第269話「ガーゴイルとプレイヤー」
明日、追記します。
やっと登場させたかったプレイヤーを登場させました。一部の方はもしかしたら
これってもしかして!と気が付くかもしれません。
(実は、この小説のタイトルもそこが関係しています。)
8/18追記しました。
「ギギギギー!」
石像の悪魔、ガーゴイルの動きは機敏だった。しかしその攻撃をブッチは回避し
ている。三又の槍を前に出し突進してくるだけの単純な攻撃でありながらも高速の
ため容易くかわすのは難しいだろうに、それをやっぱりかわしている。サイコロの
目であらゆる方向が見えているとは言っていたけれど、どう考えてもおかしいと思
った。
だけど、そんなブッチもどこか余裕が無いように感じられている。何かに集中し
ているのかと思ったら、分かった。あれ、多分他の石像もみんな警戒している。と
いう事は本気で全部の石像相手に戦うつもりか。
「ここは、俺に任せて先に行っててくれ! あー! この台詞を言うタイミングが
来るとかラッキーだった! っと危ないなー喋ってんだからやめろっつーの!」
というものの、簡単にいなしてしまった。あれ、やっぱり余裕があるのか?
「よーし分かった。他にも出てきそうだけれど全部ブッチが相手するんだね!?」
「当たり前! こんな楽しい戦いは譲りたくない!!」
と言うわけなので、私達だけ先に行くことにした。戦闘狂のブッチは多分一人で大
丈夫というかすごい楽しそうなので邪魔しちゃ悪いし。
「じゃあみんな行こうか。」
「はーい。」
だけどそこに違和感があった。え。もしかして誰もブッチの事を心配していない
というのか。いやいや、誰か一人くらいブッチの事を気にかけて一緒に残ろうとか
言わないのかと思ったけれど、誰一人としてそのような事を言いだすものがいない
まま、私達は直進した。
「えーっと。ここから先は、こっちですね。」
「あれ? エリーちゃんは道が分かっているんだ?」
「しばらくいたので当然覚えましたよ。」
盗賊だし当然か。でも正面にはなんで今までいかなかったんだろう?
「なんでみんなは正面に行かなかったの?」
「それは、ねこますさんと一緒に行こうと思ったからですよ。なんとなく正面から
行くのってみんな一緒にがいいじゃないですか。でもまさか、そうやって行かない
事にしていた場所が、ねこますさんと一緒に来たタイミングでこんなことにになる
なんて。ブッチさんの予想通りでした。」
「ん? 何が予想通りだったの?」
「ねこますさんと出かけると強敵が出てくるから楽しいって言ってました。」
…私は強敵ホイホイじゃないっつーの! やれやれだ。でも今回はいいか。ずっと
雑魚と戦いまくって飽きていたんだろうし。たまにはスリリングと言うか燃える戦
いもしないと、ブッチも嫌になってくるだろうし。
「ねこますサマ。ムコウカラナニカキマス。」
「お。本当だ。敵かって。あ、プレイヤーか。いったん隠れよう。」
「そこに瓦礫があるのでそこにしましょうか。」
気配感知で6人ほど引っかかった。ただのプレイヤーのようだけれど、まさかこの
タイミングで遭遇するなんてなあ。
「あー。こんな所に凶悪なモンスターがいるのかよ。」
「いるから来ているんだろ馬鹿か低能。」
なんだか言い争いのような声が聞こえてくるが、こいつら全員仲間ってわけでもな
いんだろうか。
「ゴミが喋るな。」
「あ~? なんか言ったか低能。」
ガラの悪そうな連中だなあ。でもわざわざこんなところに来ているってことは凄腕
のプレイヤーって事になるんだろうか。気になるな。
「お前ら うるさいぞ 黙れ いい加減にしろ」
これは。きっと寄せ集めの仲間ってところだろう。
「お前ら全員うんち。」
「黙れつってんだろ。」
「私、これだからついて来たくなかったんですよ。どうしてこんな寄せ集めの中に
私が入らないといけなかったんでしょうか。ああ、別に私は自分が悪かったなんて
言うつもりはないですよ。この状態をなんとかしようなんて考えました。ですが、
結局の所こういう周りの連中が何かをやらかそうとしていることを止められるわけ
がないじゃないですか。だから仕方なくこうやって付き合って。」
「うんち。」
「君たちには 協調性が 足りない」
近づきたくない。心底近づきたくない。何なのあの連中は。絶対やべー連中だよ。
ああいうのと関わったら、絶対に面倒くさいことになるよ。うわー、なんなのあれ。
早くどっかいってくれないかなあ。というかもしかして私達に気づいていたりしな
いよね。だとしたら絶対やばいって。うー。怖い怖い。
「……。」
エリーちゃんも困惑した表情をしている。他の皆もそうだった。あんな仲の悪そう
な声が聞こえて来たらそりゃあね。でもどんな奴らなのか見て見たくなったなあ。
ここまでわざわざ来たみたいなことを言っていたから、きっと強いプレイヤーなん
だろう。ってあれもしかしてブッチを狙いに来ているのか? これってまずいんじ
ゃないだろうか。あいつらがここらで探索し終わった後ブッチと遭遇したら。6人
相手なんて、流石のブッチもやばいだろ。
となると…最悪、あいつらと戦うことになるのか? どうだろう。実はそこまで強
くなかったとか言うならまだしも。うう、ハラハラしてきたな。でも、なんとかす
ることはできそうだな。私だけ人間化しておいて、その間にみんなには逃げてもら
