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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
261/473

第261話「怪しい男」

明日修正します!(いつもの流れです)

深夜になってしまった。<アノニマスターオンライン>上ではってことなのだが、

長時間プレイしている状態なので、私もログアウトしたいところだ。今、何をやっ

ているのかというと、まだ兜を探していた。

「なぜだぁ。兜が見つからないィ。なんでだぁ。どうしてだぁ。」

 こんな大きい市場なんだから、ブッチがかぶれるサイズの和風の兜なんて簡単に

あってもいいじゃないか。おかしいだろ。そしてこの商業区を深夜になるまでも探

し歩き回っているはずなのだが、まだ全然周りきれていない。つまり私が見て回っ

ているは、全て新店舗だけだ。


「だいこん。起きて、私を可哀そうだとか同情するんだ。」

「起きてるやで。姉御、本当にもうやめたほうがええんとちゃうか。若い女がこん

な夜遅くに出歩くもんじゃないやで。」

「大丈夫。兜を手に入れたらすぐに帰るよ。というか元々私は野宿とかしていたじ

ゃないかーもうだいこんってば。」

「まあそうなんやけれど、ここは人間がいっぱいおるし、何が起こるかさっぱり分

からんし、警戒しておくにこしたことはないで。」

 金目の物を奪おうとしてくる不届き者やスリがいたら断じて許さん。私のような

か弱い般若レディを狙ってきてやったのなら、どう考えても許さないぞ。


「なぁ君、こんな遅くにどうしたの?」

「おい貴様、ねこますサンに話しかけるな。死にたいか!!?」

サンショウが、話しかけてきた男の喉に杖を突きつけた。

「おっとっと。いやぁ。別に何かしようってことじゃないんだ。何かお探しの物が

あれば、教えてやろうかなと思っただけだ。」

「お前のような奴は下心を持って近づいてくる人間の屑だと言うのを我は知ってい

るぞ! 正体を現せこの屑人間!」

「サンショウ。辞めて。ここで問題を起こせば出入り禁止にもなりかけないし。」

 現実でもそういうことがあるくらいなのだから、ゲーム内であっても、それと同

じようなことが起こってもおかしくはない。だからこそ、注意する必要がある。後

はNPCなら大丈夫だとは思うが、あまりに過激な発言をしても運営側から注意を促さ

れたりすることもあるだろうから、失言に注意しないといけない。


「と、いうらしいので。杖を下ろしてくれると助かるなあ?」

私の方をちらりと見てきた男。眼鏡をかけて真面目そうな印象を受けるが、言葉遣

いはどこか軽薄そうな感じだ。ああ、こういうのが偉い奴だったりする設定がある

んだよね。

「サンショウ、おろしてあげて。」

「はい。」

サンショウは突きつけていた杖を下す。すると眼鏡の男は話し始めた。


「それで何をお探しなのかな?」

「ここのお偉いさんですよね? いや違っててもいいです。なんか一番偉そうな人

っぽいですよね。お忍びですか? カイトリマウスの回し者ですか?」

取引を持ち込んで来ようとしているのが丸わかりだった。私が薬草を大量に持って

いるとか、ハーツのリュックを背負っているとかはもう分かっていそうだ。ん。よ

く見るとツリ目というか狐目だな。こういうのは詐欺師タイプだと決まっている。

この商人野郎め。


「いえいえ。私は偉い者じゃないですよ。」

「私も取引に期待できそうにないと思いますのでさようなら。」

というわけで、逃げ出そうとしたのだが、この眼鏡の男がささっと回り込んできた。

回り込んできたので偶然を装ってそのまま前方向に蹴りを入れてみた。

「ぐ?」

「びくともしてないですね。強いのが丸わかりじゃないですか。私にはそういうの

通用しないんでよろしくお願いしますね。」

私の能力を計ろうとしているのが見え見えだ。


「ははは。面白い人ですねえ。」

「でたーっ! 常套句、面白い人ですねえ。何が面白いだ。嘘をつくな。面白いと

本気で思っているのなら金でもくれ!」

あ、声に出してしまった。まぁいいか。はっきり言ったほうがすっきりするし。

「私は、あなたが望む商品をお教えてきますよ。どうします?」

「無理だよ。私が欲しいと思っている商品は絶対に提示できないよ。私には。

「ほう、どうしてですかな?」

「欲しい物を教えるわけないし。」


 誰かに私の欲しい物がばれて、それが値上がりしたらどうするというのだ。そん

な状態は絶対に許せん。

「あーあぁ折角耳よりの情報をお持ち致しましたのに、残念ですなあ。」

「残念なのは頭なんじゃ? あなたの?」

頭に指をさす。これで怒るかどうかの確認だな。先に手を出した奴が悪いという事

になっているので、こいつが私に攻撃してくれたら楽になるんだが。


「あなたは辛辣な言葉ばかり投げかけてきますね。」

「深夜だし。」

こんな時間に出歩いている奴に丁寧な対応をするわけがない。そして、見るからに

怪しい奴と話なんかしたくないのだ。


「あなたが何を求めているのか。ずばり、武者の兜でしょう!?」

「いいえ。違います。」

どうせ兜、兜って散々口走っていたところを聞いたのだろう。それを知ってそれっ

ぽい話をしてきているだけだろう。この手の奴は面倒くさいというかイライラさせ

られるのでさっさと消えて欲しい。


「おや? いいのですか? 私はその情報を知っているのですが?」

