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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
372/473

第372話「行き詰り」

11/29少し追記しました。

「行き止り。全部行き止りか。参ったなこりゃ。」

 まさかそう来るとは思わなかった。ここは出入口のないダンジョンのようだ。つまり現在私は、閉じ込められてしまったということになる。

 このダンジョンに来てから、全ての道を進んでみたのだが、そのどれもが最後は行き止りになってしまった。そして今、嫌な予感がしながら歩いていた最後の道の行き止りにたどり着いてしまった。

「酷いつくりやな。ブッチニキがいたダンジョンと同じように外からしか入り口が開かないとかだったら最悪やで。」

 全く持ってその通りだった。とはいえ、まだ内部に仕掛けなどがないかは探しきっていないので、どこかに隠し通路などがあるかもしれない。今度はそれを探すことにしたかったのだが、現状、闇雲に動くというのも避けたかった。

「こちらを疲弊させてから攻撃しようとしているのかもしれないね。まるで蜘蛛の巣に引っかかったかのようだよ。」


 思わず肩をすくめて見せる。よくもやってくれたものだなあの豚。こういうゲームではダンジョンに移動させられても普通は出入口があるものだが、まさかそれがないなんて。最初にそれについて予想できなかった私もいけなかったな。

 前から思ってきたけれど<アノニマスターオンライン>はゲームとして考えるよりも、割と現実的な考えでプレイしたほうがいいようだ。なぜなら、このダンジョンに閉じ込めるという方法は確かに理にかなっているだ。

 折角敵を閉じ込めることができるのだから、わざわざ出入口を用意してやる必要なんかないだろう。敵を閉じ込められれば、勝利したも同然なのだから、いちいち不利になる事をすることはない。考えてみればそちらのほうが自然だ。


「脱出できる方法はあると思うんだよね。」

 一番考えられる方法は、ネガティブータが死んだ時だろう。ダンジョンを作った者を倒せばダンジョンの入り口が出来上がったり、崩壊したりするのが定番だ。多分これが一番手っ取り早い方法になるはずだ。とはいえ、それはエリーちゃんがネガティブータを倒すまで待機するということになるので、ここのままここでじっとしているだけなのも気に入らない。

 それに、エリーちゃんがネガティブータを倒したとしても、ここから確実に出られる保証なんてないので、もっと頑張って脱出路を探さないとだめだ。


 ここで、現状ブッチはどうなっているのか確認しようとメッセージを送ろうとしたのだけれど、送れなかった。やはりこういうイベント中はできなくなっているようだ。当然エリーちゃんにも送る事ができない。

「姉御、行き止りに火薬草を投げるとかはしなくてええんか?」

「こういう空間で火事になったら逃げ場がないからね。簡単には使いたくないよ。」

 酸欠、というのがこのゲーム中にあるかどうかは分からないけれど、最悪窒息死してしまう可能性が考えられる。というか今現在だって酸素とかそういう設定がどうなっているのかも分からないので、現状でも窒息してしまう可能性があるな。結構追い詰められてきている感があるなあ。


「せやったかぁ。って姉御は結構落ち着いているんやな。流石姉御やな。」

「いや、相当焦っているよこれ。かなりピンチ。」

 この広い空間で、どこかにあるかもしれない隠された通路や、隠されたスイッチなどを探せというのはなかなか骨が折れる作業だろう。私は脱出ゲームもそれなりに好きな方だけれど、時間制限ありの脱出ゲームは苦手だ。

(母上の持っている鎌で壁を壊すっていうのはどうですか?)

 やってみてもいいんだけれど、どこまで通用するのかなー。下手に体力を消耗するのもやっぱり避けたいんだよね。とはいえ何もしないままっていうのも悩んでいるんだ。


 段々いつも以上に考えてしまう事があった。エリーちゃんが現在戦っているかもしれないあのネガティブータが偽物の可能性だ。もしそうだとしたら、エリーちゃんがその偽物を倒しても私達は解放されない可能性が高い。ということはずっと閉じ込められたままになってしまう。

 私達は監視されている状態なのかもしれない。どこかにこのダンジョン全体を見渡せる部屋があって、そこから私達の状況を見て本物のネガティブータがせせら笑っている、なんてこともありそうだ。

 それとも、このダンジョン自体がネガティブータそのものなんて事もありえる。あいつの胃袋の中みたいなイメージだとすると、やがて私達は消化されてしまうだろう。


 下手に動けば襲われる。動かなくても消耗していく。いやぁ、あの豚かなりやりてじゃないか。褒めてやろうじゃないか。だけど、私も黙ってやられるつもりはないんだけどね。

「とりあえずポイっと。」

 私は吸魔石を投げた。数は少ないけれど、先生の家で作ったあの吸魔石だ。これがダンジョンのエネルギーのような物を吸収してくれれば、ここは生きているようなダンジョンということが分かる。


