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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第351話「般若レディは自信がない」

 熱帯雨林での激戦後、私達は草原に帰還した。草原は基本的に安全だし、変な奴が襲い掛かってくることもないので、とても快適だ。そしてここにはイッピキメとニヒキメが作った家があるので、だらだらしやすいというのもあった。ビスケットだけは、そのサイズの為に中に入れなかったので、拗ねてしまったわけだけれどしょうがない。

 私は、これからどうしようかなと考えたかったけれど、二週間ほどログインができなくなってしまった。当然だが、仕事が忙しくなればログインする気も起きなくなる。それでもログインしてしまうと、長時間プレイしてしまいそうなので、余裕がない時はプレイしないように気を付けた。


 そして、ようやくログインしたら、目の前にエリーちゃんがいて驚いた。

「おおっと! エリーちゃんこんばんはーっと。久々だね!」

 エリーちゃんを良く見てみたら、緑色のブレザーを着ていた。学校の制服そのものだった。街に行ったときに買ったんだろうか。

「ねこますさん! こんばんはー! 会いたかったですよ!」

 なんだかすごい元気いっぱいだけれど、何かあったんだろうか。

「ねこますさん、どこ行っても有名になっているので、会うのが楽しみになっていました。」

「え。あー…。」

 そういえば、魔者の存在が公になってしまったんだった。運営が余計なメッセージを流してしまったせいだ。でも、あれから二週間も経過しているのに、まだそんなに盛り上がっているんだろうか。


「エリーちゃん。魔者の事って飽きられたりしていないの?」

「むしろ勢いが止まりません。私もこの間まで知らなかったんですが、魔者ってこのゲームの伝説みたいなものらしいんですよ。」

 そうか伝説かぁ。人気があるんだなぁ魔者って。どうせ魔者である私が人気なんじゃなくて、魔者という存在そのものが人気なんだろう。私はなんでもお見通しだよ。

 私から魔者の称号を奪おうとする輩は沢山いるだろう。手段を選ばずに奪おうとする、そんな最悪な連中が、ね。

「なんでみんなしてそんなに魔者になりたいんだろうね。」

 魔者はかなりレアな称号だからとかそういう理由しか思いつかないな。伝説って言われてもそこもいまいちピンとこない。


「ねこます様。魔者の存在は特別のです。」

リッチのサンショウが語り掛けてきた。

「それは分かるんだよ。毎度のことながら魔者って結構人気があるんだろうなって。そこまで人気あるのが信じがたいよ。」

「ええ、なので人気の理由も調べてきましたよ!」

 おお、これでどうして魔者が人気なのか分かるぞ。今までずっと理由を知りたかったが、ついにそれが聞けるのか。エリーちゃんは、良く聞いてくれたなぁ。

「賢者って職業を聞いたことがあると思うんですが、この賢者の正反対かそれ以上に位置するのが魔者って解釈されているようなんですよ。後は、聖者の反対のようなものなので、魔者がかっこいいって思う人もいるみたいです。」

 賢者の正反対かあ。賢者と言えば上級職とか沢山魔法が使えたりとかするのが定番だね。でもおかしいなぁ、むしろそこは愚者ってことになるんじゃないだろうか。聖者の正反対っていうのはぴったりだからいいとは思うんだけれど。かっこいいって言うのは、多分強そうな言葉が大好きそうな少年の意見な気がする。


「間違ったイメージばかりが伝わっていくのは困るんだけれどなあ。ところで、そういう噂的な物じゃなくて、魔者はこういうことできるみたいな話は無かったのかな?」

「魔者の能力予想みたいな事をしている人たちはいましたね。魔者は、魔法やアイテムを創造できるとか、魔者は死ぬことはないとか、魔者は最強とか、魔者は町を数秒で滅ぼすことができるとか、凄いですよね!」

 うう、みんな期待し過ぎている。期待が重すぎる。偶像崇拝はよしてくれ。現在、魔者になっている私はみんなの期待を裏切る事しかできない。あ、でも錬金術でアイテムを作り出せるってところは間違いではないなあ。


「ねこますサマソノモノデスネ!」

「ワイも姉御そのものやと思うやで!」

 もう、たけのことだいこんってば、からかわないでくれと苦笑したのだが、全員が頷いていおり、いやそれはないだろうと、冷ややかな目線を送ったのだけれど、誰も冗談だと思っていないような気がして焦った。あれ? いつの間にかみんないるというか、全員いるのか。

「あのさぁ、私は誤解されるのが嫌なのではっきり言っておくのと、みんなにちゃんと理解してもらうように言うけれど、私は超弱い!!!」

「ねっこちゃんが嘘を吐いた! だめじゃないかねっこちゃん! なんでそんな嘘を言うんだ!」

「だぁぁああ! 威圧!!」


 仲間に向けて使うのもなんだったけれど、ここはしっかりと説明しておく必要がある。

「私はねえ! 誰がどう言おうと最弱の部類なの! たまたま運よく生き残ってこれているだけで、強くはないの! みんな分かった!? いいや分かれ!」

 多少強引だが、私は誤解されるのが嫌いなので、きっちりとみんなに理解してもらいたかった。ここまで言えばみんなも分かってくれるだろうと思った。

「でも俺、本気で戦ってねっこちゃんに負けたし…。真剣勝負だったよ?」

「ブッチニキが負けるとか、姉御…。」

 それも、たまたま運が、と喉まででかかったが、飲み込んだ。ブッチは本気でかかってきたと思うしそれを運で片付けてしまうのは流石に失礼だと感じた。いや、でも本当にたまたま勝てたようなものだし、いつだって、私は弱いし。

