表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
348/473

第348話「帰りを待つ」

 漆黒の壁は私に吸収されて消滅した。私の体には膨大なエネルギーが溜め込まれたと思ったが、どうやら私の素の力になってしまったようだ。なんだか力がみなぎってくるような気がするし、レベルアップしたようなものなんだな。

「あの力を、の、飲み込むなんて。それにその気配…。」

 あれ、金髪の女ヴァンパイアとおじいちゃんヴァンパイアの二匹が私にびびっている? もしかして威圧が自動で発動しているような状態なのか。強くなって暴発しているような感じか。これは抑えないとだめだな。こんな感じか?

「これならどう?」

「流石は魔者と言ったところですな。まさかあの闇の力を全て自分のモノにしてしまうとは、恐れ入りました。」


 力を吸収して強くなるって言うのもなんだかおかしな気がするけれど、これは多分闇の素と私の相性が良かったから出来ただけじゃないのかなあ。闇の錬金術士の弟子でもあるからなぁ私。これが火とか水とかだったら失敗してただろうな。

「とりあえず、これで一安心だけれど、ブッチがどうなっているのかが問題だね。」

「ブッチ殿が苦戦しているとは考えられませんが、単純に時間がかかっているのだと思います。」

 くろごまの言う通りだろうなぁ。こればかりはしょうがないだろう。相手はボスなんだし、ましてや不老不死なんて言われている存在なんだから、そう簡単に倒せるって事は無かったんだろう。


「ねこます様。このあたりは鎮火しましたが、まだまだ終わりは見えません…。」

 熱帯雨林の大火災は広範囲に渡ってしまっている。消火活動をしようにも限度がある。はぁ、私のドラゴンフルーツも入手できなくなってしまうのかなぁ。うう、安易に燃やすんじゃなかったかなあと思ったけれど、先が読めなかったし、あの時はこれが最高の判断だと思ったからしょうがないか。

「ねこますドノ。ブッチドノノトコロニハイカナクテイインデスカ?」

「モエテイテアブナイトオモウノデスガ。」

「それでも私は、ブッチがヴァンパイアロードを倒してくるまで待つよ。」

 私はブッチに任せたのだから、そこは信じて待たないと納得ができなかった。そりゃあ傷ついたりしている可能性はあるのかもしれないけれど、それでも余計な事をしたくはなかった。


 私にも経験がある。対戦パズルゲームをやっていてとてもいいところで中断させられた時だった。その後、再開すると、相手がペースを崩してしまい偶然私が勝ってしまった。その逆に負けた時もあるのだけれど、あの時中断させられなければ、なんてもやもやすることになってしまった。そのようなことがあって以来、できるだけ中断はしないで最後まできっちり終わってからゲームを終了するようにプレイするようになった。

 RPGでは、とても長いダンジョンがあるので、そういう時には普通に中断するけれど。

「だけど、気にならないかって言われたら気になるんだよね。」

 ヴァンパイアロードは、私が漆黒の壁を消したことに気が付いているはずだし、もしかしたら、ブッチとの戦いをやめて私がいるここまで向かってくるかもしれない。もし私に攻撃を仕掛けてきたら、その時は流石に反撃をするけれどね。

「…なんか凄いエネルギーが集まっているような気がするんだよねぇ。」

 ヴァンパイアロードは気配感知でかなり大きな反応を示しているが、それが先ほどから更に巨大な反応を示し始めた。ブッチに追い詰められて最後の攻撃を仕掛けてこようとしているのかもしれない。広範囲に渡って漆黒の壁を作り出すくらいの力を持っているのだから、そのエネルギーをまとめてブッチに放ったら、無事では済まないかもしれない。


 ブッチだけではなく、この熱帯雨林全域に放ってきたとしたら相当まずいことになるので、今、ここにいるみんなだけでも、熱帯雨林の外にだしておこうと私は決めた。

「みんなは、熱帯雨林の外に行ってて。私はここでブッチを待っているというかヴァンパイアロードが私を狙ってくる可能性もあるから、みんなもとばっちりがきそうだからね。ああ、私が心配だからと残るのは無し! みんながここにいても私が困るだけだからね!」

 心配なのでここに残ります! みたいな展開はよくあるけれど、今回、それは不要だ。足手まといになるというか、本当に邪魔にしかならないと思われるから。ここでヴァンパイアロードの一撃で誰かを失うことになるのは嫌だし。

 いつものことだけれど、私は甘い。そしてリスクを最低限にすることばかり考えてしまう。これが私のゲームスタイルだからと言えばそうなってしまうけれど、このみんなが死んだら終わりみたいな状況をなんとかしたいなあ。


(私は、いつでも一緒にいられますけれどね!)

 ひじきはまぁ召喚獣だからね。でも私が死んでしまった場合、ひじきとの契約とかってどうなるのかな?)

