第271話「効率重視のプレイヤー達」
明日一部加筆、修正予定です。
8/20修正しました。
「なんもいねえじゃねえか。あーくそ。時間の無駄だったじゃねえか。」
一人のプレイヤーがそう吐き捨てた。折角ここまで足を運んだのにブッチが見つ
かなかった為、来た意味がなかったからだ。この態度で分かったが、やはり効率重
視のプレイヤーだろう。ちょっとした無駄を嫌い、理論上出せる最大の効率を求め
るタイプがいるのだが、こいつらは多分それに該当する。私の苦手なタイプだ。
効率重視のプレイヤーは、効率が低下することを極端に嫌う。オンラインゲーム
の効率というのは仲間との連携が求められることが非常に多いため、連携ができな
い、能力が不足しているプレイヤーは仲間から外すこともあるのが効率重視プレイ
ヤー達のやり方だ。結局、利害が一致しているから他のプレイヤーを仲間にしてい
るだけの寄せ集めだ。
目的が一致する者同士が集まっているだけだが、この連中が結構な確率で喧嘩を
吹っ掛ける様なことをしてきたり、自己中心的な行動をしてくるなど目立つことが
多かった為、私としても極力関わり合いになりたくないというのがある。関わって
こちらが相手の目的の邪魔になろうものなら、それが意図的ではなかったとしても
延々と文句を言われ続けるのが常だ。それと、一番厄介だなと思うのが。
「あーくそ! ふざけんじゃねえ! 俺の一分一秒が無駄になったじゃねえかぁ!
何にも面白くねえよ! こんならボス狩りでもやってたほうが良かったぞ!」
「時間を無駄に したことは 一生忘れない」
「ブリュブリュブリュブリュ!!!」
癇癪持ちというか、都合の悪いことがあるとかなり激昂しだすってところだな。
なんか誤解で逆恨みされたことがあるんだけれど、誤解だったことが判明しても、
誤解されるようなことをしたのが悪いとか散々だった。どう釈明しようが、八つ当
たりしてくるので、手に負えなかった。そういうプレイヤーが、恐らく今ここにい
る連中だろう。やっぱり<アノニマスターオンライン>でもいたか。
ゲームのお金を現実のお金に換金できるので効率重視プレイヤー達は、必死にな
ってプレイしているのかもしれないなあ。といっても、ゲームで稼ぐよりも現実で
働いた方がお金になるんじゃないかと思うけれど。超上級プレイヤーとかになると
稼ぎも変わってくるのだろうか。
「おい。もう何も出てこないだろうから帰るぞ。さっさとしろ低能ども。」
「はぁ? なんですかその態度。私が何をしたって言うんですか? そういう態度
だから人から嫌われるんですよ。ああ、私が嫌っているかどうかはこの際どうでも
いいですね。あなたみたいな身勝手な行動をすることにみんな迷惑なんですよ。ま
ぁ私はそこまで思ってはいませんが。」
「うぜぇ。かったりぃ。面倒くせぇ。おい、お前ら、俺は先に帰るぞ。」
「は? 何先に帰ろうとしているんだ。」
「あ? お前らはさっさとギルドに報告しろよ。ああ、そんときゃ、何もないとこ
ろに派遣されて散々迷惑を被ったっつーことで、1000万スターくらい請求しとけ。」
1000万スターとかどんだけだよこいつ。規模が違い過ぎてなんだか怖くなってく
るなあ。なんでそんなにお金を持っているんだ。
「おい、何勝手に。」
「あーそれと、つきまとってきている連中も始末しておけよ。じゃあな。」
すると、気配感知で1つ気配が消えた。ああ、こいつら、私達がいることにはずっ
と気が付いていたってことか。とるに足らない存在だってことで、無視していただ
けか。あー、どうなる事か。一人いなくなったとしても、残り5人。とっとと姿を
現したほうがいいのかな。
