第295話「密林まで遠い!」
いつも通り追記します。
9/13追記しました。
私達はひたすら歩いた。歩き続けた。もううんざりするくらい歩き続けた。これ
は何かの苦行ではないのかと思うくらい歩き続けた。これはまた魔者の試練とかい
うつまらないイベントが発生していると誤解しそうなくらい同じような景色を見な
がらただ、ひたすらに歩き続けた。
そう、坂道は割と簡単に降りられた。が、そこからが長い。とても長かった。前
もこのくらい長かったはずだけれど、帰り道はだいこんがいてくれたから短く感じ
ていただけだったようだ。すごい長い。わざわざこんなところまで来なきゃいけな
いのがすごく面倒くさく思えてきた。
「行けども行けども荒れ地とか、密林まで遠すぎるぅ。全然つかないぃい。」
「キット、モウスコシデスヨ。」
たけのこが励ましてくれるが、このもう少しというのが結構長い。あまりに長い。
子供の頃に遠足に出かけて、酷く疲れた状況で、先生にまだなのか聞くと、あと少
しだから頑張ろうと言われた時のことを思い出す。うん、あれも全然あと少しじゃ
なかった。最初はやった! なら頑張ろうってなったものだったけれど、結局そこ
から全然目的地にたどり着けなくて、苦しみながら歩いた記憶が、今蘇ってきた。
「うわぁああああ! もう絶対あと少しじゃないって! もう、ここで休もう!」
荒れ地のど真ん中あたりで、見渡す限り何もないような場所で私は言い放った。と
りあえず、こんなんじゃやってられなかったので、水の入った瓶を取り出した。こ
れは、蜂蜜が入っていた瓶を使いまわしている。
「はい、みんなも飲んで。水分補給!」
みんなに配布して、一息ついた。やっぱり移動に難がありすぎる。だいこんがいな
いとこんな風になるというのがきつい。辛い。移動が楽になるのってやっぱりかな
り重要だったんだな。まさかこんなに苦しいとは思わなかった。
「移動手段を手に入れないとな。」
現状、徒歩しかないのが辛い。走るというのもあるけれど、そんなずっと走り続
けてばてたところで、モンスターに遭遇なんてことになったらだめだし。私はマラ
ソンランナーと言うわけでもないので、ただの移動で走り続けたくはない。あぁ、
大昔の時代にでも戻ってしまったかのようじゃないか。現実のように電車が欲しい。
なんて言ったら誰かに怒られてしまいそうだ。こんなところにいきなり電車なんて
出て来たら、世界観がぶち壊しだろう。あれ、でも結構世界観も何も無いような気
がするな。このゲームの世界観がどんなものなのかが分かってないけれど。
「だいこんがいてくれて助かっていたんだなあといなくなるたびに思うよ。」
「アイツモ、モットドリョクヲスレバ、ツヨクナレルノニモッタイナイデス。」
「乗り物として活躍したいって言ってたからしょうがないけどね。」
だけど、戦いが苦手というのは本当なのかと思う事があるんだよなあ。なんだかん
だと最初に戦った時の事を思い出すと、結構いい線行くと思うんだけどな。
「あ! そういえばだいこんって最初は何かに操られているかだったっけ。」
今更思い出した。となると、何者かはだいこんが邪魔だったというのがあるかもし
れないぞ。あれ!? 実はだいこんって重要な存在だったりするんじゃないだろう
か。白蛇なんてレアだと思うし。うわ、ちょっと今度じっくり話をしないといけな
いな。
「…ケッコウアルキマシタナ。」
「なのに全然つかないんだよね。魔者の試練ではないみたいだけれど。」
「マジャノシレンッテナンデスカ?」
「同じ所をぐるぐると繰り返す現象だよ。それを打開するためには、目的を達成し
なきゃいけないんだけどね。」
「…イマガソウナノデハナイデスカ? アマリニトオイキガ。」
「私もそう思っているんだけれどねえ。」
同じ景色を繰り返しているということはない。一応目印的なものをつけてみたが
それがまた見つかるようなことが無かったし。繰り返していると言うのならそれが
また見つかるはずだ。それともなんだ、そういう目印もなくなるような魔者の試練
が始まっているとでもいうのだろうか。
「うーん。とりあえずやってみるか、気配感知!」
魔者の試練ではないけれど、似たようなことが起こっていないかと本気で気配感知
を使ってみた。すると。
「!?」
なんか大きな反応がある。急速でこちらに近づいてきている。なんかやばい感じが
する。これは戦闘態勢を整えねば。
「みんな! 何か来る! 警戒して!」
「ハイッ!」
おいおい、今回も何らかの敵の攻撃を受けていたって事か。くそう、いつもの事な
がら腹が立ってくるな。早い、早いな。明確に私達の方に向かって動いてきている。
さて、どんな奴がでてくるのか。
「ゴゴゴ!」
砂埃を巻き上げながら、何かが迫ってくる。なんだろうあれ、ロボットみたいな。
いや、あれは…。俗にいうゴーレムか!? 土や石でできているロボットみたいな
モンスターのはずだけれど、それがなんで私を狙ってきているんだ。勘弁してくれ
よ。ここであの、結構でかい、奴と戦うのか!
「ゴゴゴゴゴ!」
やるっきゃないか! ふー。よし! ただ歩き続けるのも飽きていた頃だ。やって
やろう! そしてあのゴーレム! 手に入れてやろうじゃないか! あれが手に入
ればもしかしたら移動が楽になるかもしれないし!
