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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第346話「漆黒の壁」

 漆黒の壁は、飛行を使えば飛び越えられるいけばなんとかなるのではないかと思い、たけのこに飛行を使ってみたのだが、どこまでも高くそびえ立っており、飛行では乗り越えることができない高さまで伸びているようだった。なかなか手強い壁のようだ。

 地上に戻った後は、漆黒の壁に体当たりしてみたのだが、びくともしなかった。鎌で攻撃した時は霧散したのだが、今回それはなかった。そして、これはとてもまずいことだと気が付いた。ここで気持ちをすぐに切り替える。やはりまずいと思ったことは隠すのではなく、伝えるのが重要だろう。緊張しながらみんなに伝える。


「一応可能性の話だけれど、この壁が迫ってきたら私達、押し潰されて死ぬことになるよ。」

 全員が凍り付いたような表情になる。それはヴァンパイアたちも同じだった。突然そんなことを言われてもみたいな感じだった。

「ねこますサマ。ソンナニマズイジョウキョウナノデスカ?」

「この壁が熱帯雨林全域とまで言わなくても、私達を囲うような位置にあるのは確実だと思う。それでこの壁を徐々に狭めていけば、圧死するだろうね。」

 冷静に、淡々と話す私だった。こういう時は、焦りを見せてはいけない。私はこの、ももりーずVのリーダーなのだから。

「姉御。かなり嫌な予感がするんやが。もし、この壁が迫ってくるんやったら、ワイら、この熱帯雨林の奥に行かないといけないやで。でも向こうは燃えているやで。」

 だいこんの言う通り、押し潰されるか焼け死ぬかどちらか選べと言われているようなものだった。


「そういうこと。まぁ火についてはある程度対処方法はあるからなんとかなりそうな気もするんだけれどね。問題はやっぱりこの壁。」

 びしっと壁に指をさす。この壁を突破する方法が恐らく隕石拳しかない。だけど隕石拳を使っても私だけしか出られないかもしれないし、もし私だけが脱出してしまったら、隕石拳は制御不能になってここに戻ってくることができなくなる。これが問題だ。

「ねこますサマノ、オオキナイワニナルスキルデハ、ダメナノデスカ?」

「私が攻撃した瞬間にみんなも一斉に脱出するならいけると思うけれど、タイミングがどんなものなのか分からないからね。簡単にはいかないと思う。」

「オオ、カノウセイガアルナラ、ソレデジュウブンデス。」

「ウム、ねこますドノニハ、フカノウガナイハズダ。ナントカデキル。」

 このリザードマン達! 褒めても何もでないぞ!


「楽観視はできないからね! ヴァンパイアロードが何か仕掛けてくるかもしれないし。」

 私の命だけは何としても奪おうとしている気がするんだよなあ。だからこうやって逃げられないようにしているんだと思うし。一応他の手段もある。今はだいこんがいるから、真蛇モードとかいうのになることができる。これがどんなことになるのか分からないけれど、多分強くなれるはずだ。だけど、こういう強くなるスキルって何らかのリスクがあると思われるからそう簡単には使えない。

「ブッチが勝ってくれれば全部解決することだから何も考えなくてもいいってのはあるけれど、ヴァンパイアロードが死んで発動するスキルがあるかもしれないしねぇ。で、そこんとこどうなのかな、そこのお二人さん。」

私は威圧を使ってヴァンパイア達を睨みつける。

「私は知らない。ロード様が死ぬなど考えたことが無い。そしてロード様が必ずお前らの仲間を死に追いやぐっ!?」

「もしかして鞭が好きなのか? と思ったけれどそうでもないようだね。はい次の方どうぞ。」

「ロード様は死にませんよ。不老不死ですから。」

「その通り! ロード様は不老不死!」


 不老不死ってよく聞くけれどさぁ、細切れにされてもそれが再生されて生き返るってことでいのかなあ。絶対に死なないってどんなものなのか気になるんだけれど。細切れにした一部をどこかに保存しておけば、完全復活できなくなるとかありそうな気がするし、不老不死なんて幻想じゃないのかな。絶対に死なないって言うのがどういうものなのかって考えるとそうじゃないかと思うんだよなあ。


「私はヴァンパイアロードの事を何も知らないけれど、不老不死だから何って感じだからね。あと、やっぱりブッチならなんとかしてくれると思うし。」

 ブッチが倒してくれることは私の中では確定事項なのだけれど、時間がどれだけかかるのか分からないのがきついところだなあ。

「お前らは、薄情者だな。たった一人でロード様に勝てるわけがないだろう。どれだけ信頼していようが、あのお方に勝てるわけなどないのだ。」

「ヴァンパイアロードも薄情だよね。お前らのこと見捨ててるし。」

 ここで沈黙する、私と金髪の女ヴァンパイア。実際、ヴァンパイアロードはこいつらの事はどうでもいいと思っていそうな気がするし、他のヴァンパイアの扱いもあまりいいものじゃなさそうだ。


「ロード様は、私達ヴァンパイアの最上位の存在だ。そもそも私達とはぐっ!?」

 なんか妄信しているような発言が出てきそうだったのが苛ついたので電撃の鞭で叩いた。

「それで、他のヴァンパイア達はどこにいるんだ? お前ら二匹だけしかいないけれど、この熱帯雨林の中に何匹もいたんじゃなかったのか?」

「…あなたは、我々に何が聞きたいのですか?」

「沢山ありすぎてねぇ。答えてくれるなら大助かりだけれど。」

「いいでしょう。吾輩が答えられる範囲であれば答えます。」

ほほう。本当に答えてくれるのかな?


