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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第256話「吸魔石を作ろう」

「まるで黒焦げになったみたいですね。」

 先生から、闇の石を受け取ったのだが、あまりに真っ黒過ぎて、焦げてしまった

のではないかと思った。これ、失敗作だったりするんだろうか。

「それで成功よ。より正しく言えば、大成功の部類ね。」

「え。本当ですか!?」

「黒がより強ければ強いほど成功と言えるわ。だけど、さっきみたいなことはね。

とても危険なのよ。闇の素の力が集中し過ぎて最後はその力に飲み込まれてしまう

こともあるの。」

「飲み込まれると、どうなるんですか?」

 恐る恐る聞いてみる。

「闇に意識を乗っ取られたり、この辺り一面が生命力が奪われて枯れ果ててしまっ

たり、様々ね。錬金術が使えなくなる、なんてことも考えられるわ。」


 うわ、それはゾッとする。さっきのあれは、そうなる寸前だったってことか。今

回はたまたま上手くいったけれど、普段はあそこまでやることはできないな。危険

な結果が伴う事は、リスクを受け入れてもいいタイミングでやらないといけないし。

今後を考えると、さっきみたいなことにならないようにしないと。


「ところで、その先はどうなるんでしょうか。」

「ん? その先って?」

「闇に意識を乗っ取られた後に、その乗っ取った意識がそのまま闇の錬金術を続け

ていって、最終的にどこまでいくのかなぁと。」

 これはつくづく気になってきたことだ。邪悪な意識に乗っ取られるとかそういう

のはよく聞くのだが、そこで終わってしまうだけというのがよく分からない。私と

しては、邪悪な意識があろうがなかろうが、徹底的に闇の錬金術を突き詰めていく

事で、さらに上の何かがあるのではないか、と考えているからだ。

 まぁそれが料理に例えてみれば、単に黒焦げになって終わりってだけならまだ分

かるのだけれど、そういう際限が錬金術にあるのかどうかが分からないので、要す

るにそれが知りたいという事だ。


「私にも分からないわ。だけど、そうねぇ。闇と自分が一体化するみたいな感じな

のではないかしらね。光と闇なんて表裏一体といえばそうだし。」

なるほど。闇と一体化か。つまり闇の私という新たな人格がでてくるといったとこ

ろか。何それ、結構面白そうなんじゃないのか。闇の私。世界を破滅させてやるぞ

とか言い出すんだろうか。まずい、そんな事になったらブッチが笑い死ぬぞ。あま

りに滑稽だし。


「錬金術って面白いですねえ。」

「そうよ。だからあなたもきっとどんどんはまっていくと思うわ。それじゃあ、次

は、吸魔石ね。」

「え!? ちょっと先生。私、まだまともに闇の石は作れるようになっていないん

ですよ?」

「偶発的とはいえ、作れたのだからいいでしょ? まさかこんな短期間で闇の石を

作り上げてしまうなんて意外だったのよ。あなたは才能があるんだから、このまま

一気にやっていくほうがいいと思うのよ。」


 ひじきに助言を貰ってたまたま上手くいっただけなのに、買いかぶられてしまっ

た。これはだめだ。このまま行くと、非常にまずいことになる。ここはひじきを召

喚して事情を説明するべきだろうか。いや、流石にひじきの事も見せてしまうのは

今の段階ではまずい気がする。うーん、どうしようか。

「先生、上手くいったのは私の力だけじゃないんです。助言してくれた者がいまし

て、姿は見えないんですが、そういうものなんです。」

 

これで信じてもらえるかどうかは分からないけれど、正直には話しているはずだ。

「何かあるとは思ったけれど、そうだったのね。だとしても、よ。最低でも闇の素

を認識するのに数か月はかかるところをたったこれだけの時間で、出来てしまった

ってところがすごいのよ。」

普通は数か月もかかるのか。それはもしかして先生の事なのかな。それと比較する

と、私は天才ってことになってしまうじゃないか。これはまずいぞ。だけど、ひじ

きのアドバイスだけで、ここまでなるっていうのはおかしくないか? 私が魔者に

なっていたり、職業がそもそも錬金術士になっているからなのかは分からないけれ

ど、ここはゲーム的設定ってことで、上手くいっただけなんじゃないだろうか。


「ちなみに先生は、どのくらいかかったんですか。」

「私は三日よ。」

「あれ!? 最低でも数か月って言ったじゃないですか!」

「私の三日も十分異常なの! 最低数か月は常識の範囲!」

「うわぁ、先生って非常識じゃなかった、やっぱり凄いんじゃないですか!」

「そう! そんな私の才能を凌駕しようとしているのが今、目の前にいるんだから

もうさっさと闇の錬金術士を競える仲間として育てないとだめでしょ? ね!?」


な、なんか急にがっついてきているぞ先生。はっ!? もしや今までずっと一人で

闇の錬金術をやってきていたから寂しかったとかなのでは? そうだよね。こんな

森の奥にアトリエを構えて女の子が一人で生活しているなんて、そりゃあもう病ん

でしまってもおかしくないよね? しかも闇っているからには何となく孤立してい

るっぽいし。そうだよね!?