「というわけだ。なんで俺らに付きまとっていた?」
突然私達の前に姿を現した一人のプレイヤー。中肉中背の男だった。特に何か目
立つようなところもなく、どこにでもいそうなプレイヤー。これは、キャラクター
がほぼ初期デザインのまま、何も変更されていないというような感じだ。確かにキ
ャラクターを作る際に、こういうのを面倒くさがって何もしないプレイヤーも一定
数いるのは知っていたが、キャラクターには特に愛着が無いのだろうか。
「どうも。なんとなく、強そうなプレイヤーだと思ったので、付いて回っていまし
た。」
「あ、あたしも同じような理由です。」
最初からずっと気が付いていたのかどうかは分からない。それとなく言い訳して
おいて、そんなものだろうと信じてもらうしかないが、さてどうなる。
「あぁ。何も知らないプレイヤーか? それともサイコロの化け物のことは知って
いるのか?」
「なんですかそれ。というかあなた方の目障りになってしまったのでしたら、私達
は去りますよ。すみませんでした。では失礼します。」
余計な面倒事を嫌うと言うか、もう一足先に帰ってしまった奴がいるので、私達な
んかに構ってないのでさっさと帰ってもらいたいと思った。
「まだ話は終わっていない。」
帰ろうとしたら回り込まれた。うっわ邪魔だなあ。ちょっと後ろをついていった
くらいのことを、放っておいてほしいなあ。漫画なんかだと、取るに足らない存在
だみたいに見逃してもらえることが多いんだし、私達なんかに一秒も構う必要なん
かないじゃないか。
「なんですか。もういいじゃないですか。私達も、ここにはなんとなくで来ただけ
なんですから。」
迷惑していますよアピールをしてみるが、どれだけ有効なのかは分からない。後
ろからつけていたのはそうだけれど、そこまで怒ったりすることもないだろうに。
「もう一度聞く。サイコロの化け物のことは本当に知らないのか。」
「あたし達は何も知りませんよ。」
同じ質問をしてくる必要がどこにあるのか分からなかったが、念には念を押して
ってところだろうか。ああもう嫌だなあ。さっさと話しを切り上げてくれればいい
のに、しつこくないか。
「では、これで失礼します。」
「俺たちを つけていた癖に そんな言い訳が 通じると思っているのか。」
別なプレイヤーが現れた。と思いきや。なんだ。姿た見えない。どこにいるのだ
ろうか。声だけが聞こえてきており、姿形は一切見えない。そういうスキルなのか
もしれない。これ、まずいな。さっきまで実は近づかれていたかもしれないって事
じゃないのか。透明になれるスキル持ちとか、実用性ありすぎだろう。
「あの、私達はこのゲームを始めたばかりで、何もよく分かってないんですよ。た
だそれだけの事なんですから、何か色々言われても困ります。」
これで切り返しておくか。だぁあもう本当に面倒くさいなあ。執着心がありそう
な連中はこれだから嫌なんだ。
「あー。そうやっていつも言い訳しているんですね。私達みたいな上級プレイヤー
の寄生をしているくせによく言いますね。ああ、ごめんなさい。そういうつもりが
なくても偶然そうなってしまうこともありますよね。自分たちの力で何かやるつも
りがないのにそういう所だけは一流なんですね。ああ、これは私の感想ですから。
あなた達は何も悪くないですから。」
また変な、今度は女性のプレイヤーだったが。ゴシックロリータな服を着ていた。
うう、こういうタイプも苦手だなあ。なんなんだよさっきから。これば罰ゲームと
でもいうのか。なんで私はこんな連中に絡まれなきゃいけないんだ。さっさと帰り
たいだけなのに、ああもう面倒くさすぎるうううう!
