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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第371話「ネガティブータのダンジョン」

「何だこの豚の石像ばかりのダンジョンは。」

 二本足で立っている豚の石像が、松明を持って辺りを照らしている。ダンジョン内の壁は石造りだった。天井の高さは3メートルちょっとくらいあるが、少し狭く感じた。こういう時ってブッチとか身長の高いプレイヤーは不便なんだろうなあ。

「自己顕示欲が強い豚なんやろなぁ。」

「そもそも名前がねぇ。」

 ネガティブと豚を組み合わせてネガティブータだと思うんだけれど、常にマイナス思考とかそういうことじゃないのかな。それが結果的にもっと認められたいみたいになってあんな石像を設置していると考えれば少しは理解できるかもしれないなあ。


「それよりあいつも、こんなダンジョンを生成できる能力があるんだから、生成する時に壁と壁との間に私達が挟まれるようにでもすればよかったのにね。床も動かすことができたんだから、それくらいやられるかもしれないって思ったんだよね。」

 あるいは、それが出来なかったのだろうか。こういう時って思わずツッコミをいれたくなっちゃうんだよなあ。

「せやなぁ。でもこんなダンジョンを作り出す能力でそこまで細かく操作するのは難しいとちゃうんか?」

「確かに、あの豚に繊細な動きが出来る気はしないね…。」

 もしも私がダンジョンを生成できるスキルを持っていたら、徹底的に練習するけれどね。上手く操作できれば敵を簡単に倒せるというのなら何度でも練習するな。


「こんな石像作る暇があったらそういうところに目をつければいいのになってまぁいいか。それじゃ行くとしようか。」

 私は適当にダンジョンを歩き始めたが、特に何も見当たらず、道にひたすら豚の形をした石像ばかりが並んでいた。ネガティブータが作ったダンジョンと言うか敵が作ったダンジョンだから、きっと罠が沢山あったり、アイテムは一切なかったりするんだろうなあ。

(他の皆さんは無事でしょうか。)

 ひじきの言う通り、他の皆がどうなっているのかも気になっている、そう簡単にやられるようなことはないと思うけれど、さっさと合流してしまいたいな。

「最悪、ここをぶっ壊してしまえばいい気がするんだよね。あまりやりたくはないんだけれどさ。」

 隕石拳を使って強制的にぶっ壊してしまえばいいだろう。あれならきっと上手くいく。私の切り札にもなっているし。

「姉御ならできると思うんやが、こういうダンジョンとかって生きているようなものやと思うんやで。ワイの予想やと、壁をぶっ壊してもきっとすぐに再生すると思うやで。」


 再生は確かに厄介だなあ。攻撃が無駄打ちになってしまうかもしれないのが嫌だな。あぁ、こんなことになるなら、ネガティブータがダンジョンを作ろうとしたときにスキル妨害を使ってみればよかったかなあ。そうすれば、こんなダンジョンを攻略しなきゃいけない必要性も無かったしなあ。

「ネガティブータって面倒くさそうな奴って気がするんだよね。名前から連想されるのは実はうじうじしているかのような気がするし。」

 そりゃネガティブだからねえ。なんだか既に敵の術中にはまってきている気がするなあ。だけど、こんな状況もエリーちゃんがネガティブータ本人を倒せば何とかなるんじゃないだろうか。

「なんかアホっぽい気はしたやで。」

 だいこんがアホって言ってると、じゃあ自分はアホじゃないのか! なんてツッコミをいれたくなるなあ。敢えて言わないけれど。


「姉御。またろくでもないこと考えてそうやな。」

 またってなんだ。私はいつも良いことしか考えてないってのに! まったくもう。

「…。この石像で試してみようか。壁がすぐに再生するなんてことが分かっていれば、何か役に立つかもしれないし。」

私は鎌を取り出した。早速黒薔薇の型を使って、豚の石像を壊してみることにした。

「こういう石像をぶっ壊すのって一度やってみたかったんだよねえ。」

 石像なんて今まで散々見た来たことはあったけれど、壊すほうは一度もやってみたことがなかった。だからこそ、ここで石像を壊すという行為に少しわくわくしてしまった。

(母上、にやついてますけれど、そんなに壊してみたかったんですか。)

 そんなにだね。石像なんて偉い人のものであることが大半だし、作るのだって大変だろうから、簡単に壊すなんて事はしないし。

 普段出来ないことをやれるっていうのは楽しさを感じるね。


「おいしょっと!」

 私は、豚の石像を鎌で縦に斬った。すると、石像の体が真っ二つになり、そのまま崩れ去った。なんて思ったら、屑れてバラバラになった石が青白く輝いた。これは、再生が始まるんだろうかと思ったらその通りだった。石同士がどんどんくっついていき、最後には元の豚の石像に戻ってしまった。これは凄いな。形状記憶合金じゃなく形状記憶石像か。

