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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
344/473

第344話「般若レディ、ブチ切れる。」

明日追記します…!

11/1追記しました。

 私は、右手に鎌を持ち、左手に錬金術士の杖を持ち集中する。ヴァンパイアロードが近づいてきている。いきなり攻撃を仕掛けられても反撃できるように、徹底的に集中する。どんな場所から攻撃されても、すぐに攻撃をかわせるように、全方位を警戒する。

 そして私の仲間が襲われないように、気配感知をより一層強化して使う。今は威圧も邪気も、甲殻化も使っている。

 だが、ヴァンパイアロードは恐らく私だけを狙ってくると思われる。なんとなくで分かる。魔者である私を狙ってきているということに。


「魔者か。まさか貴様がこの地に手を出してくるとは思わなかったぞ。」

空を見上げると、正しくヴァンパイアらしいヴァンパイアがそこにいた。蝙蝠の羽にタキシード。あぁ、どこかの貴族のような雰囲気を醸し出しているな。顔は色白で美形だったが、こういうキャラクターは今までプレイしてきたゲームで散々見てきたので、私の好みでもなんでもなかった。

「いいや、お前が私に手を出してきたのが先だろ。」

 こいつ、何訳の分からないことを言ってやがるんだということでむかついたので、真空波を放ってやったのだが、いつも通り簡単にかき消されてしまった。真空波も、もうちょっと威力が強くなって欲しいと切実に思う。

「今代の魔者は好戦的というわけか。」


 こ、こいつ! まさか、いや、まさかそうなのか!?

「お前が私と私の仲間に手を出してきたんだろうが!」

「そうか。箱の男は貴様の仲間だったのか。道理で手強いわけだ。」

 どうやら既にブッチとやり合っていたらしいな。そんでもって苦戦していたってことらしいけれどブッチはどこまでこいつを追い詰めていたんだろうか。ああ、今はそういうことじゃなくて。

「お前が私に因縁をつけてきたんだろ。早く謝れよ。」

「この地を荒らしておきながら何を言う。」


 私は沈黙した。そしてこのヴァンパイアロードを理解する。こいつは、この野郎は! 言葉足らずのせいで無駄に争いを引き起こす最悪の奴だ! 自分だけは何でも分かっているかのような態度にでていて、それを他人に伝えないせいで誤解されるタイプ! そんでもって独断行動で問題解決をするけれど、そのせいで信頼関係を築けない正にクール系俺様タイプ!

 簡単に言うと! 私の大嫌いなタイプだ! 何か情報を知っているのにそれを周りに説明しないんだよなこういうタイプは! そんで問題が起きるってのに! 何の悪気もない。あったとしても最後に軽く悪かったみたいに言い出すんだ。うあああああああ! この野郎!

「それほどの禍々しい気配を出せるとは。やはり貴様を早々に討つべきだったな。」


 この殊勝な態度。自分がヴァンパイアロードである誇りとか立場とかを理解しての発言なのか分からないけれど、不愉快だった。そりゃあ私も禍々しい気配の一つでも出したくなるっての。私はヴァンパイアロードを睨みつけた。

「なんだその目は。何か言いたいことがあるようだな。」

 私は、先に手を出してきたのはお前だろと言った。それにも関わらず自分が悪いとは全く思っておらず、きっと私が問題行動を起こしたと思っているのだろう。恐らくは紫色のワイバーンや毒狸の母を倒したから危険な思想を持っていると判断されたんじゃないか。

 だからこそ、先手を打ってこのあたり一帯を闇で包み込んだということなんだろう。私がこの辺り一帯を支配しようとすることが疑われてしまったということなのだろうが、そんなの私には知ったこっちゃないしな。


「言いたいことがあるならなんとか言ったらどうだ。」

マブダチからのメッセージ:今そっちに急いで向かっているんだけれど、最初に言っておく。キれて手を出さないでね! 俺が倒すから! 俺の獲物!


 …ブッチは私の事分かっているなあ。もう本当にマブダチって感じだよ。本当にね。いやぁでも私も我慢できそうにない。これはブチ切れるに決まっている。この! この態度! 絶対に許さんぞという思いが爆発しそうだ。いやでも待て待て。ブッチがここまで頑張っているみたいだし、私が手を出したらまずいんだもんな。いかんいかん。冷静になれ。

「お前の相手はさっきまで相手をしていたブッチがやるってよ。」

「ほう。自分では何もしないのだな。やはり魔者とはこのようなものだったか。」

「うるせーー! ごちゃごちゃ言ってんじゃねー! 私はお前みたいなのが大嫌いなんだよ! 蕁麻疹が出そうだ! クール気取りやがって! お前が先に手を出してきたつってんだよ! 私は何もしてないのにお前が勝手に早とちりして襲い掛かってきたんだろ! だからこちとらお前を撃退するために、泣く泣く放火したって分かんねーのか! そんでもって私のドラゴンフルーツが燃えてしまっているだろ! この野郎! 責任をとって死ね!」


 私はヴァンパイアロードををまくしたてた。いや本当にこいつありえないから。普通に話し合いをしましょうとかそういう段階を踏もうともしなかったじゃん。結局、魔者という存在にびびったから先手を打ちましたってことじゃないか。それをぐだぐだと私の責任にしやがって。何がヴァンパイアロードだ。ロードの癖にこんなにみみっちぃのか。

