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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
343/473

第343話「待つだけの簡単な作業」

明日追記します

10/31追記しました

 ブッチ達がヴァンパイアロードと交戦中であるという状況以外は何も分からない。私はここで黙ってぼーっとしているのだけれど、折角ゲームをやっているのに、今やれることがほとんどないのでやはり何もしないままだった。

 私は、もっと楽しい感じのイベントがあればいいのになあと考えてしまう。イベントがあればどこかで情報を聞きつけた人に売るなんてこともできそうだしな。

「ゲームをやっているのに暇みたいな状況なのが嫌だなあ。」

「ねこますドノ。今、何か闇が光ったかのような反応がありませんでしたか?」

「特に何もないけれど、何か知っている?」

「闇が訪れた時! それは貴様ら人類と。痛い! なんでそうボコボコ叩くんですか!」


 鞭って痛いんだよね。だけど叩くのはやめない。先に攻撃を仕掛けられたのはこちらだし。それにしても、私はいつも、何もしていないのに絡まれ過ぎな気がする。私が魔者だからってあんまりだなと思う。

「このくらいやらないと延々と私に逆らい続けるからこれくらいやっているんだよ。」

 本当は、今すぐにでもこの二匹のヴァンパイアや周辺にいるかもしれないその他のヴァンパイアを倒してしまいたいが、それはそれでまずいことになる気がしてきた。こいつらが気づいていないだけでヴァンパイアロードと何らかの関わりがあるかもしれないし。

 これは、ボスの出現条件に近いのかもしれない。敵を全滅させると最後にボスが出現するというような設定のゲームはそこそこある。それを考慮すると、この二匹のヴァンパイアを倒した時点で何か問題が発生するかもしれないので倒すというのは良くないかもしれない。

 ブッチが本当にヴァンパイアロードと交戦しているかも分からないし、私達がここで二匹のヴァンパイアを倒した影響でで、ブッチ達が劣勢になってしまったら嫌だしなあ。


「マスター。ここでじっとしているだけって勿体ないじゃないですか? それに、火の勢いがどんどん増していってるので、やはりこの熱帯雨林の外側に移動するべきです。」

 確かにビスケットの言う通りで、私も外側に移動するのが最善策だと思っていたんだけれど、それをやっていいのかどうかってことを考えている。

 ヴァンパイアロードが熱帯雨林を闇で包み込むというイベント中に熱帯雨林外に出たら、イベント自体が破棄されてもおかしくないんじゃないか。だけど、そういうのって警告メッセージで出てくるものじゃないかと思うんだけれど、よく分からないしなあ。


「外には移動したいんだけれど、悩み事が尽きなくてね。」

「魔者の癖に悩むのか。」

「いい加減にしろ! わざとか!」

 というわけでまた電撃の鞭で金髪の女ヴァンパイアを叩くのだった。

「あーもうどうにでもなれ。熱帯雨林の外に行こう。さぁお前らもきりきり歩け。」

 考えたって始まらないと言うか、金髪の女ヴァンパイアに焚き付けられたのにもムッとしてしまったと言うか、私は何もしないでただじっとしているって言うのが性に合わないようだな。それに、ブッチ達の状況も分からないし。

 これは嫌な状況なんだよなあ。早く動いたことで命が助かったというのもあれば、早く動いたせいで命を失ったというゲームの展開がよくあったし。どちらに転ぶのか分からない。だとすれば、さっさと動くのが吉な気がしてきたというのがある。

「何がきりきりだ。臆病者の魔者が!」

「ええい! 口ごたえはゆるさーん!」

 電撃の鞭で金髪の女ヴァンパイアを叩きつけて脅す。あっ、なんか拷問をしているような気分になってきたな。ちょっと楽しかったぞ。


「くっ。この私が魔者なんかにこんな。」

 すごい、可哀想な気持ちが全然湧いてこない。だってこのヴァンパイア、たまに爪を生やして攻撃してこようとするし。まだ自分の立場が分かっていないようだ。

 だけど…多分だけれど、こいつの方がおじいちゃんヴァンパイアよりも格上だと思うんだよなあ。おじいちゃんヴァンパイアはこっちの金髪の女ヴァンパイアに対して敬意を表しているような気がするし。もういっそ聞いてみるか。

「お前ら二人のどっちが偉いのか教えて。というか今さらだけれど、お前らって名前とかあるの?」

 名前を聞くと親近感が湧いて倒しにくくなるとは聞くけれど、残念ながら私にはそのような慈悲はない。別に名前を聞いたからと言ってもどうってことはない。


「吾輩の名はキルヘイム。以後お見知りおきを。」

「ふっふっふ。この私の名はってなぜ叩く!」

「不敵な笑いに苛ついた。」

 ゲームにはこういう傲慢不遜なキャラクターがいるけれど、なんだか実際に話をしてみるとやっぱり腹が立ってくるようだ。明らかにその態度はないだろうと思うのに、態度を改めるということがない。この手のキャラクターで態度を改めて大人しくなると言う方が稀なのかもしれないけれど、これだけびしばし鞭で叩いてもそのままって言うのはなんなんだろうな。

