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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第300話「ビスケット」

 私達の目の前に、ゴーレムの下半身のみが姿を現した。元のゴーレムの腰から足の部分までがあるのだけれど、腰の部分は平らになっており、上半身があれば、1つにまとまりそうだった。

 このように下半身だけになってしまったのは恐らく、ゴーレム生成器の上半分を鎌で斬ってしまったからだろう。だけど、こんなそんなことがあっていいのか。私としては、全体のサイズが縮小される事を期待していたのに、まさか下半身だけだとは思わなかった。

「あぁ、私の名前は、ねこますって言うんだ。これからよろしくねビスケット。」

 挨拶されたのだから、こちらも挨拶をするのが礼儀だろう。私は、下半身のみのゴーレム、ビスケットに名前を名乗る。そしてたけのこ達の紹介もしておいた。


「それで、早速だけれどビスケット。分かる範囲で答えて欲しい。マスターって言うのは私の事でいいのかな?」

「はい、マスターは、ねこます様です。おれは、ねこます様の忠実なるしもべです。」

 マスター呼びは、くろごまと同じで、やはり私との主従関係が成立しているようだ。

「それじゃあ、上半身部分がないと思うんだけど、それはなんでかな?」

「おれを、生成した時に、その部分のデータが、欠けていたからだと思います。」

 あ、やっぱり私が上半分を壊したことで起こってしまった事か。これは、しょうがないとしか言いようがない。こんな風に仲間になるかどうかも分からない状態だったし、少しでもリスクを回避するためにやってしまったことだから。

 むしろ、上半身だけのほうが問題だったかもしれないな。今この状態だと足だけでちょこちょこ動いているのだが、多分これが腕だけで動いていたということになっていただろうし。非常に動きにくいことになっていただろう。


「これから、今回のような形でゴーレム生成器を使えば、上半身も生成される?」

「はい! 生成されると思いますので、どうかよろしくお願いします!」

 仮にゴーレム生成器を手に入れたら、新しく完全な一匹を生成すればいいんじゃないかと思ったが、それはやめておきたい。もう一匹呼び出すということは、巨大なサイズのゴーレムが増えるということだ。そんな仲間を沢山は抱えきれない。

 それに、中途半端な形で生成してしまったこのビスケットにも、申し訳ない気持ちがある。なので今後はなんとしても完全な形にしてやりたい。

「マスター、それで、おれ、これから何をすればいい? 命令して欲しい!」

 下半身ゴーレム、ビスケットは私の命令を待ちわびているというか、すごいそわそわと足を動かし始めた。地面が、揺れる。一応この足の部分だけで3メートルはあるので、近くにいても存在感は大きく感じられた。


「それじゃあ、私達を乗せて、移動することはできる?」

 腰の部分に乗っかれば移動ができそうな気がしたので聞いてみることにした。

「できます! 膝をつきますので、よじ登って貰えれば、いけます!」

 待てよ、腰の部分に乗ったとしてもしがみつくようなものがないし、ビスケットが走り出したら落下して危ないか。だとすると、ここでみんな一緒に移動するのは難しいか。

「ごめん。私達が落ちてしまうかもしれないので、移動は難しかったね。」

「いえ。吸着機能がありますので、おれの上に乗っかれば、落ちる事はありません!」

 自信たっぷりに言うビスケットだった。なんだその吸着機能は。すごいじゃないか。あ、でもやっぱり問題があった。全員は乗れないな。特にたけのこが結構サイズが大きくなってしまったので、乗っかれないだろう。となると。

「イッピキメとニヒキメ。ビスケットの上に乗っかって移動して。私は、たけのこの背中に乗るから。」

 これが一番いいやり方だろう。あれ、もしかしてこれで大分移動が楽になるってことか。今まで徒歩で移動していたけれど、ここから密林に行くのが多少楽になりそうだ。


(母上、あのゴーレム、ビスケットの事は信用してもいいのですか?)

 ここでひじきからビスケットの存在に対して疑問の声が上げられた。確かに、元は敵だったゴーレムから生成したから疑いたくなるのも分かる。私としても、完全な信頼は置けない。私がマスターだったとしても、実は真のマスターというのがいて、そいつから、私の仲間になるように指示を受けていたかもしれない、なんて深読みもしている。

 だけど、それを言うなら、たけのこやだいこんも、最初はみんな敵だったというのがある。だけど今ではすっかり仲間意識が芽生えている。

 もしもここまで築いてきた関係が嘘で、裏切られるなんてことがあったとしても、その時はその時、という気持ちにもなっている。

 私は、今まで色んなゲームで仲間が裏切るシチュエーションを見てきたので、そういうこともあり得るとは想定している。自分がされたらそれは結構辛いと思う事がありそうだけれど、よくある事なのであまり気にしないようにしたい。


(分かりました。母上が、そういうのであれば、私はもう何も口出ししません。)

 ひじきがビスケットの事を疑っているのも止めることはしない。信頼関係なんて一朝一夕で身につくものじゃないし。今さっき仲間になったばかりの奴を長年付き添った戦友みたいに思えというわけにはいかないからね。


「それじゃあ、これから密林に向けて移動するけれど、みんな大丈夫?」

「ハイ! ワタシハマダマダゲンキデス!」

「コレハスコシ、タカイナ。ハッ!? ダイジョウブデス!」

「スコシタカイノガキニナリマスガ、ダイケマス!」

「マスター、おれも、がっつりいけます!」

 それじゃあ、ここから一気に密林に移動してしまうか。ずっと歩き続けるだけなのも、もう飽きてしまったし、さっさとたどり着きたい。

「よっし、じゃあみんな行こう!」

腕を上げてみんなに移動の合図を送る。その時だった。

「うおお! これが初めての任務! 頑張りまあす!」

「ウオオオオ!?」

「オッオアアア!?」

 いきなり、ビスケットが凄い勢いで走り出した。この時、私は理解してしまった。このビスケット。きっとアホだ。いや、言いすぎか?

