第268話「さぁ帰ろうか」
またしても文字数が少ないので明日加筆します…。
8/17加筆しました。
「神殿の転移陣から樹海に戻って、樹海から海底洞窟の出口まで戻って、海底洞窟
の鍵で扉を開けて、そこから更に湿地帯に戻って祠に行ってたけのこ森に戻る。う
ん、面倒くさいな!」
「よく覚えていたね! 偉い!」
「あたし、ここ最近の事なのに祠の事を言われて今思い出しました。」
忘れちゃうよね。私も覚えている自信がなかったけれど、なんとか覚えていた。
こんな面倒くさい手順を踏まなきゃ、この人間の大陸まで来れないとかいうのは、
絶対におかしい。おかしいけれど、その結果としてお金儲けができるのならば納得
出来る話だ。
「転移できるスキルとかあればいいんだけどなあ。」
「ねこます様なら、錬金術で転移する道具が作れるようになるのではないですか。」
ううっ。そんな便利な道具が作れたらいいんだろうけれど、いつになることだろう
か。遠い未来、例えば<アノニマスターオンライン>のサービスが終了する頃だっ
たりしたら嫌だなあ。そういうのは早く覚えたいんだけどなあ。
「そんなのなくてええやで! そんなのできたらワイの出番が減るやで!」
「だいこん。キサマガタタカエルヨウニナレバイイダケダロウ。」
「嫌や! ワイは基本乗り物枠やねん! わんころ、お前みたいな奴と一緒にされ
たら困るやで!」
「…コレハ、キタエナオスヒツヨウガアリソウダナ。」
「わんころ。ワイは姉御から正式に戦力外通告がでとるんやで。無理は言ったらい
けないんやで!?」
「え? そんな事言ってないけど?」
嘘はよくないのではっきりと否定してやるとだいこんが固まった。
「だいこん。ウソマデハクトハ、ミソコナッタゾ。モトモトミソコナッテイタガ。」
「あ、姉御!?」
なんだその目をぱちぱちさせているのは。そんなことされても駄目だぞ。
「ほら、あの時、あの時やないか! な? な? もう分かってるンゴねえ?」
「はいはい。嘘は良いから。」
「な、なんでやー!? そこは口裏を合わせておく流れやないか!? って何やわ
んころー!?」
「モリニカエッタラキタエナオス、ワカッタナ!?」
「ぐ。分かったやで。」
なんていう、いつものくだらないやり取りをしているのも時間が勿体ないと思った
ので、帰り道について確認することにした。
「そういえば神殿にはめぼしいものは無かったの?」
「ああ、なんかこんなのがあったよ。」
なんてブッチが言って取り出したものは、髑髏の髪飾りだった。
「何これ。」
「死人の髪飾りとかって名前のアイテムらしい。俺は装備できないからどんななの
か分からないけど、なんかかっけーじゃん?」
分かる。いや分からないけれど、男がこういうのを好きになる傾向にある事は良
く知っている。つまりこれは、そういう趣味の人むけなのだろうが、そもそも顔が
サイコロなブッチには装備することができなかったのだろう。
「これあげるよ。」
「え? いや私が貰うなんて悪いよ。エリーちゃんは…?」
「要りませんので、是非ともねこますさんが貰ってあげてください。」
うわ、嫌そうな顔をしている。ちなみに私は般若レディで仮面は被っているけれど
長髪なので、着ける余地はある。だけど、名前が嫌なんだけど。何だよ死人の髪飾
りって。呪われたりしないのだろうか。
「なんか怖いチウ。」
「何やら面妖な気配が漏れているような気がします。」
ほら、ねずおもくろごまもビビっているよ。これは何かやばいんじゃない?
「ねっこちゃんなら、呪われても平気だし、大丈夫だと思うんだよね。」
「確かに、ねこます様なら、そんなのもろともしないでしょう。」
「ほら、サンショウもそういってることだしさ、折角だし着けてみてよ。」
うわぁ、なんだこいつら。こんな髑髏の髪飾りをつけろとか正気か。でもここは勢
いでつけてみるとするか。意外とこういうのが有効なスキルを持っていたりするか
もしれないし。
「じゃあ試しにつけてみるよ。」
メッセージ:死人の髪飾りを装備したことで「呪い耐性」と「邪気」のスキルを使
えるようになりました。
「どう? 何か使えるようになった?」
「呪い耐性と邪気だって。邪気って何だろ。」
「うああああああ!? まじかっけえ! 何だよ邪気って! まじぱねえ! ねっ
こちゃん見せてよ!」
いい加減戻りたいんだけどなあ。やれやれ。
「念のためやってみるか。邪気!」
スキルを使っうと、私の周囲に、漆黒のオーラのようなものが出てきた。何だろう
これ。どんな効果があるんだろうか。
「うぉおお。まじかっけぇ。いいなぁ。」
「なんかやばそうなオーラがでとるけど大丈夫なんか?」
「まぁこれといって私には何の影響もないけど。」
「ねこます様。それは恐らく我々以外にねこます様に敵対してきた相手の体力、所
謂、生命力を奪う力ですね。といっても、そこまで強い者ではなさそうですが。」
「つまり、邪気を纏えば、徐々に相手の体力を削っていけるってことか。どこまで
使えるのか分からないけれど、なかなかいいかもしれないね。」
デザインがちょっとアレだけれど、スキルが使えそうなのがいいな。特に呪い耐性
