第306話「考えるよりも」
※305話の文章が支離滅裂になっていたので訂正しました。
意味が分からないものを公開してしまい申し訳ございませんでした。
是非、前回分から読み直しをお願いいたしますorz
9/24修正・追記しました。
30分が経過したが、空から何かがやってくる事は無かった。だけど気配感知には相変わらず引っかかっている。警戒しながら動くのは嫌だが、このままここでじっとしているのも時間が勿体ないなと思った。
しかし、こういう状況で先に動いた方がやられてしまうなんてことがあるので根気よく待つことにした。そして待つ事1時間。気配感知では何も出て来なくなった。もしかして私のスキルポイントが枯渇したのかと思ったが、他のスキルは使えたようなので先に相手がどこかへ消えていったようだ。
そんなわけで、ようやく密林探索を再開することにした。紫色のワイバーンは、ひとまず後回しにすることにした。
「探すのはドラゴンフルーツ最優先で、その次に川が無いか探そう。」
薬草集めの傍ら、くろごまやブッチには豚狩りをして貰っていたので食料はあるが、水はそう多くない。たけのこ達の分を常に確保していくには川があると助かるのだが、今の所見ていない。確かあった気がするんだけどなあ。やっぱりくろごまを連れて来ればよかったなあ。ミスしたなあ。
「ここ、迷路みたいに入り組んでいて苦手です。」
「確かにねー。って迷路…か。」
まさかここ、ローグライクゲームのダンジョンみたいになっていないよな。入るたびに構造が変わるダンジョンで、地図を作っても構造が変わるので無意味なあの。ってそんなわけはないか。それだったら、くろごまがあんなにさくさく進んでいったわけないだろうし。それともそういう直感が優れていただけってわけじゃないよね。
「目印か何かつけておいた方がいいかなあ。」
「ねこますサマ。ワタシナラ、イチドキタバショノニオイガワカリマス!」
「おっ。たけのこもそんな能力があったのか。じゃあそこは大丈夫か。となると。」
後は適当に歩いていくしかないか。ドラゴンフルーツと川を探してひたすら、ただひたすらか。モンスターは今のところいないみたいだけれど、いやいたよ。なんだこれ。沢山反応があるな。何かのモンスターがいっぱいるみたいだ。
「なんかこの先に行くと沢山モンスターがいるみたいだから、他の道にい・・・え。」
他の方角からも、モンスターの反応が確認された。あれれ、これは結構まずい状況なんじゃないのかな。囲まれている? いや、私達を囲んでいるんじゃなくて、むしろこれが縄張り争いか何かって事なんじゃないだろうか。となるとこれ巻き込まれている状態じゃないか。ここから早く離脱したほうがいいな。
「なんかすごい数の敵がいるみたいだから、反応が無いこっちに行こう。」
反応があったのは東西から。であれば私達は北方向を目指していく。反応が少しずつ増えていくのでこれは急いで北を目指さないと激突必至だ。なんで急にこれだけの数がわいてきたのかは分からないが、このまま戦うのは得策じゃない。数の暴力というのは思っている以上に強い。一騎当千なんてことばがあるが、つまり千匹モンスターがいれば倒せてしまうということだし。私達がそこそこ強かったとしても、相手が千匹以上いたら、傷つくし、場合によっては倒されてしまう。だからここは逃げの一手だ。
「ねこますサマ。ワレワレモ、ナニカケハイヲカンジマス。」
「ウム。コレハアマリイカンジガシナイナ。」
「コノプレッシャーハ…。イアツカ。」
私には何も感じられないんだけれど、私も威圧を持っているからなんだろうか。小型の敵が沢山威圧を使ってきても、私よりも効果が低いのかもしれないな。
「・・・急がないとな。」
なんでこんなにどんどん反応が増えてきたのか分からない。それくらい敵の数がすごい。千匹なんてものじゃない、もっと多くの反応だ。私がいる方向まで来ているわけじゃないので追ってきてはいないのが分かる。だけど、東西から反応があった連中同士は徐々に近づいているようだ。
例えばば西が狸の軍勢、東が紫色のワイバーンの軍勢なんてことになるんだろうか。ああ、考えながら動くのって大変だなあ。一番大変なのはビスケットだろうけれど。
「あぁもう。木が邪魔だなあ! マスター、燃やしちゃってください!」
「燃やすのは最後の手段だってば!」
だけどそれもありかなと思ってしまった。これだけの大群が襲い掛かってくるのだったら、密林を燃やしてもやむを得ない。まぁいつも燃やすかもとは言ってるけれど、本気で燃やすつもりはないんだけどね。森林火災なんてかなりやばいことになるのが、ゲームだからあっさり解決しているだけだし。
それに、この密林で火災が発生したら、それが他の場所であったように解決するかどうかも分からない。なのでやりたくないなあと思っている。
「マスター。マスターの気配感知は、どんな敵なのかは分かりませんかー?」
「それはできないなー。」
ひょっとしたら出来るのかもしれないが、また一つ段階が上がらないといけない気がする。また必死になって特訓しないと駄目だろうな。今。私が使っている気配感知は要するに点みたいなものが見えているだけで、それを更に具現化するのって大変そうだなあ。
あっ、敵の姿が見えるようになれば、それを見たという事で、ビスケットから敵の情報が貰えるようになるんじゃないだろうか。そうなれば、事前に敵の事が分かった状態で戦えるようになるから、私みたいな弱小プレイヤーには相当便利なものになる!
