第387話「脱出できちゃった!」
明日追記します!!!
12/14追記しました
「うわぁ。街が見える!」
気が付いたら、私は神殿の近くにいた。転移石の効果がしっかり発動してしまったらしい。ってこんな単純でいいの!? それに敵が作ったダンジョンの中にいたのに、そこから簡単に脱出できてしまうってそんなオチでいいのか!? この転移石の効果、強力過ぎないか!? いざってときに逃げ出すことができるなんて強すぎるって! そのうち下方修正が入るんじゃないか!?
「…ゴーストロガノフがあまりに可哀想な気がしてきた。」
不遇のモンスターとして人気が出そうな気がする。転移石であっさり逃げられてしまう可哀想なボス、ゴーストロガノフとして、ゲームの歴史に名を残せるんじゃないだろうか。こういう特徴のあるボスって沢山の人の記憶に残るんだよなあ。そういう風に考えるとある意味幸せなボスだろうな。
私も色んなゲームをプレイしてきたけれど、出現した直後は隙だらけなのですぐに死んでしまうボスとかの名前を覚えているし。ボス戦を逃げることが可能! なんて言う今回の展開もそれくらいには衝撃があったかな。
「本当にこんなあっさり移動できて大丈夫なのかな? あいつは私がどこ行ったのか今頃しどろもどろしているとかないのかな。」
突然姿を消したように見えているのかもしれないな。私を探すにしても、すぐに見つけるってことはできないんじゃないだろうか。どうなんだろう。
「…見つけましたよ魔者!」
あ、声が聞こえてきた。なんだか見つけられたほうが安心できるって不思議な感じだな。このまま本当に何事もなく過ごせていたらそっちのほうが不安になっちゃってたよ。
「遅かったねえ。私程度を見つけるのに時間がかかりすぎだよ。やっぱり後世に名を残せそうだね。」
「ぐっ! どこまで私をからかえば気が済むんですか!」
「からかわれてているのはむしろ私だしなあ。目的も何もはっきりしないで曖昧な態度だから私もこういうことするしかないんだよ。」
戦おうってはっきり言ってくれればいいものを、それをしないで様子見しますってつまらないことをやるからこういう目に遭うんだぞと言いたい。
「あなたには私の至高の目的が理解できるはずもないのです!」
「私にはお前の至高の目的が理解できるわけがないのです!」
という事で話は平行線にしかならない。こいつは目的をちゃっちゃと話してしまえばいいものを秘密にしているから話がさっぱり進まない。
というかそろそろ言いたい。本気で言いたい。こいつは何がしたいんだ? いちいち思わせぶりな発言だけして、なんかやらかそうとしているのは分かるんだけれど、そんな意味不明な態度をされても不気味なだけだし。だから私も、こんな風にからかいたくなるんだよね。
「何がしたいのか分からないのって駄目な事だと思うよ。」
といったところで反省するわけもなさそうだしなあこいつは。どうしたもんかね。
「…。そうですね。私が愚かでしたよ。魔者、あなたはそういう存在だと言う事を今、はっきり思い出しましたよ。いつもやることなすこと全てが斜め上に行く天才でしたね。」
それは言い得て妙だなあ。私ってば、ありきたりな方向に行きそうになると、途端に別な方向に行きたくなるし。ゲームでも、この選択肢を選んだこういう風になるんだろうなあって方を選んで実際にその通りになると、あぁやっぱりこの展開かってため息がでてしまう。
その一方で、予想外の展開になってくると、面白くなってきたって気分が良くなるんだよね。
「ありきたりな方向に行ったら面白くないからね。んで、結局どうするの? 私と戦うの? それとも私を泳がせておいて、突然現れて色んな物を奪い取っていく作戦で行くの? とりあえず様子見とか言っておきながら監視はしておいて、こそこそ暗躍して、自分がやったとかばれないように工作活動に勤しむの?」
まくしたてる私だった。だってさ、ゲーマーだったら、次の展開とか相手がどう動くのかって予想はするわけだよね。私と同じようにゲームをプレイしてきた人たちだったら間違いなくこいつが何かするって言うのが分かっているだろうから、そもそも油断するなんてありえないんだよね。
絶対に何かをやらかす奴なんだから、ずっと警戒するに決まっているし、大事な場面で罠にかけようとしてくるかもしれないんだから、私がさっさと倒しておきたいって思うのも当然だと思うし。
「ええ。ええ。魔者、あなたが思う通りなのだと思いますよ。」
「適当に返事しておいてはぐらかすのも想定内だよ。流石ゴーストロガノフ! 頭いいね! 私でもそういう感じで知ったかぶりをしちゃうね!」
とりあえず煽っておく。なんで煽るのかって? だって今までプレイしたゲームだとこういう奴相手にただただ主人公たちが翻弄されるだけでなのが面白くなかったから。こういう自分の頭の良さとかをひけらかしてくるような、タイプにこれでもかってくらい嫌味な態度をとってやりたかったんだよ私は! 嫁姑問題のようになっ! ふっふっふ。ようやくそのチャンスが周ってきたんだから、溜まっていた鬱憤をここではらす!
