第310話「あっけない終わり」
明日追記します!
9/28 追記しました。
くらったら死ぬなんて攻撃をわざわざくらう必要性なんてないし、それを避ける手段があるなら当然使うと思うんだよね。というわけで、紫色のワイバーンに空間転移を使って遠くへ飛ばしたんだけれど、これなら呪いとやらは効果発揮しないよね? というかもう発動をしていたっぽいから、勝手に一人で自滅したと思うんだけれど、どうなのかな。
気になる、気になるけれど近づきたくない。だってここで近づいてしまったことで呪われて死ぬかもしれないし。そんなことにはなって欲しくない。
(母上。母上!)
あ、ひじき。大丈夫。多分勝ったよ。
(ああもう、母上は戦いに夢中になると私の声が届かなくなりますよ。)
あれ、そうなのかな。そうかもしれないね。私って何かに集中すると周りの物が見えなくなる時があるし。だけど、紫色のワイバーンなんか相手にしていたらそりゃ余裕もなくなっちゃうし。
(母上、あの呪いはかなり危険だったんですよ。本当に危うく死んでしまう所でしたよ。)
それは分かっているよ! でもあいつアホっぽいしなんとかなりそうって思っていたよ。なんかもう耄碌した感じだったし、全盛期が過ぎたワイバーンだったんじゃないのかなって思いながら戦っていたよ。
(だとしても、恐ろしい相手だったのですから、油断は大敵ですよ。ああいう輩が最後の力を振り絞って抵抗してくるときが手強いというのは、母上もご存知でしょう?)
それは、そうだね。だけどなんだろうね。なんとかなるって確信があったんだよね。よく分からない直感じみたものなんだけれど。その感覚があるときは大体上手くいくっていうか。いや、こういう思い込みが危険なのは分かっているから今後気を付けるけど。
(はぁ。もういいです。それで、他のみなさんはどうしたんでしょう?)
「あっ!? たけのこー! イッピキメ! ニヒキメ! ビスケット!」
叫んでみるが、何も反応が無い。あれー!? みんな大丈夫か!? ま、まさか私が紫色のワイバーンを空間転移させた先にみんながいた、なんてことはないよね。うわー!? これはまずい! ちょ、よっと待って、それでみんなが死んじゃったら、そんなのは嫌だー! うわーみんなー!
「ねこますサマ! ゴブジデシタカ!」
「お、おおお!? たけのこ!」
あれ、狙ってでてきたかのようなタイミングだけれどまぁいいか。良かった。他の皆も無事かな? なんて思っていたらたけのこに続いてみんなが来た。
「あぁー良かったぁ。」
ほっとしたせいか、地面にぺたりと座り込んでしまった。はぁ、もうどっと疲れたよ。今日はもうこのままログアウトしてしまいたいくらいだ。
「ねこますサマ。アノドラゴンハ?」
きょろきょろと当たりを見渡すたけのこだった。
「多分倒したと思うんだけれどね。それは確認していないから実際どうなのかは分からないや。」
「オオ、ねこますドノ、サスガデス!」
「エエ、シカシワレワレガナニモデキズ、モウシワケゴザイマセンデシタ。」
「あー。いや、そこまでかしこまらなくていいから。」
この面子でやっていくのは難しい事じゃない。むしろここで一番足手まというというかチームワークを乱しているのはきっと私だ。私の存でがバランスが悪くなっている気がしてきた。実力差があるというのはやっぱり良くないんだなあ。
「マスター。お疲れ様です。ところで、その鎌、すごい真っ黒ですけれど大丈夫ですか?」
「え? あ。」
鎌を右手に持っているのだが、確かにものすごく黒い。何か禍々しいオーラのような物がでてきているし、なんだかどんどん危険な代物になってきている気がする。このまま使い続けてもいいものなんだろうか。というかもしかしてこれであの紫色のワイバーンの爪を砕いたからこうなったんじゃないだろうか。ああでも、その前に黒くなったことだし、違うのかなあ。
「すごいエネルギーです。それなら、ちょっとやそっとの事じゃ壊れないと思いますし、オレの体とかでも簡単に切れてしまいそうです。」
そうなのか。やばいなこの鎌。大分長い事愛用しているけれど、最近急激に強くなってきている気がする。便利になってきたから使う回数も増えてきたけれど、このままどんどん威力が上がっていくことにデメリットが無いのか気になってきた。こういうのが何のデメリットもなしに使えるというのはおかしな気がするしなあ。
「草刈りで散々使ってきたから、きっとそのおかげだね。」
こんな感じであまり暗いイメージに持っていかないように言っておく。便利な事には変わりないし、問題が起きたらそのとき考えよう。現状この鎌を使わないなんて選択肢は私にはないし。だけど、このまま使っていて壊れたりはしないよね。それだけが心配だ。手入れだとかそういうことを一切していないし、壊れてしまったら号泣してしまうだろう。
「ねこますサマは、ズットソノカマヲツカッテイマスネ。」
「初めから持っていたからねぇ。」
