第296話「ゴーレム戦」
「ゴオオオオオ!」
うん、知ってた。ゴーレムの奴、かなり元気だ。こういう巨体系が楽に倒せた試
しがないし、どうせ今回もそうなるってことだったのだろう。あぁこれがただの、
ハリボテだったりしたら面白かったのにな。
そして、さっきまでじっくりとは見られなかったゴーレムの体だけれど、岩系の
体をしている。これは硬くて攻撃も防御も強いタイプだ。嫌だなあ、こういうのは
ブッチがいてくれれば良かったのに! 嬉々として戦いを挑みに行っただろうな。
「ゴオオオ! ゴオオオ!」
んんっ!? なんか腕を飛ばしてきた!?
「どっ土遁!」
咄嗟に忍術を使うと、周囲の土から壁が出てきた。たけのこに乗っかっている状態
なので、たけのこを対象に忍術使うことができたようだ。でてきた壁はそこそこ大
きいけれど、これって、このゴーレムの腕だと。うわぁあ!? 目の前の壁がぶっ
壊れたじゃないか!?
「たけのこ後ろに下がって!」
「ハイッ!」
ゴーレムから一旦距離をとることにした。この攻撃力はやばい。こんなのずるいじ
ゃないか。ってあれ、腕がゴーレムに戻っていく。何あれ!? あんな腕を飛ばし
てくる攻撃を何度でも使えるのか! なんて嫌な奴なんだ!
「ねこますサマ! マタジュウアツヲツカイマスカ!?」
「いや、あまり使いすぎても勿体ない。ここは火薬草をばらまく作戦で行くよ!」
大量にあるのだから、ここでガンガン使っていくことにしよう。この火薬草で少
しずつ削っていくのが確実に倒せる作戦だ。
雷獣破を使ってみようとも考えたが、やはりこれも温存だ。何かあったときの為
にもまだ使う事はしない。そう、例えばこいつがただの尖兵だった場合だ。これか
らこのゴーレムがもう一匹出てきたりすることも考えておく。こんな奴が二匹もい
てたまるかなんて思っていると出てきたりするのがゲームだし。
「そこの二匹は、私達のフォローに徹して! 下手に近寄りすぎないように!」
「ハイッ!」
というわけで、開始しました火薬草作戦。とにかくひたすら火薬草を投げつける
だけの簡単な作業だけれど、そこまで簡単では無い。これは、たけのこのスタミナ
が切れてしまったらどうしようもないからだ。今はたけのこのスピードを活かして
隙ができたところに火薬草を投げつけているが、たけのこだって、私を乗せている
わけだし徐々に疲れてくるだろう。だからどこまでやれるのかというと結構難しい
状況にはある。
「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ!」
「ゴゴゴ!?」
ゴーレムの体で小規模な爆発が何度も発生していき、まともに動くことができない
ようだ。こうして、火薬草のバーゲンセールでもやっているのかというくらい投げ
つけていく。一個一個は大した威力が無かったとしても、塵も積もれば山となるだ。
時間をかけて少しずつダメージを与えていこうじゃないかあああってしまった!
こ、こいつはもしかして。
「まさかな…? よ、よし。よーし。なんとかいけそうだ!」
危なかった。こいつの体には傷跡などが残っている。これはすなわち、きちんとダ
メージになっているということだ。ふぅ、このゴーレムには自動回復はないようだ。
これがあったらまずかった。ああいや、コイツの場合は自動修復か。どちらにせよ
それがあったら、小さいダメージを積み重ねて行っても修復のほうが早ければ、火
薬草でちまちまやっても意味がない攻撃になっていた。
自動回復してくる敵には苦い思い出しかない。結局攻撃の全てが無駄だったとい
うのは本当に辛かった。
「これなら、じっくり煮込んだカレーのようにじっくりとこいつを料理してやれる!」
火薬草クッキングというわけではないが、ひたすら投げつければいつかは倒せると
いうのが分かれば一安心できないって!? また嫌な事を思い出してしまった!
こいつが、第二形態とかに変形して、これまでのダメージを全てなかったことにし
てくるかもしれないじゃないか! うああああもうこういう悪い方向に物事を考えて
しまう癖をなんとかしたい!
「…困った時は隕石拳使うからいいか。」
毎度のことながらこれを考えると茶番のようなことをやっているなあと思う。だけど
軽々しく使えないのも事実なわけで、無防備な姿を晒したりするので、強力な攻撃で
はあるけれど、私はあまり使いたくない。
「ゴ! ゴゴゴゴ!」
体から煙が立ち上げるゴーレム。どこか怒っているように見える。大分投げつけたし
こいつも体力が削られていってるという証拠だろう。ここからが本番だろうか。ただ
ちょっと気になっているのが。
「そっちは大丈夫かー!?」
「マダヤレマス!」
「エエ! ワレワレハヤリマスゾ!」
というわけでリザードマン達。遠距離から攻撃はしてもらうものの、いまいちパっと
しない。まるで私みたいだ。ふふっ、なんか特徴らしい特徴が私にはないんだよなあ。
ああ錬金術士だったか私。でもまだ基礎しか覚えてないけれどって。あ、吸魔石?
