第380話「悪戦苦闘」
すみません。明日追記しますorz
12/7追記しました!
威勢よくぶっ潰すなんて言ったはいいものの、正直かなりきつかった。だって一対三だし! しかも全部がボス級の強さなのがきつい。どうせ一体のボスの力が三匹に分散されているんだろうとか、残りの二匹は一匹目の影武者みたいなもので、能力的には劣っていると思っていたら全然そんなことはなかった。
RPGなんかで言えば、普通は一匹だけだったボスが単純計算で三匹いるような状態だ。これはふざけるなと言いたくなる。とはいえ、こういう、通常では負けイベントとして扱われる戦いに勝つというのが私は大好きなので、なんとしても勝とうと思った。
ここでプッチやエリーちゃん達が加勢しに来てくれることは期待しないでおく。もしここに来られたとしてもどのタイミングなのかは分からないし、不確定要素を当てにするのは駄目だ。
「どうしたぁ!? 逃げることしかできねぇのかぁ!?グラビトン!」
「加速!」
特に何が辛いのかというと重力魔法の効果範囲の広さだった。これが当たってしまうと私の動きが極端に鈍くなってしまうので、回避する事に必死だった。カブトスピアーを持って加速を使うことでぎりぎり回避できているような状態なので、加速が使えなくなったら非常にまずい状態になる。
正直かなりじり貧だ。一匹は腹に穴が開いたままの癖に、全然弱っている感じじゃないし。
「んがんが。」
「ブヒヒ! あいつ、果物を食いながら逃げてるぜ!」
「あんなに食い意地はってるなんてあいつこそ豚だなぁ!」
「ちげぇねえ! ブヒヒヒ!」
こいつらぁ! 好き放題言いやがって。ドラゴンフルーツを食べてスキルポイントの回復を頑張っているんだぞ! なんてこいつらにそんなことは言わないけど。加速を何度でも使えるように食べられるうちに食べておかないといけないから、隙あらば食べないといけない。まぁ大量にあるからなんとかなっているけれど、このまま逃げ続けられるかどうかは分からないので必死だ。
「どうしたぁ!? さっきまでの威勢は~!?」
「俺様達をぶっ潰すんじゃなかったのか~!?」
「ブヒヒ! 情けない奴だぜー!」
これは耐え難いな。だが耐える。今は次の一手を考えている。この状況を打破するためにはどうしたらいいのかを。ひたすら逃げ続けている状況。こいつらはひじきやだいこんには気が付いていない。私への、魔者への憎しみが強いのか、基本的には私にしか注目しない。
「はっはっは。お前らが遊ばれているのをまだ気が付いていないなんてな。ふふふ。」
「おっとぉ!? その安い挑発には乗らねえぜ! ブヒヒ!」
「お前はただここで俺様たちのおもちゃになって、いずれは力尽きて死ぬんだからなあ!」
「ブヒイイヒヒヒ!」
こいつらは重力魔法と電撃魔法そして突進で攻撃してくることが多かった。それ以外の攻撃と言えば、地震を引き起こすような攻撃とか衝撃波のようなものを飛ばすものだった。今はむこうの攻撃パターンがどれだけあるのかも探っている。三匹いることで、何かやってくるかもしれないので、それが分からないうちにこちらから攻撃を仕掛けていく事には不安を覚えたので、まずは見切ることを優先している。
だからこそ耐えている。いつもと違う動きをしてこないかを確認するために、耐える。
「加速!」
加速して重力魔法を避けたらすぐにドラゴンフルーツを食べる。食べることに集中し過ぎると電撃魔法をくらいやすくなるので、回避することに意識を向ける。電撃魔法をくらってしまったら、薬草を食べる。運悪く、重力魔法が当たってしまった場合は、最悪土潜りで回避するが、これをやるとだいこん達がネガティブータに狙われるので出来るだけ使いたくない。
だいこん達だけ、この広間から逃げてしまえばいいんじゃないかと思ったが、それも上手くいかなかった。出入口のあたりに見えない壁があるようで、出られないことが確認された。
そんな壁ぶっ壊してやると思ってやってみたが、攻撃がただ突き抜けていくだけだった。ボス戦が終わるまでは出られないようになっているのだと結論付けることにした。
「それー! 逃げろ~逃げろ~! ブヒヒヒ!」
こいつら調子に乗ってるなあ。まぁ私も段々慣れてきたんだけどね。こいつらの動きに癖があるというか、このタイミングでやってくるだろうなって言うのはなんとなく分かってくる。それがなんだか面白くなってきた。
「グラビトン!」
「おいしょっと!」
「グラビトン!」
「ずさーっと!」
一匹目が放ってきた重力魔法を難なく回避すると、その範囲外にきた瞬間にもう一匹の重力魔法が放たれる。これも回避することが簡単になった。理由は、一匹目のネガティブータの重力魔法の効果持続時間と効果範囲だ。
こいつらの使う重力魔法は長方形の範囲なのだが、中心部ほどその効果が高いことが分かった。つまりぎりぎり端のあたりにいればその影響力は少ない。だから端の辺りであえてくらい、二発目がきたら、またぎりぎりまでなんとか移動すれば、大ダメージをくらう可能性を低くすることができる。
