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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第1章「般若レディと仲間たち」
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第29話「焼いて食べる」

 兎のいる野原へと戻ってきたぞ。ある意味ではトラウマな場所だけれど、久々に美味い

肉が食べたいので、そこはなんとか無視するとしよう。

 あたり一帯を見回してみる、兎の影も形も見当たらない。これはもしかするとだけれど

今現在の面子が多くて威圧的だからじゃないだろうか。私は違うはずだけれど、ブッチな

んかマッチョでかつ顔面サイコロだし、多分これに怯えていると思われる。

 ひとまず私たち一行は、巨大化しただいこんから降りた。

「ワイは疲れたんで、姉御の肩を借りたいんやが、このサイズならどや?」

 だいこんが小型になった。ここまで縮小可能なのか。便利だな。

「実はそのサイズでも重いとかはないの?」

「ないで。へへへ便利やろ。それでどうや?」

 まぁ、このくらいのサイズなら肩に乗っても違和感がないだろうしいいか。一応振り落

とされないようにしてと注意だけしておいた。

「おおきにやで!」

「耳元でうるせー!」

「すまんやで」

 肩に乗るはいいがうざいのは勘弁だ。ん?たけのこが羨ましそうにこちらを見ている。

いやいや、いつも言っているが、一番可愛いのはたけのこだよ。馬鹿どもはいつも馬鹿

ばかりやるけれど、たけのこは真面目なのが最高だ。ちょっと食いしん坊だけど。

「で、兎ってどこいるのかな。おっ?あのあたりなんてどうかなぁ?行ってみよ!」

 おい待て。いきなり集団行動を乱す奴がいるか。あーあー。ああやって先に行く奴が死

体になるところをよく映画なんかで見てきたなあ。多分あいつは熊とかに襲われて死ぬだ

ろう。会ったことないけど。

「ねこますサマ。ワレワレモウサギヲサガシマショウ!」

「うん。そうだね。ブッチは多分一人でも大丈夫だろうし。」

 子供じゃないだろうから大丈夫だろう。思考は子供だろうけど。一人前の般若レディた

る私は、こうやってたけのことあとだいこんとは仲良くなれるのだ。二匹とも人間じゃな

いしAIが思考を作っているだけなんだろうけれど、それはそれだ。

「んじゃ、そこらへんを適当に歩いて探そうか。」

 前回も、そんな感じだったし、大丈夫だろう。なんとかなるもんだよ。

 そう考えていてだらだらあたりを動いてみたけれど。


「全然見つからないじゃん!なんで!?おかしいよ!?」

 多分、小一時間くらいは探したんじゃないだろうか、見当たらないもんだ。茂みの中と

か木陰とかとにかくそこらへんにいないかどうか探してみたんだけれどいない。なぜだ。

まさか、この間の集団を倒して絶滅させたとかじゃないよな。流石にそこまではありえな

いと思うんだけれど、どうすりゃいいんだ。


「ムネンデス。」

 腹ペコになってきているのか、たけのこが非常にしょんぼりしている。元気がない。

「姉御、この際やしいったんブッチニキを探しにいこうで。」

なんだよブッチニキって、この間はブッチはんだったろ。

「わかったわかった。でもあいつもどこいったんだよ。」

 あれからどこか遠くへ行ってしまったのか、こちらには戻ってこない。まさかあいつ、

兎の集団を見つけて一人だけで楽しんでいるんじゃないだろうな。いや、そうだ。そう

に違いない。あいつは、そういう奴なんだ。ド畜生が。

「姉御。なんか怖い顔しとるで。なんか嫌なことでもあったんか?」

「ブッチの野郎!抜け駆けして兎を食ってるに違いねぇ!よし!草の根分けても探すぞ!あ

の野郎は血も涙もねえサイコロプスなんだ!見つけ次第デストロイだ!」

「なんで燃えているんや…。」

だいこんのことなど無視して私達は元いたところに戻り、そこからブッチが行った方向へ

移動していく。

 ここからは裏切りイベントのノリでやっていこう。仲間割れのイベントは漫画なんかで

はよくあるのだ。ネットゲームだと、アイテムの取り合いで喧嘩になって方向性の違いが

うんたらと解散することもよくあるはずだ。

 しかし、うまくやればアホのような友情が芽生えること間違いなしだ。ここで兎と戯れ

ているブッチを叱咤して喧嘩してそして、謝罪させればあの態度を改めさせることができ

るかもしれないぞ。最終的には私の事をねこますお嬢様なんて呼ぶようになるかもしれん。

 よーし!やってやるぞ!

「ブッチドノ。ズルイデス。」

たけのこは恨めしそうな眼をしていた。やはり食べ物が絡むと執念が増すようだ。食べ物

が絡めば、昨日の友は今日の敵になってもおかしくないよね。

「絶対に、とっちめてやるぞぉ。」

 そんな感じで、ブッチが行った方向に向かって突き進むのだが、何も見当たらない。な

んなんだ。あいつ、マジでどこにいったんだ?まさかログアウトしたとかか?