「先生。やりますって。私も頑張りますって。先生はもう一人じゃないですし、闇

の錬金術は私も頑張りますから。安心してください!」


 ずっと一人だけで、というと私にも経験がある。それは、ゲームのリアルタイム

アタックをしていた時の事だ。私がはまっていたレトロゲームがあるのだが、その

レトロゲームはマイナーな部類で、誰もやっていなかったというのがある。私がそ

のゲームの動画を公開すれば、きっとそういう仲間が増えたりしてくれるだろうな

んて期待していたのだけれど、一向に誰もやらなかった。そして私はずっと一人で、

ひたすらそのゲームをやっていた。楽しかったけれど、誰も仲間がいなかった事に

寂しさを感じたものだった。

 きっと先生も、その時の私と同じような想いをしているに違いない。これはやは

り先生の力になってあげなければ。


「あ、ありがとう。ねこます。それじゃあ、吸魔石だけどね。闇の石と、この吸血

の牙と、それから魔法の実、で出来るからやってみましょう!」

 急に笑顔になる先生だった。先生、結構きつい目をしているような感じだと思っ

たけれど、笑うと可愛いんだな。こんなに喜んでもらえるなら、もっと一生懸命学

びたくなるし、いい先生だなあ。


「ほらほら、早くしないと! 時間はあんまりないんでしょ!?」

「そ、そうですね。ってあれ、今度は先生の釜の方を使うんですか?」

「色々な釜を使っておかないとね。いつも使う物があるのもいいけれど、それが無

い時のことを考慮して、やってみないといけないし。」

 弘法筆を選ばずか。でもいつも使えるのがあるなら、使っちゃうよね。やっぱり

使い慣れたもののほうがいいし。


「それじゃあ、説明するわよ。釜の中に最初に入れるのは、吸血の牙からなのよ。

さぁ、入れてみて。」

先生に吸血の牙とやらを渡され、大きな釜の中にぽいっと軽く投げ入れてみる。

「それを、棒で軽く突いていってね。」

言われるがままに、吸血の牙を棒で軽くつつく。すると、赤黒い液体のような物が

滲み出てきた。おお、なんか怖い気がしたけれど、すぐにそれはなくなった。だっ

てなんかこう、先生と一緒に料理でもしてるような気分になってきてしまったし。

これはトマトをつぶしたかのようなノリだ。


「はい、そこで闇の石を入れて! そして同じ数だけ魔法の実も入れて!」

「はい!」

作った闇の石を全て釜の中に中に入れた後、魔法の実も入れる。結構忙しいんだな。

「そこでいっきにぐるぐるかき混ぜる! 真剣に!」

 あわわわ。っと忙しすぎじゃないか。さっき闇の石を作ったばかりなのに、こん

なノリでいいんだろうか。でもここは勢いに任せてやっていく流れだと思うので、

棒を持ってひたすら鎌をかき混ぜる。ぐるぐるだあああああ!


「えっほえっほ!」

「回転が足りないわよ! もっと全力で回さないと失敗して爆発するからね!?」

「はっ!? えっ!? 嘘ですよね!?」

「本当よ! だから真剣にやりなさい!」

「や、やります!」


なんてことだ。スパルタとかそういう問題じゃない。失敗したら爆発とか、そんな

事知っていたらもうちょっと心を落ち着かせてやったのに、気軽にやってみようみ

たいなノリでやったらこうなのか! こんないきなり真剣になって必死に釜を棒で

ぐるぐるかき混ぜることになるなんて! うわぁぁ回せ回せ! ひたすら回すんだ

ってなんか、煙がでてきてない!? さっきとは違うと思うけれど、これまた、ま

ずい状況じゃないの!?


「ほら! 回しなさいって! このままだと爆発よ!?」

「や、やってますよおおお! オラアアアアアア!」

私は今、本気でやっている。手抜きなど一切していない。死ぬ気で回している。な

んでこんなことになっているのか分からないままひたすら回している。だけど煙は

収まるどころかどんどん出てくる。これおかしくないですか!? こんなに必死に

なって回しているのに!?

「そこで逆回転!」

「どっせええええ!?」

なんでまた逆回転!? うわぁ、なんか変に勢いがついちゃってる! うわぁ、逆

だっての! 回せ! このままだとまずい! っていうか煙があああああ!?

「そこでストップ!」

「はい!」


そして、もくもく上がっていた煙が収まった。こ、こ、これはしんどい。かなり緊

張してやったよ。何これ、生体調合と比べてきつすぎない? もしかして、難易度

の高い錬金術って、こんな感じでぐるぐる回さなきゃいけなくなるんだろうか?

「棒を回転させるがまだまだねえ。沢山回せるようにならないと、この先大変だか

ら、いつでも回転させることを意識しなさい。」

「は、はい。ぜーはー。ぜーはー。」

疲れたよ。VRやっているだけのにすごい疲れた。もうなんなんだこれ。こんなに疲

れて失敗したら最悪過ぎるな。時間も結構かかるだろうし。今度から調合をやる時

は本当に覚悟してからやろう。こんなのが調合たびにやらなくちゃいけないんだっ

たら、本当に真面目になってやらないと駄目だ。


「それじゃあ、完成したか見てみましょうか。これでとってみて。」

「え? あ、はい。」

大きいおたまのような物を渡されたので、それを釜の奥に入れて、吸魔石になって

いると思われる石をとってみた。さてどうだろうか。先生に見てもらう。


「…。まあまあの出来ね。成功おめでとう!」

「あ、ありがとうございます!」

これでまあまあとかきっつい! でも大満足したよ! これでもう私、十分満足し

たよ! まともな錬金術士としてこれからもやっていけそうだってくらい勢いを感

じているし、今日はすごい大変だったけれど、面白い日になっているよ!


「それじゃあ続きを。」

「休憩ですよ! ちょっと今マジできついですって!」

先生が勢いにのってきていたけれど、ここは一旦休憩しないと絶対に失敗する。す

みませんが休ませてください! と真剣にお願いしたのだった。

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