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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第291話「帰還…そして。」

 草刈りがしたい。魔者の大陸を離れてからずっと出来なかった。鎌を持つたびに

早く帰って草刈りがしたいと思ったものだ。私がゲームを始めてから適当にやって

いただけのことだったのに、それが日課のようになっていたものだから、もはや草

刈りをしないなんて考えられなかった。長期間離れてからも、草刈りができないと

いうことは気がかりだった。

 だけど、それもようやく終わる! 今、私はブッチに背負われて森の中を移動中

だ。あと少し、あと少しなんだ。ふ、ふふふふふふ。


「ねっこちゃん。草刈りがしたいのは分かったからその不気味で不敵な笑いはどう

にかして欲しいんだけれど。」

「えー。いいじゃんかブッチだっていつも強そうな敵を見ると、不気味な笑い方し

ているんだしさぁ。」

「えっ!? 俺はすごいかっこいい笑い方をしているよ!?」

 という思い込みをしているのだろう。戦闘狂の笑いをしているのは確かなので、

ブッチ自身がかっこいいと思い込んでいるだけだ。あれ、でもそうなると私の今の

笑い方も本当に不気味だったのだろうか。


「あと少しで帰れる。草刈りが私を待っているんだ。ねぇ、だいこん。楽しみだよ

ねえ?」

「ファッ!? いやぁワイはあんまりはりきってやるのもよくないことやと思うん

やで。姉御は無理ばっかりしとるし。」

 私の事を気遣ってくれるなんて、だいこんはなんていい奴なんだ。よし、これは

がっつり草刈りをしてだいこんを楽しませてやらないと駄目だな。

「あっ! 勿論今回からたけのことも一緒に楽しむからね! 今までのことを考え

ると、だいこんの10倍くらいは一緒に頑張ろうね!」

「ワオゥ!!?」

「ぷぎゃー!! 良かったなわんころ! 大好きな姉御と一緒にいられるやで!」

「ナ、ナゼ。ねこますサマ? ワタシハダイコンニユズッテアゲテモイイノデスガ。」

「またまたー。遠慮しなくていいって! これからはずっと一緒だよ!」


 予定通り、たけのことはしばらく一緒に活動したい。もうがっつりと草刈りを楽し

みたいんだ。をして、当然豚狩りもしたい。

「あっそこのイッピキメとニヒキメもだからね。」

「ナッ!? ソレハマコトカ!?」

「マサカワレワレモ!? アノクギョ…。」

何か言いかけたみたいだけれど、それもまぁいいか。いやぁみんなで草刈りをしたら

楽しいだろうからね。薬草が一杯手に入ってさぁ。あぁー早く帰りたい。


「ふふっ。旅行の帰りみたいな気分ですね。」

「あー、確かにねえ。まさかゲームでそんな経験ができるとは思わなかったけれど。」

現実でも、大体家に帰ってくると、家が一番落ち着くってなるんだよね。まだ草原に

到着していないけれど、そうなるだろうなあ。


「魔者の大陸を出てから色々あったなぁ。」

 ゴリラだの恐竜だの蟻だの、なんか色んなモンスターと戦ったり、他のプレイヤー

を初めて見かけたり、お店に行ったり、本格的な錬金術を学んだり、あぁ、収穫は沢

山あったなあ。もう本当に色々ありすぎた。まさかこんな遠出になるなんて思わなか

ったし。次行くときはもう少し楽になるだろうけれど、薬草と、後はドラゴンフルー

ツはもっと集めてから行かないといけないなあ。全然足りなくなりそうだし。


「強い敵とそこそこ戦えたなあ。もっと強い敵とも戦いたいなあ。」

「私の代わりに戦って欲しい敵ばかりだから頑張って。」

「おう! というわけでサンショウとねっこちゃんには修行を頼もうかな。」

「ブッチ殿。我はそこまで相手にならないと思いますが精進します。」

「私は無理に決まっているでしょ!? 雑魚の中の雑魚なんだからさぁ!」

「ねっこちゃん! 自分を過小評価しちゃだめだ! 君はあの羅刹女くらいの強さが

あるんだから! マジぱねーって!」


 そんな強さがあるわけがないので、またブッチのいつものボケが始まったようだ。

「ちょっと明るくなってきましたね。」

 エリーちゃんがそう言ったので、空を見上げてみると、確かに日差しが入り込んで

きている。森の奥から入り口付近まで移動してきたと言うのがよく分かる。いつも来

ていた場所なのに、こうやって長期間不在にしていると新鮮な感じがするなあ。

「あ。あそこに豚が。」

よく見たことのある豚がそこにいた。いつもの豚じゃないか。あぁ懐かしいなあ。こ

の豚結構美味しいんだよね。もう生では食べないけれど、絶対に焼いて食べるけれど。

「おおっ! あれがブッチ殿が教えてくれた、ねこます様が生で食べた豚ですね!」


は?


