第259話「ハーツのリュック」
いつも通り修正しますので気長にお待ちくださいorz
「リュックは出来上がっていますよ。今、お持ちいたしますね。」
ハーツのお店に来た。そして店員さんに聞いてみると、既に出来上がっていたよう
だ。来た! ついに来たぞ! 念願のハーツのリュックを手に入れる時が! なん
て言いつつも錬金術に熱中し過ぎて忘れていたりしたけどね。
「ねこますサン。すごい嬉しそうですね。」
「お気に入りのリュックが手に入るからね。」
そわそわしてしまう。リュックだ。ついにリュックが手に入るのだ。落ち着けなく
なってきた。だって、ハーツのリュックだよ!? これが喜ばずにはいられない。
「はい。こちらになります。確認をお願いいたします。」
店員さんが持ってきたのは、正に私の理想通りのキャメルのリュックだった。こ
れだよこれ。イメージ通りだ。いやイメージ以上かもしれない。完璧な出来上がり
じゃないか。ああ嬉しいなあ。使うのが勿体ない気がしてきたけれど、使わないの
も勿体ない。よし、触ってみるか。
「質感が最高です。デザインも色も最高です。触り心地も大きさも最高です。うわ
ぁ、こんないい物、ありがとうございます!!」
思わずリュックをぎゅっと抱きしめた。そして、実際に背負ってみる。おお。これ
またすごくいい感じだ。一回転して、サンショウと店員さんを見つめる。
「ど、どうでしょう!? 似合ってますか!?」
「ええ、とてもお似合いですよ。」
「ねこますサンにとても似合っています!」
え、えへへへへ。やばい。これは嬉しすぎる。あぁこのリュックの横に小物入れ的
な部分がついているのがいいんだよなあ。ああ、もう最高。使い込んでいけば少し
ずつ色も変わっていくのが楽しめるし、革製品はやっぱり素晴らし過ぎるな。
「しばらく後になると思いますが、仲間が欲しがっているものがありますので、そ
の時もぜひともよろしくお願いしますね!」
「それは嬉しいですね。是非ともよろしくお願いいたします。」
ブッチが、ショルダーバッグを欲しがっていたが、今このタイミングでまた購入し
てしまうとお金持ちだと誤解されて狙われるかもしれないので辞めておく。ここで
買うのはしばらく時間が経ってからだな。
「それでは、失礼します。本当にありがとうございました!」
「はい。こちらこそありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」
店員さんの笑顔で送られて、店を後にした。
「姉御が、あまりに明るい声を出していてこれは本当に本人なのかと疑ったやで。」
「はぁ!?」
「いやだって、なぁ? サンショウ?」
「ええ、一瞬偽物なのではと思いました。」
辛辣過ぎる。なんだこの二人、失礼だなあ。私だってこういう時は素直な反応をする
んだぞ全く。私を何だと思っているんだ。
「こんないいリュックをに入れられたんだから、私だって舞い上がっちゃうよ。」
すごい久しぶりに背負うけど、これだよこれって感じがする。これがあれば、アイ
テムインベントリに入れられない物をある程度所有できるようになる。後は、トラゴ
ンと戦ったときのように、このリュックに大量に火薬草を詰め込んで投げつけるなん
てことも出来る。当然それをやってしまったら、このリュックがなくなってしまうと
いうことでもあるので、そんな事をするつもりはない。あくまで最後の手段みたいな
ものだ。
「姉御をそこまで夢中にさせるリュックってすごいんやなあ。」
「きっと何か不思議な力が備わっているのでしょうね。」
ただのキャメル色の何の変哲もない、普通のリュックだが、言われてみると確かに
特殊な力が宿っていそうな気がした。といってもこれは、ただの私の勘みたいな物な
ので、本当にそんな力が宿っているかどうかは分からない。
「何か効果があればいいと思うけど、そんな凄い効果はないだろうね。」
あくまでファッションというか、収納できる道具として買っただけに過ぎないので、
大きな期待はよせていない。しかし、デザインもよく、更に追加効果があるなんて言
ったら、ますますハーツが好きになる。
「高いお金払っただけあるよ。」
高い物には理由がある。それだけ品質がいいということだろう。そういえば、しっか
りとした革で作られていそうだけれど、このゲームで手に入るモンスターの革だった
りするのかな。ああ、そのあたり聞いておけばよかったなあ。興奮し過ぎて聞くのを
忘れてしまった。
「盗まれないように気をつけなあかんのやで。」
「分かってるよ。基本は肌身離さず持ち歩くから大丈夫。」
金持ちだと誤解されかねないというのが難点だ。それとハーツの商品を他にもいく
つか買いたいとは思ったが、高額な商品なだけに、やはり盗賊などに狙われてしまう
ということも考えられる。やっぱり、肌身離さず持っておかないといけないな。
だけど、そうだとすると、高額なアイテムやレアなアイテムは狙われてしまうとい
うことになるけれど、所有者はみんなどうしているんだろうか。盗まれないように、
どこかに所有者登録なんて出来るのだろうか。かつて私がプレイしていたオンライン