「うん。それじゃさよなら。」

仕事中にかかってくる営業の電話のような奴だし、このまま終わらせたい。


「ま、待ってください。待ってください。いえいえ、私も悪かったです。いえね、

是非ともあなたには武者の兜を買っていただきたいと思いましてねえ。お安くいた

しますよ?」

「…。」

 無視を決め込むことにした。ついでに、なんでこんなに必死になって売り込もう

としてきているのかを考える。こいつが持っている武者の兜とやらが呪われていて

困っているから。それともこいつ自信が武者の兜の精霊か何かで、買ってくれと営

業しにきている。後は、あーもう、どうでもいい。こういう、いかにも自分は重要

なキャラクターなんですよと言ってくるのが嫌いだからこうしているだけなのに。


「本当は、欲しいですよねえ。分かりますよ。ええ、分かりますとも。」

「おい、いい加減にしろ。ねこますサンを困らせるな。」

サンショウが眼鏡の男に再び杖を喉元につきつけた。

「おっとっと。ええ。ええ。分かっておりますとも。」

 両手を上げて降参のポーズをとるが、諦めてはいないらしい。ちなみに私もこい

つから買わないことを諦めていない。いや、絶対に諦めるつもりはない。私はこう

いう押し売りが大嫌いなんだ。

 

「もういいや。走るか。」

「ねこますサン?」

私は、夜の商業区内を走り出した。夜とはいえ、結構な人だかりができている。し

かしこういう押し売りをなんとかするにはこれが有効だった。サンショウならきっ

と私のいる場所が分かると思うし、そこは心配しない。通行人にぶつかったりする

けれど、謝罪しながら走る。もう、どうしてこうなったんだ。私は、兜が欲しいだ

けなのになあ。いつもそうだが、目的があって動いているのに、それからどんどん

それていってしまう。


「挙句の果てに邪魔者まで出現するのが手に負えないんだよなあ。」

「呼びましたか?」

「呪いの類なのか知らないけれど、そういう面倒くさいのが嫌いなんだよ。」

 走り出して結構な距離を稼いだはずなのに眼鏡の男の声が聞こえてきた。まぁこ

ういう設定はよくあるからいいんだけれどね。既に私が呪われたか何かってことな

んだろうなあ。でもこいつは絶対に嫌だな。


「えいっ。」

「ふがっ!?」

人目につかないところまで走ったので、眼鏡の男の顔面を思いっきり殴ってみた。あ、

これはすっきりするなあ。

「まぁ私の話を聞きなさい。私はお前と話したいことはないんだ。おしまい。」

悶絶している男にそう告げる。まぁいい加減うるさかったのでこのくらいやってみた

んだ。


「くぅー。酷いことをなさる。」

「他を当たれって言ってるんだよ。オーケイ。」

「いえ、いえ、あなたが言いたいことは分かります。ですが、私も切羽詰まっており

ましてね。このままだと、この国が滅ぶかもしれないんですよ。」

「おお、いいことじゃん。」

「え。ええ!? あなたまさか、国家転覆でも狙おうとしていたんですか?」

「いや。」

「で。あれば、この国の危機に立ち向かおうじゃありませんか。」

「ああ、そういうのは間に合ってるんで。あともっと強そうな連中が山ほどいると思

うのでよろしく。」

そういって立ち去る私だったのに、またしても目の前に現れた。ワープか。私に目印

か何かを付けて、ワープできるようにしているんだな。これは厄介だな。でも、これ

もずっと永続できるわけじゃないだろう。そのうち使えなくなると思う。


「あなたが適任だと思われます。」

「私は嫌だと思ったことは絶対にやらないんだよね。それがどれだけの事であっても

ね。それを私にさせようとしてきても無駄。何度言おうが無駄。」

 折れるつもりはない。なぜ折れないのかというと、私はいつもこういう厄介事を引

き受けるはめになるキャラクターを沢山見てきたから。どうしてそこで断らないんだ

と散々思ってきた。そこで話を断ればいいのに、そのせいで問題が発生していき、ど

んどん巻き込まれていくというのが嫌だった。


「その決意。感服致しますが、よろしいのですか? あなたの先生も困る事なんです

よ?」

「先生なら自分でなんとかするでしょ。」

「そうもいきませんよ。彼女は今、囚われの身なんですから。」

「先生なら自分でなんとかするでしょ。」

「は?」

「先生なら自分でなんとかするでしょ。」

なんか眼鏡の男が呆気にとられたような顔をしている。なんなんだこいつ。


「あのぉ。あなたには仲間意識とかそういうのはないんですか?」

「え、あるよ?」

「だったら、もっと心配してはどうですか?」

「お前も、自分の命を心配しなよ。」

「これは一本とられましたな。あはは。」

はぁ、うんざりしてきた。ブッチならまだ分かるんだけれど、こいつは何がしたいの

かさっぱり分からないし。なんでこんなことになっているんだろうなぁ。


「ふぅ。私はですね。あなたの正体に気が付いているのですよ。」

「すごい! なんてすごいんだ! そんなすごい力があるなら、後は一人で勝手にや

ってくれるね! じゃああばよっ!」

「え? あ!?」


私はログアウトした。いい加減付き合いきれなくなった。こういう困りごとが発生す

るなら運営に苦情でも言うかくらいまで考えたが、それは後日にしようと思った。今

日は長時間プレイしたし、続きはまた明日にしようと思った。

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