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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第278話「悪天候」

 猛烈な雨が降り注いでいる。地面に落ちた水は、海底洞窟にもその一部が流れ込

んできた。そのため、私達は海底洞窟の少しだけ奥のあたりに陣取って休憩をする

ことにした。

「こんなところで足止めされることになるなんてね。サンショウは、こういう雨の

時はどうしていた?」

「巨大な樹に穴を開けて入り、そこでじっとしていましたよ。とはいえここまで

土砂降りなのも珍しいものでしたが。」

サンショウが啄木鳥が巣穴を掘るようなことをやっていたと思うと、何故か不気味

に感じた。元々は骸骨の姿だったわけだし、そんな奴がいきなり樹の穴から骸骨の

顔をのぞかせてみたら、うん。不気味だな。全く癒されん。聞かなきゃ良かったと

後悔した。


「サンショウ、その時は骸骨の姿だった?」

「ええ。そうですが。」

「うわぁ、見てみたかったなあ。今度その光景を撮影しよう。っていうか今からで

も別にいいけど。」

「撮影って言ったってどうするの? そんな道具ないし。」

「俺、撮影ってスキルを覚えたんだ。」

何そのスキルいいな。きっと目がレンズになって撮影するとかそういうのなんだろ

うけれど。

「360度カメラになるのが自慢なんだ。」

「凄いな。誇っていい。面白そうだし撮影したら是非とも見たい。」

「でも、俺だけしか撮影した映像は見れないんだ。」

「自分一人で楽しんでなさい!」

「ごめん嘘。俺の目から映像が投影できるんだ。プロジェクターみたいに。」

「からかうんじゃない!」


 はぁ。疲れる。さっさと帰りたいという状況でこれなんだもんなあ。いや、もう

みんなやりきれないっていうのは分かっているんだけれど、不運過ぎて涙が出てき

そうだ。

「ねっこちゃん。早く帰りたいのは分かるけれど、焦ったってしょうがないって。

どうせいずれは帰れるんだからそんなさっさと戻らなくてもいいじゃないか。」

「ブッチが神殿で退屈していたように、私も草刈りができなくて段々我慢ができな

くなっているんだよねえ。分かってはいるんだけれど。はぁ。そうだ。たけのこ。

たけのこもサイズが大きくなったことだし、私を乗せて草原を駆け巡ろうじゃない

か。楽しい草刈りを一緒にやろう。」

「ハ!? イ、イエ、ソレハダイコンのヤクワリデハ!? ソレヲウバウノハモウ

シワケナイデス!」

「いやいや。遠慮しなくていいよ。だいこんはいつも私と草刈りをしてくれている

し、たまにはたけのことしないとだめかなって思っててね。」

 これまで結構離れることも多かったわけだし、たけのこの背中に乗ってガンガン

草刈りをするのも楽しいだろう。ふふふ。私はなんて優しい奴なんだ。


「そうやで! わんころ! お前も姉御と一緒に沢山遊びべきなんやで! もっと

沢山遊ぶのええで! いやぁ今までワイと姉御ばかりが遊んで悪かったなあ! こ

れはいい機会やで。姉御、折角やし、草原に戻ったらしばらくは。わんころと草刈

りをするのがええで! スキンシップや!」

 なるほど、だいこんもたまには良いことを言うもんだな。確かに私はこれまで、

たけのことのコミュニケーションを疎かにしてきてしまったかもしれない。ともあ

れば、もっと沢山一緒にいるべきだな。

「ナァ!? ダ、ダイコンキサマァ!?」

「あはは。たけのこも感動しているのか。よしよし。大丈夫だって、沢山遊んでや

るから安心してね。」

「ハ…ハイィ。」

「ッシャアア!」


「ナンダカタノシソウデスナ、ねこますドノ。」

「ワレワレモ、ソノヨウニナレレバイイノダガ。」

「これから慣れていくんだよ。まぁ君たち二人にも草刈りをして貰うから。よろし

くね。」

「オ。オマエタチ、トモニガンバロウ!」

「ナッ!? クッ。ワカッタ。」

「グヌッ。カシコマッタ。」

 あぁ仲間意識が芽生えて行ってるのに、まだ草刈りができないのが残念な事だ。

早く雨がやんで欲しい。たまに外を見に行くんだけれど、全然やまない。なんかお

かしいなあ。この天気、モンスターがおかしくしているとかないのかな。強力なモ

ンスターは、天候も変化させるとは言うけれど、何かがいるんじゃないのだろうか。


「モンスターの仕業だとしたら、かなり強力な奴ってことになりますよね。」

「天候すら操る奴かぁ。くうっ。燃えてくるなあ。」

ブッチがまた燃え上っている。お前今日は散々戦っただろうと思ったのだけれど、

まだまだ戦う意欲を示せるところは本当におかしいな。

「すごい強いモンスターがいるチウ? でも一体どこにいるってことになるんだ

チウ?」

 それが分かれば苦労はしないのだが、確かにまずは、所在が分からなければどう

しようもないだろう。だけど、雲の上にいるとかになったら手の出しようがない。

こちらの攻撃が届かない位置にいるのだとしたら、どうにもならないのだから。


「…空の上に大陸がある…?」

 思わず独り言を呟いてしまったが、はっとした皆が私の方を注目した。いや、そ

んなことがあるとは思えないんだけれど、魔者の大陸の上に空に浮かんでいる大陸

がぴったりとあったりしたらどうなるのかなあなんて考えてしまった。そういう夢

物語みたいな話をして楽しめるのもゲームの良い所だと思うし。

