるんじゃないだろうか? でも適性がない相手にその力を分け与えたら毒のようになったりする? それと魔素は人の体の中にもあるとしたら、直接触れればそこからどんどん奪う事もできるんじゃないだろうか? 更に言えば、吸収の力を強くしていけば、周囲の者から強制的に力を奪うなんてことも出来る気がしてきた。
うん! やっぱり錬金術恐ろしいな!? こういう事実はプレイヤーには全然知られていないっていうのもどこかおかしな気がしてきたけれど!
「先生、吸収した力を、他の誰かに分け与えるなんてことはできますか?」
「適性がない者になったら拒絶反応で苦しむことになるわね。それを利用して攻撃に使うなんてこともできるけれどね。」
拒絶反応って言うと血液型みたいなものか。A型なのにB型の血を輸血したら拒絶反応が出て自分自身を傷つけてしまうのとほぼ同じだな。これは、相手がどの魔素ならいいのかって言うのを見極めなきゃいけないだろうから相当大変そうだなあ。使い所は限定されてしまうだろうけれど、覚えておいて損はないだろう。
「あれ? でも闇の素を別な素に変えてあげられれば、拒絶反応がでないで力を分け与えることが可能なのかな。」
問題は私がそんな高度な技術を持っていないってことだな。でもそのうちなんとかなりそうな気がしてきたなあ。
「それができれば苦労はしないわって言いたいところなんだけれど、ねこます。できそうなの?」
「あ、今は無理だと思うんですが、そのうちできそうな気がします。」
楽観視している私に対して、先生は、やれやれと言わんばかりに首を振った。
「それができるってことは存在を変換させることができるってことなのよ。それこそ、錬金術の名が示す通り、色んな物を金に変えてしまうようなものね。奇跡の術と言っても過言ではないわ。」
言われてじっくり考えてみる。存在を変換? 闇を光に、水を火に。なるほど、正反対のものにするって凄い事だね。じゃあ石ころを金に…。まずいなこれは。言われて初めて気が付いてしまった。
「やばいじゃないですか。石ころを金に変えられたらとんでもないことになりますよ!」
「だからそう言ってるじゃない。でもそのくらいできそうなんて言うのはいい傾向よ。錬金術に不可能なことはないって思うくらいが丁度いいのよ。」
傲慢と言えばそうかもしれないが、不可能なんて決めつけてしまえば未来永劫にできなくなってしまう。世の中には簡単に出来ない事や自分に向いてなくて上手くいかない事なんて沢山ある。だけどそれを、試行錯誤することでできる事になる場合も多い。
子供の事は出来なかった事でも、大人になれば簡単にできてしまうなんてことも多いのだから、そこで出来ないなんて決めつけてしまえば、本当に何もできないままになるだろう。だから、錬金術士としては、できないことはない! くらいの思いがないとだめだね。
「ちなみに先生はできますか?」
「不完全にならね。それがどういう意味なのかは、今の段階ではあなたには理解できないわ。」
先生でも難しい事なのか。しかし先生、不完全ながらもそんなことができてしまうなんて、もしかしてこのゲームで一番錬金術ができる存在なんじゃないだろうか。他の錬金術士の所に弟子入りしなくて本当に良かったと思ってしまった。
「私も、石ころを金に変えまくってがっぽがっぽ稼ぎたいです。」
「確か薬草を一杯持っていたわよねえ? それだけで億万長者になれるんだからいいじゃない。」
確かにそうなんだけれど、なんか違うんだよね。ある意味でそれも薬草を売ってお金に換える錬金術とも言えるけれど錬金術士として物そのものを金にしたいなって思う。
「錬金術というか商売術みたいなものなので、やっぱり石ころを金にしたいです!」
「なら、沢山努力しましょうか。私がしてきたみたいに、あなたも私以上に頑張ればそれも可能となるはずよ。ねこます! あなたなら出来るわ! そうあなたはやれば出来る子なの!」
あっ! これは、親が子に過度な期待をして失敗するケースとそっくりだ! 私は不器用な人間なのと頭だって良くないので、きっち思うような結果が出せずに、先生を落胆させていき、段々と失敗者の烙印を押され、最後はダメ人間の扱いを受けてしまうかもしれない!