だけど毎回確実に逃げ切れるわけではないので、そこは試行錯誤して、これが一番いい回避方法だというところを見つけないといけない。
「魔者ぁ!? お前が何か狙っているのは分かっているんだぞぉ? ブヒヒヒ!」
「ブヒヒ! お前がやろうとしていることは全部無駄無駄ぁ! ここでお前は俺様達のおもちゃになって死ぬんだぞぉ! ブヒヒイイ!」
「何をしようが俺様達は全部分かっているからなぁ! ブヒヒ!」
などとこいつらが供述しているのだけれど、そんなことも分かっているっての。私が何か狙っていると分かっているからこいつらもワンパターンの動きをし始めたってことだと思うし。そんでそのワンパターンの隙を私がつこうとしたときに、こいつらからも何か仕掛けてこようとしているっていうことまで読んでいる。
多分、私の前の魔者からそういうことをされた経験があるからだと思うけれど、こいつらは逆に考えすぎのせいで動きが鈍くなっている節があるな。
こいつらは多分、特定のタイミングでだいこんとひじきを人質にするだろうし、私が攻めた時を見計らって、今まで使っていない極力な攻撃を仕掛けるだろう。三匹いる事だし、多分三匹の連携を活かした攻撃か何かだろうな。一匹だけの攻撃はたかが知れている気がするし。
「ふふふ。」
「! ちぃっ!!? 今の笑いは!!」
「てめぇ魔者! 下品な笑いをしてんじゃねえぞ!」
ん? なんだ。私の笑いかたがどうかしたんだろうか。前の魔者か何かが同じように笑っていたとか。まぁそんなのどうでもいいか。いくらでもやりようがあるし。
「ブヒヒ! どうせハッタリだろう! いつものなぁ!」
「今だ!! やれ!!」
突然大きな声を出すことで、こいつらの反応を見ることにした。まっどうせひっかけだって気が付いているだろうから、あーやっぱり無反応だな。まぁいいか。次の一手を。
「ブヒヒ! 誰がそんな手に乗るかぁ!」
「無駄だぞ! ブヒイイイ!」
「ブ!?」
その時、三匹目のネガティブータの体が吹っ飛び、私の方に突っ込んできた! っておいいい!? これは予想外だ! くっそ! なんだこいつ! ここまで私の動きを読んでいたとか!?
「なっ何をした魔者ああああ!?」
「うぎぎ! 知らないっつーの!? どけっ!」
これを見るに、この三匹目のネガティブータは何かから吹っ飛ばされたようだ。こいつ重たい! 鎌でなんとか防いでいるけれど。重たすぎる!
「あれー!? 俺、タイミング間違っちゃったぁ!?」
そこで来るのかブッチ!? ちょっとちょっと!? というかいつの間に来ていたんだよ!? しかもネガティブータに気づかれずにここまで入ってきた!? 私だって気が付いていなかったし! ああもう! どうせ来ないと思っていたのに、来ると安心できるな!
「て、てめぇかぁ!? てめぇとは後で遊んでやるって話していただろうが!」
「だから今遊ぼうぜ! 黒豚の生肉にかぶりつくゲームとかどう?」
「ふざけるなブヒイイ!?」
「おい! 私への当てつけか! ぶひいー!?」
おっと、つられてぶひーなんて言ってしまったじゃないか! じゃなくてぇ! 生肉を食べた話を今更持ってくるんじゃない! もうだいぶ前の話をいつまでもネタにするんじゃない! それはさておき、ブッチはこの中の一匹と戦っていたってことだな。だとすれば、あともう一匹とはエリーちゃんが戦っていたってことか。
「で。ねっこちゃーん!? 俺が代わりにこの三匹の相手をしてやってもいいけど、どうする?」
「マジで!? いいよいいよどうぞ!」
正直三匹相手はしんどかった。こいつらの動きを見切るために色々探るのは楽しかったけれど、私が一人で戦っていたら、それこそ時間がかかりすぎて消耗してきたし。
ブッチが頑張ってくれるならここはバトンタッチといきたいな。
「お前が一人で!? ブヒヒヒ! ブヒ!?」
「あ、ごめん。隙だらけだったからつい張り手をしちゃった。あはははは。」
ブッチは目の前にいたネガティブータの鼻に張り手をくらわせるとげらげらと笑い出した。それを見たもう一匹は、ブッチへ攻撃を仕掛けた。
「ブヒィイ! 電撃魔法!」
「おっと危ない! おいしょっと!」
「ぶへっ!? ブヒヒヒ!」
ブッチは、ネガティブータを持ち上げて電撃魔法に向けて投げつけた。なんというか、うわぁと言いたくなる光景だった。
「ブ、ブヒイイ!」
今度は私の近くにいたネガティブータがブッチに突進し始めた。ここで私は悔しくなった。これ、私が狙っていたやり方じゃないか! と。私が何をしたかったのかというと、この三匹をできるだけ一か所に集めたかったということだ。それをすることで、こいつらは重力魔法を使えなくなるからだ。重力魔法は範囲が広いので、近くにいれば巻き込まれるかもしれないといった要素があった。だから、こいつら三匹がある程度距離を置いていたので、それを少しずつ近づけるように動いていた。だけどブッチはそれをあっという間に達成してしまった。ああなんか悔しいな! やっぱり私も戦おうかなぁ!?
「ねっこちゃん。童話って三匹の子豚じゃなくて。三下の子豚だったっけ?」
「それは間違いだけど、個人的には百点満点だね。」
「やったぜ!」