第30話「そして草刈りへ…」
バーベキューが終わった後、次に行くところはどうしようかと考えた結果、最初の場所
に戻ることに決めた。これは、薬草を火薬草にしたことで大分数を減らしたためだ。現在
薬草は数百個はある。これが簡単になくなることはないと思うが、これを火薬草に調合し
た上で、薬草も所有したいという、私の安定志向の為だ。
しまうまには薬草で窒息させて倒し、大蛇には火薬草に調合して倒した。ということは、
これからもこの薬草が何らかの活躍を見せてくれるかもしれない。そうと決まったらこん
なところで、もたもたしている暇はない。以前のようにまたあの草原でひたすら鎌を振り
かざして薬草を手に入れるのだ。
私は、地道な活動が好きなのだ。普通のRPGなんかでは強い装備などを手に入れたら、
さっさと、他の地域に移動してしまうが、私はそれが好きじゃない。私を育てたのはあの
草原であり、この薬草なのだ。それを絶対に忘れないように繰り返すのだ。
川を渡る件については、だいこんに乗っていけば楽だった。スイスイと泳いで簡単に渡
ってしまった。便利な奴だ。
「川くらいなら大丈夫なんやで。流石に海は無理やけどな。」
パワーアップしたらいけるんじゃないのかなんて思った。乗り物にはそういうイベント
がつきものだ。もしかしたら他の乗り物を手に入れてお役御免になるかもしれないが。
「海かぁ。いずれは行くことになるのかな。」
「海に向かって威圧したら魚が浮かんできそうだね!」
やめろブッチ。不吉なことを言うな。
「ねこますサマナラ、キットデキマス!サイコウデス!」
たけのこ、そんなにキラキラした目で見つめないでくれ。食べ物が好きなのは分かった
から。
川を渡りきった後、少し移動すると、そこにはいつもの草原が広がっていた。ここが私
の原点であり、これからも原点なのだ。
「あぁ、落ち着くなぁ。ここだよ。これがいいんだよ。」
いつもの場所と言うのは落ち着くものだ。仕事が終わって家に帰ってきたかのような気
分になれる。
「何ここ。草しかなくね?」
「ここの草を刈るとたまに薬草が手に入るんだよ。」
「そうなのか。でもモーニングスターじゃ刈り取れないよなあ…。」
「引っこ抜けばいいじゃん。」
「やってみるか。」
草むしりを始めるブッチだった。
「おっ!本当だ!薬草を手に入れたって!面白いなあ。ん?抜いた直後にすぐに草が生え
てくる。こりゃまたすげえ!」
そうなんだよなあ。これがすごい。すぐに草が生えてくるなんてすごい。だからこそ大
量に薬草を入手できたというのもある。
「じゃあ私も刈るか。」
草を刈る。草を刈る。連続でひたすら刈り続けていく。
メッセージ:薬草を手に入れました。薬草を…。
これだよこれ!やっぱり、薬草は最高だね!それからはひたすら草刈りをしていたが、
あることを思いついた。
「ねえ、だいこんが巨大化して、それに乗りながら草刈りしたら効率いいんじゃないかな!」
我ながら名案だと思う。
「よっしゃ!ワイの出番やな!やったるで!」
だいこんにのり、鎌を平行に向けていくと、どんどん草が刈られていく。薬草もどんど
ん手に入る。これはすごい!だいこんは最高の草刈りマシーンじゃないか!以前よりも大
分効率的に薬草が集まる。笑いが止まらない。ふははははははははは。
「はっはっはっはーだいこん!褒めてつかわすぞーはははははははは!」
「おっ!もっとワイのことを褒めてもええんやでー!!」
だいこんも気を良くしたのか調子に乗って速度が上昇した。
「・・・。白い大蛇に乗った般若レディが鎌持って高笑いとか怖すぎるわ…。」
「ブッチ!なんかいったかー!?」
「何もいってませーん!」
ふん。きっと私の悪口だろう。まぁいいさ。とにかく今の私は絶好調だ。これでひたす
ら狩りまくって、火薬草の調合だ。この爆発力があれば、どんな奴だっていちころだ。
「草刈り、草刈り。あぁ楽しい。超エキサイティングだ。」
「ねこますサマ。タノシソウデス…。」
「薬草が好きなんだろうねえ。俺はそこまでじゃないけど、よいしょっと。少ししたら飽
きるだろうし。適当に頑張るよ。」
それから、しばらくして、だいこんが語り掛けてきた。
「姉御、そろそろええんやないか?」
「何が?草刈りならまだ始まったばかりだよ?」
「ファッ!?もう散々かったやないけ!?」
「いやいや、まだまだやるよ?ここで半日は薬草狩りするのが日課だったし。」
「なんやて…。」
なんだ、だいこん、ちょっと速度が落ちてきたぞ。たるんでいるなあ。
「ねっこちゃん。そろそろ他のところに行かない?」
ん?自主性があまりなかったブッチがそう言って驚いた。どうしたんだこいつも。何か変
なものでも食べたのか?
