第324話「のんびり行こう。」
あ、明日追記します!!
10/12追記しました
「これをやろう。1日1回だけ俺を呼び出せるホイッスルだ。」
あー。こういう道具はゲームで定番のものだなあ。1日1回っていうのもそうだな。何度も手助けする事はできないか1回くらいなら手伝ってやるってことだな。よし、これも悪くないアイテムだ。
「それでは俺はここから離れるぞ。ではな。」
当然、黒騎士も転移石を持っているのだろう。一瞬でここから消えてしまった。ああー、終わったなあ。なんだかまた全然関係ない事で苦労した気がする。なぜ私には、平和の二文字がいつまでたっても訪れないんだろうなあ。
(まさかマーシャルを丸め込んじまうなんて思いもよらなかったな。)
あっ、まだいたんだ。どうもこんにちは。もうしまうから消えてくれてもいいんだよ。
(おい! 俺を邪魔者扱いするな。助言を出したりしているだろう。な?)
いやあ、大体が役に立たない情報だし、むしろこっちの神経を逆なでするようなことしか言ってこないじゃないか。もうお前は魔者じゃなくて邪魔だな。ふふふ。
(おいおい、お前調子に乗りすぎじゃないか。俺は腐っても魔者なんだぞ。)
そうか、ボケても魔者だって主張するのか、大変だな。腐っているのかもしれないが、頑張って生きると良いぞ。こんな感じでやり取りをしておく。
(お前、俺がいなければ世界は滅んでいたかもしれないんだぞ。)
えっ。そうなんだ。別に世界くらい滅びてもいいんじゃない? なんて意見を口に出してみた。今の私は、世界がどうなろうと知ったこっちゃないという感じだ。難しい事はもっと別な人が考えてやってくれればいい。そんなわけなので、私は魔者を尊敬なんてしていないのでよろしく。
(なんて奴だ。先輩を敬えないなんて、ろくでなしだぞ。)
ろくでなしで一向に構わないからなあ。私はこのゲームでは善人プレイをするつもりが一切ない。そんなものは疲れるだけだし。まぁ現実でもみんなに優しくなんてことはしない。それだけの余裕は私にないし。小さな事しか私にはできない。
だから私が魔者とか言い出して祀り上げるのは辞めて欲しいなあ。
「ねこます様、ドラゴンフルーツ探しにはいかないんですか?」
「あ、そうだね。とっとと東に移動しようか。」
また目的を見失いそうになった。ここでドラゴンフルーツを手に入れたらここから草原まで帰るとするかなあ。そんでもって転移石を使って…。あれ、なんか違和感があるな。なんだろう、何か見落としている気がしてきたな。…転移石を複数持てば、30分の使用制限ってなんとかならないんだろうか。いや駄目だろうな。そんなことができるんだったらみんな複数個持っていてもおかしくはないだろうな。やっぱりそれも試してみないと駄目だなあ。石ころをまた口の中に含むか。あぁ、これはなんというか嫌な感じだなあ。口の中に石ころを含むって不気味と言うかなんか嫌な感じを覚える。
「マスター。なんか顔色が悪そうだけれど、大丈夫ですか?」
「大丈夫。みんな、ドラゴンフルーツが待っているし東へ急ごう。」
こんなことをやるってことは、これからも食べられない物を口の中に含んで生体調合をすることになるかと思うと残念な気持ちになってしまった。例えば何かの金属を口の中に含むとか。現実の事を意識してしまってどうもあまり気分がよくなれない。
慣れるまで時間がかかりそうだけれど、私の気持ち次第だから頑張ろう。
「それじゃあ東にれっつごおお。」
まあ、転移石は今手に入れたばっかりだし、結局は徒歩なんだけれどね。最初だけ苦労するのは我慢しないといけないな。その後が楽になればずっと歩き続けるのだって我慢できる。もし、この先のドラゴンフルーツの群生地が転移石の転移先に登録できなかったらどうしようかとも思っているけれど、ここは楽観的に考えていこう。
「もう戦いたくない。もう私は戦いたくないんだよたけのこぅ。もふもふぅ。」
私はたけのこをもふもふしながら、歩いていた。ビスケットにワイバーンに黒騎士、もう十分戦ったじゃないか。どうしてこんなに戦わなきゃいけないんだ。私は戦闘狂じゃないんだ。それと、大体みんなして魔者として付け狙ってくるので腹が立つ。私を狙うなチクショウ!
