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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第252話「吸魔石」

「ただいま。って何よ、どうしたのよ…。」

「先生!」

「おかえりやで。」

「おかえりなさい。」

 黒い石について散々考え込んでいたら、ようやく先生が帰ってきた。もはや飽き

てしまっていたので、この作業がやっと終わるということで、すぐさま先生の目の

前に来たというわけだ。

「おかえりなさい! これについて考え込んでいたら、知りたいことが沢山出来た

ので、早く説明が聞きたいんです!」

「あら? それだったら森に行ったりしても良かったのに。って、何呆気にとられ

ているのよ。言い忘れていたけれど、私の指示とかもそこまできっちり守らなきゃ

いけないわけじゃないからね。」


 そういうオチだったか。でも私としては、学校の授業のように教科書通りの手順

で学びたいというのがあったので、指示以外の事はあまりしたくなかった。

よくあることが、説明に書いてある手順通りにやらずに、他の事を付け加えてしま

い、失敗してしまことだ。今回は、これをしたくなかった。


「基礎の基礎なので、それ以外の事をやると、変な癖がついたりしそうなので避け

たかったんですよ。」

「それもそうねえ。最初から余計なアレンジを付け加えられてしまうと、普通のや

り方っていうのができなくなってしまうわね。」

 基本的な事を覚えた後に、自分なりのやり方を探して行くというのが私の希望し

ているやり方だ。最も、このゲームを始めてからそういう基本的な事がどういうも

のなのか知らずにやってきたため、既に変な癖はついてしまっている可能性はある。


「そうなんですよ。やはりここは基本に忠実にって、先生、荷物そんなに多くなさ

そうですけれども、買い物は終わっているんですか?」

「闇の錬金術に使えそうなものは多くなかったわ。こういうところも、この錬金術

の難点ではあるのよ。素材が沢山手に入らないってね。」

 貴重な素材を使うのか。確かにそれは収集するのが大変そうだ。希少価値のある

素材ばかりが要求されているのだとしたら、錬金術を使うまでの手順がすごい長く

なってしまうだろう。ということは、そういった素材の確保をできるようにしてお

かないといけないのか。これ、苦労が多すぎないか。

 闇の錬金術は使用者が少ない、素材が希少なので収集に時間を要する、調合難易

度も恐らく高い物が多い。失敗した場合のリスクが高い。ざっくりとまとめてみる

とこんなところか。これは、ゲーマーだと食いつきがいいかもしれないけどね。


 人がやらないようなことをやってみようとするのが一番面白いし。そういうのが

好きなプレイヤーは、作業が大変であってもやりがいがあるから挑戦するだろう。

「私も素材集め頑張りますよ。どの場所にあるのか分からないのであれば、各地を

放浪して集めます。」

 だけど、それだと目的から脱線していきそうなのが怖い。元々は、一般的な錬金

術のやり方が分からないというところをなんとかしたいというのがあった。だが、

それも、私がみんなよりも弱いので、強くなりたいという気持ちかとクロウニンの

ような強敵を倒さなきゃいけないという理由があるからだ。その目的が達成できれ

ば、素材自体はそこまで集めなければいけないものではない。


「そういえば、死にたくないなんて言ってたわね。何かから付け狙われているって

言うんだったら、私も戦ってあげるけれど。勿論あなたが、犯罪とかそういうのに

手を染めてなければ、だけどね。」

 先生は良い事言ってくれるなあ。私は感動したよ。でも私はモンスター扱いみた

いな感じなので、それこそ存在自体が悪みたいにされているようなものなので、犯

罪といえばそうかもしれないので、頼るのは難しい。だけど、ここまで言って貰え

るのは、ゲームのNPCと言えど、なんだかぐっとくるものがあった。


「先生、私は他力本願は好きじゃないのですが、もし本当に大変な時はお力添えを

お願いいたします! 基本は自分の事は自分でやりますので!」

「あらそう、それじゃあいつでも頼ってね。というわけで、そろそろ、その黒い石

の説明に入ろうと思うけれど、いいかしら?」

 おっと忘れていた。そうだ、この黒い石って結局何がどうなっているのかって事

を聞きたかったんだ。


「生命力とか魔力を吸収して、それを利用する道具ってことなんですよね?」

「もしくは、生命力や魔力を奪って、相手を弱らせるという利用方法もあるわ。当

然考えついていたと思うんだけれどね。」

 それもそうだ。これを仮に有効活用できるのであれば、黒い石を床に沢山敷き詰

めておき、敵の生命力を奪いつつ、自分の生命力するなんて自分有利の場所を作り

出すこともできそうだ。それをやるのが大変そうだとは分かっているが、例えばそ

れを、偉い人間のいる部屋などに限定させれば、侵入者がきても弱らせることがで

きるなど、利用方法なんて山ほどある。


「そんな便利な黒い石の名前を教えてください。」

「吸魔石ってところかしらねえ。私が調合というか開発したものなんだけどね。な

かなかいい名前が思いつかないのよねえ。」

 色んなエネルギーを吸収するからってところか。って今凄い事言ってたな。これ