「…当たりだね。吸魔石が何かを吸収している。」

淡い光のような物を発していたので、恐らくこのダンジョンのエネルギーを吸収しているようだ。だとするとやはりここは生きているようなものだな。

「あの豚が作ったっていうのなら吸収はできて当然なんやないんか?」

「その当然ってところを確認したかったんだよ。ここで何も吸収ができなかったら、本当にただの石づくりのダンジョンになっているっていうのが分かっただろうし。」

 問題というのは切り分けていくことが大事だ。まずはここが普通の構造物ではなく、モンスターの力で生み出されたというのがほぼ確定された。そういう情報から少しずつどういう場所なのかということを判明させていく。

 最終目標としてはこのダンジョンからの脱出になるので、それを達成するためには様々な情報を整理して、脱出方法を検討しないといけなかった。


「じゃあ次は鎌でやってみるか。おいしょっと!」

 一回だけ黒薔薇の型を使い、赤黒く光った鎌で壁を軽く斬り裂いた。そして壁が抉れた。その後は特に再生などが始まる事は無かった。石像は再生するけれど、この壁は再生しないのか。なんでなのかは分からないけれど、そういうものなんだろう。

「姉御、もっとどかんとかましてやればよかったんやないんか。こんなところにいるだけで腹がたってくるやん。」

「壁を攻撃すると壁から反撃されるなんてこともあり得るんだよ。与えるダメージによって反撃も大きくなることがあるから、まずは軽くやってみたんだよ。」


 とはいえ、普通に鎌を振るっただけだと、大して威力もでないと思ったので、黒薔薇の型を使ってみることにした。前にプレイしていたゲームでは、壁を壊せばいいじゃないかと思ってやってしまったら、壁のエネルギーが自分にはねかえってきて即死してしまったことがある。

 はねかえってくる壁のエネルギーを利用して他の壁を壊すなんて高等テクニックもあったけれど今回のこの壁はそういうものがないので良かった。

「で、反撃がこなかったのが分かったので、鎌でガンガン掘り進むなんてことができそうだよ。」

「おおー! まるで採掘現場で働いているみたいやな!」

だけど掘り進むのも時間がかかるのであまりやりたくはないなあ。もっと効率的なダンジョン脱出方法を検討しないと。それにこれ、もしもガンガン掘り進んでいって、知らない間にたけのことか他のももりーずVのメンバーに攻撃してしまいかけないからね。

「更に調査を進めていくとするか。」


 焦りそうになるが、こうして試行錯誤することで落ち着きを取り戻していく。私は諦めが悪いタイプだ。こんなところで死ぬなんて受け入れたくないので、必死で攻略しないといけない。

「…ここにある石像のどれかを壊せば道が開けそうな気がしているんだよね。」

「せやかて姉御、ここには石像が大量にあるやで。それを全部壊すのって大変やないか?」

「そういうこと。それが問題なんだよね。」

 1メートル間隔毎に通路の両脇に設置されている豚の石像。これを一個一個壊すなんてとてもじゃないがやっていられない。この中から正解を見つけ出すことができれば、脱出できるのかもしれない。だけど、その反対として、罠の場合もありえる。

 罠だった場合、石像を壊した瞬間に爆発してこちらが重傷を負うこともありそうだ。安易に攻撃する事ができない。


「ワイなら投げ出すやで。どれかが正解としても、また探し回らなあかんのは辛いやで。」

「そうでもない気がするんだけれどねー。」

 ここにある豚の石像は、どれもが同じ形に見えるし、実際にそうじゃないかとは思う。

「そんな風に言うって事は、姉御、何か分かったんか!?」

「直感でしかないけれど、行き止りの近くの豚の石像が怪しいって思っているだけだよ。」

 こういうのは意外とすぐ近くに何か不自然な点があったりする。単純に全部を周っただけなので、行き止りの石像までは調べてはいない。何かおかしな点があったのかと言われれば、一切気が付かなかったけれど、もう一回行けば、何か違う点にも気が付くのかもしれない。

(ですが母上、移動にはとても時間がかかってしまいますよ。それをまた移動するのは…。)

 その通り。が、そこで不安になるようにさせるのがここの罠だろう。出られないということは不安でしかないし、そもそも出られないと死ぬかもしれない。

 そんな状況下で遠回りしていくなんて自殺行為もいいところだろう。が、私ならそれを敢えてやる。むしろそれをしないと手がかりを掴めないのだからやるしかない。まぁ何かおかしなところが無かったか再確認するだけだ。

 たったそれだけの事なのに、段々と移動自体を渋るようになってきてしまう。今もそんな感じだし。それならさっさと移動して答えを探す方が余程有意義だ。


「姉御は追い詰められてからが本番って感じやなぁ。」

「それはたまに思っているから今言うのはやめて…。」

 いつも頭の中がフル回転してくれればいいんだけれど、残念ながらそうもいかない。危機的状況にならないと、どうやら私は頑張れないタイプのようだってそんなわけでもない!

 ただ、ね。 こういう何をどうすればいいんだろうって悩んで考えている時って、つい楽しくなっちゃうんだよね。なんかゲームしているって気がするなぁ。よっし! 攻略頑張るぞ!


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