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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
254/473

第254話「感覚を覚えよう。」

明日また追記します・・・。

8/3 追記しました。

「それじゃあ、この棒を持って、闇をすくい上げる様な感覚を覚えるようになるま

で釜の中で回してみなさい。」

「分かりました。」

釜の中には、素材石という白い石だけが入っているが、先ほど先生が軽くかき混ぜ

たからなのか、一部が灰色のようになっていた。なるほど、闇の素とやらをこの石

の中に混ぜ込んでいくということか。

「闇をすくい上げる、こうですかね。それとも。」

なんとなく闇を意識してみるが、一向に変化はない。ええ、私って才能が無いんじ

ゃないのか。


「…先生みたいに出来ないんですが。」

「そんな簡単に出来たら私が挫けそうよ。私だってこの感覚をつかむのに凄い苦労

したんだからね。一応言っておくけれど、これは、今まで知らなかった未知の感覚

を獲得することだから、そう簡単にできると思ったらだめよ。」

 根気が必要ってわけか。大変だなあ。なんて他人事のように言ってる場合じゃな

いな。これが出来ないようであれば、この先何もできなくなるのだろうし。

「闇をすくい上げる。闇を、闇を。」

呟きながら、すくい上げる様な感覚でぐるぐると棒を回し続ける。何も起こらな過

ぎて、一体自分は何をやっているんだろうと言う気持ちになってくる。棒を動かす

速度に緩急をつけてみたり、力を込めて回してみるなど試してみるが、何も変化が

ない。


「闇だけに、闇が深い作業なんじゃないですかねこれ。」

思わずブッチみたいなノリで言ってしまった。

「何をとぼけたことを言ってるのよ。ひたすら感覚を得るために回せばいいだけの

作業なんだからそんなきつくもないでしょ。むしろこの先の方が時間がかかったり

するから、今が楽な方なんだからね。」

 こ、これで楽な方なのか。でもこの闇の素を感覚で覚えるというので思い出した

事がある。口笛とかペン回しだ。なんか初めは上手くできなかったけれど、ある時

なんとなく感覚でできるようになったっていうものだ。今やっていることが、それ

と同じような物なのじゃないだろうか。つまり、こうやっていること自体に意味が

あって、闇の素の感覚は自然と見についていくものだということだ。

 何度も無駄な作業をしなければいけないのかと思うと億劫になってくるが、これ

が何も無駄な事ではないと思うと、気が楽になってくるな。


「闇を、闇をすくい、あげる。闇を…。」

こうなのか、それともこうなのかと想いを込めて、ひたすら棒を回す。素材石にも

棒にも何の変化もなくとも、ただひたすら、感覚を覚えるために回す。意味があろ

うがなかろうが、これをやるしかないのだから。

「そうそう、その意気よ。」

 先生も応援してくれている。こういういつ終わるか分からない作業、あるいは、

正解が見えないことをやっているときに応援されると頑張ろうって気持ちになれる

なあ。

「まぁあなたなら出来るわよ。」


なんて、応援されてよし、やってやるって思っても上手くはいかない。長期戦にな

るのかもしれないが、それもまたよし。これは練習なのだから。錬金術を学ぶのは

一朝一夕で身に着くものじゃないのだろう。先生だって頑張ってきたのだから、私

が近道のようなことで上手くなるわけないじゃないか。ここは時間をかけてじっく

りやっていかないといけない。


「自分なりに考えてぐるぐる回してみてもいいですか?」

「え? 何をする気か分からないけれど勿論いいわよ。試すのは大事だし。」

ここで、勢いよく、ぐるぐる回してみたりすればいいんじゃないのかと思い、本気

でぐるぐる回してみた。おまけで、仕事で感じているストレスをぶつけるようにや

ってみる。

「私に押し付けてきやがってぇぇえ!」

素材石に変化はない。なんかこれ、段々腹が立ってきたな。地道な努力が大事なの

は分かるけれど、こういうのってちょちょいと上手くいってもいいんじゃないです

かねえ?


「ふふっ。あはは。」

 え、なぜそこで先生は笑っておられるのでしょうか。いや見ていて滑稽なのは分

かるんですけれど、あ、あーそれはあれですね。先生も今の私みたいな経験があっ

たからそれを思い出して笑っていると、そういう奴ですね?

「先生にも経験があるってことですか?」

「そうねえ。大体みんな思いつくことなのよねえ。棒を沢山回せば、何かすごい事

が起きるかもしれないって。錬金術士の通過儀礼みたいなものね。」

 えー。それじゃあ、ここから、私の錬金術士としての輝かしい生活が始まったの

だって感じで道中はカットして、いつの間にか凄腕になっていましたというノリに

はなったり、しないか。これは映画でも何でもないわけだし。


「地道に…。地道に…。」

 こういう時に思いつく効率的にいい方法は先人たちが試していたりするんだろう

から、それをやったらまた先生に笑わられてしまいそうだ。が、試さずにはいられ

ない。テンポよく回してみたり、急に早くしてみたり、いっそ逆回転にしてみたり

したらどうだろうか。うん、何も起きないな。…先生が今笑っていた気がする。く

そう、なんとかならないもんか。まるで子供を見守っている母親みたいな感じじゃ

ないか。


 何かヒントは無いのかなんて思ったけれど無いのだろう。それがあったらやっぱ

り先人たちはやっているだろう。そういえば、レトロな格闘ゲームなんかでもそう

だったなあ。必殺技を使う時にコントローラーの入力にミスがあれば、出てこなく

なったり、出たとしても無駄な動きが出るって奴。あれに近いのかもしれないな。

 最初のうちは全然必殺技が出せなくて、変な動きばかりになる。そのうちコント

ローラーをガチャガチャと動かして偶然必殺技がでることに期待するとかそんなの

ってそれついさっき私がやったことじゃないか!?

