第304話「紫色のワイバーン」
明日追記します!!!
9/22追記しました。
紫色のワイバーンがいた場所から遠く離れた場所でひと段落着く。はぁ気が付かれなくて良かった。必要に迫られたら戦うけれど、必要のない戦いはできるだけ避けたい。
「はぁ。危うくあんな奴と戦わなきゃいけないところだった。」
「ブッチドノナラ、ナグリコミニイッテタトオモイマスネ。」
確かに、ブッチだったら、嬉々として戦いたいと言っていただろうなあ。だけど、もしいたとしても私は絶対に止めた。止めるに決まっている。紫色のワイバーンは、きっと手ごわかっただろうし。
私が飛行を使えってサポートすることになるだろうけれど、空は分が悪すぎる。こちらも、もう少し飛行スキルが強化できればいいんだけれどなあ。やっぱり宙に浮かんでいる敵は手ごわい。
「で、ビスケット。ああいう風に偽装しているモンスターがいたりするんだから、自分の能力を過信しないようにしてね。」
「偽装しているあいつが悪かったんです! 次はうまくやります!」
これは、反省していないなあ。言い訳は聞くけれど、自分は悪くないという言い方なので、これはだめだ。さっきは簡単に注意したけれど、これはしっかりと言っておかなければいけない。
「あいつが、とかそんなことが問題なんじゃない。結局、間違ったのは自分なんだから、そこは改めなさい。」
「え? え?」
しどろもどろになるというか、素っ頓狂な声を上げるビスケット。まさかここまで言われることになるとは思わなったのだろう。だけど、私はしっかりと言うタイプだ。
かつて、オンラインゲームでギルドに所属していた時がある。メンバーが徐々に増えていき、大所帯になったその時、メンバー間で不和が起こった。こそこそと誰誰があまり好きではないみたいなやり取りが出始めた。
私も、相談を受けたりしたこともあったのだが、仲間同士の見苦しい争いは面白かったのでそのままにしておいた。そしたら最終的に私がギルドを辞めさせられてしまった。私が、仲間同士の見苦しい争いが楽しくてしょうがないと言ったことを皮切りに、ギルドメンバー全員が、満場一致で私が一番嫌な奴という認識を持ったという事を辞めさせられるときに聞いた。
いやぁ、実にせいせいしたね。それと、共通の敵が出来れば、人はたやすく一致団結できるんだなあとその時納得した。
「ビスケット。私は怒っているんだよ。あまり好き勝手されても困るって。」
「う、すみませんでした。」
さっき謝ったのになんで、といった感じがするなあ。自分は悪くないというのが根付いているとこうなってしまう。まぁしょうがないか。でもこれが今後も続くようならまだまだ言い続けるけどね。
「じゃあこの話はおしまい。それでビスケット。」
「なんですか。」
「不満があるなら私と戦おうか。そっちのほうが白黒はっきりしていいでしょ?」
「え!?」
「ねこますサマ!?」
こういうときはむしろ殴り合いのけんかでもしたほうがすっきりする。私はそう思っている。言いたいことをはっきり言わずに、たまったストレスをどこにもぶつけられないからどんどん不満がたまっていく。
私は、今<アノニマスターオンライン>というゲームを楽しんでいる。だけどその中で腹が立つことだって当然ある。だから、こういう風に身内でひと悶着があったらさっさと解決したいと思ったりしている。
「いや、遠慮しておきます。オレってマスターに生み出されたので勝てっこないですし。」
「じゃあいつでも受けて立ってやるから挑戦してきな。」
必要以上に挑発はしないが、今後むかついたらいつでも相手になってやるということを頭の片隅にでも覚えさせておくことにした。
「いい? 腹が立ったらいったん我慢するんだ。それで、それを後で八つ当たりだのなんだの、なんでもいいので発散する。これは、ビスケットにだけ言っていることじゃないからね。」
たけのこ達にも当然言っておく。私に不満があったらそれをちゃんとぶつけるようにさせたい。私がマスターだからとかそんなことで何も言わせないままになんてしたくはない。
「ワレワレハ、ねこますサマにフマンナドアリマセン!」
「なきゃないでいいよ。だけどね。知らない間にストレスを溜めているなんていうのはよくあることなんだよ。それはさっさと解決して欲しいんだよ。あと腐れがない関係が一番いいので、そうしたい。
「まぁそんなわけで、この話は本当におしまい! それで、紫色のワイバーンだけれど。」
あいつをこのまま放置するかどうかが問題だ。あの場所に近づかなければ良いという話でもあるけれど、ここで何かをするにあたって、ああいう邪魔な存在は、できるだけ駆逐しておきたい。
それに、あいつを倒さなきゃいつまでもびくびくし続けなきゃいけないっていうのも嫌だ。これまで毒狸の母に勝てないかもしれないと思っていた状態に逆戻りだ。そんなのはもうやめたい。