ゲームだと、自分の名前が登録できたのだけれど、そういう設定ができたり、盗難防
止の仕組みがあれば、安心して持ち歩けそうだ。
「盗まれると言えば、薬草なんか盗まれたそうな気がするで。沢山持っていたら狙わ
れそうやないか。」
「え? そんなことしてきた奴がいたら、絶対に許さないよ? 未来永劫に渡って追
い続けて地獄の苦しみを与えてやる!」
たかが薬草なんて思ってはいない。高額で売れたわけだし、沢山持っているから一
個や二個くらい構わないなんて妥協は一切ない。私から薬草を奪おうものなら、どん
な手段を用いてでも絶対に叩き潰す。絶対にだ。どれだけ私に謝ろうが許すつもりも
一切ない。
「あっ、姉御威圧がやばいやで!?」
「こ、これは、我々にもかなりの影響がでています!?」
おっと。しまった、うっかり感情をむき出しにしてしまったせいか、威圧が発動し
てしまったようだ。薬草が無くなるなんて考えただけで怒り狂いそうになるな。この
ゲームをプレイしてから、毎日毎日一生懸命頑張って集めた努力の結晶だからしょう
がないよね。それを奪おうとする不届き者には死する生ぬるい気がする。
「盗賊と言えばエリーネキがそうやったと思うんやが、盗まれないようにする方法と
か教わればええんやないか?」
「あ、そうだね。確かにそうだ、そういえばエリーちゃんって、盗賊だったんじゃな
いか。魔法使いとばかり思ってしまうなあ。」
魔法を使って戦っているせいか、そっちの印象が強い気がする。あ、そういえばエリ
ーちゃんから服を頼まれていたじゃないか。そうだ、その辺で適当に服を買っておけ
ば着替えればこの街に入れそうだっていうのに危うく忘れるところだった。
「ブッチは、服があっても顔を隠せないといけないんだよなあ。何かそれっぽいのを
探しにいかないとだめか。」
パーカーとかどうかなぁと思ったんだけれど、身長2メートル以上あるし、そんな大
きなサイズが売っているかどうかが問題化。あとは正面のサイコロにも取り付けられ
そうな仮面とか、兜とかの被り物でもするかどうかってところだなあ。これもやっぱ
りサイズの問題があるけれど、ちゃんと見つけないといけないな。
「私ばっかりが、この街で楽しんでいたら申し訳ないしな。というわけで、商業区で
ブッチとエリーちゃん用の服を買い漁るよ。」
「姉御って確か本人たちに連絡できるんやったっけ。それやったら、どういうのがい
いのか聞いておくとええんやないか?」
「そうだね。」
いつも通り、メッセージを送って二人の反応を待つことにした。
マブダチからのメッセージ:兜をかぶるんだったら、和風の兜がいいな。パーカーは
出来ればグレーのがいい。俺にあったサイズがあればいいんだけどね!
和風の兜って言うと、戦国武将とかがつけていたような感じの、ああいうのか。売っ
ているかどうか分からないので、探し回らないといけないな。
エリーからのメッセージ:可愛い感じの服がいいです。ノースリーブのブラウスとホ
ットパンツとニーソックスと後は…。
何か色々欲しいらしい。だけど私の趣味とは合わないと思うので、まずはちょっとし
たものだけ買っておき、街に入れるようになったら自分で買ってもらったほうがいい
だろう。好みじゃないものを買ってしまって残念な気持ちにさせてしまったら嫌だし。
「どんなのが欲しいのか大体まとまったから、後はひたすら商業区を周るだけだな。
沢山歩かなきゃいけないのがしんどいな。」
「ねこますサン。たけのこ殿や、くろごま殿も入れるようにはできないのですか?」
それが問題なんだよね。モンスターとして扱われるのなら、全員で街の中に入る事
ができないんだろうけれど、仮に入れたとしても、たけのこの場合は狼なので目立っ
てしまい、これまた騒動を引き起こしかねないという状況だ。
「たけのこは特に難しいね。あー、姿を変えられる薬とかそういうのが作れればいい
んだけどなあ。」
実は先生に聞いてみたのだけれど、そういうのがあることにはあるが、素材が無いの
で作れないとのことだった。また、姿を隠すような道具もやはり素材が貴重なので、
そう簡単には作れないというのが分かった。
「いつも一緒にいられないっていうのが残念だなあ。ところでだいこん。」
「なんや?」
「今更だけど、その巨大化したり小さくなったりするスキルは、たけのこ達に教える
事ってできないの? あ、後は私とかでもいんだけれど。」
「ワイは自然にできるだけやから、教えるなんて無理やで。強いて言うなら、気合い
で出来るとしか言いようがないで。」
気合いで自分の体のサイズが変更で斬れば世話ないよ。ああ、でもやっぱりどうにも
ならないってことかあ。うーん。なんだかなあ。
「今度みんなの前で実演してみて。もしかしたら気合いでいけるかもしえないし。」
「ファッ? 姉御はたまに無茶いうんやなあ。」
駄目で元々だったとしても、何故か蛇にできて、狼や猿やそして般若レディに出来な
いわけがないんじゃないかと思った。
「ひとまず、今から、商業区で服を買い漁ろうか。」
こうした私達は、ひたすら歩き回って服を探そう作戦を開始した。