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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第311話「不思議な鎌とドラゴンフルーツ」

 私は、呆然と立ち尽くしていた。私の前方にある草木の上部分全てが、綺麗さっぱりなくなっていたからだ。あれ、どうしてこんなことになったんだっけ。えーっと、確かビスケットが草刈りを楽しくなさそうとか言ってたからか? それで、ここで実演してみれば楽しさが分かると思ってやってみたはずなんだけれど、なんだこの有様は。

「あのー、これはやっぱり私がやったのかなぁ?」

「ねこますサマがやりました。」

 どこか遠い目で私を見るたけのこだった。うぅ、これはかなり引かれている。

「す…すすすす。」

「ん?」

「凄いですマスター!!!! こんなことができたんですね! なるほど! これなら草刈りが楽しいって言うのが分かりました!」


 ビスケットには顔が無いけれど、かなり喜んだ声を上げているので、草刈りの楽しさというのを理解して貰えたような気がする。だけどなんか違う意味で理解してしまったような気がしないでもない。まぁこれだけはしゃいでくれているなら、やってよかったかもしれない。明らかにやりすぎな気がするけれど。

「ねこますドノは、コンナコトモデキタノデスネ。」

「スエオソロシイデス。」

 完全に想定外の威力を発揮したみたいなんだけれど、まさかこんなに綺麗さっぱり切れてしまうとは思わなかったよ。この鎌の切れ味は凄まじいな。それに、射程距離もか。大体100メートル先までぶった斬れている。だけどこれって私の実力なんだろうか? ちょっと気になるなあ。この鎌を使えば誰でも出来てしまうんだったら残念な気がする。


「イッピキメ。ちょっとこれ持ってそこらへんを斬ってみて。」

「エッ!? ねこますドノノ、ダイジナエモノヲツカウナンテ! オソレオオイデス! ムリデス!」

 いやいや、そう言わずに、ちょっとやってみるだけなんだからと推してみたら、折れてくれた。これは結構重要な気がするしな。この鎌が誰かにとられてしまった場合、さっきみたいな威力を発揮されたらかなりまずいことになるし。盗まれる気はないけれど、これまで以上に大事にしないといけないなと感じた。

「デ、デハイキマス。オリャ!」

 イッピキメが、目の前の木に鎌を振り下ろしたが、ただ突き刺さっただけだった。あれまぁ、やっぱりこれは私専用の武器だったってことか。私だけがあの威力を出せるというのは良いことだな。

「ス、スミマセン!? ねこますドノノブキヲコンナフウニシテシマウナンテ!」

「あっいや大丈夫だって。どうなるのかが知りたかっただけだから。」


 鎌の事が分かったのは良かった。だけどまだまだ謎は残る。この鎌は本当にただの鎌なのかが分からないし。あぁ、いつかはこの鎌が何なのかを解明したいな。

「トコロデ、アノワイバーンハモウイインデスカ?」

「あ!」

 すっかり忘れていた。鎌の事というか草刈りのことになってしまうと我を忘れてしまうなあ。今回は密林にドラゴンフルーツをとりに来ていただけだというのに、いつの間にか別な事をやってしまっている。また、いつものように脱線してしまっているよ。いい加減ドラゴンフルーツを探さないとなあと思っていたんだけれど、どうもやる気が起きなくなってしまっている。さっきの戦いでどっと疲れてしまったなあ。

「紫色のワイバーンは、近づいたら呪いがかかりそうで嫌だから探さないでおこう。まぁ何かアイテムが手に入ればよかったけれどそれは仕方ない。」

「何か知っていそうな奴でしたね。」


 聞きだしたいことはあったけれど、もう倒してしまったからしょうがない。魔者の事を知っているそぶりを見せていたけれど。というかなんで私が魔者だって分かるんだろうか。どいつもこいつも私が何かすれば魔者と言い出すような気がしてきた。もう魔者やめたーい! というか魔者の正反対にあたる聖者はいないのかーい! 有名なのは聖者なんだから、私の魔者っていうのはもっと隠しておきたいのにさぁ! もういい加減魔者関係の事は辞めて欲しい!

「魔者について詳しく知りたいなあ。あの塔にもう一回行くのもありだけれど、詳しく知っている奴とかいないものなのかな。」

 クロウニンも詳しいだろうけれど、話し合う感じじゃないし。本人に聞くのもありだろうけれど、錬金術士の杖を持ったからといって必ずしもでてくるわけじゃないから、困りものだ。


「おっと、また脱線するところだった。とりあえず適当にぶらついて、ドラゴンフルーツを探そうか。目的を達成しないと、なんでここまで来たんだってことになっちゃうし。」

 折角、敵の脅威が去ったのだから、ここはドラゴンフルーツ探しを再開しないといけない。どこにあるのかもよく分かってないないけれど、それを探すことが最優先なのだから、頑張りたい。

「ソウデスネ。ハヤクミツケタイトコロデス。」

 ようやく、密林探索を再開する。気配感知をしているけれど、何もでてこないのが良かった。この状況で何かでても戦う意欲があまりないし。面倒事はもうたくさんだ。

(母上、心労が重なっていますが、休まなくていいのですか?)