「そうです。私達は何も悪くないのでこれで失礼しますね。ではでは。」
「は? うんち。」
もう放っといて帰ろうと思ったら、高身長でドレッドヘアー、肌が赤黒いスーツ
姿の男に周りこまれた。逃がしてくれる気が無いと言いたいのだろうか。一体全体
どうしろと言うんだ。こちらを見下ろしてくるが、言いたいことがあるならさっさ
と言って欲しい。
「あぁ。リーダーがいないんでワイが代わりに相手するやで。あー。ワイの名前は
パーリー・クォーレーって言うんや。ええか。よく覚えておくんやで。」
中肉中背の男がの口調が、急にだいこんと同じような口調になった。この男が一
番危険そうに見えた。笑っているようで怒っているような、楽しそうで面倒くさそ
うな、よく分からない雰囲気を出し始めた。なんだか銃でも持っていそうなイメー
ジがした。
「お互いもう、用はないじゃないですか。まだ何かあるんですか?」
「後をつけておいて、よくもまぁいけしゃあしゃあと言いおる。ワイはな、この世
界の横綱みたいなもんやで。それなのになんやその態度は。間違った態度をとるん
やない。ええか。ワイこそはこのアノマス界の横綱や。そんな態度を改めるのが筋
やないか。」
ああうん。話が通じない系だった。私達に何を求めてきているのかがさっぱりだ。
結局何をどうしたいのかという説明が無いので、話が進まない。誤って欲しいのか
とも思ったが、最初に謝っているし、いつまでも引きずる事じゃないと思うのだが
何をどうしたいんだ。
「ええと。私達にどうしろと言うんですか?」
「自分で考える 脳味噌も 無いのか」
「おかしいです。人に迷惑をかけたときはどうすればいいのかって普通に考えたら
分かると思います。分かりますよね。ええ。それが分からないなんて、きっと頭が
おかしいんじゃないでしょうか。あっ、でも元々そうだったっていう可能性もあり
ますね。」
「ゴミはゴミに帰れ。」
いかん。これは、ストレスが溜まる。付き纏ったってことに関しては謝罪したし、
そもそも些細な事に対してここまで因縁をつけられる筋合いはない。だけど、ここ
で揉め事を起こすと後々かったるいことになるので戦いたくもない。だと言うのに
何を求めているかもわからない、それを私達で考えろとか言う意味不明な事を言い
だす。横暴以外の何物でもない。こんなのに関わっていたら、時間の無駄なのに、
それすら許そうとしない。
「それじゃあ、分かりませんよ。一体あたし達に何をして欲しいんですか? 言い
たい事もはっきり言わないで何がしたいんですか?」
エリーちゃんが怒気を含んだ声で、目の前の連中に聞く。ああ、エリーちゃんも結
構苛ついているな。何がしたいのか分からないことを要求されたらそりゃ困惑する
だけじゃなく怒りたくなるよね。
「普通は分かるんやで。何したらいいのか。誠意を見せるんやで。」
なんだその暴力団みたいな考え方。ここは金を出せと言ってきてるということか?
でも要求されていることが分からないしな。はっきり言わないんだったら、それこ
そ何か分からんって思ったけど、ここで分かった。
金銭関連の事を要求したら、アカウント停止なんかも考えられるから、自分たち
側からは何も要求しないようにしているってことなんじゃないだろうか。思い当た
るとしたらこれだ。だから、そういうことを言ってこないのだろう。
「はっきり言われないと分かりません。なので何を言われても困ります。」
毅然とした態度をとる。脅しには屈しない。というかこれって運営に通報案件なの
ではないだろうか。わざわざ囲んできてずっとごちゃごちゃと言い続けるし。これ
がこいつらのやり方なのかは分からないけれど、初心者みたいな私達相手にする態
度じゃないだろ。
「はー。駄目だ駄目。もういいや。」
「こんな プレイヤーが いるから ゲームが つまらなくなる」
「そうですね。もういいですこんな雑魚連中。ロウさんには悪いですけれど、もう
帰りましょう。」
「マジでうんち。」
「ゴミはやっぱりゴミだったな。」
「ああ、俺らも戻るか。っとその前に。」
「ぐっ!?」
「えっ!?」
見えない何かに殴られたような感覚が襲い掛かってきた。そして私とエリーちゃん
は後方数メートル程度吹っ飛ばされた。
「雑魚は身の程を知れよ。じゃあな。」
男がそう言うと、目の前が光り輝き、連中は消えていった。
…やれやれ、別に悔しいともなんとも思わないんだが、ただひたすらにうざい連中
だったなあ。