第384話「詰め込み過ぎ!」
すみません。明日追記します。
12/11追記しました
ネガティブータの口の中に火薬草を詰め込んでいて考えた。もしかして、しまうまの時と違って窒息を狙うのは難しいのではないかと。そもそもモンスターとか呼吸ってしているのかどうかも怪しい。しまうまは運よく窒息させられただけなんじゃないだろうかと、今さらながら思ってしまった。
だけど、今どんどん口の中に火薬草を詰め込まれているこいつらを見ると。
「ブバババ!?」
「ブビビビ!?」
「ブボボボ!?」
うん。苦しそうにしているな。演技とは思えないし。このまま継続していくとするか。あ、でもこれだけ火薬草を詰め込んでいると結構やばくないか? すごい今更だけど、詰め込めるのに夢中で気が付かなかった。というかブッチもエリーちゃんも楽しそうに詰め込んでいるよ!? いやいやちょっと待ってよ! 残酷な倒し方だとかいう気持ちはないの!? 私にはないけど!
「えーっとさ、これ以上続けると、爆発した時やばいことになる気がしてきたからそろそろやめようか?」
なんて提案してみることにしたんだけれど、二人とも、やめる気配がない。え? 無視? それとも聞こえていないのか? もしかして詰め込めるのに夢中になっている!?
「ねこますサマ。二人とも聞こえていないのではないでしょうか。もしかして敵の攻撃でも受けているのでは?」
サンショウからそのように言われたのだけれど、敵の攻撃を受けていると言う様子はないんじゃないだろうか。もう一回声掛けしておくか?
「あー。ブッチにエリーちゃん?」
「聞こえているよ。でもさ! やっぱり確実に息の根を止めるにはこのくらいするべきじゃない!? だってクロウニンだよね。ここで沢山火薬草を詰め込むだけ詰め込んでおかないと復活するかもしれないし!」
お、おお。ブッチはそこまで考えて詰め込んでいたのか。確かに言われてみればそうだな。ここできっちり倒しておかないと、あの時もっとやっておけば良かったなんてなるかもしれないし。ぎりぎりまで詰め込んで、それで最後にとどめを刺す。確かにいい方法だ。
「私は、こういう戦い方もやっておきたかったんです。今までのゲームでは無かったじゃないですか。こんな戦い方。口の中に詰め込んで窒息させるなんて、思いついても誰もやっていなかったことが、ここで出来るっていうのに感動しているんです! だから詰め込むんです!」
…ん? あ、いやちょっと待てよ。それなんかハマってない!? 感動するって言ってもブッチと違ってもう倒すことじゃなくて火薬草を詰め込むことが目的にすり替わってきてない!?
「あ、あー。そうだよ。このままこいつが爆発したら私達の方が危ないかもしれないんだから、倒したいのは山々なんだけれど、そろそろ終わりにしようよ!」
もう限界まで詰め込んだはずだ。これ以上はやる意味がないだろう。
「お。そうだね。確かにそれはやばいかも。おっし退散!」
「…うぅ。もうちょっと。もうちょっとだけ! まだ、まだいけます。えいえいっ! ほら、まだ入りますよ。」
「ブボボボボ!?」
「やばいって! エリーちゃん! ちょっと!?」
これはまずいと思って、エリーちゃんをネガティブータから引き離した。
「えっ!? ねこますさん! まだ窒息死させていませんよ!」
「いや。そりゃそうなんだけれど、これはまずいって。これ、詰め込み過ぎた! あと火薬草じゃなくて薬草にしておけばよかったって今更ながら後悔しているよ!!」
薬草にしなかったのは勿体なかったというよりも、体力を回復されてしまう可能性があったからだ。しまうまのときは薬草だけが使える手段だったからああしたけれど、今回は攻撃もできるということを兼ねて火薬草にした。
「そういえばあいつ。火を吐けるんじゃなかったっけ?」
…そうだね。だからそれを私は思いだしていたんだよ。というわけでみんな急いで下がらないとまずいぞ! あいつがこっちを巻き添えにしようと思ったらやれることだし!
「ま、まずいじゃないですか! あたし、調子に乗りまくって沢山詰め込み過ぎちゃいましたよ! 折角私が一人で倒すって言ってたのに倒せなかったのを忘れようと思ってやったのに!」
…それは過去の事でもう水に洗い流してしまえばよかったんだよ! というか真面目か! だけど折角あそこまで意欲を見せていたエリーちゃんだったし、確かに一人に任せたかったってのはあったんだよねえ。
「それはおいおい頑張っていけばいいんだから、ちょっとあいつから距離をとろう! みんな急いで出口付近まで移動!」
「ブビビビ。バベエエ!」
「ニババンボオ!」
「ブオエー」
ネガティブータがなんとなく何が言いたいのかは分かる。でも、そんなことよりも早く逃げることが大事なんだってば!
「ん!? 出入口が!!?」
「おいいい! これは閉じ込められる展開かあああ!?」
出入口が、突然壁で塞がる定番のイベントが始まってしまった。これでは逃げられなくなってしまう。ああ、出入口に誰か一人を待機させておけば良かったなあって今更遅いか! それに待機させてても壁が出てくるのを防止できるわけでもなかっただろうし。だーくそ! こういう逃げられなくなるイベント結構苦手なんだよね!
