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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第361話「ダンジョン探し」

 街までの道中では、海岸で蟹、樹海で変な鳥、神殿で骸骨剣士と戦ったが、どれもこれも手ごたえはなかった。苦戦することなくあっさりと倒すことができた。やっぱり私も少しは強くなっているようだ。だけど、ブッチは、このくらい私ならできて当前のように言っていた。そんなわけないのになあ。私を過大評価し過ぎだっての。

 蟹や鳥は食べられそうなので食料として保存しておくことにした。ドラゴンフルーツはそこそこ数があるし豚肉や猪肉なども確保しているからいいけれど、ダンジョンに潜ったら、一気になくなっていくかもしれないので、沢山集めたくなってきてしまった。

 食料については、過去にローグライクゲームで餓死してしまったことを思い出す。その苦い思い出があったので、今度は沢山食料を集めていたら、その分アイテムが不足してしまって、結局やられてしまったという出来事があった。

 つまり、こういうのはバランスというか取捨選択をしなければいけないんだけれど、幸いこのゲームでは、いくらでも同じアイテムは持てる様なので助かっている。そうじゃなかったら食料制限をしなければいけなくなって、大変だっただろうな。


「…この辺り一帯から隠れたダンジョンを探すって辛いなあ。」

 町の外には、草原、森林、山などがあるが、そのどこかに隠されているダンジョンを見つけてネガティブータを倒さなきゃいけないというのは難易度が高い。手がかりもなしにこの広大な土地をひたすら歩き続けるというのは骨が折れる作業だ。

「俺に任せてくれよ!こういうのを探すのが得意だし! 余裕だって!」

 なかなか頼もしい事を言ってくれるブッチだった。サイコロの目で沢山探すって事なんだろうか。

「あ、ブッチさん。今さらですけれど、こういう服があるので、装備するのはどうですか? その格好のままだと目立つと思いますので。」


 そういえば、私達は慣れてしまったけれど、腹巻きに廻しだけつけているんだよなぁブッチ。職業が力士になっているようなので、装備したくないのかもしれないけれど、エリーちゃんが手渡した服は着てくれるんだろうか。

「しょうがいないなぁ。あっ。二人とも見ないでよ! 恥ずかしいよ!」

 …いや、その格好から脱ぐわけじゃないんだから別にいいだろう。というか力士だから嫌がるかと思ったらそうでもないのか。

「ブッチはずっと力士の恰好でいたかったわけでもないんだ?」

念のため後ろを向きながら話しかけている。うーん、なんだか変な感じだ。

「そろそろ俺も新たな姿になるときが来たのかもしれないなとは思ったよ。お、これハーフパンツじゃん。いいねこれ。気に入ったよ。ちょっとぴちぴちな気もするけれど。で、上半身が…。こっこれは!?」


 いちいちリアクションがオーバーな気がするけれど、このうざさがブッチなのでしょうがない。また何かどうでもいいことにツッコミをいれるんだろうなぁ。

「狸が描かれているパーカーじゃん! 可愛いねえ。でもねっこちゃんは狸を…。ごめん何でもない。いやぁ可愛いねえ狸。ねぇ?」

…くそっ! 私もどう反応していいのか困るじゃないか! なんだよ! 確かに私は熱帯雨林で毒狸たちを散々ぶっ倒したよ! ただそれだけの話じゃないか! 別に私は狸が嫌いとか言うわけでも何でもなく、あの時は邪魔だったから倒しただけなのにってなんで心の中でこんな言い訳をしないといけないんだ!

「なんで私をじーっと見てるの!」

「可愛いでしょ!?」

「そういうのはブッチの言う台詞じゃないっての!」


 あー、もう、そんなことはいいからさぁ、さっさとダンジョンを探そうよ。それにしても狸が描いているパーカーってねえ。エリーちゃんが選んだのは、ああそうか。私が毒狸と戦っていた事とか最初に知らせる前に買っていたってことなのかな。それはなんだか残念だなあ。

「ふふふ。ねっこちゃんもその狸の尻尾可愛いじゃないか。」

「今更かい! ずいぶん前からつけているってーの! ああもういいから! さっさとダンジョンを探そうよ!」

「そこのおばけはそういう場所が分からないチウ?」

「エエ。ソウイウカンチキノウハアリマセーン!」

どこか偉そうなポーズをとって言う白いおばけ。全く役に立っていないじゃないか。


「マスターはどうでござる? 気配感知でネガティブータの位置が分からないでござるか?」

「残念な事に無反応だよ。」

 真剣に頑張って見ているものの、まるっきり気配感知には引っかかってこない。距離が離れているからだろうなぁ。ダンジョンの奥底とかいうんだったら多分感知できないだろうな。

「姉御。ここは手分けして探したほうがええんちゃうか。」

「それは絶対駄目。こういう時に手分けして探すとか言うと、大体一人ずつやられていくっていうのが定番だから駄目。」

 どうしてそこで手分けして探すんだっていうのは今までの経験ではよくあった。二人で探せば効率がいいなんて言われるのだが、戦力が分断されるって考えはないのだろうか。私はそういう意味では、手分けして探すとかいうのが好きじゃない。