(契約が解除されてしまうでしょうね。その場合は、私は依り代を失って、樹海に戻ってしまうことでしょう。)

 ああ、そうなってしまうのか。ん、となると召喚士とか死ぬと全て失うようなものなのか。それは結構きつい気がするな。デスペナルティが厳し過ぎな気がする。

(今さらですけれど、私が未熟なので、しっかりとした契約ができていないのです。もしも母上との間で契約をしっかりと結べれば、常時姿を現すことも簡単にできるようになるのですが。)


 …むしろ私も未熟だったりするんじゃないだろうか。いやそこはまぁいいか。でもここでひじきがいてくれるというのは心強いな。

 最近<アノニマスターオンライン>をプレイしていて、仲間のみんなに囲って貰えているから楽しくできているんだなって思うところがあるし。プレイヤーの仲間は、ブッチとエリーちゃんしかいないけれど、大人数がいなきゃいけないってわけでもないしなあ。

「ねこますサマ。デハ、ワタシタチハシジドオリ、ネッタイウリンノソトデタイキシマス。」

「うん。よろしくね。で、後はそこのヴァンパイア達だけれど。」

「私達をどうするつもりだ。」

「お前らは、ヴァンパイアロードの所以外になら好きに行くと良いよ。」

「それはそれは、ありがとうございます。」

「ああ、一応言っておくけれど、お前らがどこへ逃げても追えるようになっているから、安心していいよ。」

「なっ!? それはどういうことだ!?」

 あいにく、そんな能力は私にはないけれど、闇の素を吸収して強くなったことだし、このくらい嘘を言ってもばれないと判断した。

「さぁてね。ああ、私に襲い掛かってきたらその時はまたボコボコにするからそれもよろしく。」

「くっ。ふざけおって。」

「では、吾輩たちはこれにて失礼します。行きましょう。」

「キル! だがしかし!」

「ここはこの方の言う通りにした方がいいです。さっさと行きましょう。」

「くっ! ねこますと言ったな! この屈辱! この借りはいつか返すぞ!」


 そう言ってヴァンパイア二匹は割とあっさりと消えていった。あいつらやっぱりかなり体力が回復していたんだな。まぁ気づいていたけれど。

「マスター。あいつら倒さなくてよかったんですかー? ああいう奴らって生かしておくとろくなことしないと思いますよ。きっとマスターの事を恨んでてて、ものすごい数のヴァンパイアを引き連れてきて、マスターをぶっ潰そうと命がけで挑んでくるかもしれません。」

 何その復讐劇は。そこまで復讐に命をかけられるのか。おっとそんなことより、なんでまだここにいるんだビスケットは。

「あーほらほら! みんな早く行った行った!」

「そうそうー、先輩たちはみんな先に行っててー!」

「ビスケット! お前も行くんだよ!」

「嫌です。」

「は!?」

 な、なんで急に聞き分けの悪い子供みたいな事を言いだすんだよ! 他のみんなはもう駆け足で移動し始めたって言うのに! おいおい! 勘弁してくれ!

「何で嫌なんだ。」

「だって、俺はマスターと出会ってまだ短いですし。こういう命の危険みたいな状況になったことってまだ全然ないので、距離がありますよね。その距離をここで縮めておきたいんです!」


…だああああ!? このポンコツっぷりがまたここで出てきたか!? たまに意味不明な事を言いだすことがあったけれど、こんな時にそんなことを発揮しなくてもいいんだっての! 確かにこういう時はなんだっけ、吊り橋効果だかなんかそういうのがあるのかもしれないけれどさぁ! 距離があるっていったってそういうのは少しずつ縮めていけばいいじゃないか!

「少しずつ距離を縮めていけばいいじゃん!」

「嫌です! 俺もたけのこ先輩と同等、いやそれ以上にかわいがってもらえないと嫌です! たまにたけのこ先輩をもふもふしていて嬉しそうにしていたのは忘れていませんよ! 嫉妬です!」

 まさか見られていたなんて! ってそういうことじゃないっつーの!

「だー! だからって、そんなすぐに信頼関係なんてできるわけないでしょ!」

「ここで一気に好感度を上昇させるんです! 俺はこういう所負けず嫌いなんです!」

くそー! この二足のゴーレムめが! なんでこういう時は強情なんだ! 確かに私はえこひいきしている感じはあるけれど、いや実際しているけれどさぁ! まだ仲間になったばかりのビスケットをたけのこ並みにかわいがれなんてできるわけないだろ!

「後輩って言うのはですねえ。不安になるものなんですよ。先に入った者たちだけの世界が出来上がっていて、後からきた者は、どれだけ頑張ってもそれを共有できないんですから。」


 うっ! 一理ある。ギルド立ち上げ時からいたメンバーと途中参加したメンバーに距離感ができてしまい、そのあたり差別があって、徐々にギルド内でも揉めていって崩壊していくようなノリは確かに私も経験してきた。

「あっ! 今そういう経験あったって顔してましたね!」

「ああもう! 分かった分かった! だったらついてきなさい! 死んでもしらんからな!」

「仲良くあの世に行くのもいいかもしれないですね。」

「私はまだ死なないっての!!!」

 はぁあああああ。なんなんだよビスケットってば。こっちはかなり緊張感持っていたってのに、おかげさまで肩の力が抜けてしまったよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