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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第349話「群れが来た!」

 しまった、と思ったがもう遅かった。だいこんがいれば真蛇モードとやらになれるようなので、もしもの時はそれを使おうと思っていたんだけれど、既に移動してしまった。傍にいるのは、このでかい足だけのゴーレム、ビスケットのみ。

 ヴァンパイアロードが最後まできっちりブッチと戦ってくれればいいんだけれど、そうならないかもしれない。死にそうになった時に最後の力を振り絞って呪いをかけてくるようなモンスターがいるけれど、そういうのと同じように私を狙ってくるかもしれない。

 気配感知では、ヴァンパイアロードの反応がとても大きくでているが、私の方に近寄ってきてはいない。まだブッチと戦っているのは間違いないと思うが、急に近づいて来る時に備えて、鎌と錬金術士の杖を取り出しておく。


「ところで、マスターは、ヴァンパイアロードに何か恨まれるようなことをしたんですか?」

「一切ないよ。だけど、私の前に魔者だった奴は何かしたかもしれないね。」

「へぇー。じゃあそいつのせいでマスターが目の敵にされてるってことですか。」

「そうなんだよ。迷惑な話だよ全く。」

 前任者が一体何をしでかしてきたのか分からないけれど、どうせろくでもないことをして、ヴァンパイアロードの恨みを買ったってところだろうな。だからどいつもこいつも、後任の魔者である私も同じように警戒して、あわよくば、亡き者にしてやろうなんて考えになっているんだろう。

 ヴァンパイアロードからは、出来れば魔者について色々聞きたいんだけれど、ろくでもない目にあっているのならそんなことは聞けないだろうなあ。魔者の事をもっとよく知りたいんだけれどね。


「とりあえず、ブッチの邪魔にならない程度には近づいておこうかな。」

「あいあいさー。早く俺もブッチ先輩と仲良くなりたいなぁ。」

 …多分すぐに仲良くなれると思う。うざくなること間違いなしな気もするけれど、それは言わないで置いた。

 私とビスケットハ、焼失した熱帯雨林を歩き始めた。まだ燃えかすが残っているところもあり、煙が立ち込めているので、なんだか空気が悪い感じがした。雰囲気が出ていると言えばそうなのだが、VRで

あまりよくない気分になるとは思わなかった。

 この状況に思わずむせてしまったが、現実では健康への害は一切ないようなので、ここでの気分が悪くなるだけだ。現実にまで健康を及ぼす場合は、強制的にログアウトされることもあるようだが、今はそうなっていないので少し安心した。折角ここまで来たのにそんなことになったら落ち込む。


「ん! なんか敵の反応が沢山! こっちに近づいてきているから注意ね!」

「おーっ! 一体何がでてくるってんでしょう!」

 何十匹ものモンスターの群れがこちらに向かってきている。反応自体はそう大きくないので大したことのないモンスターだと思うが。どんな敵なのかは分からない。そこまで強くはなくても、数で押してくる系だとも思うので、気を引き締める。

 こちらに向かってきているということは私達のいる場所が分かっている奴ということになるが、ヴァンパイアロードが何かしたか、あるいはその仲間が何かしたのかもしれない。金髪の女ヴァンパイア達の可能性もあるが、それならそれで倒すだけの話だ。

 一体何が出てくるのか、じっとこの場で待つ。そして向かってきた者の正体が判明した。こうもりだ! 沢山のこうもりがこちらに向かってきている! というか結構でかいぞあれ!?

「~~~!」

 バサバサと羽の音だけが聞こえてくるが、何か言葉を発しているように感じる。うろおぼえだけれど、こうもりって超音波を出しているんだったか。


 どんどんこちらに近づいてきている。こうもりにしてはサイズが大きい。体長1メートルは超えている気がするが、こんなのが群れできているとか不気味過ぎた。こんなのと戦いたくない! というか近づいて欲しくないと思ったので、早速いつも通りに真空波を使うことにした。

「ええい! 真空波!」


 私が鎌を振ったその瞬間、前方にこれまで見たことのない大きさの刃が幾重にも生み出され、こうもり達を一網打尽にした。大きな真空の刃が、羽や体を斬り落としていくが、その一撃で、こうもりは地面に落下し、二度と動かなくなった。

 今、こちらに向かってきた蝙蝠は、およそ十数匹程度だったが、その全てを倒していた。たった一振りの真空波が、ここまでの威力を発揮するとは思わなかった。

 当然すぐに、これは漆黒の壁から闇の素を吸収したからだということに気が付く。だけどまさかここまでの威力を発揮するようになるとは思わなかった。もしかすると、他のスキルの威力も軒並み上がっているんじゃないだろうか。

「マスターすげぇ! こうもりをあっという間に片づけるなんて!」

「そんなこと言ってる場合じゃないって! まだまだ来てるからビスケットも手伝って!」

「あいあいさー!」


 そこから、何十匹という数のこうもりがまとめて襲い掛かってきた。今度は。ビスケットがこうもり達を蹴散らしていく。ただの蹴りだけなのに、ビスケットはサイズが大きいのでまとめて倒してしまっている。