「浪漫があるなあ。その空の大陸にいるモンスターか何かがこんな風に天候を自在

に変えているなんて考えるのは面白いね。」

「この大雨というか悪天候自体がモンスターみたいな感じでもいいですよね。そう

いう巨大なモンスターって案外いてもおかしくなさそうです。」

「ドロヌマオロチが、この大陸そのものみたいな感じかもしれないし、規模として

は同じ部類か。そんなのにどうやって勝てって感じだね。」


「拙者がイエロードローンで空を見ていく事も出来ますが。」

「それは辞めて。大体こういう時に一人で偵察に行くと、不幸な事が起きやすいか

ら。それこそ命を落とすレベルのね。」

「むぅ。そうでござるか。」

「俺がねっこちゃんに飛行使ってもらって空に突っ込むとかは!?」

「話を聞いていたか! 一人で行くのは危ないだろ! ああ、この場合は二人とか

でも同じ! 何でこんな状況になっているのかも分からないのに、迂闊に飛び出し

たら危険だろう。」

 集中豪雨の中で飛び出したらそれだけで疲弊するだろうし、そもそも雷まで落ち

てきている始末だ。それが当たってしまえば、最悪死に至るかもしれないのだから、

外に行かせるわけがない。かといってこのままずっとここでだんまりを決め込むの

も嫌だなあとは思うけれど。


「立往生ってことやな。でもまぁ。お天道様の気分なんてコロコロ変わっても当然

やと思うで。ここはきっと、小休止しろやってことかもしれんし、このあたりでだ

らだらしようやないか。」

「おー。だいこんもたまには良いこと言うよな。俺もそれに賛成だな。」

「でも何にもすることないしなあ。」

「え。じゃあねっこちゃん達が町の中に入った時の話をしてよ。」

 そういえばブッチは興味津々だったもんな。これからもしばらくは入ることがで

きないし、それに皆にはそこまで話をしていなかったからここらで雑談してもいい

かな。


「私があの町の中で何をやってきたのかって言うと、錬金術を習ってきたんだよ。

まぁ基礎だけなんだけれど。で、専門分野として闇の錬金術を学ぶことにしたよ。」

「なんで闇に決めたの? やっぱりあれ!? 漆黒の闇の中を生きるのが我が運命

みたいなノリ!?」

「単に他の属性があまり気に入らなかっただけだよ。闇の錬金術は危険も多いけれ

ど、それに見合うものがあるみたいだからね。やっぱり目指すなら最高の物じゃな

いといけないっていうのはブッチも分かるよね?」


「そりゃあ勿論。ノーリスクでやれることなんて世の中多くないし。危険を承知で

やらなきゃいけないことがあるのならそれに挑戦してみるべきだね。」

「とまぁ私もそういう感じだったんだよ。ほら、有名なレースゲームがあるけれど

あのゲームだと、最高速度が出せるけれど操作が難しいキャラクターがいるじゃん。

つまり一番を目指すなら結局そのキャラクターを使わなきゃいけないって言うね。」

 最終的にはみんなそれを使うようになるので面白みに欠けると言えばそうなのだ

が勝利するためにはリスク覚悟でやらなきゃいけないのは当然って事だ。リスクを

避けたやり方なら、二番、三番にはなれるかもしれないが、決して一番になる事が

ないというのが私は嫌だった。


「やはり目指すのは頂点! 覇道ってことか! 流石ねっこちゃんだ! つまり最

強である闇の錬金術を選んだってことか。」

「全然使い手がいないみたいなんだけどね。先生の弟子はみんな逃げ出しちゃった

みたいだし。」

「え? ちょっと待って。そういうのって他のプレイヤーはどうだったの?」

「うん。だからそのプレイヤー達もやらなかったみたいだよ。多分、錬金術士より

も他の職業の方が効率的にも何をするにも見合っているからだと思う。」

「そんなもんかあ。俺が錬金術士だったら、ねっこちゃんと同じく絶対に闇の錬金

術士になっているのになあ。」

「あ、あたしもそうですね。他のもいいかもしれませんけれど、やっぱり目指すな

ら難しくても上を目指せるものですね。」


こういう風に上を目指す理由は、きっとそれぞれ違うのだろうけれど、私の場合は

過去にプレイしたオンラインゲームも影響している。その頃は魔法使いとしてプレ

イしていたのだが、楽にできる反面、すぐに上限に達してしまって、後半、徐々に

魔法の威力不足なってしまい、最終的には役立たずのようになってしまったという

苦い経験がある。そんなことにならないようにするためには、やはり、難易度が高

くても、時間がかかっても上を目指せるものを選択するべきだと思う。


「もしかしてみんなも選択肢間違ったなあって事が、まぁあるか。」

「そりゃあ沢山あるって。爆弾ってアイテムを使おうとしたら、火を起こせないか

ら使えないとかいうゲームとかあったた時は腹が立ったなあ。」

「氷の魔法が物語の序盤でしか役に立たないことを知らなくて、鍛えてしまって、

役立たずになったなんてことが、はぁ苦い思い出です。」


なんだか共感できる話ばかりだな。というかこうやってゲームの話をするのも楽し

いもんだな。戦ってばかりじゃなくて、こういう風に雑談することも重要なんだろ

うか。これからはもう少し話したりしようかな。そうしよう。そして雑談も十分し

たことだし、もう晴れたのではないかと外を見に行ったら豪雨は止むことは無かっ

た。なんなんだよーー!


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