「ねこます様。我が魔力でダンジョン感知をしてみます。時間がかかると思いますが、何か反応があれば、みなさんに知らせますので、安心してください」

 サンショウは頼りになるなあ。割といつも冷静だし。

「ねこますドノ。フアンソウナカオヲシテドウシタンデスカ。」

「ソウデス。ナニカナヤミゴトデスカ。」

「一応誰か近づいてきたりしていないかなぁって思って気配感知していたりしているだけだよ。でも誰か出て来たら嫌だなあ。」

 出来ればプレイヤーと接触したくない。この般若レディの姿をお披露目することになったら、何か色んな悪い噂が立ちそうだし。

「あれあれ? 第一ご主人は、他の人間と交流を深めるためにここに来ているんじゃなかったチウ?」

「それは極一部の人間に対してだけだね。その他は全く興味がない。」

 ドーラ先生や革製品のお店でハーツの店員さんなどとは仲良くしたい。他のプレイヤーについても少しは興味があるが、そこまでではない。そもそも私の正体を隠さなきゃいけない時点で仲良くなれるかどうかというのも怪しいし。

 それに魔者であることがネックになってしまっているので、それが伝わってしまったら、命を狙われかねない。だから交流を深めるのは必要最低限度が望ましい。うーん、折角オンラインゲームをやっているっていうのに、全然オンライン感がないけれど、これもしょうがないことなんだろうなあ。


「ねっこちゃんは、指名手配犯みたいになっているもんね。」

「本当にね。いつの間にかお尋ね者とか辛すぎるよ!」

 クロウニンと戦うことになった場合、私の事を魔者なんて呼んでくる可能性がとても高いので、そこからバレてしまいそうだ。それが人間化している状態でもされてしまったら嫌だなあ。

「もういっそ、自分からバらしていくスタイルでもいいんじゃないかな!」

「勘弁して。」

 いつでもどこでも命を狙われるかもしれないとか溜まったもんじゃない。それに、ここで私がやられたとしてもそれが一回では終わらないかもしれないというのがまずい。一回誰かにやられてしまった後でも私を倒せば魔者になれるなんて噂が広がってしまえば、そこからずっと狙われ続けるかもしれない。


「第一ご主人は、人気者だチウ。」

「そうやで。姉御は人気者やから嫉妬されてるんやで。みんな姉御のようになりたくてたまらんってことなんやで。」

「あたしだったら、今のねこますさんみたいのような状態だったらすごい重圧感じて、引き籠っちゃいそうですよ。」

「でもずっと魔者の大陸に引き籠っていてもね…。」

 自由がないなんて耐えきれない。私は自由でありたい。自分から制限プレイをするならまだしも、そうじゃないのなら、とことん何でもやっていい状況でありたい。

「簡単だよ! ねっこちゃん! 自分に逆らう者は死刑みたいなノリで、かたっぱしからぶっ潰していけばいいんだよ!」


 だからそれは、魔者じゃなくて魔王だと。魔王ねこます。うーん。悪くない響きな気がしてきたな。

「はいはい。それは置いといて、ダンジョン探そうか。」

 ネガティブータのダンジョンとでも言えばいいのだろうか。それを探して倒さなければいけないのだけれど、気になる事があった。

「向こうは、多分私が近づいてきているのが分かっているんじゃないかと思うんだよね。なのに自分の配下とかそういったものを差し向けてこないっていうのがねえ。」

「ふむ。ネガティブータは臆病者で、自分の領域まで入ってこないと、攻撃を仕掛けてこないと考えるのが妥当でござるな。」

 おっ。くろごまが私の言いたいことを理解してくれているようだ。

「分かったやで! きっと保身に走るタイプなんや! 自分は極力動かずに部下に任せておいたりする奴なんや! そんでもって、追い詰められないと自分から戦おうとしないタイプなんや!」

 だいこんも私が言いたいことをほぼそのまま言ってくれてるなあ。

「だいこん。オマエモ、ソウイウタイプダカラカ。」

「何を言っとるんや! ワイは積極的に動いているやで! 乗り物として使ってくれって宣伝までしているやで!」

「タタカイニモサンカシロ。」

「わんころに任せるやで。」

 あっ、またなんか言い合いが始まったなあ。この二匹は俗に言う喧嘩するほど仲がいい奴って感じなのでそのまま放っておくとするか。

「ワレワレガ、ネガティブータノイドコロをサガスコトデ、ショウモウサセヨウトシテイルノカモシレマセンナ。」

「コノフキンニ、ワナガ、シカケラレテイルカモシレマセン。チュウイシマショウ。」


 イッピキメとニヒキメも、私が言いそうな事を口にしている。あれ、どうしたんだろう。

「…みんなねっこちゃんのように疑心暗鬼になってきたんだよ。ねっこちゃんのように疑り深くなっていってるんだ。こういうことがあるかもしれないってね。」

 そうだったのか。それは良いことじゃないか。世の中ろくでもないことばかりが多いし、最悪の出来事に直面する事だって多いしな。既にそういう事態を想定できるのは良いことだ。


「ねこます様。既に敵の罠にはまっている、なんて可能性もあります。気を引き締めていきましょう。」

「う、うん。頑張ろう。」

でもこれはこれで、なんだか調子が狂ってしまうかもな。


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