「ブビビビ!」
よろけながらこちらに近づいてくるネガティブータ。オイオイ待てよぉお。くるなってばあ!
「ねっこちゃん。あのでかい岩を出すスキル使おうよ!それっきゃないよ!」
「うぐぐぐ。」
私も隕石拳を使うならここだとしか思えなかったんだけれど、ここにきて使いたくなくなってきた。だって、ここまで普通に追い詰めたのに、最後は結局いつものスキルを使うのかって言うのが気に入らないし。確かにね、最初から隕石拳使っておけば良かったよ? だけど毎回毎回これで行くってのはさぁ、どう考えても面白みがないじゃないか。
使わなきゃいけないのは分かっている。当然分かっているけれど、なんか腹が立ってくる。ここまで来てやらなきゃいけないってのはなんだかむかついてくる。
「ねっこちゃん! やれることはやるべきだよ! 折角持っている能力を使わない事の方が失礼だ!」
「分かっているって! くうううう!」
あぁー納得がいかない! なんで折角ここまでやったのにさぁ! だけど隕石拳でもない限り、こいつが巻き起こす恐れのある大爆発を防いで更に攻撃まですることはできないし。躊躇している暇がないのにやってしまう! あぁーやりたくない! ああもう!!
「隕石拳!!!」
結局勢いに任せて使った。こうでもしないと絶対に使いたくなかったし。ネガティブータはいまにも爆発しそうだったし、他の方法を検討している余裕もなかった。時間凍結なんて考えたけれど、結局爆発した後のダメージが避けられないので駄目だと判断したし。
「う…ぉおおおおー!」
いつものように右手が岩になったと同時にどんどん膨れ上がっていく。岩が地面まで届くくらいに大きくなったと思ったら、そのままゆっくりと前身を始めた。
「ねこますサマ! ガンバッテクダサイ!」
「ありがとうねっこちゃん。俺たちの命を救ってくれる救世主になってくれて! さぁあの豚野郎の命を食らいつくしてしまうんだ! 行けっ! あの豚野郎をミンチにしてしまうんだ! 極悪非道の限りをつくすんだ!」
「マスター! ご武運を!」
たけのこの優しい言葉の後に空気を読まないで何か言っているブッチを叩きたくなったが、それはかなわなかった。どんどん前方に突き進んでいく私がいたからだ。
「後で見てろよブッチ!」
「ねこますさん頑張ってください!!」
うん。隕石拳を使っちゃったら後は勝手に突き進んでくれるから私は頑張る事なんてないんだけれどね! だから隕石拳って使った後よりも使う前に覚悟するほうが余程大変なんだよね!
「いくぞネガティブータァァア!」
思えばここまで全て茶番だったような気がしないでもない。そもそも、ゴーストロガノフが街に危機が迫っているだのなんだのってところから話が始まっていたはずだけれど、その原因がこいつだったのかどうかもよく分からない。こいつはあの街をどうしようとしていたのか。今となってはもうどうでもよくなってきた。だって私はこれから隕石になってこのダンジョンもろともネガティブータをぶっ飛ばしてしまうだろうからね。
「ブボボボ!!」
ネガティブータの声が聞こえてくるがもう姿は見えなかった。私の眼前に見えるのは、巨大な岩となったら私の手だけだ。どんどん加速していく。そしてこのままネガティブータめがけて一直線に突撃していった。
そして、爆発の衝撃と轟音が私の全身を襲った。隕石拳ごしでも分かる凄まじい衝撃だった。だけど、隕石拳は止まらなかった。要するに、この爆発では、隕石拳を砕くことができなかったというわけだ。いつも思うけれど、このスキル、とんでもないな。
あー…あとはこのまま効果が尽きるまで飛んでいくだけかー。って、ここって確かネガティブータが作ったダンジョンだったよね。それだと、このダンジョンってネガティブータが死んだら、消滅するってことでいいのかな。
なんか消滅するそぶりがないような気がするんだけれど、どうしたんだろう。
メッセージ:ネガティブータの指輪を手に入れました。
…ここでメッセージが出てきたってことは、やっぱりネガティブータは死んだってことじゃないか。いや死ぬのあっけないな!? そんなんでいいのか!? ここまで引っ張って倒したんだからもうちょっと何かあってもいい気がしたんだけれど!
はぁ。でもこれでようやくネガティブータを倒したかぁ。クロウニン二匹目撃破か。こんなのがあと七匹もいるとかもう嫌になってきた。私、四天王とかそういう設定の奴ら全員と戦うってなると面倒くさいとかなってくるんだよねえ。あと七匹なんて相手するの嫌だなあ。
「んで…。隕石拳よ止まれ! 止まれ! やっぱり止まらないな。」
いつも通りと言えばそうだけれど、やっぱり制御が上手くいかないなー。必死さが足りないとかなんだろうか。まぁいっか。やることはやったんだから
…なんだか、このままダンジョンをずっと突き進むと実は裏ボスとか出てきたりしないよね? なんか嫌な予感しかしないんだけどさー!? なんだか真っ黒い道を突き進んでいるみたいだし!