第290話「熊を倒して」
また追記予定です!
本当に毎日すみませんorz
9/8追記しました
「ねっこちゃん。マジすげぇ…。何あれ! ねぇ何あれ!? どうやったの!?」
ブッチがうざい。しつこい。私は疲れているんだ! 戦闘狂だけあって、私がバ
トルコンベアを倒したことに興味津々のようだ。だけど私は、特に何かやったわけ
じゃないから、どうやったのかなんて聞かれても困る。怒りで我を忘れていたらで
きたと説明するのだが、それでもまだ根掘り葉掘り聞かれる。
「いいから! エリーちゃんとたけのこの心配と! あとは残党狩り!」
バトルコンベアを倒してしまい、熊がここに集まってくるかもしれない。それを
考えたら、これはまずい状況だ。
仮にバトルコンベアが統率者として存在していた場合、それを失った熊共が暴れ
出してもおかしくない。大混乱を起こして、森の中で破壊発動を行って、しまいに
は、草原まで出てくるかもしれない。それは断じて許さん。ようやくあと少しで草
刈りに戻れるというのにそんなことはあってはならない。私がここまで必死になっ
て戦ったのは、エリーちゃんやたけのこやそして草刈りというか薬草の為だ。
「いや、ねっこちゃん。熊達は消えたようだよ。」
「え?」
気配感知を使ってみると、全く無反応だった。ということは、今回はボスを倒す
とその残党がみんな消えると言うタイプだったのか。こ、これは朗報だ。かなりの
数の熊が残っていたはずなので、それを処理するのは大変だと思っていたが、残ら
ないというのなら、安心だ。はぁ良かったあ。
「私と、たけのこちゃんも無事ですよ。ありがとうございました。」
「エリーちゃん!」
薬草をむしゃむしゃ食べているエリーちゃんだった。少し勿体なさそうに食べて
いる気がしたが、やはり売り物として考えているからだろうか。まぁこれからまた
沢山集められるからいいじゃないか。
「ねこますサマ。スミマセンデシタ。」
「何言ってるのたけのこ! たけのこは私を守ってくれているんだから謝る必要な
んてないんだよ! ああもう無事でよかった!」
すごい安心する。このもふもふが守れたのは最高だ。しかし、このバトルコンベ
アとやら、すげー強かったなあ。そんなのに勝てたなんてかなり運が良かった。と
いうか魔者の奴。なんの役にも立たなかったなってそういえば杖出すだけ出して使
わなかったんだっけ。そこに落ちているし。拾わないとな。おいしょっと。
「まさかバトルコンベアを倒すなんてな。」
「お? ふふん。私もやるときはやるんだよ。」
なんだかすごいすっきりするなあ。無理って言われたことを出来たりすると、達成
感で満たされるし。このお調子者の魔者の奴もこれで黙らせることができたし、す
ごい嬉しいなあ。気分がすごいいいなぁ!
「あぁ、これは一泡どころじゃない、泡がぶくぶくしちまうくらい吹かせられた。」
「そうだろうそうだろう。よし、これに懲りたら、いい加減な事を言うんじゃない
ぞ。」
「はぁ。まさか短期間でそんな強くなるとはなあ。強さにムラがありすぎるのが欠
点だがな。」
「お? 負け惜しみかなぁ? 先代魔者さんはそんな負け惜しみばかり言う雑魚だ
ったんですかぁ!?」
煽りに煽ってやる。こいつはいつもなかなか現れないのが嫌な感じがするからだ。
さっさと色々説明してくれればいい物を意味深なことだけ言って去っていくキャラ
クターみたいな奴だから私はそれが嫌いだ。その手のキャラクターが出てくるたび
にとっとと真の目的を話して去っていけと何度思ったことか。こちとらエスパーで
もなんでもないし、早く教えろと思う。
「お前、まだクロウニン達がいるだろ。そういう強そうな発言は、あいつら全員に
勝ってから言うんだな。」
「グローリーアントは倒したから後はハチニンだけどな。」
「ふん。他の奴らが蟻と同じように上手く行くと思っているなら甘いぞ。」
「だったらもっとこうやって現れて会話してくれりゃいいだろ。そうやって思わせ
ぶりな態度をとってるからモてなくてこんな大陸に引き籠ることになったんだよ。」
「あ? なんだコラ。誰がもてねーって!?」
「おっ、そこは突っかかってくるんだなぁ。若いねえ。魔者ぼっちゃん。」
「くそうぜえ。」
こいつはたまにしか出て来ないし、こうやって出てきた時に言うだけ言わないと
気が済まないからな。
「いいか、お前には必ずクロウニンが襲い掛かってくる。そいつらを倒さない限り
お前に安息なんて訪れないんだからな。」
「その時はその時なだけだし。ああ、だったらクロウニンの弱点とか。」
「おっと時間だあばよ。」
消えやがった。はぁ本当に使えない奴だなあこいつは。まぁいいか、こんなのと話
をしている場合じゃない。ここからみんなで草原に帰るんだ。
「疲れたー。ブッチおぶってくれー。」
「おっ!? ねっこちゃんマジで疲れているのか。そうか、じゃあ俺がおんぶをし
てあげよう。エリーちゃんはたけのこちゃんが運んでくれるみたいだし。」
えっ!? くっそ、たけのこのもふもふの方が良かったじゃないか! くそう、な
んてことだ。
「あっ、ちょっと待って、あの子熊のところまで連れて行ってくれ。」
そしてブッチにおんぶをされながら、バトルコンベアのところに行く。
「本当に真っ二つだ。」
「いやぁ。マジで驚いたよ。熊を一刀両断するとか、本当にね。こんなの昔やって
たオンラインゲームで観た「羅刹女」ってプレイヤーを思い出したよ。」
「…へぇ。そんな凄かったんだその人。」
「ああ、一騎当千って感じのプレイヤーだったなぁ。懐かしいなあ。」
私も聞いたことがあるが、どんなプレイヤーだったのかまでは知らない。ちょっ
と今日のプレイが終わったら調べてみようかなあ。というかもう疲れたしさっさと
ログアウトしたいって気分でもあるけれど。
「で、なんでここまで来たんだい?」
「なんかアイテム手に入らないかなあって、もうちょっと近づいて。」
ブッチは私を背負ったまま、バトルコンベアの体の付近まで歩く。さて、ここで何
か手に入ればいいんだけれど。どうかな。やっぱり触れたりしないとだめなんだろ
うか。ボスだし絶対何か手に入りそうな気がするし、ここで無視したら、駄目だと
思ったんだけど。何か出てくれないかなあ!
