第308話「都合よく出てきた!」
1日1話4000字を目標にしているんですがなかなかうまくいきません。
明日も追記します。orz
9/26追記しました。
「テメェか。ワシに歯向かおうとするガキァ!」
突然だけれど、柄の悪いワイバーンに絡まれている。威圧を全開にして使ってみたら、遠くから何かが飛んできて、目の前に降臨した。あぁ、紫色のワイバーン。やっぱりこいつが元凶だったのかと思ったのだが、なんだこいつ歯向かうとかなんとか、うるさい奴だな。
「やあやあこんにちは。私にゾンビネズミを放ったのはお前か。」
「あぁ!? 勝手に腐ったネズミどもだろうが。ワシに近づいてくるのが愚かものなんだ。」
つまり、こいつ自身が何かしようとしたわけじゃなくて、こいつに近づくと勝手にゾンビ化してしまうとかそういうことだろう。うわぁ私も近づきたくないなあ。紫色のワイバーンってだけでなんかこう毒々しいし。
「へぇ。でもそのネズミが私に襲い掛かってくるもんでね。迷惑何でやめてくれない?」
思いっきりに睨みつける私だった。だって、それなら私がとばっちりを受けたってだけになるじゃないか。全く関係ないというのに。それになんでよりにもよって私なんだ。それこそあのネズミたちは、この紫色のワイバーンを狙えばよかった物を。
わざわざ私を狙うようになっていたのは、何か理由でもあるんだろうか。
「何言ってやがる。てめぇの邪気に惹かれてネズミどもが集まっているだけだろ。嫌ならその邪気を出さなきゃいいだけの話だろ。ワシに八つ当たりしてんじゃねえ!」
咆哮をあげて、私達を威嚇する紫色のワイバーンだった。ええ、邪気、邪気だって。そんなものを私が発しているなんて知らないぞ。
「邪気なんて出してないっての。」
「嘘ついてんじゃねえ。思いっきりだだ漏れしているだろ。自分で気づいてねえのか?」
マジか。つまりそれが目印になっているせいで、ゾンビネズミ達は私を襲い掛かってこようとしているのか。そんなの最悪だ。この邪気を消す方法なんてこいつが教えてくれそうにはないよなあ。
「知らないな。それよりお前がゾンビネズミを大量生産しているのが悪い。やめろ。」
「ほぅ。やはり自分が倒せないからって八つ当たりか。器の小さい奴め。」
「器なんてないからな。そんなものがどこに見えるんだ? もしかして耄碌してる?」
煽る、ひたすら煽る。久々に煽り合うのが楽しくてしょうがないな。なんか最近ストレスが溜まるようなことがあるので、こうやって言い争いをしてストレスを発散させたい。それに、こういう強そうな奴に散々文句を言うと、どこか気分が良くなってくるし。
「ワシはお前みたいな雑魚と違って忙しいからなぁ! お前みたいにいつでも暇してそうな奴とは違うんだ。はっはっは。」
お!? なんだこいつ。調子に乗ってきたな。これはもうさっさとぶっ倒してネズミから追われることがないようにしたいな。
「そうそう、じゃあ私の暇つぶしにくたばってくれ。」
「あぁ!? なんだ、結局くたばりてえってことか。ワシはいつでもいいぞ。かかってきな。だだ漏れ」
紫色のワイバーン。思った以上にでかい。全長10メートル以上ある。だけどなんか今、負ける気がしない。いつもはこういうでかくて強い奴には勝てないかもしれないなんて思ったりするんだけれど、何かこう、勝てる確信みたいなものがある。
こういう高揚感は何度か経験したことがあるのだけれど、この状態になるといつも油断が多い私なのに上手くいくことが多い気がする。よし、この状況が冷めないうちに戦いを始めるか。いつものように鎌を取り出す。すると、即座に鎌が赤黒く光りだした。
「フン。ちったぁ面白くなりそうだな。ガキがワシに勝とうなんざ。」
「1000年早いとかそういうことしか言わないんだよな! ワンパターン!」
私から先に攻撃を仕掛けた。今現在は、私達とこのワイバーンしかいない状態だ。こいつさえ倒せば今回の戦いは終わりそうな気がしているので、勢いでぶつかっていく。
「おりゃあああ!」
「地べたに這いつくばるしかできない雑魚が。はっはっは!」
空飛びやがったこのワイバーン。うわぁ、これが嫌なんだよなあ。空飛ぶモンスターと戦うのって、こっちが不利じゃないか。っとたくもう!
