第360話「準備万端」
現在執筆中です!頑張って明日には修正してあげます!
11/17 追記しました!
荒れ地で鎌を何度も振るい続け、ようやく制御できるようになったが、それを掴むまでに時間がかかってしまった。制御ができないと気づいたあの日から結局二週間後の土曜日になってしまったので、早く人間の大陸に行きたくてしょうがないと散々思っていた。そして今日はようやく全員の準備ができたので行くことになった。しかし、残念ながらビスケットだけは留守番する事になった。
「マスター! 俺の体を小さく作り変えられる道具とか、よろしくお願いしますね! 俺だけここにぼっちで残るなんてすごい寂しいですし! マジ頼みましたよ! あー寂しい! ブッチ先輩! マスターとラブコメ期待していますからね!」
「おぅ任せておけ! ねっこちゃんの角をうっかり折っちゃうようなラブコメイベントを発生させてやるから!」
「マジっすか! それは楽しみっすって俺は見れないじゃないですか! ああーいいなぁ!」
「良くないから! くだらないことを言ってないでさっさと出かけるよ!」
なんてやり取りなどがあって、今現在、海底洞窟の門の前にいる。あー、久々だなあ。そんでもって緊張するなあ。この門の向こうに敵が待っているかもしれないって思うとやっぱりなあ。
「この先にいきなり出てくるかもしれないんだっけ。それはそれで俺なら大歓迎だけどね。」
「さっさと戦うことになるのは悪くないんだけれど、この門が壊れたりしたら嫌だなあとも思っていてね。」
ありえなくもないのが怖い所だ。そしてこの門が開きっぱなしになったら他のプレイヤーも魔者の大陸に沢山来るようになってしまうのが怖い。
「まぁそんな緊張してもなるようにしかならないんだから、行くとしようか!」
「あいよー。それじゃ、海底洞窟の鍵を使って…と」
魔者の気配というのがどこにいても伝わってしまうのだとしたら、この先に待機されていてもおかしくはない。だから事前に鎌を持って奇襲に備える。
私の方はといえば、何も気配感知に引っかかってこない。この場所だからなのかどうかは分からないけれど。
「それじゃあ、また行くとするかね。人間の大陸へ!」
海底洞窟の門を開ける。開けた瞬間に攻撃されないように、そして誰かがこの隙に入ってこないようにみんなに警戒して貰う。何か起こっても大体ブッチがなんとかしてくれると思ってはいるが、頼り切らないで、私自身もすぐに反撃できるようにはしておいた。
扉が完全に開き、あっけなく向こう側に移動する事ができたが、こういう何もないと思った瞬間に油断するというのがよくあるパターンなので、絶対に安心しない。洞窟の中には何もいなかったし、気配感知には何も引っかかってこない。突然何かが現れた様子も無い。
疑心暗鬼になりながら、全員でゆっくりと門を出る。その瞬間、ほんの一瞬だったけれど、不気味な気配を感じたのを私は見逃さなかった。
「威圧!!」
「グギィ!!?」
私が威圧を使ってみると、背後から悲鳴が聞こえてきた。振り返ってみると色白くて丸っこい何かが地面に突っ伏していた。大体40cmくらいの丸い何かだ。なんだろうこれ。
「グヒィ。」
触ったら呪われるなんてこともありそうだったので、懐かしのゴブ棒を取り出して、つついてみた。なんかぶよぶよした感覚があった。
「これ、おばけみたいですね。」
エリーちゃんが、丸くて白いのを眺めてそう言った。あぁ、なんとなくそうじゃないのかなぁとは思っていたけれどやっぱりそう見えるよね。ということは、ゴーストロガノフ絡みだろうな。
「グギギ。マ、マジャ。マチ。マチガキケン。キケン。シキュウクルベシ。マジャ。」
そういえばゴーストロガノフに会った時もそんなことを言ってた気がするなあ。何が危険なのかは一切言ってくれなかったからついていかなかったけれど。何があるっていうんだろう。
「何がどう危険なの?」
「グ。グー!!」
丸くて白いおばけは、起き上がると宙に浮いてこちらをじろじろと見てきた。なんだか、ぬいぐるみみたいなおばけだな。意外と可愛い気がする。
「ネ、ネガティブータ! ネガティブータガ、マチノヒトビトヲクルシメテイル!」
「いいっ!? ここに来てまた新手のクロウニンかっ!? 勘弁してくれ!」
つまり、ゴーストロガノフは、私にネガティブータを倒せといいたいんだろうか。うわぁ、なんだよそれ、お前らクロウニン同士で醜い争いをしてくれよ。私としてはそっちで潰し合ってくれる方がお得なんだからさぁ!