これからはできるだけ戦いに勝ちに行きたい。そのために錬金術を学んだわけだし。なのであいつは、ここで倒しておきたいなあ。いったん引いたけど。
「ワタシモ、デキレバタオシタイデス。トチュウデソウグウシタラヤッカイデスシ。」
「ワレワレモソウオモウ、ガ、イマノセンリョクデイケルノカ。」
みんなが私のほうをちらりと見てくる。これは、つまり私を主戦力として見なしているということだろう。まがりなりにも、ももりーずVのリーダーだしなあ。
私と紫色のワイバーンが戦って、そのフォローをみんなにしてもらう形になるか。私はたけのこに飛行を使ってその背中に乗る。あとはビスケットにも使ってリザードマン達からの援護射撃という感じになるか。
「あいつがドラゴンフルーツの生っている場所に近づいてきて、縄張りを主張してきたときは、戦おう。それまでは、放置で。」
目的を見失ってはいけない。私たちは、あくまでドラゴンフルーツの収集が最優先だ。それ以外の敵と戦う必要はそもそもない。だから、まずは無視する。こちらに危害を加えようとしてきた時点で戦う。
「ねこますサマ。センテヒッショウトイウノデハナイデスカ。」
確かにそういうけれど、私は面倒くさいという気持ちのほうが強い。なぜそのようなことを思うのかというと、RPGのお使いを思い出したからだ。なぜか簡単なお使いのはずが、段々大きな事件に巻き込まれて行って、最後には世界を救ってくれとくる。
私は、最初の目的からどんどんそれていくのが嫌だった。ちょっとしたお使い程度なのに世界の命運を握る大役とか、話の筋はわかるんだけれど、まずは小さい目的を達成させてくれと思った。
「今のところは、ただ寝ているだけだから放置で。悪い奴じゃないかもしれないし。」
とはいえ、色で判断すると、なんとなく紫色は毒系で敵っぽいイメージがあるんだよなあ。明るい色と違って毒々しい色って仲間って感じがしないなあってまぁこれは私の偏見だけれど。
だけど、このゲームでは、そういうのに逆張りしているというか、いい奴だったりしている気がするし、もしかしたらあの紫色のワイバーンも、敵じゃない、かもしれない。
何も邪魔してこなければ楽なんだけどなあ。いつ目を覚ますんだろう。ここから、さっさといなくなってくれれば何も問題ないんだけれど、そう上手くはいかないだろうな。
「マスター、あいつ多分毒を持っていると思うんですけど。」
「それはなんとなく分かっているから大丈夫だよ。」
色がね。本当に色がそれっぽくて、なんか印象付けられちゃっているなあ。茄子とか紫色だけれど美味しいしなあ。うーんだけど、刻み込まれたイメージなんてそうそう覆せないし。
「いえ、多分あいつが毒をまき散らしたりしてこの辺りを腐敗させたりするかもしれないなあと。」
ビスケットが聞き捨てならないことを言葉にした。腐敗させるだと。なぜそんなことをする必要がある。物を腐らせた後にそのエネルギーを吸収するとかいうタイプなのか? だとすると、早く倒したほうがいいと思うけれど。
「ビスケット。それは本当に本当なの?」
という疑問点もあるのが確かだ。そう何度も思い込んでしまう事もないとは思うけれど。
まぁ私にも思い当たる節がある。なんであいつがわざわざこんなところに来たのかというのも分からなかったが、もしもこの土地の栄養を吸収していくとかいうのなら、いる意味も分かる。
「ほ、本当、だと思います。」
「うん。私もそう思う、とまぁ物事を断定しすぎると視野が狭くなるからお互い気を付けていこう。」
「は、はい!」
私も考え方が凝り固まってしまう時があるから、こういうのかお互い様だ。
それで、また悩み事が増えてしまったなあ。仮にあの紫色のワイバーンがこの辺り一帯を毒というか腐敗化してしまったら、将来的にドラゴンフルーツがとれなくなってしまう可能性もあり得る。
それだけじゃない。もし、もしもだ。ねこます草原に来たら、どうなるだろうか。つまり薬草が腐敗してしまうかもしれない。それは絶対にだめだ。そんなことはあってはならない。そんな可能性は絶対に残してはいけない。よし、それじゃあ、あいつは倒すとしよう。
でも、どのタイミングで戦うことにするのかとか考えておかないといけないな。まだ腐敗させることが確定したわけじゃないし。
「ねこますサマ。ドラゴンフルーツガ、ナクナッタラコマルノデハ。」
「困る。だから倒すことにしよう。」
「ねこますドノ。モシモアイツガ、ソウゲンニキタラヤクソウガ…。」
「すごい困る。だから絶対に倒す。」
という私の決意表明だった。それだけ私にとって薬草は重要なアイテムだ。当然ドラゴンフルーツもだ。弱者である私にとって、これらのアイテムは必需品だ。それがなくなったら私はどんどん弱体化していくしかない。
「私から薬草を奪おうとする奴は誰であろうと容赦しない。あ、これももりーずVの規則とかそういうのにするか。」
それがいいかもしれない。薬草に手を出してくる輩には死の鉄槌を! うんいいね!