「何? 貴様がこの熱帯雨林を荒らしていたのは間違いないはずだぞ。」

「お前の勝手な思い込みを私に押し付けるな! いい加減にしろ!」

 ブッチが相手をしていなかったら、間違いなく私が相手をしていた。それくらいこいつは憎い。本当にふざけるなと思う。イライラしてたまらなかった。私をゲームでここまでイライラさせられるとは、こいつなかなかやるじゃないかとは思った。


「おおおおおおい! 俺だぁあああ! お前! ねっこちゃんに手をだすんじゃねえ!」

 ブッチが突っ走りながらこちらに向かってきた。これで役者が揃ったという感じか。遅れてだいこんやサンショウ、くろごまも来た。

「貴様か。しつこい奴め。」

「そーそー。俺は粘着質なんだよ。」

 ブッチの軽口だ。なんかちょっとだけ癒された。ヴァンパイアロードには終始イライラさせられっぱなしだったからブッチがいると安心するな。はぁ。

「ブッチぃ!」

「あーうん。ねっこちゃんが言いたいことは分かる。凄い分かるから大丈夫。」

「よし、やっておしまいっ!」

「あいよー! というわけで、お前。先に俺との戦いの決着をつけてもらおうか。」


 あー良かった。ここでブッチが来てくれて。ヴァンパイアロードは私をイライラさせる天才のようなので、ここでまだ何か話そうものなら、鎌で斬り裂いているところだった。

 私がこのヴァンパイアロードみたいなタイプを苦手とする理由は、はっきり言えばいい事を、いちいち比喩表現を使ったり、曖昧な言葉で説明してきたりするからだ。

 お前だけしか分からないだろうということなのに、そんなすっきりしない事をされたら、なんだこいつと思う。それは多分私だけじゃないだろう。時期に分かるとか、既に理解しているはずだとか、お前が説明を面倒くさがっているだけじゃないか! なんてツッコミを入れたくなるような事が多い。

「フン。貴様はなかなかやるようだが、この私に勝てると思っているのか? 先ほどまでの私は本気ではなかった。」

「おお、そうか。実は俺も本気じゃなかったんだよ。俺が本気を出したらお前が可哀想だと思ってな。というわけで、こっからは一対一と行こうか。ヴァンパイアロードさんよぉ!」


 ブッチから仕掛けていった。いつも通りに、特攻して、いつも通りにひたすら張り手を撃ち込んでいくのだろう。基本的にはブッチはそれしかしない。そして敵の攻撃をかわす。攻撃してかわす。ただそれだけのいたって単純な行動だ。あ、でもヴァンパイアロードって空を飛んでいるんだけれど、飛行も使わなくていいんだろうか。

「おーい。飛行もいらないー!?」

「いらなーい! こいつは俺だけの力で叩き潰すから安心してみてていいよ。それより、他の皆のことを守ってて欲しいかな! 俺はこいつにだけ集中してたい!」


 おっと、そうだな。こっちにも普通のヴァンパイア達がいるし、どこかに他のヴァンパイアとかが潜伏している可能性だってあるんだし、そちらを警戒しておこう。ヴァンパイアロードは、基本的にブッチ任せにしておきたい。

「行くぞ…。箱の男!」

 ヴァンパイアロードは空を飛び、ブッチを見おろしながらそう言った。この発言だけで私はイラッときてしまった。ブッチはそれにどう反応しているのかなと思っていたら、視界から消えていた。え、なんだ、どこに行ったんだと思ったら、既に跳躍していて、気が付いたらヴァンパイアロードの顔面に張り手を数発も放っていたようだ。

「あれ? こんなのも反応できないのか? だっさ。」

「ハッ!」

 ヴァンパイアロードの手が赤黒く輝き、鋭い刃物のように伸びていた。どことなく私の黒薔薇の型に似ているような感じだった。うう、こんな奴と似ているなんて勘弁して欲しいと思った。

 しかしその赤黒い刃はブッチに当たる事は無かった。ブッチはそのまま落下していた為だ。ここで無防備な状態を晒すというのはブッチらしくない気がするが、多分何かあるんだろう。

「終わりだな。隙だらけだ。」

「始まりだな。隙だらけだ。」

 飛べるヴァンパイアロードに飛べないブッチ。どちらが有利かと言えば、間違いないヴァンパイアロードだろう。隙だらけのブッチ相手に、ヴァンパイアロードの刃がブッチを斬り裂こうと振り下ろされた。しかしそれがブッチに当たることはなかった。ブッチの張り手が先にヴァンパイアロードの体に当たっており、それに当たったヴァンパイアロードが吹っ飛んでしまったからだ。


「あっはっは! 笑えるなー! それが本当にヴァンパイアロードの攻撃!? 止まって見えるっての! なぁ、早く本気を見せてくれよ!」

 煽るなぁ。楽しそうだなぁ。いやもう凄い楽しいけれどね。私も何が起きたのかよく分かってないけれど、ブッチだからって理由だけでもういいや。あのヴァンパイアロードみたいな奴が苦しむ姿を見たかったので、すごいすっきりした。せいせいした。本当もっとやってくれと言いたい。

「ヴァンパイアロードさんよぉ! ねっこちゃんに手を出したいならまずは俺を倒さないとだめなんだからなぁ!? これで分かっただろう! 俺にも勝てない奴がねっこちゃんの相手をしようなんて、百兆年早い!」

 …それはそれで恥ずかしいからやめてくれブッチ。


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