「ねっこちゃんには足りないものがある!」

「あたしもねこますさんには足りない物があると思います!」


「私に足りないもの。それは!?」

「絶対強者の自信!」

「自分が強いって自信です!」

 一応、少しは自覚があるんだよ? でもさぁ、私は、本当にゲームの腕前は大したことがなくて、何度も練習してようやくちょっと上手くなったなぁって程度にしかなれなかったので、そのあたり、まるで自信がつかないんだよね。ブッチのように、簡単に攻撃をかわせたりしないし。

 それに、自信なんてゲームをやっていると簡単に崩れていくんだよね。格闘ゲームをやれば、コマンド入力がきっちりできなくて負けた。パズルゲームをやれば、一瞬のミスで負けたし、ドライブゲームをやれば、沢山練習したはずのショートカットに失敗して負けた。アクションゲームだって、あと少しってところでノーダメージクリアができないこともあるしで、本当に肝心な時に失敗したことが沢山ある。ありすぎる。


 上手くいったこともそれなりにあったかもしれないけれど、苦い思い出ばかり蘇ってくるなあ。

「ねこますさんは、どうしてそんなに自信がないんですか!」

「ブッチみたいに全部の攻撃が回避できないから!」

「むしろできたらこえーよ!? 俺はこのサイコロの目を使っているのもあるから、ねっこちゃん達とは見えている視界が違うんだって。それと、ねっこちゃんってば、俺みたいにそういう能力がないのに攻撃を回避している時あるけれど、むしろあれがなんなのか俺は知りたい。何の極意?」


「ブッチの真似をしてみているだけだよ! きっとこの敵だったらこういう動きをしてきてこっちに斬りかかってくるだろうから、この位置が危ないみたいな!」

「えい。」

「わっと! 何してくれてんの!」

 いきなり張り手をしてくるブッチだった。なんなんだよもう。

「こういうのをあっさり、ではないけれど回避されちゃうんだよねー。というわけでねっこちゃん。本気でそろそろ自信を持ってもいいと思う。今はあまりに謙遜っていうか、自分が弱いって思い込んでいて正直うざい。」


 はー!? 私が強かったら! それこそクロウニンだってもっと楽に倒せただろうし、これまでの敵との戦いが苦戦しなかったっての! 毎回毎回苦労して倒してきた敵ばっかりだよ!

「あー…。」

 思わずその場に座り込んでしまった。というかこれ、ある意味で仲間割れだな。うん、こういうのも悪くないな。率直な意見を述べられているだけだろうしなあ。衝突するのは大歓迎だ。とはいえ、私も自信なんて持ちようがないんだけれどなあ。

「思い当たる節があるから反論ができない。だけどなー、毎回敵と戦うと苦戦してばかりなんだよ私もさぁ。もうちょっとささっと勝てれば自信がつくんだけど。」

「それは贅沢だよ。俺だってヴァンパイアロードを倒すのに何度も何度も攻撃してやっと倒しているようなもんだし。そこでねっこちゃんがあっさり倒してたら、悔しすぎる。」

「え。だってブッチは楽に倒しているんじゃないの?」

「流石にそれはないって! ぜってー勝つって戦っているけれどね! 俺はすげぇ! 天才だー! って思いながら戦って頑張ってる。」

 いや、それで上手くいってるんだから天才じゃんと言いたくなったけれど、ここでも言葉を飲み込んだ。

「んー難しいなー。」

 となると、これは私の性格上の問題だろうな。だけど自信が無さすぎるというのは確かにみんなに不安を与えたりしてしまうかもしれないから、改めないとか。前も似たような事言ってた気がするけれど時間が経つとそういうこともまた忘れるだよなあ。ああ、私やっぱり自信がないのか。


「というわけで、クロウニンとやらをそろそろぶっ潰しにいこうぜ!」

「この流れでそれを言うのが凄いよ!」

「だって、あいつらがいるせいでねっこちゃんが自由に動けないみたいだしさ。」

「んんー。でもドラゴンフルーツが。」

「集めておいたよ。」

「え?」

「沢山集めておいたから大丈夫だって話。熱帯雨林は復活していたから、そこでひたすら集めておいたよ。あの時のヴァンパイア達にも手伝ってもらったよ。」


 …。まじか。ということは、クロウニンに挑戦できる状況になったというわけか。

「…あーー。はいはい! やればいいんでしょやれば! 開き直りだよもう! いいですよ! 私が魔者ですよ! 魔者だから勝ちますよ! 勝てばいいんでしょ! やるよみんな! クロウニンがなんぼのもんじゃい! むしろ私が苦労人だっての! よし! 人間の大陸に乗り込むとしようじゃないか!」


「おおおおおおお!」

なんか訳の分からないノリになってしまったが、自信をつけるために、あるいは自信を取り戻すためにも、ここから頑張っていかないといけないな。アイテムが揃っているんだから、戦わないで逃げ続けるなんてことをしているのも嫌だし。よおおおおし! 久々に気合い入れていくか!


ねこますは意外と打たれ弱い気がしています。まぁか弱い般若レディなのでしょうがないですね。

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