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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第264話「般若レディとサイコロプス」

「それで! そのジャガーコートってのはどこにいるのねっこちゃん!?」

 案の定、沈黙を破ってブッチががっついてきた。私も所在は知らないので、そん

ないきなり戦えるわけじゃないんだけどな。

「密林にいた時に会ったんだけど、その時はグローリーアントが先に目をつけてい

たってことで帰って言ったんだよ。でも、いずれ戦おうって言ってたから、そのう

ち決着をつけに来るはずだよ。」

「今すぐ戦いたいんだけど!」

「それを私に言われても困るって。向こうのタイミングもあるし、っていうかまた

あのグローリーアントレベルの敵だよ! 勝つ自信はあるの!?」

「そりゃあもう。結構強くなったなあって気がするんだよね。ああ、ステータスが

どうとかじゃなくて体の動かし方が前よりも分かってきたって感じでさ。だから早

く強い敵と戦いたくてさぁ。」


 戦闘狂はこれだから…なんて思っていたけれどこれはこれで頼もしいなあ。また

しても強敵と戦わなきゃいけないって思うと、かなり不安だったし。もしもジャガ

ーちゃんとブッチが一対一で戦えるくらいになっているのだとしたら、すごい安心

出来る。

「必ず戦う機会は来るよ。クロウニンって、魔者の位置が分かるのと、衝動的に魔

者を倒そうとするらしいんだよね。あーこれはジャガーちゃんに聞いたんだけど。」

「ちゃん付けってどういうことですかねこますさん?」

おっと、今度はエリーちゃんか。

「見た目はそのまんまジャガーというか黒いジャガーだったから、なんかこうちゃ

ん付けしたくなったのでそう呼んでたんだよ。」

「マスター。随分と親しげに話していたようですが、それは何故ですか?」

 ここで、くろごまから詰め寄られた。あっれー? なんだか悪いことをしたよう

な気持ちになってくるなあ。倒したら仲間にするって約束をしたことは話さない方

がいいのかなあ?


「えーとね、魔者って言う存在を消したくなる衝動があるだけで、それが無ければ

別に戦いたいとかは思わないみたいなんだよね。で、この話が出来たのも、グロー

リーアントが先に手を出したからなんだってさ。クロウニンの一匹が魔者に手を出

している時は、他の苦労人は手を出しちゃいけないってルールがあるようで。」


「待ってよねっこちゃん。だったらさっきの、えーとゴーストロガノフっていうの

はどうなるのさ。あいつは一体何なの?」

というツッコミが来るのは分かっていたんだけれど。

「知らないよ。ストーカーされてむしゃくしてたから、何がどうなっていたのか考

えられなかったし。」

 何が目的だったのかもいまいちよく分かっていないし、今後戦うことになるのか

どうかも分かっていない。突然襲い掛かってきたりするかもしれないけれど、どう

なるんだろう。


「ねこますサマ。コンドハ、ゴーストロガノフニ、メヲツケラレタトイウコトデシ

ョウカ?」

「え? あ。ん?」

あれ、もしかすると、ゴーストロガノフと出会っちゃったから、ジャガーちゃんと

は、またしても戦えなくなったとかいう話になってたりするのか? いや、でもあ

いつは戦うとかなんとかは言ってなかったし、お願いがどうのこうの言っていただ

けで、え。そうだとしたら面倒な事になった気がするぞ。


「ねっこちゃん。つまり、今回もジャガーコートよりも先にゴーストロガノフがね

っこちゃんを狙ったか何かしたせいで、結局ジャガーコートは襲い掛かってこない

事になるんじゃないの?」

 なんということだ。あの野郎。最悪な結果を残していきやがった。でも、だから

と言ってあいつを探し出して倒すなんてことも難しそうだし。ああ。

「もしかしたらそうかも。という事は今のところ強敵と戦う機会はなさそうだよ。」

「うあああああああ! やだやだぁああ! 戦いたいぃい! なんか強そうな敵と

戦いたいぃい! ねっこちゃんなんとかしてー。あーあー。」

地団駄を踏むブッチだった。というか駄々をこねているだけか。いや、ここまで、

取り乱すのは雑魚狩りばかりやっていたせいだろうな。でもなんとかするにしたっ

てそんな強そうな奴…は。あ。


「毒狸の母親。」

 しまった。思わず声に出してしまった。こいつは私が倒そうとしている相手なの

でここでブッチに狙われるわけにはいかなかったんだけれど、ブッチは聞き逃さな

かった。

「何、ねっこちゃん。今のは? 強い敵の話? ねえねえ教えて!?」

「いやその、私が倒したいって思っている敵の話でね。前にぼろくそとまではいか

ないんだけれど、全然勝てる気がしなかった敵で。」

「えー!? 何それ面白そうじゃん! 俺が戦いたいんだけど!」

「え、だ、だめぇ! 私も戦いたいし! あいつだけは何としても私が倒したいん

だよっ!」

 獲物の取り合いが始まってしまった。これはどうすればいいというんだ。困った

事になってしまったぞ。変な事で言い争いになってしまったな。


「えぇ! じゃあどうすんの! 俺のこの燃え滾る想いは! ねっこちゃんが何と

かしてくれないと困るんだけど!」

「あーもう! そんなに言うなら私が戦ってやるよ!」


そして、またしても全員が沈黙する。あれ、私何かおかしなこと言ったか?