「ジュウアツ!」
咄嗟にたけのこが紫色のワイバーンに向けて重圧を使った。おお、これは結構いいんじゃないだろうか。飛んでいる奴に使えば重心を崩すなんてこともありそうなので、多分効果があるのではないかと思った。
「ん!? ハッハ、効かんな! どうれお返しだ。重圧!」
「んぎ!?」
大して効かなかった程度ならまだしも、こいつもまさかの重圧を使ってくる始末。だけどこれはたまたま真似されただけなんだろうか。こっちのした攻撃を真似することができるなんて言うのだったら嫌な感じだな。と、推察している場合じゃない。体に重さが加わり、私達は片膝をつく、あるいは、身動きがとりにくい状況になる。
「地べたを這いずり回るのは雑魚にお似合いだな。ハッハッハ!」
空に浮かびながら、嬉しそうに私達を小馬鹿にする紫色のワイバーンだった。なんだか小物臭が漂ってきた気がする。こういう台詞だけでなんとなく強さって見えてくるもんなんだよなあ。だからこそ、安心して出来そうな事もある。
「浮遊!」
これならどうだ。重さで動けなくなるのなら、浮かせてしまえばいいという安直な考えだけれど、これなら対応できるんじゃないだろうか。私以外って話になるんだけどね! 私には使えないから、重圧の効果をくらうのは私だけになるはず。
「うおおっ!? 軽くなった! マスター、ありがとうごいざいます! よし! おりゃあ!」
どうやら、効果はあったようだ。重さが消えて自由に動けるようになり、ビスケットが跳躍して、空飛ぶ紫色のワイバーンに蹴りを放った。
「おっと!」
蹴りを間一髪のところで回避する、紫色のワイバーンだった。惜しいなあ、あと少しでこいつの顔面に当てることができたのに。顔面? そういえばこいつの顔は…。うん、一般的な蜥蜴というかドラゴンの顔つきだな。でもどこか目が鋭い気がしたのと、どこか年を取っているような気がした。
一人称がワシだし、もしかしてこいつは年寄りなんだろうか。
「あっ、こいつっ! よけるなっ! ムカツク!」
「はっはー! どうしたぁ!? 雑魚は空を飛ぶこともできないのか!?」
出来るね。出来るけれど、ここですぐ使いたくないなあ。だってなんか、そこそこ高位なはずのワイバーンは、きっと高貴な感じがするんだろうなあって思っていたから。なんかここで飛んだとしてアホっぽいう会話が繰り広げられそうで躊躇してしまう。
もうちょっと、頭の良さそうな奴だったら違うんだろうけれど、これはないなあ。それに今は私だけ間抜けに地べたに座りこんでいる状態なので、これまた間抜けな感じがして、気が緩んでしまっている状態だ。
「雑魚はこれでも食らえ!」
紫色のワイバーンは、口を大きく分け黒い霧のような何かを吐き出してきた。あっ、これやばいんじゃないのか。そう思った私はすぐにスキルを使うことにした。
「空間転移!」
私以外の仲間たちの場所を黒い霧の届かない地点へ移動させる。このスキルも私自身は対象外なので、このままだと私だけくらってしまう。それは非常に困ってしまうが、今できそうなことは限られているので、簡単な反撃だけすることにした。
「真空波!」
なんとか右手の鎌を振るい、眼前に迫る黒い霧にむけて真空波を放つことができた。これでいくつかはかき消したが、全部は消えなかったので、私は残った黒い霧をもろに浴びてしまう。これは一体どうなってしまうのだろうか。
「はっはっは! ワシの毒の息を浴びてしまえば、貴様も、もうおしまいだなあ!」
え、毒の息だって? まさかそんな! 毒消しなんてもっていないし、このままだと、毒になって苦しみながら死んでしまうじゃないか。なんてこった。じゃなかった。私は毒耐性を持っているし、ひじきは解毒魔法を使うことができるじゃないか。
「うわー!」
「雑魚が! このワシに逆らうからこうなるのだ! 思い知ったかあ! ハハハハハ!」
嬉しそうに空で叫び声をあげる、紫色のワイバーンだった。えー、あの、私は毒耐性があるからあんまり効果が無いと思うんだけど。いや、ひょっとしたら猛毒みたいなものになっていて、このまま私は死に至ってしまうのかもしれない。ひじきの解毒魔法があるけれど。
うん、なんか気が抜けてしまう。これは一体どうしろと言うんだ。私は、毒には…。かかっている気がしないんだけれど。普通に毒耐性だけでなんとかなっていないかこれ?
(母上は、毒になっていないようですよ。)
そうか、そうだよね。だとするとあいつの使ってくる毒の息とやらもみんな、耐性があるからなんとかなるってことなのかな。
(ええ、そうですね。特殊な毒ってわけでもさそうですし。)
なんか格の低いワイバーンなんだろうか。最初、こいつはやばい相手みたいに思っていたんだけれどどこか間抜けでアホなイメージが定着してきた。期待外れと言うか、これもしかしてわざとやっているんじゃないよね? それともこの紫色のワイバーンは天然なのか?
確かに毒に耐性が無ければ猛威を振るっている所なんだろうが、それは一切効かないわけだし。というかこんなんじゃ毒狸の母よりもずっと弱かったりする可能性すらあるのでは。
「今に、貴様の体には毒が駆け巡り、猛烈な苦痛と共に、死ぬのだ!」
今の私には一切毒が回ってなくて、気楽な気分で、どこか遠い視線で紫色のワイバーンを見つめてしまっているんだけれど、これはどうなんだ。
(母上、乾いた笑いをして大丈夫ですか。)
「おおっと!? 気が狂ってきたか!? 苦しめー! ハハハ!」
呆れてものが言えなくなっているだけなんだけれど、さらにこの紫色のワイバーンが子供のように無邪気にはしゃいでいるので、逆に申し訳ない気持ちになってくる。
そして今、重圧の効果が切れたので、私は起き上がった。よし、それじゃあ反撃するとするか。
「うぐぐ。苦しー。」
「もがけー! くるしめー!」
だめ、笑ってしまいそう。こんなの狡い。