 今日はずーっと脱線していたような感じだから、せめてドラゴンフルーツの発見ぐらいはできないと何も進んでいない気がして嫌なんだよね。一個でいいから手に入れておきたいんだよ。


「もうひと踏ん張りだと思う。なんとしてもドラゴンフルーツを見つけて集めたい。」

 別に戦いに参加することがなければドラゴンフルーツなんて必要ないんだけれど、私の立場上、絶対に敵と戦わなければいけないので、必須アイテムになっている。ゲームにおいて、きちんと準備ができていない状態で敵と戦うと、絶対に勝てないというような事も相当経験してきた。


 アイテムが不足してしまい、全滅をした苦い思い出が忘れられない。あと少し持っていたら結果が変わっていたかもしれない。そういう事がかなりあった。ゲームによっては所有数に制限があることが多いのだが、現状<アノニマスターオンライン>ではそのような制限が見られない。つまり、いくつでも同じアイテムを持つ事ができるようだ。これは凄い。正に私にとっては理想の状態だ。無限にアイテムが持てるのは最高だ。

 だけど、こうなってくると他のプレイヤーも大量にアイテムを持っているということになる。つまりプレイヤー間での戦いはこうしたアイテムをどれだけ持っているかが重要になってくるのだろう。だからナテハ王国の街で薬草が高値で売れたと思うし。

 誰かが高値で買い占めている。それがこのゲームの特徴だろう。あるいは、初心者プレイヤーやそこまでプレイヤー間での戦いを重要視していない場合は、資金稼ぎのために売ったりしているのではないかと思われる。


 こんな状況だ。ドラゴンフルーツはかなり貴重なアイテムになるに違いない。プレイヤー間での戦いも私はきっと巻き込まれていくであろうことが予想されているので集めなければ死ぬ将来しかない。だからここで集めないということは、黙ってやられてしまえというのにも等しい。そんなことでやられるのは嫌なので、集めるしかない。どれだけ苦労してもだ。

 魔者の大陸から出ないままにすればいいという考えも駄目だ。ここだっていつか誰かが来るだろう。運営がここへの道を公開するなど様々な事をすれば、きっとここも争いの場になる。そしたらやっぱりドラゴンフルーツも、そして薬草ですら入手ができなくなりそうなので、やっぱり今のうちにやっておくしかない。


「私がここで諦めたら死ぬって言うのがもう納得いかないんだよなあ。くっそー、魔者なんてもう嫌だぁぁぁ。」

 もう魔者辞めます。って願っているのに称号は消えないみたいだし。またいつもの愚痴になるけれどなんでちょっとあの塔の部屋に入っただけでこんなことになるのかなぁー。あぁもう不貞寝したくなってくる。うおおー。

「ねこますサマ。ホントウニダイジョウブデスカ?」

「うん! ドラゴンフルーツを見つけたらそれで終わりにするから大丈夫!」


 こういう時ほど出て来なくなるのは分かるんだけれど、探さずにはいられない。その辺を見渡してドラゴンフルーツが無いか必死になる。ここで見つからなかったら、また明日というのもありなんだけれど、また明日も脱線したら嫌だしなあ。大体私に絡んでくる奴が多すぎなんだよね! 私の邪魔をするな! 魔者なんだし! …あぁ疲れているな私。


「ねこますサマ! ドラゴンフルーツガアリマシタヨ!」

 ああそう、ドラゴンフルーツがあったってね。はぁそんなのがあっても意味がないんだって。あのねえたけのこ、今私達は頑張ってドラゴンフルーツを探しているんだから。ドラゴンフルーツがあったなんて言われても困るんだ…。え?

「何があったって?」

「ドラゴンフルーツデス!」

「どどどどどどど、どこに!?」

「アノオオキナキニアリマス!」

「マジでマジで!? マジだった!?」

 ひときわ大きな樹が、目の前に立っている。あれ、こんな大きな樹があったのに、気が付かなかったなあ。おかしいなあ。これはもしかして幻覚じゃないのか!? そうだおかしい! これは何者かが化けた偽物の樹な気がするぞ! 絶対にそうだ、そうに違いない! 運が悪い私の事だ。これもきっと嘘に違いない!


「これは偽物だ! 私には分かるぞ! こんな大きな樹になっているなんて怪しい! 私は騙されんぞ! 正体を現せい! 真空波!」

 私は、鎌を振り下ろし、樹に向かって真空波を放った。すると、成っていたドラゴンフルーツがそのまま地面に落下した。あ、れ? もしかしてあれ本物か? いや待てい! そんなことがあってたまるか。今まで散々騙されてきたのに、ここで素直に手に入るなんておかしいだろう!

「マスター。ちょっと疑心暗鬼になりすぎでは?」


 だ、だってありえないよ? 私だよ? 今まで薄幸で可哀そうな乙女がそんな幸運に恵まれるわけがないじゃないか。それに、やっぱりあんな大きな樹にドラゴンフルーツが成っているなんておかしいと思うし。もう何も信じられなくなってもしょうがないよ!


「あれ、幻覚とかじゃないと思います。」

「ワタシモソウオモイマス。」

「ワレワレモ、ホンモノダトオモイマス。」

「えー。」

 そういう風に期待していると痛い目に遭うんだよ。大抵期待すると裏切られるんだからさぁ。よーしじゃあ行ってみようじゃないか。ドラゴンフルーツが本物かどうか確認しに!


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