「では、ひとまず私は退散しますよ。ああ、それと、クロウニンとして魔者を襲いたくなる衝動も当然ありますが、私はそれを抑える方法がありますので、ご心配なさらず。」
「ふーん。それは一時的に私を襲いたくなる衝動を抑える代わりに、後でその衝動が通常の何倍も強くなるとか言う奴でしょ? そんでもって、今その状態になったとしたら、別のクロウニンが私と戦うのも問題がなくなるってことだね。イヤッホウ! じゃあばいばい。」
ゴーストロガノフが戦ってくれないというのなら、他のクロウニンと戦えばいい。戦えない状況になるって言うのが一番困っていたので、これは素直に嬉しかった。
「…。あなたが生き残っていれば、いずれは私が相手をすることになるかもしれませんね。」
「私が死んでいたら、いずれはお前が私の相手をすることになるかもしれないね。」
「何を言いたいのか分かりませんでしたが、それではここで失礼しますよ。では。」
そして声は聞こえなくなった。そういえば気配感知にもひっかかってこなかったし、何かの能力でここにいたってことなんだろうなぁ。
「やったー! ゴーストロガノフが私に恐れをなして逃げたぁ! あははは。 ゴーストロガノフは臆病者! これ、みんなに広めまくろう! やったー! 多分この声もゴーストロガノフに聞こえていると思うけれど、一度去ったのにわざわざここで出てこないよね! だから言いたい放題だ!」
こんな感じで子供のようにはしゃいでおく。まあ、こんな程度でいちいち目くじらたてて攻撃してくることはないと思うし。だけど、どこからか私の事は監視していると思うので煽っておいた。私がただ一人で馬鹿みたいなことをやっていると思われそうだけれど、それはそれで面白いからよしとする。
「それじゃあ、ブッチ達に連絡するかなあ。」
ネガティブータも倒して、ゴーストロガノフも退けたことだし、今回は順調に終わったなあ。あー疲れた疲れた。こうなると次は、ジャガーコートのジャガーちゃんが相手になるか。ようやくだなあ。仲間になってくれそうな雰囲気が漂っていたし、なんとしても仲間にしたい。
確か、私が勝てば魔者を襲いたくなる衝動とかがなくなるっぽいし、期待しておかないといけないな。後はどのタイミングで出てくるのかが分からないから、そこだけ注意が必要だね。
マブダチからのメッセージ:ねっこちゃんお疲れ。俺たちは今ゴーストロガノフに襲われてるよ。なんかいきなり現れて、大事な魔者を預かったとか面白い冗談を言ってるからもうだめだ。俺らを笑わせにきているのかな?
は!? 何それ何それ! どういうこと!? な、なななんでそんな面白いことになってるの!? というかあいつは私の所から消え去った癖に、ブッチ達の所に行くとか、馬鹿なのか!? あー! 何だよそれ。そんな面白い光景が見れないなんてみんなだけ狡い!
ん? 待てよ? もしかしてそれが狙いか! 私だけのけものにして、私の仲間たちにだけ面白い所をみせてやろうということか! くそっ! やられた! これは悔しい。してやられたって感じだ!
マブダチからのメッセージ:魔者の顔が苦痛で歪む姿を見たいですか? とか言ってるんだけど! ねっこちゃん! 笑いすぎて腹筋崩壊して苦痛で歪まないようにね!
「あ、あははははははは!!」
だめだ、こんなの、笑うしかないだろ。はっ腹がよじれるぅう! なんなのあいつ!? そんなについさっき私に煽られたことがくやしかったのか!? わざわざブッチ達の所にいって八つ当たりしにいったってか!? くそっ! こんな小物集がするなんて、暗躍しそうなボスとか思っちゃった私が馬鹿だったよ! こいつぁクロウニンのお笑い担当に違いない!
エリーからのメッセージ:あの、笑ったらまずいんでしょうか?
笑っていいんじゃないかな。だって、ねぇ。私達がこうやってメッセージでやり取りできるなんて知らないんだろうし。我慢せずに笑ってしまったほうがすっきりすると思う。まぁ笑わない方が後でもっと楽しめるんだろうけれど。
「あー。みんないいなぁ。楽しそうだなぁ。って私だけ今一人ぼっちじゃん!」
辛すぎる。私だけ面白いところが見れないとか仲間外れ大作戦か!
エリーからのメッセージ:ブッチさんが、笑い転げてしまいました。それとネタバレしちゃいましたよ。ゴーストロガノフさん? は顔面蒼白でした。」
ん? 顔面蒼白ってことはあいつの姿が見えたってことか? 依代的な体があったってことなのかな。それにしてもブッチ。ネタバレしちゃったかぁ。あーあー。
マブダチからのメッセージ:ごめん。我慢できなかった。無理無理。こんなの絶対無理ゲー。笑いをこらえるのを我慢しろとか無理。くろごまとか最初真剣に向こうの話を聞いていたんだけれど、俺の態度を見て、ねっこちゃんが大丈夫って察したみたいでさぁ。そこから全員察して最後は笑いをこらえるの必死だったよ。
…よし、今後、ゴーストロガノフはお笑い担当と呼ぶことにしよう。そうしよう。