「気配感知、もっと鍛えることにするよ。」
「ねこますサマハ、コウジョウシンガスゴイデスネ!」
生き残りたいという単純な理由だけれど、自分がどういうものなのか分かっていると、目指す方向性も決まっていいとは思う。
(母上、大丈夫ですか? 敵が結構迫ってきている気がするのですが。)
えっ? ああっマジだ! なんなんだこいつら!? さっきまでは全然いなかったのになんでずっと先までいるんだ!? まさかこのタイミングで召喚されたからとか言わないよな。もしそうだとしたらこれだけの大群を召喚するようなすごい奴がいるってことになるんだけれど。
「そんなのと戦うことになるかもしれないのか。うわぁ嫌だなあ。」
この大群を相手にするなんて嫌すぎる。それだったらブッチがいてくれたらよかったのに。ブッチだったら、一匹一匹をじっくりじわじわと、確実に仕留めていくし、無限湧きが大歓迎しそうノリだからなあ。はぁ、ブッチに頼りすぎな私がいるけれど、パーティに一人は戦闘狂がいてもいいかなって思い始めてきた。
「ねこますサマ! ナニカキテイマス!」
東西から赤く光る目玉が見えた。何だ? 一体何が出てくると思いながらもひたすら北を目指して突き進んでいく。すると、出てきたのは。
「ネズミ!? 腐ったネズミ!?」
東西両方から、腐ったネズミが大量発生していた。あれ、両方で争い合っているというわけではなかったということか? それにしてもこれだけの大群。あっ!? 紫色のワイバーンか!? あいつがこのネズミ達を召喚したか、あるいは、腐らせて洗脳したかってところか!?そうだよ、絶対にあいつに決まっている!
「ヂィーー!」
「邪魔だどけっ!」
襲い掛かってくる腐ったネズミを、電撃の鞭で叩きつけていく。これはまずいな。多勢に無勢だ。そして、東西にいたはずのネズミは合流して、私達の背後から追いかけ始めてきた。
「まっじっかああああ!?」
「ムゥウ!? ジャマダ! ジュウアツ!」
襲い掛かってくる無数の腐ったネズミ達に重圧を放つたけのこだった。サイズ自体は小さいので、一気にまとめて始末できるが、かなり数が多いので、このまま相手にするのは得策じゃない。それにこれが無限湧きだったとしたらやっぱり相手にするだけ無駄だ。
「ねこますサマ! ワタシノセナカニオノリクダサイ!」
「おっけー! ビスケットは、そっちの二匹を乗せてやって!」
「はい! さぁ乗って乗って! それでマスター。このまま突っ切ってもいいんですか?」
「いいけどって、そのサイズだと難しいんじゃ?」
「こうします。足の裏からビーム!」
ビスケットが右足を目の前に突き出すと、足の裏からビームが発射され、前方にある沢山の木々を吹っ飛ばしてしまった。こんな高威力のビームを使えるなんて、あ、それなら!
「あのさ! そ、それを後ろに撃ってくれない!?」
「エネルギー切れなのでもう一発は撃てません。」
「あぁぁぁぁぁあああああ! もういいや! じゃあ前に行こう!」
どうせそんなオチだろうと思っていたけれどそうだった。最初から後方に撃ってもらえればかなりの数が減らせたのに、これはもうどうしようもない。終わってしまったことにいつまでも言い続けても前に進めないし。
「ヂヂヂヂヂー!」
腐ったネズミは、私達よりも移動速度は遅いが、後ろからどんどん迫ってくる。なんでわざわざ私達を狙ってくるのかは分からないが、これは絶対にあの紫色のワイバーンが関係している。あの野郎。次に会った時はただじゃおかないぞ。寝ている時があったらまずは奇襲をしかけてやる。
「おおおー! 歩きやすいー! マスター。もっと早く走ってもいいですかー?」
「え、いいけど、そんな一気にいけるの!?」
「はい! よっしゃいくぞー!」
ビスケットは凄い勢いで走り去っていった。え、ちょっと待ってよ何今のずるい。私とたけのこより圧倒的に早いじゃないか。あのさ、あとで腐ったネズミとは戦わなきゃいけないのに、先に逃げて行かないでくれよ。腐ったネズミたちがどんどん増えて私達の方に来ているんだけれど、どこまで逃げていくんだよビスケット。
「うぐぐぐ。たけのこ。こうなったら飛行で一気にこいつらを引き離すよ!」
「ガッテンショウチ!」
「飛行!」
というわけで、空を飛んで逃げることにしたが、空に紫色のワイバーンがいないかが気がかりだった気配感知の射程圏外にいるかもしれないし、こちらの動きは見ているのかもしれなかったので、少し不安になった。
「ビスケットたちが進んだ方向に行って。」
「はい!」
ふぅ、これで一時的にでもネズミからは逃げられたけれど、最終的には戦わないといけないのかなあ。