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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
279/473

第279話「長い雨」

明日追記します!!!

8/28追記しました。

 結局、あの日は、ずっと雨が止むことは無かった。仕方なく、海底洞窟内で渋々

ログアウトすることになった。そこからプレイができないまま日数が経過して、ロ

グインした。もう晴れているだろうし、草原に帰れるだろう。そんな事を思ってい

たのだが、その認識が甘かった。

 そう、あれから雨はずっと降り続いているようだ。私がいない間にログインして

いたブッチによると、一度海底洞窟から樹海方面へ行ってみたようだが、そちらは

晴れが続いているとのことだった。つまり、魔者の大陸側でずっと雨が降り続いて

いるのだと思われる。まるで私が帰ろうとしているのを邪魔しているかのような展

開に腹が立った。


「モンスターの仕業って説が濃厚になってきた気がするんだけれど。」

しかし、どこにいるかも分からないモンスターを探しにこの悪天候の中動き回ると

いうことをしたくなかった。何より買ったばかりのリュックがある。使い古したも

のならまだしも、新品をいきなり雨に晒したくはなかった。

「あれ、でもこれ、しまえたりするのかな。」

なんて思っていたら普通にアイテムインベントリにしまえてしまった。これなら、

外に出ていく事ができるけれど、どうしようか。いや、いっそ私一人で行ってみた

ほうがいいんじゃないだろうか。


「これから、外に調査しに行こうと思うけれど、誰かついてくる?」

念のため呼びかけだけはしてみることにしたのだが、結局全員ついてくることにな

った。

「みんな、無理しなくてもいいんだよ? 海底洞窟にいればとりあえず何も問題は

ないだろうし。」

「ねこますサマノイクトコロニハ、オトモシマス!!!」

「俺は強い奴と戦えそうなチャンスを逃したくはない!」

「むしろ海底洞窟に残っている方が危険な予感すらしてきましたので…。」

 各々理由があったが、とにかく海底洞窟から出ていきたいということだった。今

現在、特に気になる点は、これが湿地帯だけなのかどうかってところだ。ここ以外

も雨が降っていたら、非常に厄介だ。

 魔者の大陸全域だとしたら、この付近に元凶がいないかもしれない。そうなると

単に外に飛び出しただけでは疲労しきってしまう。これを考えると外に出たい気持

ちが薄れてくるのだが、一週間はログインをしていなかったのに晴れなかったと言

うのなら、これから先もずっと晴れないかもしれないというわけだ。

 

