第314話「ドラゴンフルーツとの再会」
ちょっと字数不足なので少し付け足すかもしれません。
あと、密林ではなく熱帯雨林でしたので、今後訂正していきます。
よろしくお願い致します。
「あったあああああああああああああああ!?」
目の前にずらっと並んだ樹にドラゴンフルーツが沢山成っていたので思わず大声をあげてしまった。だが、これだけ沢山成っていると、罠なのではないかと疑いたくなってくる。実はドラゴンフルーツの形をした爆弾なのではないかと思えてきた。
以前、りんごが爆弾で、触れるとゲームオーバーになるなんて恐ろしいゲームをプレイしたことがあるので、ここは迂闊に触れない。とりあえず接触しても大丈夫なのかどうかは、そこらに落ちている小石を投げてみる。何も起こらなかった。これなら大丈夫だろうか。いや、今の一個だけではまだ分からない。他の樹になっている実にも軽く当ててみる。どれもこれも特に問題はなかった。
中身に毒が含まれているとかしないだろうかと思ったが毒耐性があるのでこちらは多分大丈夫だろう。となると後は近づいてもいいかどうかだ。ああいうところに落とし穴だとか、踏むと槍が襲い掛かってきたりするような罠が仕掛けられているかもしれない。これもまた迂闊に飛び出せない。
試しに地面に向かって攻撃を放ってみるが、特に何も起こらなかった。これも大丈夫か。エリーちゃんがいればこんな面倒な事にはならなかったのだけれど、いないとこうなんだよな。やっぱり罠探知とかは便利だなあと思う。手間暇かけて安全確認をしなきゃいけないのは結構疲れるし。
「マスター。何をやっているんですか? 実が成っているのに取りに行かないんですか?」
「罠があるかもしれないからねー。迂闊に飛び出せないよ。」
「ああ、警戒していたんですね。多分罠はないと思いますよ。」
「…なんで分かるの?」
「俺の罠センサーに引っかかってこないからです。」
「それは先に言って欲しかった。オーケイオーケイ。じゃあ取りに行くか。」
罠センサーとか、随分便利な物を持っているんだなぁ。でもそれ本当に罠センサーなのかと怪しい所があるので、完全に信用はしない。そんな機能がどこにどうやってあるのか分からないし。ビスケットが何かを説明する時は予想の斜め上を行くのが常だし、安心はできないな。
「…えい。」
鎌で、ドラゴンフルーツが成っている部分の上部を斬る。そして落下したドラゴンフルーツを披露。
メッセージ:ドラゴンフルーツを手に入れました。
「や、やった。久々のドラゴンフルーツを手に入れたぞー!」
長かった。前も手にしたことがある、これを手に入れるためだけにここに来てまたやたらと時間が経ってしまったがやっとこさ手に入った。
「ヤリマシタネ! ねこますサマ!」
「ツイニヤリトゲマシタナ!」
「オメデトウゴザイマス。」
(母上、ずっと探していましたよね。おめでとうございます。)
「マスター、良かったです。」
というようなお祝いを貰った。そういえば以前プレイしていたゲームでも、欲しい物とかレアアイテムが手に入った時はみんなでおめでとう!とか言い合ったもんだなあ。レベルアップした時なんかもそうだった。あぁー良かった良かった。本当にここまで長かったよ。はぁ。
「みんなも協力してくれてありがとう! というわけでこれからどんどん採取を…。」
待てよ。このまま採取していっていいのだろうか。確か前回は沢山採りすぎていたら、毒狸たちが襲い掛かってきたんだよな。となるとここは毒狸の領域で、このドラゴンフルーツをとりすぎると、出てくるって寸法なんだろうか。うーん。そうだとするとまずいな。こっちはそこそこ消耗しているので、また戦いはしたくない。
というか私がしたくない。今日はもう嫌だ。疲れている。ゲームで疲れるというのもなんだけれど、やっぱりがっつりプレイしたところでまた戦いを始めるというのはやる気が出ない。そんな状況で強敵と戦うことになったらそれこそ負けるかもしれないので嫌だ。そうなるとやっぱり適度に採取していくのがいいんだろうか。でも適度って何個くらいなんだろうか、分からないなあ。100個くらいは大丈夫な気がするからとりあえず100個取っていくか。
「ここで採取し過ぎると問題も起きそうだからとりあえず100個で我慢しとくよ。それ以上は明日からとっていく事にしよう。」
明日もまたある保証がないけれど、今日はなんとしても手に入れたいという気持ちだったので、ここからは後日でもいいだろう。
「ああ、採取前に一旦みんなで食べるとしようか。」
一人1個分をとって、まずは食べてみることにした。味の違いとかあったりするかもしれないし。
「それじゃいただきま。」
「マスター、俺の分は?」
「え?」
ん? 足だけというかまぁ腰部分までのゴーレムのビスケットが食べようと思って食べられるもんなのだろうか。え、本当にどうやって食べるんだ?