を開発したのが先生とは。どれだけ苦労したんだろうか。

「こんな凄い物を開発するなんて、流石先生です。でも、頭の硬そうな連中には全

く売れなかったとかいうオチまであるんですよね!?」

「そうよ。その通りよ。」

 そして沈黙。誰も声を発しなかった。何かしょっぱい話と言うか、危険があるか

もしれないものを利用する気になんてなれないと言われたんだろうなあ。まぁ私で

あっても断るけれどね。


「と、言うわけでね。こういう売り物にはまったくなってくれないようなものが結

構できてしまうわけよ。どうしても欲しいとかいう奴は犯罪者だったりする事もあ

るので迂闊に売れないし。最悪、仲間と見なされて、処罰を受ける時もあるから、

本当に面倒くさいのよねえ。はぁ。」

 包丁の話とはまた違うもんなあ。包丁を売ったとして、それが犯罪に使われるか

どうかなんて売った人には関係ない話なんだよねえ。使った奴が悪いってことだし。

でも、この吸魔石の場合は、影響範囲が大きすぎるだろうから、単純に使った奴が

悪いってだけに留まらないだろうからなあ。


「ということは、もしかして最初にここにあった色んな物とか地下にあった物って

作ったはいいけれど、使い所や売るのが難しい物ってことですか?」

 そういうと、先生は少しびくついえ、ばつが悪そうにした。ああ、やっぱり図星

だったのか。

「なんか色々やばそうな物あった気がするで。」

「ええ。最初にきたとは本当に、邪悪な雰囲気が漂っておりました。」


「う。だってしょうがないじゃない! 折角色んな考えが浮かんできては作ってみ

るのに、繊細な道具を扱う自信がないとか、管理をするのに神経をすり減らすとか

そんなことばっかり言われて、買い手がつかないんだもの! そのくせ、強力な道

具を作れって国から依頼は来るしで、もうやってらんないわよ!!」

 あっ、先生の本音がでた。けど、国から依頼がくるのか。やっぱり先生は凄いっ

て事なんだろうなあ。その凄さが分からないのと、扱いが出来ていない国のほうに

問題があるような気がしてきたけれど、それじゃあどうするんだろう?


「安全性を高めるしかないんじゃないですかね。」

「それをやると効果が薄れるのよね。そうなるとそんなもの大して役に立たないと

か。だったら初めから使い方に慣れなさいよっていうと、難しいとかすぐに言い訳

して、使おうと言うつもりもないみたいだし。馬鹿でも使える道具を作れって事な

んでしょうけれど、誰でも使えたらそれはそれでまずいことになるってなんで分か

らないのかしらね!」

 ごもっともだ。誰でも簡単に使える兵器があったとしたら、それを奪われて使わ

れてしまったら、それこそ意味がない。だから使い方を覚えなきゃいけないものを

じっくり学習してから使うべきなんだろうけれど、そこまでやる気がないというの

は贅沢過ぎるな。


「ワイ、思ったんやけれど、それなら、道具の使い方の説明書きみたいなのがあれ

ばええんとちゃうか?」

「ふふっ。それを添えてやったのに、読み飛ばすのが馬鹿のやることよ。説明書に

それをやったしまったら危険なので注意してくださいと書いても駄目。まず、みん

なして読まないの。なのにこっちに責任を押し付けてくるのよ。ストレスが溜まる

わぁ。」

 だから私は、手順通りやったり説明書の通りにやらないとだめだと思っている。

きちんと手順通りやれば上手くいくのに、なぜかそれをやろうとせずに、直感だけ

で使おうとするのがいけない。


「ドーラ殿。安全装置のようなものをつけるのはいかがか?」

「つけたことあるわよ。でも安全装置の外し方が分からなくて、結局実戦じゃ使え

なかったなんて言われたわね。それも最初にちゃーんと教えたって言うのにね。あ

あ、一応言っておくんだけれど、さっきから言ってるのはみんな国の兵士とかそう

いう連中の事よ。」

 分かるような気がする。お役所仕事をする連中って、どうも、そういう考えてや

る行動って言うのができなかったりするし。妙に納得できてしまうなあ。全員がそ

うだってわけでもないんだろうけれど。それはストレスがたまるなあ。


「その点、冒険者たちは良いわよ! 使える者は何でも使うの精神だからね。どん

な効果があって、どうすればいいのかをきっちり聞いてくるし覚えてくれる。そこ

が国の奴らと違うのよ。どうしてあいつらは自分で考えるってことができないのか

しらね!」

 使える者は使うっていうのはよく分かるなあ。危険があっても便利だったらきっ

ちり使い方覚えて使うのは私も同じだし。


「普段、冒険者たちの事を馬鹿にしている癖にね。国の方が馬鹿じゃないのって思

うわよ。はぁ。ってこんな話をあなた達にしてもしょうがないわよね。ごめんね。」

余程ストレスが溜まっていたらしい。そうか、闇の錬金術士として腕はいいはずな

のに使い方が悪い連中のせいで評価も低いということになっているのかもしれない

なあ。これは、私も頑張って、先生の評価が上がるようにしていかないとな。


「先生。私、先生がもっと評価されるように頑張りますね!」

「っ! ねこます。あなたいい子ね。分かったわ。あなたには徹底的に教えてあげ

るから頑張りましょうね!」

なんだか先生と距離が近くなったようだ。良かった良かった。


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