「くっ…。」

「? どうしたの?」

「なんだかちょっと悔しくなりました。」


 格闘ゲーム初心者だった頃と同じことを繰り返す羽目になるとは。まぁあれもあ

あいうことをしていたから上達したと言えなくもないだろうし。やぶれかぶれでや

ってみることで、段々必殺技を入力できる感覚が分かってくるものだったしな。そ

れを踏まえると、こう、今ならその時のことを思い出して上手く…。

「上手く、いかない。」


ちょっと待てよ。この感覚をつかむのってどれくらいかかるのかな。沢山時間がか

かるのは困る。一度草原と言うか魔者の大陸に戻るなりブッチ達に合流するなりし

たいと思っているので、あまり長居はしたくない。先生の弟子にしてもらって何だ

が、ここには通うようなかたちで錬金術を学べるようにしたいのだが、それがとて

も大変なことな気がしてきた。


「何か心配事?」

「あ、顔に出てましたか。えーっとですね。実はですね。他にも仲間がいまして、

ちょっと色々あって街の中には入れないんですよね。連絡手段はあるんですけれど。」

これだけ言うと、犯罪者のような扱いだと思われそうだが、先生の場合はどうだろ

うか。


「ねこます。あなた犯罪者の仲間だったのね。」

「先生酷い!」

大体そういうイメージがあるよね。なんかやらかさないと街の中に入れないなんて

事はないだろうし。ここで正直に話すのもなんなので濁して伝えるか。


「仲間の見た目とか、あと、えーっとここにいるだいこんのように、いるんですよ。

狼とかが。」

「狼ですって!?」

目を見開く先生だった。どうしたんだろうか。


「どうしたんですか。狼って珍しいんですか。」

「そりゃそうよ。今は、この国周辺ではほとんど見かけなくなってしまったし。遠

くに行かないとなかなか出会えないわよ。」

「へぇ。そりゃまたどうしてですか?」

「毛皮がいい防具の素材になったりしたからよ。他にも目は錬金術で使われたりし

ていたわけだけどって、しないわよ私は!」

うん知っていたけどさっきのをやり返しただけです。それはさておき、そういう理

由があると、たけのこが狙われてしまうってことじゃないか。あれ、ひょっとする

と神殿で戦った連中もいるし、現在もあそこにいるはずだから、結構まずい状況な

んじゃないか。狙われまくっていそうな気がするぞ。


「そういう理由があってですね。私としても、ここには通いながら錬金術を学ばせ

て貰えたらなあなんて思っているんですが、無理ですか? 金なら用意します!」

「んー。そうねぇ。それよりも、その仲間とやらと一緒になって薬草を集めたりし

たわけでしょ? だったら素材とかを貰えた方が嬉しいわねえ。」

「それは勿論お渡ししますよ!」

 おすそ分けはするに決まっている。先生なのだから。


「ん。それならいいわ。まぁあなた自身の事は、そのうち、気が向いたら話してみ

なさいね。」

「はい。先生ありがとうございます。とりあえず今日中にこれは頑張って作ってい

きたいと思います。」

「ええ。それじゃあ私は私で、調合をしようかしらねえ。」

「えっ、ちょっ、先生の調合が見たい!」

「闇の石を作るだけよ?」

「そのだけが出来ないからみたいんですよ! あっそっちの大きい釜で作るんです

か!?」


 部屋の奥にかなり大きい釜があった。あれが先生がメインで使ってい釜じゃない

だろうか。いいなあ、あれ。いつか私もああいうのを手にいれたいところだ。


「じゃあ、また少しだけ見せてやるから、こっちに来なさい。見るだけでも、少し

は違うかもしれないし。何かきっかけが掴めるかもしれないからね。」

「はい! 先生の一挙手一投足を見逃さないようにします!」


というわけで、私の方は一旦休止して、先生が闇の石を作るところを見学すること

にしたのだった。


「ふんふんー。」

鼻歌を混じりながら、軽く棒を回す先生。鎌の中にある棒の先端が、やはり歪んで

見えると言うか、黒い靄のような物が見える。あれが闇の素なんだろうけれど、闇

の素をあの先端に集める様な感じを意識すればいいんだろうか。でもそれはさっき

もやったことだし。ううん。闇を意識かぁ。考えてもよく分からないなあ。


「少しずつ黒くなってきていますね。」

「石に闇の素が吸収されていってるからよ。ちなみに途中で辞めても灰色の石とし

て中途半端だけれど効果は発揮するのよ。」


そういう中途半端に成功するってこともあるのか。なかなか大変だなあ。それにし

ても、私と先生のやり方の何が違うのかなあ。私も大体同じようにやっているはず

なんだけれど。んん。これはひょっとすると。

「先生って、棒に力を入れてますか?」

「そこは気分によってねえ。今はそんなに力を入れてないわ。」


棒を握る力も影響しているんじゃないだろうか。これは、ちょっと試してみたくな

ってきた。人が出来ているのを見ると、自分でも簡単にできるんじゃないかと思え

てくるから不思議だ。よし、一旦私の釜のところまで戻ってやってみるか。

「先生ありがとうございます。ちょっとやってみます!」

「はーい。頑張ってね。」


やる気がでてきた。頑張るぞ!

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