「これ以上、立往生している場合じゃないんだよね。というかこれは私から薬草を

奪おうとする行為でもあるわけだから、こんな天気にした奴には地獄の苦しみを与

えないと気が済まない!」

「ねっこちゃんは、薬草の事になると、途端に燃え上がるね!」

「そりゃあもう、しばらく草刈りしていないのに薬草だけどんどん減っていくって

状況だからね!」

 ずっと足止めされ続けたら、いつ草刈りが再開できるか分からないじゃないか。

そんなの絶対に納得がいかない。

「姉御。ワイに乗っていくってことでええんか?」

「え。乗れるならいいけど。この悪天候の中乗っても大丈夫なの?」

「何も問題ないやで。ところで姉御。ワイ、試してみて貰いたいことがあるんや。」

「へー。そうなのかって何々?」

「実はな。」

「耳打ちしていないでここではっきりモノ申せ!」


 こういうこっそりとやってあっと驚かせようとか言う無駄なことをする暇があっ

たらさっさと答えを言って貰いたいというのが私だった。何がいしたいんだろうか。

「姉御! そこは実際にやってみて出来なかったときの保険みたいにしておきたい

ってだけなんやで!?」

「失敗大いに結構! 駄目な時は駄目! それでいい!」

余計な小細工をせず、正々堂々とやる。それはとても良いことだ。ここでだいこん

が私にだけ説明するのではなく、最初からみんなに事情を話して納得してもらう。

そっちのほうがいい。


「はー。分かったやで。ほな、ワイに飛行を使ってみて貰いたいんやで。」

「へぇ。それならみんなが空を飛べるってことか。」

「そうやで、大空を翔る伝説の白蛇ってことでワイの人気は急上昇するやで。」

いや、そんなことにはならないと思うが、一応黙っておくことにした。ここで何か

期待しているだいこんにも悪いと思ったし。


「でも、ここでわざわざ飛行を使う必要はなくない?」

「この雨を起こしている奴が空にいるだけとは限らんやろ? もしかしたら地上の

どこかにいるかもしれんやで。それなら空を飛んでいた方が探しやすいやで。」

 なんということだ。いつもは大して何も考えていなさそうなこのだいこんが、こ

こまで考えていたなんて。私は認識を改める必要がありそうだ。

「で、それは誰の受け売りなのかな。」

「それが、ブッチニキなんやで! ブッチニキはこうすれば完璧ってワイに…あ。」

どうやらだいこんは間抜けだったようだ。やれやれ、そんなことだと思ったよ。

「ブッチ。だいこんになんてことを教えるんだ。」

 私はやれやれとため息をつくのだった。

「こうすればいいんじゃないかなって思ったことを言ってみただけだよ。そう簡単

に上手くいくとは思ってないっていうのもあるし。」

 私の飛行というスキルは約5分程度、対象にした誰かを自由自在に空を飛べるよう

にするものだけれど、たけのこに使ってたとして、その上にみんなが乗っかったら

5分間きっちり使えるかどうかは分からない。重量制限とかそういうのについては、

特に調べてもいなかったので、ここらで確認するのもいいんだろうけれど、ここで

わざわざリスクを冒してまでやる必要性は無いだろう。


「みんなで空から眺められれば、何かわかるんやないんか?」

「それならやっぱりブッチだけでいいんじゃないかな。サイコロの目の力で、色ん

なところ見えているみたいだし。」

わざわざみんなで空を飛ぶ必要もないだろうし。

「えー! 俺一人だけずぶ濡れになるよりもみんなを巻き添えにしたいって言うの

が本音なんだよ! ねぇ本音ぶっちゃけたしよくない!?」

「よくないっつーの!」

 仲間意識というのは苦しい時ほど芽生えやすいとは言うが、単純にこの状況で全

員が雨に打たれて疲労するのは良くないだろう。まぁだからといって、ブッチだけ

に押し付けたいわけじゃないんだけれど。


「というわけで、ブッチ、このあたりだけでいいのでちょっくら飛んでくれたまえ。」

「じゃあせめてねっこちゃんも一緒に頼むよ。俺が肩車するからさぁ。」

妥協点としてはいいところか。ブッチだけに任せるって言うのもみんな、悪い気がし

てくるだろうし、スキル使用者の私が行くなら納得できるって感じもする。

「しょうがない。じゃあさっさと行こうか。」

「えっ。俺、まだ心の準備が。」

「そういうジョークは良いからさっさと行くんだよっ!」


海底洞窟の入り口付近でブッチに肩車をして貰う。はぁ、ここから雨でずぶ濡れにな

るのかぁ。嫌だなあ。でも行かないと何も分からないからな。

「ねこますさーん! ブッチさーん! 頑張ってくださーい!」

 エリーちゃんと、その他の仲間たちが応援してくれている。なんだかこのまま二度

とここには帰ってこれないような雰囲気になるからよしてほしいなあ。

「応援ありがとう! ちょっと雨の様子を見てくる!」

「あっこら! そういう発言は控えるべきだろ!」

 台風の日にちょっと川の様子を見てくるなんて言って帰ってこない事が良くあるん

だからやめてくれと。


「あぁー。それじゃあ準備はいい?」

「おーけい。じゃあこっから助走するから、俺がジャンプした時に浮遊を使って。」

「え? このままいくんじゃって。おっおっ!?」

 いきなり洞窟内を走り出すブッチ。なんでここで助走が必要になるんだよ!? う

ああああああ!?

「行くぞおおお!」

「浮遊!!!」

洞窟を出た瞬間、空を駆けのぼるような浮遊感があった。どんどん空に上昇していく

が、猛烈な勢いの雨が私とブッチに当たっていくというか、こ、これは!?

「私の方が当たりやすいし!」

「計画通り! ねっこちゃんを肩車して俺に当たる雨の量を減らす作戦だ!」

「小賢しい! いやまぁいいけど。それで、何か見える!?」

「何もいねぇ! ねっこちゃんの気配感知は!?」

「あっ。そうか。そういえばそれもあったな。」

 気配感知があるのを良く忘れるんだよなあ。このスキルの有効性が低いし。そして、

ブッチが私を選んだのも、気配感知があるからというのもあったか。


「あぁー。やっぱり視界が悪すぎだなあ。いくら空高く昇っても、これだけ雨が降っ

ていたら、あんまり見えないや。」

本当にすごい勢いだ。この雨が先週からずっと降り注いでいたなんて災害級じゃない

か。なのになぜ海底洞窟は大丈夫なのだろうか。そういうものとしての設定になって

いるのだろうか。


「うう。結構高いところまで来ているけれど、大丈夫かこれ?」

「意外といけるから大丈夫だって。とりあえず雲の上まで一気にいければいいんだけ

れど、速度はそこまで出ないみたいだからね。」

「スキルの効果が上がってくれれば早くなったりするのかな。」

そういえば狐火みたいに威力が上がってくれればいんだよなあ。どうすれば威力が向

上するのかは分からないけれど。

「できる事は増えるかもしれな…いって、なに!?」

「気配感知!? 引っかかった!」


でかい反応が引っかかってきた。うぉお、なんだこれは、大きな反応がびりびりと伝

わってきた。何かがいる。だけどその何かの正体が分からない。

「真空波!」

「うぉっと!? ねっこちゃん。闇雲に撃ったら危ないって!」

まずは一発真正面に適当に放ってみたが、何もいなかったようだ。大きな反応がある

のだが、どこかに隠れているんだろうか。ふさけやがって。でもこれで確定した。こ

のモンスターか何かは上空にいるってことだ。まだ調査して間もないからそれが確定

ではないが、ここから頑張って探して行かないといけないな。

「ブッチ! 何も見えない!?」

「分からない! 俺の目でも捉えきれていないかも! 悔しいなあ! どこにいるん

だよ全く!」


「あまり無理するんじゃないよ。まずは上空にいるって分かっただけでも良かったわ

けだし。」

「そうだね。だけど残り時間目いっぱい使って探してみるよ!」

その意気だな。そして私もブッチのフォローをしっかりしていかないとな。

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