「…姉御、これ一個持っていってはだめなんかな?」

「え!? 無理に決まってるじゃん!? 何? この石像がそんなに気に入ったの!? まさかだいこんはこの豚の事が好きだったのか!?」

「そんなわけないやで! ワイは、この石像があれば、ブッチニキがいくらでも殴れる道具になるんやないかと思っただけやで!」


 ブッチの…? ああーなるほど。要するにサンドバッグか。この場合ストーンバッグとかオブジェクトバッグとかよく分からない物になりそうだけれど。確かにこんな感じで再生してくれるんだったら、壊し放題でいいね。本当に壊し放題って事ではない気がするけれどなあ。

「うーん。ブッチが満足するくらいまでの耐久力はないと思うよ。この石像の再生能力は恐らくネガティブータが生きているから発揮しているんだろうし。」

 再生の仕組みとしては、作ったネガティブータの魔力か何かがエネルギー源となっていて、それが元通りにする力になるんじゃないだろうか。そしてその予想通りな場合、いずれはエネルギーが枯渇して再生しなくなるといったものだ。

「じゃあ最後はただのお荷物になってしまうってことやな。せやったらこんなんいらんな。」

 この石像をどこかに置いておくのも嫌だしなぁ。食べられない豚の石像なんて置いていてもしょうがないし。

「再生能力は魅力的なんだよなあ。」


 ばらばらにした後にすぐに戻せるというのは色んな事に応用できる気がするんだよなあ。例えば、大きな石像を用意して、それをバラバラにする。その後、そのバラバラにした石像の付近に敵を誘い込むことができれば、石像に戻る力が働いて、無数の石ころがその敵に襲い掛かるだろうなあ。

「ネガティブータのスキル欲しくなってきたなあ。」

「姉御はもうこれ以上強くならなくてええんとちゃうんか?」

「それはないなー。私の上には沢山人がいるからねえ。」

 その大半がプレイヤーだな。プレイヤーが最も恐ろしい。優秀なプレイヤーは能力だけに頼り切らず操作だけでなく戦術を立てるのがやたら上手い。あとは他の人がやらないようなあっと言わせるだけの技術を持っていることも多いので強敵であることは間違いない。

 そんなプレイヤーが沢山いるのだから、強くなろうという気持ちがなければ、絶対に勝つことはできないだろう。


「そんでもって私には敵が多いからね。」

 結局ネガティブータに狙われてしまっていたみたいだし。あれ、でもそうなるとゴーストロガノフはどうなっているんだろう。ネガティブータの呪いを抑えているみたいなことをネガティブータ本人が暴露しちゃったけれど。

「そうだった。ここにいきなりゴーストロガノフが現れるかもしれないっていうのもあった。」

「なんやて!? クロウニンが二匹もこんなところにくるってことなんか! なんでそんな大物ばかり相手にせなあかんのや?」

「魔者だからとしか言いようがないんだなそれが!」


 嫌な人気者になってしまったようだ。憎まれているのは事実だけれど。憎みたいのは私の方なんだけれどね。

「姉御が悪いことしたとどうしても思えんのだが。」

(母上が悪いなんてことはないですよ! 私は母上を尊敬してますよ!)

 どうもありがとう。でも私は色んな人から憎まれているからなあ。責任だけ押し付けられた悲劇のヒロインみたいな感じだ。

「私は悲劇のヒロイン!」

「姉御は喜劇のほうやと思うんやが。」

 どこがだ! 私は全然前向きでも明るくもないんだから、全然前向きじゃないんだっての。

「もうくだらない話はやめて真剣に探索しよう。このままじゃ時間がかかりすぎて何もできないままになってしまいそうだし。」


 このダンジョンの広さはどの程度なのか、出口はあるのか、そこを調べていくしかないなあ。

 こういう時にエリーちゃんがいてくれたらなあとないものねだりはやめよう。エリーちゃんは必死でネガティブータと戦っているに違いない。だけどエリーちゃんならなんとか頑張ってくれるだろう。


「な、なんや!?」

いきなりダンジョン内が揺れ始めた。なんだこれ、地震か? エリーちゃんがすごい魔法を使ったとか、ブッチが何かのスイッチを押しちゃったとか、そういうのじゃないかな。

「なんかやばそうな気がしてきたけれど、出口は分からないので戦ってしまおう。私達に向かってくる敵がいるなんて、まったくもう。」

「わんころとかもどこかで頑張ってるんやろか。まぁワイの知ったこっちゃないんやが。死なれたりしたら後味が悪いやで。」

「多分大丈夫じゃない。」

「姉御、そういう時は絶対って言った方がええんちゃう?」

「絶対なんていうのが分からないからそこまで言えないよ。」


 絶対なんて思っていると、大体絶対にならなかったりするので、こうなるなんて思い込みがしやすい絶対なんてことは信じないように注意しないとなあ。天気予報が晴れだったのに、雨でしたなんてことになったら愕然とするのと同じ感じだ。


「…ブッチに乗って移動ってやれそう?」

「やれると思うんやが。狭そうできつい気がするやで。」

「オーケー。じゃあこの辺は狭い道だからやらないようにして、もしも広い所に出たらそこからはだいこんに乗って移動って事でよろしく。」

「分かったやで!」


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