「ねっこちゃん! これはチャンスだよ!」
「…一応聞いておくけれど、どのあたりが?」
「二匹まとめて強敵を相手にできて、すげー面白そうな戦いになるところが!」
「ぜんっぜんチャンスじゃないから! むしろそれピンチだから!」
だーっ! もう、この戦闘狂はこれだから困るんだ。まだ二匹同時に相手にすると決まったわけじゃないし、それに一匹を相手にしている時はもう一匹は相手にしなくていいはずなんだよ! ってそうなると今、私はゴーストロガノフと戦うようにはなっていないのか? となると、ジャガーコートのジャガーちゃんと戦うことになるんじゃ。
「それで。そこのおばけ君はどうして私の所にきているのかなぁ?」
「マジャ、マジャガイナイト、ネガティブータヲタオセナイ!」
「ゴーストロガノフが戦えばいいじゃん。」
「ゴーストロガノフサマ、アンマリツヨクナイカラムリ。」
…それはつまり、直接戦闘タイプじゃないってことか? だけど、クロウニンとか言うのに名前を連ねているのなら、強くてもいいはずだ。本当の力を隠しておいて、私に働かせようとしているんじゃないんだろうか。そういう知恵が回る奴ってこういう集まりに一匹はいたりするから、ゴーストロガノフがその可能性もあるな。
「マスター。ゴーストロガノフは戦いも強いと思うでござる。」
「え? 何か分かったのくろごま?」
「あたしが思うに、弱ければ、このおばけみたいなモンスターを生み出すことなどできないってことじゃないですかね。自分の仲間を増やすのって結構力を使うものだ思いますよ。」
確かに、そういうことも考えられそうだな。仲間を増やすだけの魔力とかなんらかの力があるのに私に手伝わせようとしているのが気に入らないなあ。
「オネガイシマス。コノママダト、ゴーストロガノフサマモ、マチモ、ミンナキケン!」
街が危険ということは、、先生も危険に晒されるってことだから嫌なんだけれど、ゴーストロガノフは別にどうなってもいいし、あわよくば、あの世に行って欲しいんだよなあ。うーん。難しい所だなあ。
「ねこますさんが悪い顔をしています。」
「多分、クロウニンの同士討ちを狙っているんだよ。楽に倒すにはどうしたらいいのか必死に悩んでいるんだ。絶対にそうだよ。俺、ねっこちゃんのことなら何でも分かるんだ。」
私の考えを読むブッチに腹が立ったが、ここでツッコミを入れたら図星になってしまうのでそれは辞めることにした。
(ジャガーコートにゴーストロガノフにネガティブータ。母上、最悪三連戦ということもあり得るのではないですか?)
ひじきの言うのが最悪のパターンの三連戦。可能性は低いけれど、そんなことがあってもおかしくない。だけど、それで済むのかなんて考えも出てくる。何匹も集まってきたことに触発されて、他のクロウニンも出てきてもおかしくはない。
確率はとても低いと思うけれど、割と私は不運な方なので、これ以上悪いことはおきないなんて考えない方がいいだろうな。
「…。ゴーストロガノフは今何をしているの?」
「ネガティブータノ、ノロイヲオサエテイマス。」
呪いかぁ。ネガティブータって安直な名前だけ気に、ネガティブな気持ちになってしまうとかそんなところなんだろうか。
「呪いかぁ、ネガティブータって名前だし、ネガティブな気持ちにさせられて、町中の人がやる気なくなったり疑心暗鬼になったりするようになるのかな。いたっ。何するのねっこちゃん。」
私が言いたいことをそのままブッチが言ったのがちょっとむかついたので軽く小突いた。
「ねこますサマ。ワタシタチハ、マチノナカニハイレナイノデスガ、ドウシマスカ?」
「あ。あー。そういえばそうだった。」
街の中で戦いが始まるってなったら困るな。私も般若レディの姿がばれたら街に入れなくなるかもしれないし。それと、魔者だってばれたりするのが一番やばいな。全プレイヤーから狙われるようになるだろうから。
「ねぇ! おばけ君! ゴーストロガノフとネガティブータはどこにいるのかな!?」
「グエエ。クビネッコヲ、ツ、ツカマナイデクダサイ。」
「ああ、ごめん。」
「ネガティブータハ、マチノソトカラ、ノロイヲツカッテイルヨウデス。マチノシュウイニカクサレタ、ダンジョンニイルヨウデス。」
「えっダンジョン!?」
ブッチがいた洞窟もいわばダンジョンなんだろうけれど、本格的なダンジョンが、あの街の近くにあったってことか。そうなると、恐らく最下層にでも隠れているってことなんだろうな。
「ダンジョン攻略かぁ。結構時間がかかっちゃうかもしれないね。」
ダンジョンは、敵を倒すのもそうだけれど、移動でも時間がかかってしまう。だから攻略するためにはじっくりとやっていかないといけない。
「でも、あたし達には転移石があるじゃないですか。」
「ダンジョンじゃ使えないなんてことがありそうだよ。まぁ<アノニマスターオンライン>では使えてしまいそうな気もするんだけどね。」
私としては、アイテムの持ち込みができないとかそういうダンジョンじゃないことを祈りたい。後はローグライクゲームのようになっていなければいいんだけれど、そこは行ってみないと分からないな。
「街の周囲のダンジョンを沢山探しまくらないといけないのは骨が折れるなあ。」
「せやろか? 隠されたダンジョンって結構みんな見つけとるんやないんか?」
「そうかもしれないけれど、そもそもその場所が分からないから困っているんでしょ。」
一体どこにあるのかが分からないというか本当にそのダンジョンで合っているのかどうかが分からないのが辛い。適当に一か所は周ってみてから、その後の事は考えるとしようかなあ。