えれば、モンスターじゃなくてただのプレイヤーだったってことで、特に問題なく
おわるかもしれないし。
「エリーちゃん。みんな。とりあえず考えている事なんだけれど。」
一応私の考えは伝えておいた。あいつらの中に気配感知だとか持っている奴がいる
事も考えられるし、私達の存在に気が付いているかもしれない。だとしたら、どこ
かのタイミングで接触を図ってきそうだし、ここは、なんとかやっていくしかない。
私が気配感知を持っているので偶然遭遇するということはないと思うし。
「ブッチさんが暴れ過ぎたからきっと話題になってしまったんでしょうね。」
多分そういうことだろうが、それだけのことで、強いプレイヤーが派遣されてき
たということなんだろうか。あるいは中堅どころか分からないけれど、やたらと自
信に満ちた声だっただけに、強いプレイヤーだと思うんだよね。威勢だけの場合も
ありそうだけれど。
「人間化」
また窮屈な姿になるのもなんだけれど、今のうちに変わっておいたほうがいいだろ
う。ああ、こういう隠密行動っていうか、こそこそするのって私は、あんまり得意
じゃないんだよね。そういうゲームはいつか見つかるかもしれないみたいな緊張感
で常にハラハラしていたし。
「これでいつでも準備は出来たし。誰か来ても多分、なんとかなる。」
なんとかならないのはブッチだろう。というかさっさとガーゴイル連中なんて片付
けて合流して欲しい。
「…エリーちゃん達はブッチの所に向かってもらえるかな?」
「一人でなんとかするつもりですか?」
「それしか方法が無い。」
「私も着替えれば人間っぽく見えますよ。なのでねずおちゃん達はブッチさんの所
に行って貰って、私達でなんとかしましょう。」
いや、だめだな。私やエリーちゃんがいない状況のたけのこ達が、他のプレイヤー
達と遭遇するかもしれないというのもある。あいつらがバラバラに動いてしまうか
もしれないし。今からすぐにブッチ達の所に戻ったとしても、数で押されてしまっ
たらどうしようもない。
「では、ねこます様。我が皆を統率します。我なら人間の姿ですし。」
「あ、そういえばそうだった。」
サンショウがいたじゃないか。これならなんとなくモンスター使いって感じがしな
いでもないし。よし。そうするか。
「で、エリーちゃんはってもう着替え終わっている!? 早っ!」
「え? ああ装備変更ですし簡単にできますよ。これ、似合ってます?」
頭にキャスケットを被りに、伊達眼鏡に、シャツの上からサロペットか。どことな
くボーイッシュというような感じが漂う気がする。うんまぁ可愛いな。
「じゃあサンショウ。ブッチの所に行って。事情も話してきてね。」
「かしこまりました。では皆さん行くとしましょう。」
たけのこ達を先導するサンショウだった。うう、なんか私達プレイヤーがいない状
態にさせるのが少々不安が残ってしまうけれど、こういうことは今後もある事だし
覚悟は決めておかないといけないよなあ。いつも覚悟しているって思っていてもや
っぱりこう不安になるときがあるなあってこれ覚悟できていないってことか。
「ねこますさん。私達はあいつらの動きを探りましょうか。」
「うん。気配感知で一応位置は確認できるから大丈夫だね。あ、ところでエリーち
ゃん。」
「はい?」
「私にはあの声の連中が強そうに感じたんだけれど、エリーちゃんはどう?」
「なんだか威圧的だったというかそういう重圧感みたいなのを感じました。なんだ
か強そうな雰囲気があったような気がします。あれは絶対まずいですよ。」
良かった。私の誤解だったらどうしようかと思ったけれど、強そうっていうのは
分かっていた事だったんだ。
「はぁ、緊張するなあ。」
あ、でも私達に声をかけてくるとかそういうのはないんじゃないだろうか。全く関
わってきたこともない他のプレイヤーにいきなり声掛けしてくるあんてことは、な
い気もするし。私だって知らないプレイヤーに突然こんにちはーとか声掛けはしな
い。昔のRPGみたいに、ここはなんたらの村だよみたいなノリもなさそうだし。こ
れはひょっとして深く考えすぎだったんじゃないだろうか。
「あいつら、気配感知はなさそうだから、このまま後ろから近づいていこう。」
「あっ。それ知っています。距離を離れ過ぎると逆に位置が分からなくなって危な
いモンスターの動きですよね。そういうのには慣れているので頑張りますね。」
その通りだ。つかず離れずというのが求められる時が結構ある。だけど、まさか
プレイヤー相手にすることになるとは思わなかった。まあ気づかれたところで何か
問題になるってわけじゃなさそうだしいいか。最悪ここで死ぬかもしれないけれど、
それはしょうがないことだと割り切るしかないし。
「一応ブッチにもメッセージを送っておくか。」
「私も送っておきますね。」
二人で連絡をしておくことにした。ブッチもガーゴイル三匹と戦って楽しんでい
るのかもしれないけれど、こっちはこっちで大変になっていると伝えておかないと。
だけど一番怖いのは、あの6人と一人で戦うとか言われたら場合だな。ブッチなら
そういいかねないし。
勝てるかどうかも分からない戦いを仕掛けそうだしなあ。まぁ相手の出方次第っ
てことにもなると思うけれど、ブッチがここらを荒らしていたってことがばれたら
それこそ集中攻撃されそうだなあ。ああ嫌だ嫌だ。早くこんな状況終わらせたいよ。