「なぁブッチ。サンショウに何を話したのかな。なぁブッチさん。なんか余計な事を

話したのかな。なぁブッチ、ねぇねぇ!?」

「だって! 面白そうな話題はみんなで共有しないと駄目だよ! 新参者とかそうい

うので悩むときがあるんだから! こういう話題はみんなで楽しまないと!」

 くっそ! 一理あると思ってしまった! でもプライベートな事なんだから、そこ

まで話さなくてもいいじゃないかとも思ってしまうので、ここはブッチのサイコロの

頭を一回どつくことで勘弁することにした。


「それじゃあ、サンショウ。あいつに魔法ぶっ放して。そんで草原でみんなで一緒に

食べよう。」

「かしこまりました! 南無阿弥陀仏!」

 サンショウが重力魔法を使う。黒紫色の球体が、黒豚まで飛んでいき。命中すると、

黒豚はぴくりとも動かなくなった。今の一撃で倒してしまうのは凄いなあ。私だった

らそこまで出来そうにないしなあ。

「オナカガスイテキマシタ。」

 そういえば、食料品は結構持っていたはずだけれど、がっつり無くなっていってし

まったなあ。実は、街に行く前にブッチ達に食料を分け与えていたりしたんだけれど

それも今はほとんどなくなってしまっているし、それを考えると、また次回遠出する

時はここで食料を大量に集めておかないといけないな。

「蟹身ならまだ少し残ってるからとりあえずこれ食べてて。」

ひょいっと、取り出してたけのこにあげた。


「で、そこで倒した黒豚のところまでみんなで一緒に行くか」

「え? わざわざ? サンショウだけでよくない?」

「ネガティブータ。そんな奴がいるんだよね。クロウニンに。」


 そう、私はこの帰り道に油断しないと決めていたのだから、そこが気になってい

た。ここには豚が沢山いる。そしてネガティブータという名前からして豚が関わっ

てくることは間違いないだろう。だとすれば、ここでいきなり現れて気もおかしく

はない。こういうタイミングで嫌な事が起きないようにするためには、そういう、

ここでは出てこないだろうという考えは捨て去らなきゃいけない。もしかしたらこ

こでネガティブータが出てきて危険な目に遭うかもしれないと覚悟しておかないと

だめだ。


「あれ? でも、一匹ずつしかねこますさんに襲い掛かってこないって言ってませ

んでしたっけ?」

「それが確実って保証がないからね。理性を失った獣だったらどうするのかなんて

分かったもんじゃないし。」

 この黒豚がネガティブータとは全く関係なかったとしても、ここは何が起きても

いい状態にしておく必要がある。そう思って全員で近づいてみたが、特に何も起こ

らなかった。豚は、いつも通りの豚だった。あー良かった。こんなもう精神的疲労

が蓄積された状態で戦いとか、何らかの話し合いとかが発生したらどうしようかと

もう疲れてきたよおおおおお!


「帰ろう。早く帰ろう。もう草原に帰りたいんだ私はもうホームシックなんだ。」

「草原がホームだなんてなんかカッコいい気がするけれどなんか違う気もする。」

 私がこのゲームを始めて最初にいた場所なんだからもう家みたいなものだ。家が

なくても家みたいなもんだ。草原全体が私の家! そして草刈りが私の日課!


「モウスグデラレソウデス!」

「はー。確かになんだか久々やで。」

長い戦いは終わった。いや終わってないし、全然クライマックスじゃないし。結構

苦労したけれど、クロウニンなんてあと八匹残っているし。そもそもレッドドラゴ

ンとドロヌマオロチはリザードマンとサンショウが関わってきているから、そこは

どうするか分からないし。もうまだまだ出来ていないことが多すぎる。後はなぁ、

あの私に舐めた態度をとったプレイヤーにも逆襲したいかなあ。時間ていくら合っ

てもたりないなあ。


「ふふふ。薬草で大儲けができますね。」

「あっ。うんそうだね。」

エリーちゃんはお金に目が無くなってきている。ちょっと心配だけれど、なんとか

なる程度だろう。


「…ブッチ。ここからは歩くから降ろして。」

「おー。分かった。おいしょっと。」

ブッチに腰を下ろしてもらい、そこからひょいっと私は飛び降りた。あぁ、ここだ。

この森だ。そして森の終わりが目の前に見えている。草原だ。やっと私達はここに

帰ってきたんだ。

「ただいまーって言ってもおかえりーって言ってくれるのがいないのが残念だけど

ねえ。」

「自分で言えばいいんだよ! 自分で!」


いやそれはそれで…アリか。じゃあそうするかな。あぁー。一歩一歩踏みしめる。あ

と少し、いや待て。こういう時に茶々を入れてくるモンスターとか、うん。もしいた

らぶっ倒そう。そうしよう。私が草原に帰ってくるのを邪魔してきた奴は絶対に、ど

んなことがあろうが地の果てまで追いかけて倒そう。


「さぁいざ行け草原!!!」

 森から一歩出る。すると、目の前には、よく見知った草原が広がっていた。そうだ。

私の冒険はここから始まったんだって何だこの最終回的なノリは。辞めてくれ。まだ

まだ倒していない奴らがいるのに終わってたまるか。こんなのまだ折り返し地点みた

いなものだし。ああでも本当に懐かしいなあああああ! ちょっと離れていただけな

のに、あああー草原最高! うおおおおおお! 帰ってきたぞおおおおお!


「ただいまー! おかえりー! 私ぃいい!」

「本当に自分で言うとは思わなかったよ。」

「だってもう! 草原だよ! このねこます草原! 私の名前をつけた草原! ここ

で、薬草をがっぽがっぽ! 楽しみしかないよ!」


こうして私は、草原に帰ってきた。スタート地点に帰ってきただけなのに、どこか嬉

しい気持ちで満たされていた。ああ、やっぱり始まりの場所っていいなあ。こういう

場所をこれからも大事にしていきたいな。よし、それじゃあ草刈りの始まりだ!


薬草を沢山集めるぞおおおおおおおお!

この話はまだ終わりじゃありません。まだ続きます。

ついに100万字を突破しました! これからも頑張ります!!

暇な方がおりましたら、ブックマーク、評価等よろしくお願いいたします!!!


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