っていうのが。どんな呪いがあるのか分からないけれど、あるにこしたことはない。
「あー。とりあえずもうそろそろ、神殿に行こうか。何か話したいことがあれば、
今のうちにどうぞ。」
「あ!?」
ブッチが突然声を上げた。な、なんだ、重要な事を忘れていたとか言うんじゃない
だろうな。ちょっと不穏な雰囲気でてるぞ。
「何、何かまずいこと?」
「うん。」
「早く言いなよ。」
「トイレ行ってくるの忘れた!!!」
「さっさと行ってこい!!!」
はぁ。やれやれ。ブッチは平常運転だなあ。
「神殿かぁ。私はあまりいなかったけれど、エリーちゃん達みんなはしばらくいた
んだもんね。」
「大体ブッチさんが暴れ回っていたので、私はお宝探しに夢中になってました。」
「そうなんだ。何かいいものはあったの?」
「全然なかったんですよ。まぁあの町から近い位置にありますし、なくて当然だと
は思いますけど。でも、宝箱的なものってこういうゲームだと復活してもおかしく
ないと思うんですよね。」
言われてみれば確かにそうだ。誰かがアイテムをとってしまって、その先ずっと入
手ができないっていうのは、大多数の人がプレイするオンラインゲームでは問題に
なるだろう。一部の人だけが入手できる限定品というのも当然あるだろうが、こう
いう場所なら誰もが手に入ってもいいように時間経過で復活するなんてことがあっ
てもおかしくないと思うな。
「となると、一定周期で復活するようになっているとかなのかもね。」
「そういうのはあたし達がいるときになって欲しかったです。あ、ちなみにその死
人の髪飾りは壁に引っかかっていたんですよ。」
「壁に…。えぇ…。よくそれを見つけたね。」
「あたしじゃなくてブッチさんが見つけたんです。これかっこいいじゃんって。」
そんなに髑髏が好きか。やれやれ。
「お待たせー!」
「おお、お帰り。それじゃあ行こうか。」
「うんうん! 雑魚神殿はもう飽きたからさっさと樹海とかに行こう!」
「雑魚神殿て…。」
「ブッチ殿は神殿内ではもう敵なしでござる。」
プレイヤーにも敵なしって状態なのかよく分からないけれど、おかしな強さだよな
あ。サイコロプスって種族もそれに拍車をかけているのかもしれないけれど。どう
考えてもおかしいよ。
「洞窟に引き籠っていた時のことも思い出してしまうよ。」
「あれは閉じ込められていたようなものだったじゃん。あれ、最初の頃は敵と戦っ
たりって結構してたんだっけ?」
「そりゃもう八つ当たり気味にほぼ全部の敵を倒していたよ。」
敵を全滅させられれば出口が出てくるゲームもあるから当然だろうけれどブッチが
聞くとそれを楽しんでやっていたイメージしか出てこないな。
「ああ、そうだ。折角だし正面から行こうか。」
「え? 正面?」
「うん。ねっこちゃんや俺らが出てきたところは裏口みたいなところだったけれど
正面からも入れるんだよね。そんな人が多いようなところでもなかったし、最近は
俺が暴れていたからか強いプレイヤーとかも見なくなったし、多分のんびりと行け
ると思うよ。」
なんか不安になってきたなあ。ここらで暴れていたっていうのはどの程度の事な
のか分からないし、周りから恨みを買っていたりするんじゃないだろうか。そのう
ち復讐に現れたりする奴とかが出てきて、私とかも襲われたらたまったもんじゃな
い気がするけれど、そういうのは全部ブッチに返り討ちにしてもらうしかないな。
「それじゃあ俺についてきて。」
というわけでブッチ主導の下に私達は動くことになり、神殿の正面から入ることに
なった。そういえば、これって別に悪い事でも何でもないのに、どこか悪い気がし
てくるようになってしまっているな。そうだよ。別に日陰で生きなきゃいけない分
けでもないし、堂々としてていいよね!
こうして、ブッチの後ろからついていくと、ついに正面にまでたどり着いたのだ
が、装飾がとても意外なものだった。
「あれ、悪魔っぽくない?」
「おー。ここはやっぱり邪神か何かを祀っている場所だったのかな。」
なんかおどろおどろしいというか悪魔の石象みたいなのがあるし、骸骨っぽいのが
並んでいるし、なんなんだこれ。
「はぁ。こんな強そうな悪魔とか出てこなかったよ。まったく、ここの奴らは話に
ならなかったってのにさあ。こんな奴がでてきたならもうちょっと面白くなり…。」
突然、破裂音が響き渡った。何事かと思ったその瞬間にブッチの胸元に三又の槍が
刺さっていた。かと思えば刺さってはいない。すんでのところでブッチがその槍の
先の方を掴んでいたからだ。
「なってきたね。面白く。まさか正面にこんな面白い奴がいるとは思わなかった。
アッハッハハハハハハハハ! ここは俺が貰うからね! ねっこちゃん!」
三又の槍を突きつけてきたのは、石像の悪魔だった。これは、ガーゴイルって奴か。
定番なモンスターって気がするけれど、割と強そうな気がする。ってかこいつの相
手をするっていったって。石像、あと2個あるんだけど。あれ動いたりしないよね。
いや、動いたらちゃんと他の奴とも同時に戦ってくれるのかな?