「よーし! みんな、あいつと戦うぞ!」
なんて威勢よく行ってみたものの、ゴーレムか。モンスターとしてみるなら中堅以
上というか割と強敵だったりするんだよな。タフなイメージがあるかと思ったら柔
軟性があったりするタイプもいるし、楽な戦いにはなりそうにないな。
「…やっぱり結構でかいな。」
高さは6メートル以上ありそうだ。これ、やばいんじゃないだろうか。近接攻撃が
得意なゴーレムだったら、一撃で沈められそうな予感がしてきた。そんなの冗談じ
ゃないぞ。これで私が死んで薬草を失うことにでもなったら死んでも死に切れんぞ。
しかもまだ集めたばかりでそんなことになったら絶対に許せない。というかこんな
狙ったようなタイミングで出てくるなっての! そういうのはもっと別なタイミン
グで出てくるべきだろう。なんて言ったところで相手は聞き入れてはくれないだろ
うから、必死になって倒すしかないな。いつも通りだな!
「たけのこ! あいつがもうちょっと近づいてきたらすぐに重圧を使って!」
「カシコマリマシタ!」
たけのこに重圧を指示したのは、ゴーレムの足止めもあるのだが、あの巨体ならば
よく効くと思ったからだ。重力系の攻撃は、重量級の相手にこそ効果があるという
のが常識だ。その重さが増加することで、自分の重さにも耐えきれなくなるからだ。
「イッピキメとニヒキメは…。」
そういえばこいつらって曲刀で戦うくらいしか知らないんだけれど、何かできたり
するんだろうか。今更それって酷いかもしれないけれど、ここで本当に仲間になる
ためには、もっと知っておく必要があるな。
「なんか遠距離攻撃はできる?」
「オレハ、アシッドスプレーガツカエマス。」
「オレハ、カエンホウシャがツカエマス。」
こいつら…そんな特徴あったのか。今までただ曲刀を振り回されているだけですみ
ませんでしたって感じになった。まぁ今更だな。
「よし、じゃあそれで攻撃! 近寄りすぎないように!」
でもって私は、たけのこの背中に乗っかった。どのタイミングで飛行を使うだな。
最初から使ってしまったら、後で息切れしそうだから、ここぞという時で使いたい。
だけど、使わなければ危うい状態にもなりそうなので、緊張する。
「ゴオッ!」
あれ、立ち止まった? なんでだ。何をしかけてくる。まさかあいつも遠距離攻撃
をしてくるつもりか? それはまずいな、って思ったらなんだ? 一切動かない。
あっ!? もしかして、実は悪いゴーレムじゃないよみたいなノリになるのかもし
れない。それだったら幸運だ。
「グオオオオオ!」
違ったあああああ!? なんか突然叫ぶし拳を振り上げようとしている。あっそう
か、今の動き、なんかエネルギーを溜めていたとかそういうのだなきっと! くそ
う騙されてしまったじゃないか。だけどこれはまずい! 何か絶対やらかしてきそ
うだ。よし、それならここはアレだ。最近全然使う機会が無かったこのスキル!
「スキル妨害ッ!!!」
「ゴオオオオオ!」
ゴーレムは、拳を思いっきり地面につきたてた。これで何かが起こるのかもしれな
いが、スキル妨害の効果が発揮されていれば何も起こらないはずだ。さて、どうな
る・・・うわっ。地面が揺れている!?
「ウォッ!?」
「ナンダコレハ!?」
ゴーレムが付きたてた拳から先の地面に大きな亀裂が走った。これ、地割れじゃな
いか。あぶなっ!? 落ちたらやばそうなのと、確か戻る力で圧死したりするかも
しれないんだよな。これはやばいな。ってなんでスキル妨害発動しているはずなの
に効果が無かっ…て分かったよ! これ単純に力技だったってことか!? いわゆ
る脳筋系だとこういうことやらかすけれど、そんなことをしてくるなんて! おっ
と呆気にとられている場合じゃない!
「たけのこ! 重圧! あいつに使って!」
「ハ、ハイ! ジュウアツ!」
「ゴゴゴアアアアアアアアアア!?」
おっ!? すごい効いているように見える! なんかがたがた揺れ動き始めたぞ。
よし、いい感じだ! これはもしかしてたけのこが重圧を連発すればいいだけの戦
いかも知れない!
「カエンホウシャ!」
「アシッドスプレー!」
そこへ、二匹のリザードマン達が、追撃をしていく。おお、分かっているじゃない
か。それじゃあ後は私が、
「アリボール!」
ここはアリボールで爆発させたほうがいいと判断した。火薬草でもいいと思ったけ
れど、このボール結構使い勝手いいんだよなー。投げやすいし。
「ゴゴ…。」
ゴーレムは動けなくなっているため、私達の攻撃を諸にくらっている。だけどこん
な程度じゃ、絶対効果が無いだろう。ゴーレムはタフ! この程度で倒せるわけが
絶対にない! 今までプレイしてきたゲームでは、ちまちまじっくり時間をかけて
倒してきた私には分かる! こんなので倒せるわけがない! って言う風に考えて
おけば意外とあっさり倒せるんじゃないのかなーなんて発想をしてみた。
「ゴゴゴゴ!」
あっ、やっぱり元気そう。くそー、やっぱりこいつも定番のゴーレムか!