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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
323/473

第323話「転移石」

明日追記します。

10/11追記しました。

 ひたすら黒騎士に質問を繰り返したが、大半が答えられないというものだった。だがその中で唯一役に立つ情報があった。それが転移石だ。魔者がこの大陸全土に移動するときに使う道具とのことだった。それは私が喉から手が出そうなくらい欲しい物だった。

 草原から熱帯雨林や海底洞窟やら色んな所に一瞬で転移できる、正に今までずっと欲しかった道具だ。当然それをよこせと言ったが、黒騎士は渡す気は全くないと言っていた。

「なら作り方を教えろよ。」

「貴様ならそのあたりの石ころを食べて生体調合ができるだろう? それを魔力結晶にすればいい。そしてその魔力結晶をしばらく地面に置くことでその地域への転移が可能となる。」


 だ、誰がそのあたりの石ころなんて食べるか!? 石ころを食べたら魔力結晶になりまーすなんて誰が思うよ!? いやあり得たかもしれないけれどやりたくもなかったよそんなこと!? 何それ、なんでそこらへんにある石ころを食べるだけで魔力結晶とかが出来上がるの!? おかしくない!? そんな軽いノリで言われても困るっつーの! ねえねえ。そんないい加減な設定でいいのこのゲーム。いや今までも十分適当でいい加減な事ばかりだったけれどさあ、そりゃないんじゃないの!

「や、やってみればいいんでしょやってみれば!」

 やけくそ気味にそこらにある石ころを拾って食べてみた。


メッセージ:石を魔力結晶に調合しますか?


 マジだった。こんな設定考えた奴はどこのどいつだよ。くそう、常識が崩れてきそうだ。これからプレイするゲームでは、試しに石ころも口の中に含んでみなくちゃいけなくなったじゃないか。こういうことを一度でも経験してしまったら、後でプレイするゲームにも影響が出るんだぞ。ああもう、いいよ。やりますよ。調合しますよ。お願いします。


メッセージ:魔力結晶が完成しました。


 口の中から吐き出すと、石ころが青く輝く結晶になっていた。で、これを地面に置くだけでいいのか? 本当にたったそれだけでいいのかと黒騎士に聞くが、ただ頷くだけだった。やってやろうじゃないか。私は魔力結晶を地面に置いた。すると。


メッセージ:魔力結晶にこの土地の情報を記録しますか?


 このように表示されたので、これまた当然はいと回答。さあどうなる。


メッセージ:熱帯雨林が登録されました。魔力結晶は転移石となりました。


「で。できた。マジで出来たよ。何だよそれ。こんな簡単に移動用のアイテムができるなんて、そんなのあっていいことなのか。これまでの苦労はなんだったんだ。」

 何日もかけてここまで移動してきた苦労が水の泡のように感じられた。はぁ、なんてオチなんだ。まさかこんなことになるなんて思わなかったよ。

「年の為に言っておくが、それは永久に使えるからな。そして他の地域も登録できる。」


 えぇぇぇぇえ!? じゃあこれ一個があればどこにでも転移できてしまうってことじゃないか! こんな凄い物が簡単に手に入ってしまっていいのか! いや待てよ。実はこれって、人間の大陸だと簡単に手に入ってしまう代物だったりするんじゃないだろうか。この手のゲームって移動がネックになっているはずだしありえそうな気がする。ぬか喜びしすぎるのはやめよう。

 だけど、こうして手に入ったのは嬉しい。これで移動時の負担が大幅に減る! だけど、気になる事があるので黒騎士に聞いてみることにした。

「ならこれを使えば人間の大陸にも行けるの?」

「無理だな。」

 なぜ無理なのかを説明してこないあたり、魔者の大陸から人間の大陸の境目には何かがあるってことだな。ということは、海底洞窟まで移動した後で、そこから人間の大陸に移動しなきゃいけないのか。多少面倒に感じたけれど、大幅に短縮できたことを考えればこの程度別に問題ではないな。


 魔者の大陸内をどこでも移動できる。これはかなり使えるな。だけど、それ以上にもっと有効的な使い方があると思うんだけれど、それは出来るのかどうかだな。例えば戦闘中に危険を感じたら、転移石を使って緊急離脱するなんてことができないだろうか。これは、黒騎士に聞くまでもなく自分で検証してみれば済む話だな。

「それで、これはただ念じれば転移ができるってことでOK?」

「ああ、ただし、一度使うと30分は使えなくなるからな。それと、魔力や生命力などは消費しない。」

 ふむ、妥当な時間だな。転移が簡単に使い放題になったら、それこそひたすら逃げ放題になってしまうし。


「これを、皆の分も私が作っておけばいいか。」

 だけど、作るのは良いんだけれど、何かのアクセサリーに加工したいなあ。ずっと手に持たせたりするのは大変だし。たけのこなら首輪で、リザードマン達は腕輪に、ビスケットは…足の指とか、微妙かな。