「先生、私にそんな期待をかけてはいけません! 私は期待をかけられるとその重圧に押しつぶされそうになって、精神的にやさぐれて、国家転覆をしようとするかもしれません!」
悪役なんかが悲しみから絶望して、世界を滅亡させてやろうとかいう破滅主義に目覚める感じだ。私は期待に応えるようある程度なら頑張れるが、必死にやろうとすると、出来るかと匙を投げてしまうこともありえそうだし。
「全くねこますは。自信があったり、なかったり、おかしいわよねえ。」
最初にできません! と言っておいて実はできました! というのならいいんです。でも最初にできますと言っておいて、できませんでした! ってなるのが怖いだけなんです。そう言いたかったけれどここでは一旦心の中にしまっておくことにした。
「努力はしますよ。でも最初からできます! なんて無理してやるつもりがないだけです。」
「そう。ならほどほどにがんばりましょうね。」
「背一杯頑張らせていただきます!!」
「…。」
「姉御、なんだかよく分からんけれど頑張るんやで!」
「うわ、なんだか自信がなくなってきた。適度に頑張るよ。」
「なんでやねん。」
だいこんからツッコミが入ったが、私はいつも気楽でいたいだけというのを強調したかった。そもそも私は<アノニマスターオンライン>はゲームとしてプレイしているので、なるべくなら責任感のようなものを持たないようにしたいと思っている。
段々と義務的にゲームをプレイするようになり、いつの間にか、なんで楽しくもないゲームをぷれいしなきゃいけないんだろうなんて気持ちになることもありそうだし。そうならないためにも肩の力を抜いただらけた気持ちを持つ事も忘れないようにしている。
「ねこます。あなたは多分悪い錬金術士はならない、いえ、なれないわねえ。」
「お嬢、姉御は多分根はいい子なんやで。でもこうやって言うとひねくれて、悪い奴になってやるって言いだすのが姉御なんやで。」
んぐ!? 余計な事を言うんじゃないだいこん! その通りだけど!
「そういえば今回はあのイケメンはいないのねえ。」
「姉御がどうしてもワイについてきて欲しいっておねだりしたんでワイだけ一緒に来たんやで。他の仲間たちはみんな別行動なんや。」
そうそう、真蛇モードとやらを使えるようになりたかったので、だいこんとは極力一緒にいるようにしているんだよね。もしかしたら私とだいこんの信頼度みたいなものが不足しているから使えないのかもしれないし。
真蛇モードという名前だけでなんとなく私自分の力かだいこんの力が強化されそうな気がしている。もしそれで戦闘能力が向上するのであれば、今後のクロウニン戦も楽になるかもしれないので、どうしても覚えておきたい。
「あっ! 先生はサンショウが好きなんですか!」
「え? いや全然全く。なんか話してみると、どうもおじいちゃんなんかと話をしているような気分になるのよね。なのでそういう対象じゃないわ。イケメンだと思うけれど。」
リッチだもんな。長生きしているもんな。そういう意味だと本当におじいちゃんだもんなぁサンショウは。あはは。
「ワイは!? ワイはどうや!?」
「蛇と言えば、その血が錬金術に使えるかもしれないわねえ。」
「グエー。死んだンゴ。」
「はいはい。分かったから。それで先生! 大分脱線してしまいましたけれど、変身する道具が作りたいです!」
「となると、今後やっていかなきゃいけないことは、素材集めね。素材がないと何も始まらない。それが錬金術よ!」
そりゃそうか。材料もなしに料理ができないのと同じことだし。
「姉御。ワイ、腹が減ったやで。姉御は確か肉を出せるようになったはずやから頼むやで。」
「え? ああ。はい。えーと先生?」
「まぁ先にご飯にするのも悪くないわね。」
「とりあえず肉は出しておきますね。肉生成!」
私は台所まで行くと、手から肉をいくつか出した。よっし、この肉は軽く焼いただけでもうまいし、先生にも食べてもらうとするか。
「…何よそれ。」
ん? 先生、なんでそんな呆然としているんですか?