第32話「魚をとろう」
水面が激しく揺れ、水飛沫が上がった。空中に浮かぶ影、それは巨大な魚だった。そして、
その巨大な魚が口から勢いよく水を吐き出してきた。
「うがっ!?」
咄嗟の事で上手くよけきれず腹に直撃してしまった。そのまま横転する私。くそう。とて
つもない不快感だ。<アノニマスターオンライン>では、痛みは不快感となって現れてくる
が、痛み自体が全く0というわけでもない。この攻撃は痛みもあったので、もうくらいたく
ないと思った。
巨大な魚は、また川の中に潜ったようだ。逃げやがってこの野郎。少し川から離れる。
あれは、鮎?のように見えた。巨大な鮎。異常な大きさだった。多分長さは5メートルく
らいあったと思う。確か鮪なんかでも大きいのが3メートルくらいだったと記憶しているの
であれは相当でかいだろう。
あれだけ大きいのだから、きっと美味いに違いないよな。私は、薬草を食べながら考え
ていた。あれをどうやって倒すかと。いったん引いてブッチ立ちを呼んでくればいいかも
しれないと思ったが、ここでいったん逃げてこいつがまたでてくる保証がないので逃げた
くはなかった。何より、ここでこいつを倒さなきゃ私の気が済まないし。
ひとまず、こいつが出てくる瞬間をうかがう。
水面が揺らぐ、また出てくるか・・・?。またしても水飛沫!
「狐火!」
私は口から火を吐いた。射程が1.5メートルなので当たりそうにはないが、牽制にはなる
だろう。
巨大な鮎は、再度水を吐くが、火で少し勢いが弱まった。が、またしても私に当たった。
今度は右肩だ。くそう、威力が弱まっていても不快感はある。むかつく奴だな。攻撃した
らすぐ逃げるヒットアンドアウェイ作戦がむかついてたまらん。
こういうときはもうあれっきゃない。そうだ。火薬草だ。これを直接水面に投げつける
かあるいは、直接当てればいいだろう。ダイナマイト漁とやらは違法と呼ばれているはず
だが、これはゲームだし別にかまわないだろう。何より私の、気が収まらんし。
「というわけだくらえやー!!!」
私は水面に火薬草を投げつけた。よし、これでおしま・・・なんだと。火薬草は爆発し
なかった。そうか。水に当ててもだめだったのか。くそう。単純なことだった。となると
あの巨大な鮎に当てる前に水飛沫に当たったらだめってことか。何て厄介で面倒くさい相
手なんだ。
またしても巨大な鮎が飛び出してくる!火薬草を投げるが、全てが水飛沫に当たり爆発
は起きない。タイミングよく一発を投げつけてみたが、水を吐き出してきて吹き飛ばされ
またしても私は攻撃を食らう。今度は左足だ。くっそ。
「~~の野郎。」
この般若レディのねこます様を怒らせやがってこの野郎!絶対に許さんぞ!私の怒りは
頂点に達した。
薬草を食べながら、どうするかを考える。火薬草を投げた瞬間に狐火を使えば引火して
当たるだろうか。いや仮にそれが通じても射程が短いので下手したら火薬草の爆発に私も
巻き込まれる可能性がある。どうするか。くそう。どうするか。やばいけど試してみるか。
4回目の飛び出しが来た。火薬草を投げつけつつ、狐火を使ってみた。すると。くそ!
射程範囲外ぎりぎりから攻撃してきやがった!上手く当たらない!そして更に水を吐き
出す、これはもう水鉄砲と呼ぼうか。それに左肩が当たる。やばい。これはやばい。
薬草を食べるがとにかく攻撃手段がない。もう川の中に突っもうかとすら思ったが水
中は奴に有利すぎる。私は、水中では移動速度が極端に落ちるのでやはりそれはダメだ。
これはピンチと言う奴じゃないか。仲間もいない。だけど戦うしかない。逃げるのは
屈辱だから嫌だ。うおおおおおお。なんじゃこりゃああ、詰んでいるじゃねえか。何か
策はないのか!
少し距離をとる。頭を冷やせ私。何か、何かいい案がないか。ピンチなんだぞ。こん
なところでやられるわけにはいかないだろう。
そこで無情にも巨大な鮎が水鉄砲をしかけてくる。今度はなんとか回避した。そうだ、
ここは獣の骨とかゴブ棒を投げてみるか!
「くっらえええええええ!」
よし!命中した!しかし、巨大な鮎は全く怯まず攻撃してきた。なんだよそりゃあ。ま
た今回も堅い奴かよ。ふざけんなよ!
ここで他のアイテムもなんとかならないか考えてみる。あっ!?私はついに閃いた。こ
の川のあたりにある、手ごろな石ころを手に取る。それに、火薬草を巻き付け、さらにそ
れを、布でくるむ。これならいけるんじゃないだろうか?
一度でも水で濡れたらだめなのかどうかは分からないが、石ころの衝撃があればそこから
爆発してくれる可能性もある。よし!やるだけやってみるぞ!
もう何度目か分からなくなったが、巨大な鮎が出てくるのを待つ。大丈夫だ。私は般若
レディ。ここじゃ最高のピッチャーだ!
ひときわ高く飛び上がった巨大な鮎。水飛沫も激しい。待つ、待つ、瞬間を待つ!!
水鉄砲まで吐いてくる巨大な鮎!これを間一髪でかわし、鮎が川に落ちていく!ここだ!
「魔球!火薬石弾!」
安直なネーミングだろうか。思いっきりそれを投げつける。いけええええええええええ!
ドンッ!
大きな爆発音が聞こえた。よし!成功だ!ぎりぎりまで水を回避した上で投げつけたんだ。
石に巻き付けることで、よく飛ぶようにもしたし、布のおかげで水にもほとんど濡れなか
ったようだ。作戦通りだ!やったぜ!
巨大な鮎は、水面でぴくぴくと体を震わせていた。体は吹っ飛んでいなかった。念のた
めもう一発投げつけることにした。動かない的なら当てるのは簡単だ。そして爆発が収ま
り巨大な鮎は沈黙した。ぷかぷか浮いているだけだった。
まだ怖かったのでいつも通り警戒して一応何度か獣の骨とかを投げつけてみたが大丈夫
だった。
「よっしゃああああああ!鮎ゲットおおお!持ち帰ってみんなで食うぞおおおおおお!」
こうして私と巨大な鮎の激闘は終わったのであった。
第二章もこんな感じでスタートしました。
毎回、どうやって倒せばいいのか実は私も分かっていない状態です。
だから自分も書いていてとても楽しいです。
これからも頑張っていきますので、お暇な方がいましたら、評価、感想等お願いします。