「転移石について教えてもらったのはいいけれど、それで、お前は私の仲間になるみたいな契約をしたってことでいいのか?」

「今は仮契約だ。お前の仲間になったわけではない。が、ある程度では融通をきかせてやる。」

 だったらさっさと魔者の大陸について話せよと思ったが、どうせこいつは話せないだろうから面倒くさいので言わないことにした。というかだったら何ができるんだこいつとしか思えなかった。ああ、この大陸のどこに何があるのかくらいは知っているか。後は、そうだ、気になるところは聞いておくか。

「ここのどこかにドラゴンフルーツが沢山成っている場所があるはずなんだけれど、そこがどこかは知らないか?」

「何、もしかして貴様ドラゴンフルーツを求めてここまで来たというのか。」

「いやそういう思わせぶりな事言わなくていいから。」

 ドラゴンフルーツに何かありそうな、におわせていそうな事は言わなくていいだろう。なんだかこう気になる言い方をしてくるよなあ。

「東に行け。ここは群生地から離れてしまっているぞ。」

「えー…。」

 なんだかショックだ。わざわざここまで来たと思ったら行き過ぎていたなんて。そして黒騎士がまさかドラゴンフルーツのある場所を知っているなんて、二重のショックだ。

「こんなところでいいか。俺はそろそろここから離れたいんだが。」

「たけのこ達に謝ってから帰れ。」

 さっきは、ビスケットに対してだけ謝罪させた。今度はたけのこ達の分も謝罪してもらう。というか私も含めてだ。これで手打ちにしてやることにしよう。

「すまなかった。」


 意外にも素直に黒騎士は謝罪をした。というかその素直さを最初から出せよこいつ! もっとこう謙虚になるとかさあ! なんて思ったけれどこれは口に出さなかった。

「で、海底洞窟では何で私達を襲ってきたのかなあ! というか私をか。」

「魔者の気配がしていたからな。だから行ったまでだ。」

 あのタイミングでいきなり出てきたのは腹が立ったというのに、理由はそれだけなのか。それにしても魔者と言うだけで襲い掛かってくるなんて最悪な奴だとしか思えなかった。

「そのような恰好をしている魔者も、貴様が初めてだろうな。面白そうだったのでな、つい手を出してしまったというのもある。これについてもお詫びしよう。」


 ほう、あの時の事を詫びてくるか。なかなか殊勝な心掛けじゃないかと感心しそうになったが、襲い掛かられて死にそうな想いをしたので、こんな程度では許してやらないという気持ちが強くなった。

「詫びはいいけれど、私は許さないからな。私のようなとてもか弱い女を狙って攻撃してきたんだからねえ。」

 いきなり攻撃をしかけてきたからなあこの黒騎士。それを簡単に許してやるほど私は優しくない。だからこそ、今回ボコボコにしてやったわけだし。あっ、でもボコボコにしてもまだすっきりはしていないなあ。なんて言ってもこいつが色々話したがらないのがいけない。

「…すまないが、か弱い女というのは誰の事だ?」

「は? 私に決まっているだろ!」


 なんだこいつ、ふざけているのか! 誰がどこからどう見ても、この面子の中で一番弱そうに見えるだろう。か弱くて薄幸な女というのが、見て分からないというのか!

「…。」

 あれ? なんでみんな急に黙り込んだんだ? そこは私に同意して応援してくれる流れじゃないのか。ねえたけのこ?

「ねこますサマハ、ツヨイデス!」

 いや強くないよ!? そこまで強かったら黒騎士にここまで苦戦していなかったし。黒騎士の奴もそこは分かっているはずなのになあ。私より格上の癖にやることがこそこそしている感じだ。


「貴様は強いだろう。か弱いなどというのは在り得んぞ。」

「はあ? そういうボケは辞めて欲しいんだけれど。私は、とってもか弱い般若レディなんだっての。あ、ところで般若レディって種族聞いたことない?」

般若レディって種族が貴重な物なのか、果たして忘れ去られ散るだけなのか。それは現時点では誰にも分からない。だけどこいつなら知っているかもと小さな望みに賭けてみる。

「全く知らないな。なんだその種族は。」

 以前から思っていた事なんだけれど、やっぱり般若レディって種族は私だけかもしれない。きっと私がこの種族を選んだときは、これにしたのが正解だったんだなあ。ああよかった。

「私が般若レディのねこますだよ。」


「つまり、貴様、希少種ということか。それは知らなかったな。」

 希少種。つまりレアな存在と言う事になる。私は唯一無二の存在ということになるんだろうが、それはなんだか気に入らないなあ。だって、そんなに私が凄いんだったらもうちょっと、戦闘が楽になっても良かったはずだし。

「黒騎士、一応言っておくけれど、私はこの面子の中で一番最弱なんだからね。」

「なぜそのようなよく分かる嘘をつく。」

 嘘なんて言わないし。なぜそう思ったのかもよく分からなかった。なんだか私って教師とかそういうのにマークされそうな性格なのかなあ。うー嫌だなあそういうの。


「では、そろそろ本当にここから消えるぞ。」

「ああ待ちなよ。」

そういって私は黒騎士に声をかける。これが最後の質問だ。

「お前を呼び出せる方法って何かないの? それがあるんだったら教えて。」

 こっちから呼び出せなければ仮契約も何もないし。場合によっては黒騎士に頼りたいしなあ。


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