「くぅうう! よくもこの私にそのような事を! 聞いて驚け! 私の名前は!」

「きんつば。」

「は?」

「私が命名した。きんつばでよろしく。」

 きんつばは、和菓子の名前だ。金色の髪だからきんつばを思い出したからそう決めた。なんか高貴そうな名前がありそうだけれど聞くにもなれなかった。

「きんつばだと? なんだその名前は。いいか私の名前は!」

「キンツバ!」

 たけのこがきんつばに向かって吠えた。…やばい、名前がみんな食べ物系なせいでお菓子いな意味に、いやおかしな意味に聞こえてくるな。はっは。寒すぎるな私。


「おい、私はそんな名前ではない!」

「はいはい。もう名前なんて名乗らなくていいから。さっさと歩け! 働け! 死ぬまで働くんだ!」

「ぐ!? 威力が上がっている!?」

「くっ…魔者め・・・!」

 あー、なんだか悪人としてプレイするのは面白いな。こういうのってオンラインゲームだけじゃなくて、一般的なゲームでも嫌われる傾向にあるんだけれど、私は好きなんだよなあ。悪人チームを選択して遊ぶとか。

 そういえば、不良が一杯でてくる対戦型のレトロゲームで、最強チームを好んで使っていたら、そのチームを選ぶ奴は叩き潰すみたいな扱いをされたっけなあ。懐かしいな。空中でぐるぐる回りながらキックする技が好きだったなあって思い出に耽っている場合じゃないね。


「んっ!? ぐっ!? 」

 唐突に、何の前触れもなく地面が揺れだした。とても大きな揺れだった。何だこれ。何が起きているんだろう。ブッチが何かしているのか分からないけれど、なんだかすごい気配を感じる。ヴァンパイアロードが姿を現そうとしているのか?

「く、ふふふふふ。ロード様だ。ロード様のお力だ。」

 あっ、早速ばらしていくスタイルなんだ。いや別に分かってたからいいんだけれどさぁ。そういうのはもうちょっと隠しておいて、こちらの不安にさせるような態度をとったほうがいいと思ったんだけれどなあ。

「ロード様が本気になられたようですな。」


 むしろまだ本気じゃなかったのか。これはすごい気配だな。びりびりと伝わってくるというか、気圧されされそうになる。そう思っていたら、たけのこも、リザードマン達も、ビスケットもどこか怯えているような感じだった。

「ね、ねこますサマハヘイキナンデスカ?」

「コレホドノ、ケハイ。オモワズサムケガシマス。」

「クッ…。ナンダコノハクリョクハ。」

「なんかすごいやばそうな雰囲気が…!」


 あ、これはいけない奴だな。戦意が大きく削がれている。私が威圧を強くすれば、弾き返せたりしないかなと思ったのでやってみることにした。

「威圧!!」

 ヴァンパイアロードが発している気配に対して威圧で抵抗してみた。おっ、結構いい感じだな。さっきまで伝わってきた気配が薄れていくような感じだ。

「ロード様の気配を相殺するとは…。やはりやりますね。」

「そりゃあねえ。負けてたまるかって気持ちがあるからね。それと、そっちの大将には腹が立っているからねえ!」

 私からドラゴンフルーツを奪い、なおかつ仲間に手を出し、分断させてきた。その結果私は、散々面倒くさいことをする羽目になっているので、何してくれとるんじゃあと、反社会的なキャラみたいなノリで怒っている。


「ねこますドノノオカゲデ、ナンダカキブンガヨクナリマシタ!」

「私がいる時はこうやってなんとかするけれど、みんなも負けないって気持ちを強く持てばなんとかなるからね! ドラゴンフルーツを奪われた気持ちを持てばねえ!」

「ウウッ!? ねこますサマニスゴイハクリョクガ。」

「えーっと、マスター。マスターが大事にしている薬草がとられてもやっぱり絶対に倒す勢いでいきますか?」

「オイ、ビスケット!?」


 薬草を? それは私の大事な草原を奪おうってことか? もしそんなことをしてくる敵がいたら、即ぶっ潰しにいくだろう。というかヴァンパイアロードもドラゴンフルーツに手を出してきたけれど、もしかしたら草原に来ていたという可能性もあるよな。それを考えると…。ゆ、許さん。

「私から薬草を奪おうたってそうはいかないぞ!!!!」

 私が怒りに身を任せたその瞬間、周囲の闇が消えた。いや、周囲だけじゃない。熱帯雨林全域を包んでいたかのような闇が消えた。夜であることは確かだが、見上げると星空が広がっており、きらきらと輝いているかのようだった。何が、起こった?

「ろ、ロード様の闇を?」

「消し去っただと!!?」


 あぁ、ブチ切れて何かやってしまったようだ。どうもこの<アノニマスターオンライン>は感情に反応するようなシステムがある気がするなあ。というかあることはほぼ確定だと思う。感情をむき出しにしたときに強くなっている気がするし。つまり、心が強ければ強いほど、ゲーム内でもその力を発揮するってことなんだろうか。なんて今は考えている余裕がない。

 途轍もない気配を纏った何かがこちらに近づいてきているのを感じている。これは絶対にヴァンパイアロードだな。それしか考えられない。


 ブッチ達がどうなっているのか分からないが、私としては極力手を出したくはないな。きっとブッチが戦っていたんだと思うし。でもそんなこと言ってる余裕がないし、反撃することくらいは許して欲しいかな。


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