「むしろ答え合わせ、をして貰おうかな。ヴァンパイアロードは、この熱帯雨林にいるヴァンパイアを守るために戦っているんだろうけれど、魔者の私を最優先で殲滅しておきたいってことが分かったよ。きっと過去の魔者にヴァンパイアの仲間を沢山倒されたって事じゃないのかな。」

「そうですね。あなたとは違う魔者ではありますが。」


 ヴァンパイアロードが私を狙う理由は、魔者絡みだろうけれど、過去の魔者に何をされたのかというところまでは分からない。これまでの話から、私の前の魔者はろくでなしで、何かをやらかしたようなので、私がそのツケを払わされている。最悪だな。

 魔者の設定が、私の行動の足を引っ張る事が多いので、魔者とは何かと本気で本気で考えなければいけないとは思っていた。

 私の予想だと、私より先に魔者になったプレイヤーがいたんだと思う。プレイヤーであれば、色々と無茶をしでかすことがありそうだし。私は魔者として大して強くはないけれど、もしかしたら私の前の魔者達は、強力な力を手に入れていたんじゃないだろうか。それでその力を使って好き勝手に暴れ尽くしていたかもしれない。

 錬金術士の杖にいる魔者というのNPCの魔者、すなわち元からゲーム内に存在していた魔者ということになるのだろう。このNPCの魔者はまだおとなしい方な気がしてきた。私はオンラインゲームのプレイヤーが大暴れしているのを実際に経験したことがあるので、多分それよりはマシだと思っている。

 私がプレイする前の<アノニマスターオンライン>というのがどういうものだったのか分からないけれど、紆余曲折を経て、プレイヤーが死亡し、魔者の称号を持ったプレイヤーはいなくなってしまったのだろう。


 魔者の存在が空席になった状態で、魔者の部屋に私が到達してしまった結果、勝手に称号が譲渡されたような形になってしまったんだろうなあ。嫌になってくるけれどしょうがない。

「一応言っておく。私は、前の魔者と違って、やりたいことはそこそこ平穏に行きたいってことなのであって、無駄に争いをしようとは思っていない。」

「あなたは、熱帯雨林の有力なモンスター達を撃破していたと聞きましたが。」

「ドラゴンフルーツが欲しかっただけなんだよ。クロウニンと戦わなきゃいけない都合、ないと困るし。そもそもクロウニンとは戦いたくなかったんだけれどね。」


 認めたくない事実だけれど、世界が魔者を敵と見なしているかのようだ。現状プレイヤーからもクロウニンからも、そして先代、いや歴代の魔者たちが迷惑をかけた全ての存在から私は恨まれているようなものだ。だからこそ、些細な事がきっかけで争いが勃発してしまうのだろう。ふざけた話だ。

(母上、私は母上が争いばかりを望んでいないのは知っていますよ。むしろいつも頭の中には薬草の事しかないって言うのも知っています。)

 薬草の事しか頭にないってそんなことないよもう! 薬草以外の事だっていつも考えているし、薬草がないと困るから考えているだけだよ!

(やっぱり夢中になっているじゃないですか。)

 ああうん分かった分かった。この状況で脱線したらなんだし、別な事を考えるとしよう。


「ヴァンパイアロードは、過去の魔者に何かされたから手を出したって結論を出すけれど、まぁそうだとしてもこの漆黒の壁に、燃える熱帯雨林。こんな事になってしまったんだから、もう倒すしかないね。」

 誤解があってもこうして先手をとって攻撃を仕掛けたのだから戦うしかない。これで魔者の評判が落ちようがそれもどうでもいい。元々地に堕ちているし。それに私はいい加減こういう面倒な事を終わらせたい。

「ロード様が、あなた以外に負けることなどありえません。」

 おじいちゃんヴァンパイアはそう信じているようだった。ってあれ、私には負けるのか。なんでよりによって私だよ。

「あのさぁ! ここでお前たちにも、そんでもってみんなにも納得して欲しいんだけれどさぁ! 私はこの中で最弱だからね!!」

 むきになって大声でお知らせをする私だった。そろそろ私の弱さに気づいて欲しい。魔者とか称号があっても大して強くないことに。

「ねこますサマ。ウソハヨクアリマセン。ココニイル、ゼンインガ、ねこますサマニ、カツコトハゼッタイムリデス。」

 たけのこがじっと私を見つめて進言してきた。妄信的になっている! だめだそんなのは! 誰かに妄信するのは絶対よくない。私もブッチなら最強みたいなこと思っていたりするけれど、それは事実だしさ。だけど、みんなはそうじゃないでしょう! というわけで、こんな状況ながらみんなに私が弱いことを延々と説明するのであった。


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