「え。まさか、ねっこちゃんが、実践訓練をしてくれるって言うの?」

「あ、いやあ、私がブッチと訓練したところで相手にならないじゃん。」

「つまり、俺なんか簡単に倒せるってことで?」

「そんなこと言ってないし! 私がブッチの相手になんかならないって事だよ!」

「いやぁ? 実は俺より上だと思っているんだよね? 一捻りって?」

「思ってないよ!?」

これ、このわざとらしい流れは。こ、こいつぅ。ここで仲間割れイベントをやるつ

もりだな! こういうチームで一度は言い争いになる定番のイベント! まさかこ

こでやるとは思わなかったけれど、私がどう取り繕うがその流れにするつもりだ。

でも、それで私と戦うとか言うなよって私から言ってしまったじゃないか!?


「やっぱりここか、一度戦ってみないと分からないよね。ようしねっこちゃん。今

から決めようぜ、どちらが上なのかを!」

「ブッチの方が上だろ! ってあーもう収集が付かない! もういいや。やってや

るよ!」

 どうしてこうなってしまったのかは分からないが、私とブッチが戦うことになっ

てしまった。というのに何か他の皆は、全然不安そうじゃないし。どういうことな

のこれは。もうちょっと、私が相手にならなそうとか同情してくれてもいいんじゃ

ないのかな!? 私もどうせわざと負ければいいだろうという考えはないけれど、

それにしたって、か弱い般若レディを応援してくれてもいいじゃないかあ。


「人間化解除!」

 般若レディの姿に戻る。あぁなんかこれすっきりするな。ふぅ。やっぱりこの姿

一番いいなあ。


「いやぁ。まさかねっこちゃんと戦える日が来るなんて思わなかったなあ。」

なんでそんなに嬉しそうなんだこいつは。


「えーっと、姉御にブッチニキ。マジで戦うんか? それならワイら、ここから離

れていたほうがええんちゃうんかな?」

 私達は、結構広い所にいるのだが、近くにいたら確かに巻き添えをくらわせてし

まいそうだ。離れていてもらうことにするか。

「うん。そうして貰えるといいかな。」

「分かったで。ほな、みんなワイの背中に乗るんやで! ちょっと高台のあたりま

で移動するやでー!」


というわけで、みんなを連れて移動していった。みんな凄い素直に従って移動して

いったな!? 仲間同士で戦いなんてダメです! みたいな学級委員タイプは誰も

いなかったという事か! それと私が負けるのがそんなに楽しみなのか!? 実は

みんな日頃から私に鬱憤が溜まっていたというわけか!?


「くそー。だからといって容易く負けてやるわけにはいかないんだよこっちは。」

「おぉ! ねっこちゃんやる気だしているね。いいねぇ! そうこなくちゃ。こっ

ちもマジで行くからよろしくな!」

 本気で嬉しそうにしているブッチだった。なんでそんなに嬉しそうなんだ。私な

んか凄く弱いっていうのにおかしいだろ。


「それで、私はこの鎌とか色々使うけどいいのかな?」

「勿論いいに決まってるよ! やれることなんでもやっていいからね!」

「じゃあそっちも何でもいいからね。」

「おうよ!」

 訓練というか実戦そのものじゃないか。はぁ、まさか本当にブッチと戦う事にな

るなんてなあ。こんな2メートル以上の巨体で、頭がサイコロで死角がほぼなくて、

筋肉質な恐ろしい奴を相手にしなきゃいけないなんて、恐ろしすぎるっての。

 それに、私は分かっている。間違いなく、何かのゲームでトッププレイヤーだっ

たであろう事に。そんな奴と今現在相対しているってどんな状況だよ。心臓に悪す

ぎる。勝てるかどうか分からない戦い以前に、ほぼ負けが確定しているっていうの

に、それと戦わなきゃいけないとか、絶対ふざけてる!


「ふぅ。緊張するなあ。」

「こっちも今、武者震いしているよ。強敵が相手だとねぇ。」

 笑えない冗談はよしてくれ。私をボコボコにしたいだけじゃないか。あぁもうい

いや。まずは何も考えず。考えず。いきなり攻撃でもするか。


「真空波!!」

私は、戦いの合図などを待たずに、鎌を振り上げ、ブッチに向けて真空波を放った。

「っとぉ! 奇襲を狙ってくるとは思っていたよ!」

軽くかわしてこちらに向かってくるブッチ。ああ! 身内だと私の行動が読まれて

しまうのが分が悪過ぎだろ! これはまずいぞ!


「狐火!」

私は、口から狐火を吐く。真正面から向かってくるブッチはこれをかわ、さないだと

おお!? ダメージ覚悟でそのまま攻撃してくるって寸法か! ちっくしょう!

「甘いよねっこちゃああああん!」

思いっきり右手を振り上げて、張り手を仕掛けてきた! が、ここで咄嗟に右手の鎌

を前に突き出し左手のブリザードイーグルの盾でガード体制をとる。これはふんばり

どころだ!

「おりゃあああ!」

「浮遊!」

「ぬぐっ!?」

よっしゃ! ブッチも多少は態勢を崩した。これなら威力は軽減され、ぐうううう!

かなりの衝撃が私に襲い掛かってきたっぞっ!? かなり後方まで転がっていく私だ

った。こりゃきつい! きつすぎる! なんなんだ今の威力は! 狡い! 薬草をぱ

くりとな!


「はっはっは! やっぱりやるねえ! ねっこちゃん!」

そのまま、突進してくるブッチだった。もう! この戦いが終わったら見てろよ!

か弱い般若レディをよくもかわいがりしてくれたなってことで文句を言ってやる!

やらせ感のある仲間割れですが、私もよくこういう仲間割れをしたものでした。

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