ありえそうな気もするけど流石にそこまでするだろうか。うーむ、謎だ。

「アノ、ナニカキコエテキマス。」

 少し離れたところに林がある。そちらから何かが聞こえるらしい。行くか。

「ブッチかもしれない。こっそり行くとしようか。」

 ブッチのことだし、近づいたらすぐ気づきそうな気もするけれど、まずはとにかくここ

で何をやっていたのかとっちめてやるのが先だ。

「フフフハハハハ。」

 おおっ。確かに声が聞こえてきた。しかも笑い声だ。こいつぅ。お楽しみ中だったのか。

兎の独占はさぞ嬉しかっただろうなあ!

 更に近づいていく。近くなったところで木陰からこっそりのぞいてみる。

「おーよしよし。うさちゃんはめんこいねえ。アハハ。こらこら。頭の上に乗ったらだめ

だよ。あはあは。あー癒されるぅ。」

 胡坐をかいて、兎と戯れていやがった。こ、この野郎!私が前回できなかった兎との交

流をたやすく!ゆ、許さんぞ。うごごごごご。怒りが頂点に達した。


「あかん、姉御。それはあかんで。」

「ミ”ィイイイイ”!?」

兎は何匹かは慌てて逃げ出し、その他は気絶したようだ。

「え!?お?う、うさちゃん!?お!?え?あ?ねっこちゃん!?」

「み~た~な~!!」


 木陰から顔を半分のぞかせ、鋭い眼光でブッチを睨みつける。一度やってみたかったと

いうわけでもないが、まずは威圧だ。

「何楽しそうにしているんじゃわれぇ。その兎は食うんだよぉ!」

「いやいやちょっとま、あれ?みんな?え?嘘?マジで?」


私より巨体でムキムキの癖に兎と仲良くするなんて許せるわけがないじゃないかあ。なあ。


「あの?その、このこたちはどうなったの?」

「気絶したんだろうね。」

「いや、どうみてもその、死んでるよね?」


「・・・・・・・・・・・・・。」

しまったああああああ!またやっちまった!威圧一発で兎を倒してしまった!あぁああ!!

「生きるとは、なんと悲しいことなんだろうね」

「いい話で終わらせないでよ!?あーあーもう。」

 呆れるブッチ。いや元はお前がこんなところで兎を倒さずに、いたからいけないんだぞ。


「いやいや、そもそも兎狩りだったのにここで何してたの?」

「そりゃもう、もっふもっふしていてもっふもっふ、うわ睨まないでよ!ねっこちゃんに

はたけのこちゃんがいるし羨ましかったんだって!」

 それは分かるが一人でお楽しみとはいただけんぞ。この野郎。

「まぁその、倒す雰囲気なかったしって、ねっこちゃんはその威圧は抑えられないの?」

「ある程度はできるかもしれないけど、勝手にでてるからなー。」

「はぁ、それじゃあ兎ちゃんたちとの戯れはこれで終わりか…。よし食べるか。ねっこち

ゃん、狐火で焼いちゃって。」

 切り替えはえー。いいのかお前、さっきまでもっふもっふしていたのに。

「終わったことは気にしないタイプなのさ俺は。さぁバーベキューをしようぜ!」

 くそー仲間割れイベントが失敗したじゃないか。くやしいのう。

「わかったわかった。よし、この兎はとりあえず広いところまで持っていこう。」

 木に燃え移ったりしたら嫌だからね。川のあたりまで移動してバーベキューにすること

にした。


「狐火!」

早速、兎を丸焼けにする。美味しそうな匂いがしてくる。解体とか血抜きとかよくわから

んから、まずは適当に焼く。

「へっへっへ。旨そうな兎だぜ。」

「それ悪者のせりふだよねっこちゃん。」

 ブッチが突っ込んでくるがお構いなしだった。

「オ、オイシソウデス!!」

たけのこがいつものように涎を垂らしている。先に食べてもらうか。

「たけのこは先に食べていいよ!」

「!アリガトウゴザイマス!」

がっついて兎を食べるたけのこだった。良かったねえ。私も狐火を使えるようになって良

かった。

 複数匹焼いたところで、いざみんなで食べることになった。このゲームで初めて焼いた

肉を食べることになったがかなり美味かった。


「ところでさ、ねっこちゃん。ムシャムシャ。」

「何だいおじいさん。」

「おじいさんじゃないけど、前、兎の肉を食べたって言ってたよね。」

「そうだね。ムシャムシャ。」

「ねっこちゃんは、狐火を使えるようになったのはあの洞窟に来てからだよね。」

「うん。ムシャムシャ。」

「もう1つ質問いいかな。」

「うん。」

「その時の肉はどうやって食べたの?」

「・・・・さあね。」

「ねこますサマトワタシデ、ソノママノウサギヲイッショニタベマシタ!!!」

た、たけのこぉおおおおおおおおおおおお!


「や、やっぱりな、生肉をた」

「うるせーーー!!」

私はブッチを怒鳴りつけたがブッチの笑いはしばらく収まらなかった。


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