そういえば、この鎌とピンクのジャージが初期装備だったんだよな。最初の画面だと着物っていうか何かの装束的な感じだったのが、いつの間にかピンクのジャージになっていたんだったもんな。もしかしてジャージもずっと使っているとそういう風に変化するとか、だったら面白そうだけれど。
鎌は、どうして鎌だったのか分からない、素手じゃなかったのは本当に良かったけれど、ここはもっと短剣とかそういうのじゃだめだったんだろうか。
「特定の武器は、使い続けていると強化されることがありますよ。」
「おおっと、ここで新たな知識が! ビスケット、強化ってどうなるの?」
「マスターの鎌のように、切れ味が鋭くなることや、専用のスキルを習得することがあります。」
スキルと言えば真空波は、マンティスパイダーを倒して習得したんだったなあ。だけどそれから先は特にスキルは習得していない。それに毎回強化が出てきたのを無視し続けてきているのに、強化されてきているのがおかしいなあ。
「もしかして、ひたすら草刈りをしてきたのも、功を奏したのかもしれないなあ。これは更に草刈りをしまくらないといけないかな?」
「エッ!? ね、ねこますサマ!? クサカリハシバラクイイトイッテマセンデシタカ!?」
「うーん。確かにそうなんだけれど、こういう風に強化されていくかもしれないなら、これまでの倍は頑張ってもいいのかなぁなんて思ってきてね。」
「ソソソソソウデスカ! ヤッパリクサカリハイイデスヨネ。」
「おっ! 流石たけのこ。分かってくれて嬉しいなあ。イッピキメとニヒキメ、それにこれからはビスケットも草刈りをしよう! 後は。」
仲間外れにしたら悪いし、当然ひじきもやろうね。
(えっ!? わ、私もですか!? い、いえ母上の魔力がなくなってしまいますし!)
草原は平和な場所だから別に構わないよ! だから一緒に草刈りをしよう!
(うっ。そこまで言われると、分かりました。機会があればやりましょう。)
「マスター。草刈りって楽しいんですか?」
「超楽しいよ! 薬草が沢山集まってねぇ、今は100万以上あるんだよ。」
大量にあるが、もっと集めてもいいくらいだ。ここまできたら、もうこのゲームで一番薬草を持っているプレイヤーと名乗れるくらいになりたいな。
「そうですか。草刈りとかつまんなそうに思えるんですけど。」
何? ビスケットは今何を言った? 草刈りがつまらない? そんなわけあるはずがないだろう。草刈りは最高に楽しいんだぞ。鎌を振って草を刈って薬草が手に入った時、最高の気分になれる。そうだ、みんなそう思っているんだ。ビスケットは何を言った?
「ビ! ビスケット!? オマエ!?」
たけのこが何か焦ったような声を上げているがどうしたんだろうか。
「草刈りは楽しいよ。すごい楽しいよ。みんなが楽しめる。世界平和への第一歩なんだよ?」
全くもう、ビスケットってば、何を言っているんだろうか。草刈りをしたことがないから分からないんだろうか。やってみればわかる。最高に楽しいことだというのが。草刈りをしていると気分が良くなり健康的になり、色々楽しくなってくるはずだ。それが分からないなんてなんて勿体ないんだ。
「そうなんですか。でも俺は遠慮しておきます。面白くなさそうなので。」
「ビスケットオオオオ!??」
オモシロクナイ? エット、イマ、ビスケットハナニヲイッタノカナ? ウーン。ヨクワカラナカッタナア。クサカリガ、オモシロクナイッテ? キキマチガエカナア? アアソウカ。
「草刈りをやってみたことがないからそう言うんだよ。そうだ。ここでもちょっとできるかもしれないし、やってみようじゃないか。」
私は、鎌に力を籠める。あれ、なんだろう、いつもより沢山の物が切れる様な気がしてきたなあ。草だけじゃなくて、何でも切れてしまいそうな。そんな感じがする。
「ね、ねこますサマ? ナニヲスルンデスカ? オチツイテクダサイ!」
いやぁ密林って木だの草だのが沢山あるなあって思って、だとすれば、この辺も草刈りしてみれば結構楽しいんじゃないのかなって思えてきてねえ。そうだ、私は何で今まで草原で草刈りをすることだけを考えていたんだろうか。草があればどこでだって出来ただろう。おお、なんてことだ、そんなことに今さら気が付くなんて。ふふ、ふふふ、草刈りが色んな所でできる。これはいいことだ。
「ふっふふふふ。たけのこ、いいことが分かったよ。草刈りは草さえあればできるんだ。」
「ハイッ!? エエハイ! ソウデスネ!」
「ここでも草刈りをしてみよう。そうすればビスケットも分かってくれる。」
「エエッ!?」
草刈りをここで実践してみることにしよう。鎌をぎゅっと握りしめる。おお、なんだかいつもよりも馴染んでいるような気がするな。これはこの辺り一帯も斬れてしまいそうなくらい勢いがありそうだ。ヨーシヨーシ。今やってやるぞ。
「ビスケット、よーくみておきなよ。これが、クサカリノタノシサダ! オリャアアア!」
私は、目の前にある木々と草むらに向かって鎌を大きく振るった。アア、ナンテソウカイナンダ。マックライヤミノヨウナヤイバガ、クサキヲキリサイテイク。ウワァスゴイ。アレ? ナンダロウ、ミンナフットンジャッタ? マァイイカ。アハハハーハー。タノシイナークサカリハ!