これ、使ってみてもいいかもしれないな。これを使えばゴーレムも体力をじわじわと
吸い取ってくれそうだし。
「ゴアアアアアアアアア!」
ゴーレムが吠える。そして、今度は両手で腕を飛ばしてきた。これははやっ!?
「土遁! ってうっ!?」
なぜか突然猛烈な風が吹き出す。そしてそれに巻き込まれた私とたけのこも、離れ離
れになる。風で空中に舞い上がった私の眼前にゴーレムの拳が飛んできた。やばい、
これは間に合わないと思ったが、私は鎌を持っていたので、それを目の前にかざす。
こんな大きい拳に対して、鎌だなんて大して役にも立たないであろうことは明確だっ
たが何もしないよりはマシだと思ったので、抵抗した。
「ぐあ!?」
もろに攻撃をくらった。全身にとてつもない不快感があった。なんだか重苦しい感
じもする。これは、死んだだろうか。いやまだ死にたくない。結構頑張ったってのに、
ここで死ねるものかと。くそう、こいつ、よくもやりやがったな。
「うぐぐ!?」
吹っ飛んだ先の地面に体をぶつける。くっそー。やっぱり一撃が重たすぎる! こん
なこっちは一発でほぼ即死みたいなのずる過ぎる! とりあえず生き残っているみたい
だから、薬草を食べて食べて食べる!
「ゴゴゴゴゴー!」
え、何あのゴーレム。なんか嬉しそうな声を上げているぞ。…すげームカツク! な、
なんなのいつ。私のようなか弱い般若レディに手を出しておいて、それを一発攻撃を
当てたくらいであんなにはしゃいで! うっわ、あれは倒すべきだ。もう許さん。
「甲殻化! そして 恐竜力!」
ここからは、接近戦で行く。というかこの面子だと、私がブッチの代わりをしなきゃ
いけなかったのにそれをさぼったのが今の結果だな。接近戦が苦手すぎるのをもうちょ
っと克服していかなきゃいけないし。もうやってやる。こいつはむしろ懐に潜り込んだ
ほうが安全なタイプな気がするし。突撃だ。
「おい、ゴーレム! 私はこっちだぞ! かかってこい! 威圧!」
「ゴ! ゴオオオオ!」
私に注意を引くようにさせた。鎌を強く握る。すると鎌が赤黒く光りだした。やっぱり
鎌に変化があるなあ。これ、切れ味が増していたりしそうだな。この間バトルコンベア
を真っ二つにしたのもあったし。これならゴーレムにもダメージが通りそうだ。
「いくぞゴーレム!」
私は、ゴーレムに向かって走り出した。が、正確にはゴーレムの側面に向かって、だ。
このまま、ぐるぐると回るようにゴーレムに近づいていくことにする。そう、こうやっ
て動くことで、攻撃しづらくさせるためだ。
「たけのこぉ!! 出来たら重圧でフォローお願いね!」
どこかに飛ばされたたけのこに向かって言う。思いっきり遠くに飛ばされたという事
はないと考えたのと、ゴーレムの攻撃はくらってなかったので、戦える状況ではあると
思っている。あれ、大丈夫だよねたけのこ。
「ハイ! ワタシハマダマダイケマス!」
お、良かった。ちゃんと声が聞こえてきたし、これなら安心だな。よし、私はこのまま
ゴーレムに特攻するぞ!
「ゴアッ!」
ゴーレムは突然ジャンプをした。あっ、これは私を押し潰そうってことか。そうはいく
かってんだ!
「空間転移!」
この巨体に効くかどうかは賭けだった。が、絶対に効くと思って使った。このスキルは
かなり使えるという確信があったからだ。そして今、実際に聞いた。10メートルほど移
動した位置に落下するゴーレムだった。
「ゴゴ!?」
何が起こったのか分からないようだが、それをこいつには悟らせないようにする。そう
だ。こういう時に自分がやった攻撃についてぺちゃくちゃ喋る敵だの見方がいたりする
ゲームだの漫画が多いけれど、私はそんなことをするつもりはない! 相手には何が起
こったのか分からないまま倒れてもらうのだ!
「さてゴーレム君! 私の鎌の餌食になって貰おうか!」
「ゴゴゴ!」
さぁて、第二ラウンドといこうじゃないか!