「いやぁまだ始まったばかりだよ。ブッチも草むしり楽しそうにやっていたし、薬草があ
と5000個くらい溜まるまで頑張ろうよ。」
「5000!?」
ブッチとだいこんと、そしてたけのこまでもが叫んだ。
「どうしたのみんなして?私たちは最重要アイテム。薬草集めにきたはずでしょ?」
「ねっこちゃん。なんかその、薬草を信仰する宗教みたいなのに入っているとか?」
「何言ってるの。んなわけないじゃん。」
まったくブッチったら、何が言いたいんだ。
「今もう多分2000個?くらいあるんだよね?もうよくない?」
「えええええええええ!?たった2000だよ!?すごいボスとかでてきたら回復が尽きてや
られちゃうかもしれないじゃん!あと火薬草にもするから足りないよ!」
驚くべきことを言うブッチ。ゲーマーとしては、アイテムは持てるだけ持てが基本だと
思ったが、チャレンジャー精神旺盛なタイプだったか?
「えっと、飽きてこない?」
「いや全く。今まで薬草のおかげで助かってきたし、これがあると安心するよ。」
「ねこますサマ!イキヌキモヒツヨウデス!マタモリニイキマショウヨ!」
ああ~。うんそうだね。たけのこはご飯が食べたいもんね。そうだね。そうかみんなお腹
が減ってきているんだな。
「そういうことなら、森に行こうと思うけど、基本的には草原で薬草集めしてそれ以外だ
と森、川でだらだらとするけどいい?」
「そうしよう!そうしよう!俺ももうちょっと意見を出すべきだったね!ねっこちゃん一
人に任せるのは可哀想だったね!森に行こう森に!」
「ワイも賛成や!!ここをぐるぐる回ってるだけじゃあきがくる、いやそれだけじゃなくて
もっと色々行ってみたいんやで!」
「ワタシモデス!モリヤカワニモイキタイデス!」
おおーっ?なんだみんなして、急に意欲がわいてきたようだな。いいねえこの連帯感。
みんなが意見を言い合って、そして成長する物語。素晴らしいじゃないか。思えばここま
で移動するのにみんなして、どこでもいいーみたいな受動的な感じだったけれど、草刈り
を始めてから意欲がでてきたな。
やはり誰しも草刈りを経験してみるべきなんだろうなあ。
「みんなの自主性を大事にしたいのでじゃあ森に行こう。」
「ナイス判断!」
「さすがやで姉御!いい判断や!」
「ねこますサマバンザイ!」
意見統一っていいな。みんなが一人の為に、一人がみんなのために活動ができている。こ
れからも、こんな感じで<アノニマスターオンライン>がプレイできると楽しいなあ。
「あ、あと、これから毎日こんな感じになるからよろしくね!」
「お、オオオオオオオオ!」
みんな気合い入っているなあ。私も頑張らないと。これからもっとこのゲームを楽しむ
ために、薬草を5000個は集めるのだ!
1章が終わったような感じです。ここまで読んでくれた方ありがとうございます。
まだまだ続きますので、今後共よろしくお願いいたします。
差し支えなければ、評価、感想等をお願いします。