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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第345話「ブッチVSヴァンパイアロード」

 どうしてブッチが空を飛べるヴァンパイアロード相手に有利に戦えているのかよく分からなかった。ブッチの場合はジャンプして攻撃をした後は、そのまま落下し、無防備な姿を晒すことになるので、不利になるのは確実だった。それなのに、ブッチはヴァンパイアロードの攻撃を回避し、それどころか自分の攻撃を当てている。明らかにおかしい動きだ。前々から謎の動きをしているなあと思ってきたが、ここに来て更に謎の動きをするようになった気がする。

「なぁなぁ? どうして空を飛べるのに俺に攻撃の一発も当てられないんだい?」

「フン。貴様何かしているな。ならばいいだろう。魔法ならば貴様もかわせないという事は分かっているからな。」


 …ヴァンパイアロード。そんな事言ってもブッチはそれの対処方法を何も考えていないわけがないと思うと言いたくなったところで今更気づいたことがある。

 私、どうしてかなり遠くに離れているはずのヴァンパイアロードの声が聞き取れるんだ? 本当に今さらだけれど、おかしい気がしてきた。

「たけのこ、ヴァンパイアロードが何を言ってるのか分かる?」

「ええ。分かりますよ。」

 あぁ、たけのこも聞こえているのか。耳がいいのかな。他のみんなにも聞いてみようと思ったけれどまぁいいか。基本的にはモンスターだから聞こえそうな気がするし。私は私でプレイヤーだから聞こえるんだろうか。うーん。、まぁひとまずそこは置いておくか。


「なぁ。俺がお前ならそんなに喋ってないで、さっさと攻撃しているぞ。」

 それは私も思った。なぜこいつはそんなにぺちゃくちゃ喋っているんだろうかと。そんな暇があるならさっさと攻撃している。自分の行動を敵にばらしてどうするとも思うし。ああ、次はそういうのをやりますって言う予告をしておいてやらないみたいなフェイント作戦なんだろうか。

「おいしょっと。ほら。もう地面に戻ってきてしまったぞー。どうするー? そこから攻撃を当ててみるかー? 当ててみろー!」

 ブッチの挑発を受けてか、ヴァンパイアロードは周囲に無数の黒い球体を生み出していた。どこかで見たことがあるような。ああ、そういえばサンショウがあれと似たような攻撃をやっていたなあ。

「うぐっ…。ねこます様。我はなんだか苦い思い出が蘇ってきます。」

「あっ。うん…頑張ってね。」

 ブッチが初めてサンショウと戦った時、サンショウの重力魔法はことごとく、回避された。結局最後まで一発も当てることができなかった。


「はーっ。またそれかぁ。お前さっき戦っている時も俺に一発でも当てられたか?」

 …やっぱり全部回避していたってことなんじゃないか? こんな攻撃が回避できるくせして、私と戦っている時はかなり当たっていた気がするんだけれどなあ。あの時はやっぱり接待されていたんだろうか。どうなんだろう。

「先ほどまでとは違うぞ。本気の闇魔法だからな。いくら貴様でもこの数の闇魔法をかわすことはできまい。」

 こいつ、わざと言ってるんじゃないだろうか。そうとしか聞こえないぞ。そういう事を口走ると大体全部回避するのがブッチだって言うのに。というかこいつもやっぱりブッチ相手に劣勢で逃げ出してきただけなんじゃないのか? なんだかどんどんヴァンパイアロードが小物に見えてきた。おかげさまで、あれだけブチ切れていた私が馬鹿だったじゃないかと言うくらいには冷静になれてきたし。

「いいから早く撃ってこいって。」

 苦笑しながらブッチが挑発していた。すると、その次の瞬間には無数の漆黒の球体が、ブッチへと高速で飛んでいった。おっと、そういえばこっちも巻き添えをくらうかもしれない位置にいるんだよな。ちょっと距離をとるか。


「みんな、ちょっとばかり場所移動! あっ、そこのおっきなのは新しく仲間になったビスケットだからよろしく。」

「よろしくお願いします先輩方!」

 軽く挨拶を済ませてもらって私達は、熱帯雨林内を移動する。って、火がかなり燃え広がっている! 

このままだとまずいので、熱帯雨林の外に出たほうがいいな。その前に。

「お前ら、多分見捨てられたんじゃないのか?」

「鞭で叩きながら言うんじゃないっ!」

いや、しっかり回復してそうだったけれど、そんなことは許さん。生かさず殺さずといった状態にしておかないと何をしでかすか分かったもんじゃない。


「ロード様は慈悲が深いお方です。見捨てるなどと言うのは在り得ません。」

あいつは自己中心的な奴だと思うと言いたくなったが、妄信的な奴には何を言っても無駄だと思ったのでいちいち言わなくてもいいと判断した。火の海になってきているこの場所でブッチ達は決着をつけるのだろうが、火災に巻き込まれたらたまったもじゃないと思うので、私たちはさっさとここから脱出しないといけないな。後で私だけ戻るって事もできるけれど、仲間の安全を確保する事が重要だ。