「ねこますドノ。イアツガスゴイデス。」
あ、思わずみんなにまで影響がでるくらいの威圧を放ってしまったようだ。これはまずかったな。よし、気持ちを静めて。こうやって威圧を周りに与えすぎても危険人物扱いされて攻撃される恐れがありそうだ。なので出来るだけそういうことにならないように、威圧が発動しないように注意する。それと同時に気配感知を使ってみるが、何もいない。本気で使ってみたがやはりいない。よし、これで安全だろう。
「マスター。むこうにドラゴンフルーツっぽいのが見えます。」
「え、まじで。なんだか見つかるのが早い気がするな。」
それ、もしかして蜃気楼みたいになっていたやつじゃないのかな。だけど、本当になっているかもしれないし行って確認してみるしかないな。よし、急ごうと思ったその時、熱帯雨林を難なく移動している自分に気が付いた。
結構前まではこういう森の中を歩くのが大変だったのに、いつの間にか自然に移動ができるようになっている。木の根が地面に浮き出ていることや枝が頭上に当たりそうになっていても、軽々とかわして前に進めている。ぬかるんでいる場所を踏んでも姿勢を崩すこともないし、草むらの中を動いてもへっちゃらだ。
「…みんな、熱帯雨林って動きにくい?」
「ワタシハモウナレマシタ!」
たけのこはそもそも森の中で自由自在に動いていたし、熱帯雨林でもそれは同じだったんだろう。
「ワレワレハマダナレマセン。」
「トウニイタコロトハ、ナニモカモガチガウ。ダガソレハナカナカオモシロイ。」
この二匹は、ずっと魔者の塔にいたって事だもんなあ。慣れなくても当然だよね。そういえば、こういうモンスター達って生まれた記憶とかあってあるんだろうか。このゲームの設定がどういうものになっているのかは分からないけれど、NPCにもこういう人格があることもそうだけど、どんなものなんだろう。ゲームの世界で誕生するって言い方をするのはどこか変な気がするけれど、それがこの<アノニマスターオンライン>の特徴って事なんだよね。
たけのこにしろ他の皆にしろどこかに記憶が保存されているってことになるんだろうけれど、うーん、現実にいる人間とほとんど代わりないからもう生きているって感じがしてしまうな。
「俺は全然なれません! なんなんですかこの木! すごい邪魔です!動きにくくてたまりません!」
ビスケットは巨体だからしょうがないだろうな。というか下半身だけのゴーレムってやっぱりなんというか、へんてこな存在だなあ。いずれは元の姿というか普通のゴーレムの姿に戻してやりたい気もするけれど、そうなってまた私を倒そうとしてきたら困るんだよね。はぁ。
「ああ、ビスケットのペースに合わせていくから、無理しなくていいよ。」
急ぎたいけれど無理していこうとするとそれはそれで問題だ。こういう時に一生懸命頑張ってしまうというのがむしろ悪い結果を生み出すことは私がよく知っている。仕事も無理に全力で頑張ってしまうと、力尽きてしまって、上手くいかなくなることがあった。それと同じだ。
「うっ! 俺のせいでマスターの動きが遅くなるのは嫌です! お、俺このまま熱帯雨林破壊しながら移動しようと思うんですけど、どうです!? もう足からビームだしてこのあたり一体を破壊しつくしてとか!」
「駄目に決まってんでしょ!?」
ビスケットは突飛な行動に出やすい所さえなければいいんだけれどなあ。
「うう、こんなところに木がありまくるのがいけないと思います。こんなものを植えたのはどこのどいつだ!!」
「声大きいから! あんまり騒がしくするのもだめだから!」
気配感知で何もひっかかってこないとはいえ、こうやって騒いでいたら見つけてくれと言っているようなものなので、出来るだけ静かに行きたい。これは今後の課題だな。サイズの大きいビスケットを連れまわすのは大変だ。何かサイズを小さくするような方法がないと、どこに行っても目立ってしまうし。「くぅ。ドラゴンフルーツ早く見つけたいですね。こんなイライラするところとはとっととおさらばしたいですし。むしろ滅ぼしてしまいたいです。こんな熱帯雨林。滅んでしまえ。」
誰かに聞かれたらまずい発言をするビスケットを咎めたあと、移動を再開する。何か有用なアイテムがないかを探してみるが、それっぽいものは見つからない。とりあえずそこらへんにある石ころはひろっておくことにはした。最近は、火薬石弾は作っていなかったけれど、それ用にいくつかもっていてもいいと思った。
狐火やアリボールなんかも使えるからいいけれど、スキルばかり使っていては消耗していくので、やっぱりこういうところで集めておかないと不安だった。
「マスター。そこにある悪魔草は拾わないんですか?」
「え?」
悪魔草ってなんだ。そんなものは知らないんだけれど、どこにあるんだ。
「そこの、こうもりの羽みたいな草です。」
えーと、どれだ。草がどれも似たような形しているから良く分からないな。しかも薄暗いしって思ったらそれっぽいのがあった。確かにこうもりの羽っぽい。でも色はどこにでもある緑色をしている。
「これ、何か特別な効果があるの?」
「食べると一時的に力が向上します。ですが、その後一時的に疲労状態になります。」
いわゆるドーピングじゃないか。というか狂戦士の効果と同じって事か? うーん。使い道としてはボス戦だろうな。そのあたりにいる敵に使うような物じゃないし。
「そういえば草の形にはあまり注目していなかったなあ。」
「変わった形をしたものには何か特別な効果があったりしますから手に取ったほうがいいですよ。」
ビスケットの言う通りだな。これからは色んな物に触ってみたほうがいいだろうな。ありきたりな物でも何か効果があるかもしれないし、それにハーツのリュックはそこそこ大きいから色々入れられるし。
「じゃあちょっと悪魔草とやらを採取しよう。これもいっぱい集めていきたいなあ。」
「ねこますサマ。アマリアツメスギルトジカンガ…。」
あ、そうだな。薬草並みにとは言わないまでも集めたくなってしまった。うーんこういうアイテムにはどうも収集欲がわいてしまうな。だけど今はドラゴンフルーツが優先だ。我慢しよう。