 だけど、絶対にそうだ。なんか確信をもって言える。猪突猛進というか、なんかもう体当たり気味な正確な気がしてきた。なんかこういう話を聞かずに突っ走る系ってよくいるけれど、そういうタイプだ。


「たけのこ。ビスケットを追いかけて…。」

「ハイ。マサカギャクホウコウニハシルトハ! イソギマス!」

 そう、ビスケットが走った方向は、密林のある方角と真逆だった。来た道を戻ってしまっている。このままどんどん戻ってしまわれても困るので、さっさと追い付かないといけない。たけのこには急いでビスケットを追うように指示した。

(あのゴーレムって…。)

 ひじき、言いたいことは分かっているから、大丈夫だから。そんな呆れた声を出さないで。


「うぉおおおお! 道を間違えたっす!」

 あっ、なんか叫びながら戻ってきたぞ。はぁ、これは先が思いやられるタイプだなあ。だけどこういう奴って憎めないからついつい甘やかしてしまいそうになるな。

「はい、お帰り。ちゃんと私が指示した方向に行くようにね…。」

「かしこまりましたー!」

 軽い調子だなぁ。なんだかブッチと相性がいい気がしてきたな。だけどマスターは私なので、できれば私と一緒にいたいのかな。

「ウウウウ。コレハ、ノリゴコチガ。」

「グウウ。シンドウガ、ユラユラト。」


 げっ、乗り心地悪いのか。これは私もあまり乗りたくないな。このゲーム内で酔うってことがあるのかよく分からないけれど。いずれマスターとして上に乗っからなきゃいけない時が来るだろうなあ。う ぁ嫌だなあ。その時ははっきり乗り心地をよくするようにって言おう、そうしよう。

今はまだ、仲間になったばかりだし、何か言う必要はないし、しばらくこの二匹専用の乗り物という形で頑張って貰うことにするか。

「マスター。どっちに行けばいいですか?」

「私とたけのこが移動する方向についてきて。それでいいから。」

 これなら変な方向に行く事は無いだろう。が、この指示がいけなかった。たけのこが移動を開始した瞬間に、ビスケットは真後ろにぴたりとくっつくかのような近づいてきた。

「ワォゥ!? チ、チカイ!」

 距離を一切置かずに、真後ろを至近距離で移動してくるので、たけのこがビビり始めた。というか私も普通に怖い。背後を下半身だけのゴーレムがどたどたと走ってくるとか、なんかそういうホラーゲームでもやっているかのような気分になった。


「ビスケット! 近い! 近いから!」

「はい! 置いていかれないように、ぎりぎりまで近づいています!」

「いいから! 置いていかないからもうちょっと距離をとって!」

「え!? それはおれとはもう距離をとる関係になりたいと?」

 そんなことは言ってない!? ブッチみたいな事を言うんじゃない! だめだ、やっぱりこいつはただのアホだ! もしかして、上半身が無いから、頭脳的なパーツが無くてこんなことになっていたりするんじゃないのか!? どこかおかしいぞ!

「そういうわけじゃないから! いいから、もうちょっと距離をとって!」


「はい!? 距離はどこにありますか!?」

「禅問答じゃないよ!?」

 な、なんだこいつ。だめだ、ポンコツだ。くそっ、こいつが敵として潜り込んでいるんじゃないかとか真剣に疑ったのが馬鹿みたいじゃないか。これ、ひじきはどんな気分!? ねえ!?

(母上、私が悪かったです。敵とかそういうレベルじゃありませんでした。論外です。)

 だ、だよね~。だけどこんな感じ久々だ。なんか始めたばかりのもうちょっと気楽な感じでこのゲームやっていたときのノリだよ。なんかこう久々にアホ過ぎて、ちょっとその、ツッコミ入れたい!


「ビスケット! たけのこに近づきすぎなので、もう少しだけ離れて!」

「お、おれはたけのこ先輩に近づく悪い虫じゃないです。」

「分かってるからもう少しだけ離れなさい!!」

「か、かなしいです。うっ。うっ。」

 はぁ、こんなのが仲間になってしまって、この先思いやられるぞ。これから密林で危険な戦いがあるかもしれないって時に。これで大丈夫なのか?

 あと、今更だけど、また仲間が増えてしまったな。少人数体制にして、スキンシップを図ろうと思っていたのに増えたらまた大変になりそうだよ。なんで私が出かけると仲間が増えていくんだろうか。


「たけのこ。後ろが怖いかもしれないけれど頑張ってね。」

「ハイ。センパイトシテ、コウハイノオテホンニナルヨウニガンバリマス。」

 そうだね。だけどあれは多分手に負えない後輩になると思うから頑張ろうね。

「マスター。おれ、これからもがんばるのでよろしくおねがいしゃーす!!!!!!!」

「うん。分かったから! その荒れ地に響き渡るような大声は出さないでね!」

 私も頑張ってこのゴーレムを教育しないといけないな。あはは。はぁ。

ついに300話です!

これからも一生懸命書いていきますので応援よろしくお願いいたします!

暇な方はぜひとも評価とブックマークと感想をお願いいたします!!!

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