メッセージ:バトルコンベアの膝当てを手に入れました。
「きたぁぁああ!」
「おわっ!? 何かいいもの手に入ったの?」
「膝当てが手に入ったので装備してみる。」
メッセージ:メリケンサックを装備したことでスキル「空間転移」を使えるように
なりました。
え。何。空間転移だと。そ、そんな。空間転移と言えば、すごい便利なスキルじゃ
ないのか。そんなスキルが使えるようになるなんて、凄いじゃないか! うわぁ、
最高だ。なんてことだ。これがあれば色んなところに飛んでいけるってことじゃな
いか。まさかこんなスキルだったなんて! この膝当ては最高じゃないか!
「ね、ねこますさん。それ、すっごい可愛いですね。」
「え?」
自分の膝を見てみる。な、なんだこりゃああああ!? バトルコンベアの膝当ては
熊の顔じゃないか!? しかもテディベア的な可愛らしい感じの! うっわ、これ
は、恥ずかしい! 今さら装備に難癖つけるのもなんだけれど、すごい恥ずかしい
よこれ! くっそおおおお! 空間転移なんてすごいスキルが使えるようになって
嬉しかったのに、こういうオチかよ!
「ねっこちゃん。可愛い。」
「うぐぐぐ。でもこの膝当てを装備したらすごいスキルを覚えたんだよ。」
「え、マジで!? 何々。ねっこちゃんの声が熊みたいになるとか!?」
「んなわけない! 空間転移だよ!」
「おおー。それはすごい!!! で、また自分には使えないとか?」
…うぐっ!? 確かにそうかもしれない! 浮遊にしても飛行にしてもこういう移
動に関連したスキルは自分自身にはうまく使えていないし、ありえそうだ。うわぁ
それは嫌だなあ。
「使ってみないと分からない。」
「じゃあ早速やってみてよ!」
言うと思った。まぁここで実践しておくのもいいか。肝心な時に自分だけ使えな
いというのもなんだし。ってやっぱりだめだ。これを使った先に木があったりした
らどうなるのか分からないし。昔のゲームだと転移先が壁の中だったりすると閉じ
込められて死亡するなんて言うのがあったくらいだし。ああ、そう考えるとこれは
これで気軽に使えないかもしれないなあ。
「草原に戻ってから使うよ。効果がどの程度の物なのか分からないし。」
「あー、壁の中にいる、ですか。」
たけのこの背に乗ったエリーちゃんが答えた。
「うっ、それトラウマだからマジでやめて…。」
「俺も苦い思い出が…。」
「あたしもです。ってみんなやっていたんですね。」
この二人も結構ゲームやっているんだよなあ。大体話題が通じてしまうのがすご
いと思う。現実で私がゲームの話題を出したら結構引かれてしまいそうな感じだけ
どこの二人ならすぐ分かってしまうのが楽しく感じる。
「あ、ここで話していても仕方ないですね。帰りましょうか。」
「そうだね。これでやっとこさ帰れるよ。ブッチ、頑張って私を運んでくれ。」
「あいよー。」
「でもってまだ何か出てきそうな気もするから気を付けてねー。」
「あっマジで?」
「流石マスター。拙者も何か不穏な気配を感じるでござる。」
えっ!? ちょっとくろごま、聞き捨てならないことを言わないでくれ。こちとら
冗談で言ったつもりだったのに、そんな不穏な気配とか言われたら怖いんだけど。
もうこっちは帰りのコースだって言うのに…。ああそうだった。そうだよね。大体
こういうもう終わったって的に何か起こったりするもんね。
「我も、何か不気味な気配を感じています。」
「…ワタシモデス。」
え、なんで急にみんな続いているの。どうしたって言うんだ。怖いんだけれど。何
か出て来るっていうのか?
「…ボクは、第一ご主人から不穏な気配を感じるチウ。」
「え!? 私!?」
なんだ、もしかしてバトルコンベアの膝当てが呪われていたとかそういうのか。
もしかして乗っ取られるとかそういうのじゃないだろうな。
「別になんともないんだけれど。」
「魔者としての力が覚醒とかそういうイベントなんじゃない!?」
ブッチがどこか嬉しそうに言う。ああ、そういうのか。だけどそれなら不気味な
気配とか不穏な気配って言わなくないかな。あ、でも魔者だしあり得るか。ああも
う面倒くさいなあ。こういうのはとっとと解決するに限るのに、存在だけ匂わせて
おいて、後になってこれがなんだったのか判明するのは嫌いなんだよなあ。
「とりあえず! 私は何ともないけれど、私が暴れだしたりしたらみんなで私を倒
す! そして私は何か自分で分かったことがあったら全員に説明! こうしておく
からよろしく! それじゃあ帰ろう!」
私が原因で何か問題があるなら私を倒してもらえばいいし。私はとにかく草原に
帰りたいんだよおお! だから帰るぞおお!
~の中にいるはあの有名なウィ○ード○ィですね。