「どうしたー! その程度かー!」

 ビスケットが叫んだせいなのか分からないが、そこから更にこうもり達が増加していく。今度は百匹以上いる。なんでこんなに増えているのかは分からなかったが、雑魚敵くらいどうにでもなる。だけどこの後にヴァンパイアロードがこちらに向かって来たら大変なことになるので、スキルはあまり使いすぎないよう極力温存しておくことにした。


「それにしても数が多い!」

「きっとこいつらマスターのファンなんですよ!」

「全然嬉しくない! 帰って欲しい!」

 こんな大きいこうもりが大群でやってくるとかもう勘弁して欲しいっての。今はビスケットが、その巨体でぼこぼこにしているけれど、私の方にもそこそこきてしまう。本当に多い。今しがた何十匹も倒したのに、すぐにまた出現してくる。ということは、無限湧きしているってことだろうな。嫌だな、なんでこんなに湧いてくるんだ。

「倒しても倒してもきりがないですよマスター!」

「そういう風になっているんだと思う! こいつらのボスがどこかにいるか、あるいはヴァンパイアロードがボスだろうから、それを倒せば消えるはず!」


 だけど、そんなことを言っても、ボスがどこにいるのかも分からないし、ヴァンパイアロードだった場合は、ブッチが戦っているのでその邪魔をするわけにはいかない。なんて面倒くさい状況なんだ。

「あーもう面倒くさいけれど、ここでひたすら狩りまくるよ!」

「望むところです!」

 私は望みたくないんだけれど、出てくるのだからしょうがない。それにしても、ヴァンパイアロードはブッチと戦っている状況でこんなことが出来るものなんだろうか。あるいは、この蝙蝠で攻撃をしかけてきているのは別個体のヴァンパイアロードなんてことだったりしないよね。

 実はボスは二匹いましたっていうのもゲームでは定番な展開なので、あながちありえない話ではない。だけど、ここでヴァンパイアロードが二匹いるとしたら、いいや、既にいたとしたら、ブッチはその両方と戦っているかもしれない。


「おいしょっと! おりゃっと! 邪魔だっての!」

 前線に立っているのはビスケットなので、沢山蹴散らしてくれている。そこから逃れた残りのこうもりを、私が迎撃していく。できるだけスキルは使わないで、鎌だけで攻撃していく。

「不気味なんだっての!!」

 こいつらでかいこうもりなので、飛んで近づいてくると結構びびる。ヴァンパイアよりもヴァンパイアらしい見た目なので、普通に驚く。ゲーム内では夜だし、その夜にこうやって襲い掛かってくるので不気味でしょうがない。

 照眼もここでは使わない。使った後の問題が大きい気がするし。ひょっとしたらこいつらは光が苦手で、使えば結構効くかもしれないが、やっぱりそれも辞めておくことにした。


「斬る! 斬る! ひたすら斬る!」

 鎌で簡単に斬ることができるのが救いだが、それでも量で押されると、うっかり噛まれたりしてしまう。噛まれたら私もヴァンパイアになったりするのかと思ったけれど、そんなことは無かった。

「こいつら多いです! 多すぎますねぇ! さっさとくたばれ! オラァ!」

ビスケットが、何匹も蹴り飛ばしているにも関わらず、敵の勢いが止まらない。そのせいでビスケットが苛立っているようにも見える。

「うわー。また増えた! なんでこんなに処理しているのにどんどん出てくるんだ!」

「そういうものなんだと思うしかない! でもこれ、結構しんどいし、ずっと続けてたら駄目だね!」

 大量に出てくるこうもりを何匹も屠っていく。なんで私はこんな奴らの相手をしなきゃいけないんだろうと思い始めてきた。

「折角強くなったのに、こんなのばかり狩りたくないっての! もっとこう、燃え上がるようなゲームプレイって…難しいか。」


 愚痴を言葉に出していくが、いまいち盛り上がりにかける今の状態がなんだかやる気を落としていくような気がしている。

「このこうもりども! 邪魔するな! 消えろ! 私に近づくな!」

 鎌をぶんぶん振り回すだけの簡単なお仕事、というわけではないのだけれど、私は、ひたすら鎌をぶんぶん振り回していた。

「マスター。もうスキルを使ってしまってもいいんじゃないですか?」

「温存しておきたいんだって! 絶対後ろに控えている強敵がいる!」

 どんな奴なのか分からないけれど、何かがいるって何だろうと気になって


「あぁもう! こいつらすごいうっとおしくなってきましたよマスター」

「ああうん! 奇遇だね。私もそんな風に思っているよ。」

 コウモリはもういいよ! ってくらい湧いてくる。それにしたって多すぎる。

「ブッチは本当に何しているんだぁああ!」

「おっ! ねっこちゃんだ。やぁやあ。」

「え。」

 そこで突然ブッチが現れたので私は驚いた。あれ、ちょっと待ちなさいって、ヴァンパイアロードとの戦いはどうなったんだ!? いきなりここに出てきたのも何でだ。

「おっとブッチ!? 戦いは!? どうなったの!?」

「へへへ、知りたい?」

「そういうのいいから! 知りたいので単刀直入に説明よろしく!」

「じゃあ単刀直入に言うと。」


「俺がヴァンパイアロードになった!」

 …え?


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