「ビスケットって、物を食べられるの?」
「そりゃゴーレムですし食べますよ! もうマスターってば! 俺だけ仲間外れにして!」
えぇー。そんな怒らないでくれよ。どうやって食べるのかよく分からなかったというかそもそも食べられるとか知らなかったから聞かなかったんじゃないか。足だけのゴーレムが食べるなんて誰も思わないだろうし!
「えーっと、それじゃあはい。どうぞ。」
ビスケットの足元にドラゴンフルーツを置いた。どうやって食べるのか気になった。
「それじゃいただきますっと。」
・・・。味は、ちょっと酸っぱい気がする。なんだろう、前に食べた時よりも酸っぱいような感じがする。みんなはどうだろうか。あれ、美味しそうに食べている気がする。
「メチャクチャオイシイデスネ!」
「ウマイウマイ!」
「コレハスバラシイ!」
「母上。これはとても美味しいです! とても甘いです!」
ひじきも召喚して食べさせているのだが、ひじきは蜜を吸うような感じのようだ。というか甘いだって? 酸っぱいじゃなくて甘い? え、私がおかしいのか?
「酸っぱくない?」
「スゴイアマイデス。」
「甘いですよ?」
もしかして私の味覚がおかしい? あるいはおかしくなってきている? どういうことだ。NPCには味が違って感じるということなんだろうか。よく分からないな。そんなときあった。
「エネルギー吸収!」
ビスケットが、ドラゴンフルーツに足の裏を向けると、そこにドラゴンフルーツが吸い込まれていった。え、えぇぇーそんなの誰が思いつくって言うんだ。今までこんなゴーレムはどのゲームでも見たことが無いっての!
「甘いっ! すげー甘い!」
味覚もあるのか!? どういう構造なんだよ全く。はぁ。それにしても全員が甘いと言っているのが気になるなあ。なんで私だけ酸っぱく感じるんだろう。あ、いや、でも。嫌な予感しかしないなあ。もしかすると。
「マスター、どうしたんですか?」
「ああ、うん、何でもない。」
何でもないというわけではないが、ありえそうな事に気が付いた。現実の私が体調不良になりかけているのではないかということだ。多分合っている気がする。私は体調不良になる前なんかにたまに味覚が変な事になるところから始まって段々下向きになっていく。となるとこれは前兆というかそういうのが現れてきているのかもしれない。
だけど、そこまで再現するものかこのゲームは!? 私の現在の体長も踏まえているとはおそるべしVRなんじゃないか。おっとそんな感心している場合じゃないぞ。VRで体調不良になりかけに気づくのもなんだけれど、これはこのまま続けていたら、警告画面が出てくるかもしれない。体調不良時はゲームをさせないようなプログラムが出てくるはずだし。
今は大丈夫だけれど、強制的にログアウトさせられるのも嫌なので、ここはとっととログアウトしないといけないな。
「あーみんな食事中にごめんね。私また、ちょっと離れないといけなくなったから、今日はここで去るから。本当にごめんね。」
「ワカリマシタ。マタゴジツニ、ヨロシクオネガイイタシマス。」
そうして今日はみんなに別れの挨拶をして、急いでログアウトしたのだった。