「全員! 熱帯雨林の外に出るよ! くろごまは、ここが詳しいから、先頭を頼むよ!」

「かしこまりました!」

 私は火耐性があるからいいんだけれど、他の皆にはないからなあ。早く脱出してその後このヴァンパイアどもをなんとかしてから、ブッチを回収みたいにできればいいな。ブッチなら一人でもなんとかしてしまいそうな気はするけれどね。


 こうして私達は、燃え盛る熱帯雨林から脱出しようと移動を開始した。私がたけのこに乗り、リザードマン達はビスケットに、だいこんには、くろごまとサンショウが乗っかっていた。みんな結構早いペースで駆け抜けていき、意外と早く脱出できそうだと思ったその時だった。

 漆黒の壁が現れ、脱出路を遮ってしまった。ヴァンパイアロードの仕業というのはすぐに分かったので、鎌で斬ってみた。すると、その部分が霧状になったが、即座に元の壁に復元されてしまう。

 触ったら毒になったりするのかと思いきや、ただの壁のようになっていることを確認した。他の仲間たちも何らかの攻撃をしてみたが、壁を崩すことは適わなかった。


「…ここで待機だな。ブッチがあいつを倒すまで待つしかない。」

 それが一番だろう。この漆黒の壁はどこまでも続いていて、脱出する事は難しい。そういうイベントが発生していると思えば分かりやすい。ちなみに、土潜りなら脱出できるんじゃないかと思って一応試してみたけれど、それも駄目だった。成功したら、地面にトンネルを掘ってそこから脱出しようと思ってんだけれどな。

「ハハハ。魔者め。一人だけ逃げようとしたのだな。やはりどこまでもお前はぐぶっ!?」

「黙れ。」

 ちょっとイラついたので電撃の鞭で叩いた。

「あー。このヴァンパイア二匹は仲間じゃなくて敵だからブッチ・チームのみんなはそのあたりよろしく。そんでもって、そっちのゴーレムは新しく仲間になったビスケット。」

 ここで改めて仲間同士の紹介をしておくことにした。


「それで、私としてはあそこのヴァンパイアロードをブチのめしてやりたいところなんだけれど、そこはブッチの獲物だから余計な事はしたくないってことなのでよろしく。」

「ブッチニキは、凄く嬉しそうやったで。強い奴を見ると目が輝いているように見えるやで。」

 だからこそ私は手出し無用でいきたかったんだよね。対戦ゲームとか好きな人は、対戦相手がいることに嬉しさを感じるわけだし。ブッチは、あんな強そうな奴と戦う機会がそうそうないだろうから、ここで頑張って貰いたいなあ。


「アナタは、あの箱の男が勝つことを確信しているようですが、何故です?」

 ふいに、おじいちゃんヴァンパイアが訪ねてきた。なぜってそれは今更だなあ。

「強いから。」

「は?」

「強いから。単純に。」


 べた褒めしてしまうが、ブッチが負けるということのほうが信じがたい。たかが一人のプレイヤーがと思う事もあるのだが、実際におかしな動きをしているところを何度も見ているので、負けるということが考えにくい。

 ゲーム内でチートとかバグとかそういったものを利用しているんじゃないのかと疑惑を持ったこともあるのだけれど、リアルタイムで動いている敵の動き全てをそのようなものでなんとかできるような気がしない。

 むしろあれはスキルを使っているのではないかと思う事はある。が、どんなスキルなのかは聞く気はないし、あの動き自体がそもそもスキルじゃなく、自然にできているようなものだと私は理解することにした。


「ねぇ。くろごま。ブッチはヴァンパイアロードの攻撃に一回でも当たってた?」

「全てかわしてました。あぁ、すみません。あの闇の空間に囚われてしまったというのが当たったと言うのであれば違いますが。」

「うん。それは数えなくていいね。」

「なっ!? ロード様の攻撃が当たっていなかっただと!?」

「それが在り得ません。あの無数の攻撃を回避できるはずなど。」


 …こいつらやっぱりヴァンパイアロードの事、色々知ってたんじゃないか。まぁそれはいいか。

「とりあえずここでやれることは、お前らをボコボコにすることだけなんだけれど。どうする?」

「何だと。貴様。」

「ああ、そういえばそこのヴァンパイアにはきんつばって名前つけたからみんなよろしく。」

「誰がきんつばだ! 私には高貴なる名前ガッ!?」

「そんなに鞭が好きならくれてやるっての。そこのおじいちゃんは、ごめん忘れた。」

「キルヘイムです。」


「姉御。そんな奴らをぼこぼこにしてもつまらないだけやで。ここはなんとかしてこの壁を突破することを考えたほうがええやで。」

「突破したいなら、ヴァンパイアロードを倒せばいいだけだから簡単だよ。それはブッチが倒してくれるから問題ない。」


 むしろこの壁を突破したくないというか、この壁については調べているところなんだけれどね。

「サンショウならこの壁を再現することってできる?」

「ある程度までなら似せることはできますが、何は特別な魔力のようなモノがあるようで、再現はできませんね。」

 そうなのか残念だ。私が気になっているのは、この壁が作れるのなら鉄壁の防御のようになると思ったんだけれどなあってことだ。再現できないとなると、どうしたもんかな。

 ブッチがヴァンパイアロードを倒すまでまだ時間がかかりそうだからたっぷり考えるとするか。


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